2度追放された転生元貴族 〜スキル《大喰らい》で美少女たちと幸せなスローライフを目指します〜

フユリカス

文字の大きさ
19 / 62
第3章 『ダンジョンとポーター』

17.ダンジョンボス

しおりを挟む
「なあ、アビ」

「なんですかー?」

「俺たちEランクとFランクの冒険者なんだが、こんな順調に来れるもんなのか?」

 俺はアビに純粋な疑問を投げかけた。
 なぜなら、今この階層は『8』なのだ。6層のボスも難なく倒し、ここまでアビのアドバイスもあってか、苦戦という苦戦をした記憶もなかった。
 今の最高到達が10層なので、7層あたりからは他の冒険者にすら出会っていなかった。

「いえ、あなたたち異常なのですよー」

「おい、さらっと毒吐くんじゃない」

「そうですよ、アビ。アルゼ様が強いだけですよ」

「いやお前も大概強すぎだからな、メル」

 メルは本気で俺のおかげと思ってるのか、首を傾げて「私なんて大したことないです!」と言うのだった。

「2人ともどんどん強くなってるのですよ? ここから先はアビも進んだことがないので、聞いた情報を頼りに行くしかないですよー。それとも、引き返しますかー?」

 正直、ここまででかなり金を稼ぐことはできてるし、スキルや経験値も十分に獲得できている。
 いったん地上に戻るというのも間違ってないと思うが、

「いや、もう少し、いけるところまで進んでみよう」

 俺は「やっぱり冒険者なんだな」と、苦笑いした。

「どうかしましたか、アルゼ様?」

 そんな俺を不思議に思ったメルが、ひょこっと顔を覗いてくる。

「いや、やっぱり俺も冒険者なんだなって思ったのさ。なんだかんだ、まだいけるのならいってみたい気持ちがあるみたいだ。最初は金稼ぎがある程度できればいいと思ってたんだけどな」

「アルゼ様は、いずれ世界一の冒険者になるとメルは信じてます。だから、そう思うのは当然のことです!」

「ははっ、世界一か。そしたらメルは世界二か?」

「はい! メルはアルゼ様のお隣に立つのに相応しくなるために、世界で2番目の冒険者になるのです」

 一つも疑うことのない瞳でまっすぐ見てくるメル。彼女がそう言うのなら、本当にそうなれそうな気がしてくる。

「……おーおー、若人は夢が大きくていいですねー。アビには眩しすぎるのですよー」

「お前も若いだろ……アビには夢はないのか?」

「……夢なんて、野良ポーターのアビにあるわけないのですよー」

 アビはどこか寂しそうに言った。

「そういえば……どうして野良のままなんだ?」

 これまであえて触れてこなかった部分を、いい機会だと思って俺は聞いてみた。

「……ギルド所属のポーターはスキルを開示しなければいけないのですよー。アビのようなスキルを馬鹿正直に申告したら、悪い奴らがアビを捕まえるに決まってるのですよー」

「いや、さすがにそれは極端じゃないか? ギルドだって守って――」

「アビのお兄ちゃんは連れ去られたのですよ?」

「――っ」

 俺はアビの言葉に絶句してしまった。メルも驚いて「え――」と言葉を失っている。

「お兄ちゃんもアビほどのスキルではないけど、『特殊スキル』持ちのポーターだったのですよー。でもある時、お兄ちゃんのスキルの話を聞きつけたクソどもに連れ去られてしまって、最後には囮にされて逃げられたのですよ……」

 アビの耳はぺたりと垂れ、悲しそうな声で俯いた。

「だから、アビはこのスキルのことをアルゼとメル以外に言ったことがないのですよ? ポーターとはダンジョンに潜るときだけ一緒に行く関係で、それが終わればいつもパーティーからさよならされるのですよー」

「お前……なんでそんな大事なスキルのこと、俺たちに話したんだ? 勘とか金の匂いとか言ってたけど、それだけじゃないんだろ?」

「確かにそれがすべてではないですけど……そうですねー、アビは――」


 ◆◇◆


「ふぅ……ついにここまで来たな」

 俺たちは先ほど9層のボスを倒し、ついに最高到達点の10層に来ていた。

「本当にどんどん強くなってるのですよ? わけがわからない速度なのですよー」

 アビからすればその感想を抱くのも当然だ。俺自身スキルも増えてレベルも上がり、次は10層だというのにまだ余裕があるように思える。

「ま、優秀な相棒とポーターのお陰かな?」

「そ、そんな、優秀だなんて……」

「褒めたって肉しかでないのですよー」

 2人とも満更でもない様子だ。

「しかし、ここまで来たらこの階層の記録を越えてみたいな。どこら辺まで進んでるんだろう」

「まったく進んでないのですよ? 10階層に到達した後に諦めたそうなので、このまま進めば記録更新ですよー」

「え、そうなのか? 諦めたってことは、この先は結構危険だと判断したのか」

「おそらくそうだと思いますよー」

「そうか……俺たちも無理だと思ったらすぐに引き返そう。ここまで来れただけでも上出来だからな」

「はい、アルゼ様!」

「わかったのですよー」

 俺たちはこれまで以上に慎重に進むことにした。
 1層を攻略し始めた時の俺たち……というか俺ならば、この10階層の魔物を倒すのはかなり難しかっただったろう。
 だけど、今の俺はレベルが26になり、スキルもありえないほどの量を持っている。

 ――このまま行けば本当に踏破できるんじゃないか?

 そんなことすら思えるほど、サクサクとここまで進んできた。

「あれ? またボス部屋か?」

 これまでボス部屋は3、6、9と3階層ごとにあった。
 10層は次に進むための層だと思っていたが、俺たちの目の前には大きな黒い扉があった。

 ――今までで1番大きいな。

「いえ、ボスはボスでも、これはダンジョンボスだと思うのですよ?」

「このボスを倒したら終わりってことですか?」

「多分そうなのですよー」

「マジか……!」

 俺は、松明に照らされた物々しい雰囲気の扉を見上げるのだった。
しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

追放された回復術師は、なんでも『回復』できて万能でした

新緑あらた
ファンタジー
死闘の末、強敵の討伐クエストを達成した回復術師ヨシュアを待っていたのは、称賛の言葉ではなく、解雇通告だった。 「ヨシュア……てめえはクビだ」 ポーションを湯水のように使える最高位冒険者になった彼らは、今まで散々ポーションの代用品としてヨシュアを利用してきたのに、回復術師は不要だと考えて切り捨てることにしたのだ。 「ポーションの下位互換」とまで罵られて気落ちしていたヨシュアだったが、ブラックな労働をしいるあのパーティーから解放されて喜んでいる自分に気づく。 危機から救った辺境の地方領主の娘との出会いをきっかけに、彼の世界はどんどん広がっていく……。 一方、Sランク冒険者パーティーはクエストの未達成でどんどんランクを落としていく。 彼らは知らなかったのだ、ヨシュアが彼らの傷だけでなく、状態異常や武器の破損など、なんでも『回復』していたことを……。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

空月そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

処理中です...