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第3章 『ダンジョンとポーター』
17.ダンジョンボス
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「なあ、アビ」
「なんですかー?」
「俺たちEランクとFランクの冒険者なんだが、こんな順調に来れるもんなのか?」
俺はアビに純粋な疑問を投げかけた。
なぜなら、今この階層は『8』なのだ。6層のボスも難なく倒し、ここまでアビのアドバイスもあってか、苦戦という苦戦をした記憶もなかった。
今の最高到達が10層なので、7層あたりからは他の冒険者にすら出会っていなかった。
「いえ、あなたたち異常なのですよー」
「おい、さらっと毒吐くんじゃない」
「そうですよ、アビ。アルゼ様が強いだけですよ」
「いやお前も大概強すぎだからな、メル」
メルは本気で俺のおかげと思ってるのか、首を傾げて「私なんて大したことないです!」と言うのだった。
「2人ともどんどん強くなってるのですよ? ここから先はアビも進んだことがないので、聞いた情報を頼りに行くしかないですよー。それとも、引き返しますかー?」
正直、ここまででかなり金を稼ぐことはできてるし、スキルや経験値も十分に獲得できている。
いったん地上に戻るというのも間違ってないと思うが、
「いや、もう少し、いけるところまで進んでみよう」
俺は「やっぱり冒険者なんだな」と、苦笑いした。
「どうかしましたか、アルゼ様?」
そんな俺を不思議に思ったメルが、ひょこっと顔を覗いてくる。
「いや、やっぱり俺も冒険者なんだなって思ったのさ。なんだかんだ、まだいけるのならいってみたい気持ちがあるみたいだ。最初は金稼ぎがある程度できればいいと思ってたんだけどな」
「アルゼ様は、いずれ世界一の冒険者になるとメルは信じてます。だから、そう思うのは当然のことです!」
「ははっ、世界一か。そしたらメルは世界二か?」
「はい! メルはアルゼ様のお隣に立つのに相応しくなるために、世界で2番目の冒険者になるのです」
一つも疑うことのない瞳でまっすぐ見てくるメル。彼女がそう言うのなら、本当にそうなれそうな気がしてくる。
「……おーおー、若人は夢が大きくていいですねー。アビには眩しすぎるのですよー」
「お前も若いだろ……アビには夢はないのか?」
「……夢なんて、野良ポーターのアビにあるわけないのですよー」
アビはどこか寂しそうに言った。
「そういえば……どうして野良のままなんだ?」
これまであえて触れてこなかった部分を、いい機会だと思って俺は聞いてみた。
「……ギルド所属のポーターはスキルを開示しなければいけないのですよー。アビのようなスキルを馬鹿正直に申告したら、悪い奴らがアビを捕まえるに決まってるのですよー」
「いや、さすがにそれは極端じゃないか? ギルドだって守って――」
「アビのお兄ちゃんは連れ去られたのですよ?」
「――っ」
俺はアビの言葉に絶句してしまった。メルも驚いて「え――」と言葉を失っている。
「お兄ちゃんもアビほどのスキルではないけど、『特殊スキル』持ちのポーターだったのですよー。でもある時、お兄ちゃんのスキルの話を聞きつけたクソどもに連れ去られてしまって、最後には囮にされて逃げられたのですよ……」
アビの耳はぺたりと垂れ、悲しそうな声で俯いた。
「だから、アビはこのスキルのことをアルゼとメル以外に言ったことがないのですよ? ポーターとはダンジョンに潜るときだけ一緒に行く関係で、それが終わればいつもパーティーからさよならされるのですよー」
「お前……なんでそんな大事なスキルのこと、俺たちに話したんだ? 勘とか金の匂いとか言ってたけど、それだけじゃないんだろ?」
「確かにそれがすべてではないですけど……そうですねー、アビは――」
◆◇◆
「ふぅ……ついにここまで来たな」
俺たちは先ほど9層のボスを倒し、ついに最高到達点の10層に来ていた。
「本当にどんどん強くなってるのですよ? わけがわからない速度なのですよー」
アビからすればその感想を抱くのも当然だ。俺自身スキルも増えてレベルも上がり、次は10層だというのにまだ余裕があるように思える。
「ま、優秀な相棒とポーターのお陰かな?」
「そ、そんな、優秀だなんて……」
「褒めたって肉しかでないのですよー」
2人とも満更でもない様子だ。
「しかし、ここまで来たらこの階層の記録を越えてみたいな。どこら辺まで進んでるんだろう」
「まったく進んでないのですよ? 10階層に到達した後に諦めたそうなので、このまま進めば記録更新ですよー」
「え、そうなのか? 諦めたってことは、この先は結構危険だと判断したのか」
「おそらくそうだと思いますよー」
「そうか……俺たちも無理だと思ったらすぐに引き返そう。ここまで来れただけでも上出来だからな」
「はい、アルゼ様!」
「わかったのですよー」
俺たちはこれまで以上に慎重に進むことにした。
1層を攻略し始めた時の俺たち……というか俺ならば、この10階層の魔物を倒すのはかなり難しかっただったろう。
だけど、今の俺はレベルが26になり、スキルもありえないほどの量を持っている。
――このまま行けば本当に踏破できるんじゃないか?
そんなことすら思えるほど、サクサクとここまで進んできた。
「あれ? またボス部屋か?」
これまでボス部屋は3、6、9と3階層ごとにあった。
10層は次に進むための層だと思っていたが、俺たちの目の前には大きな黒い扉があった。
――今までで1番大きいな。
「いえ、ボスはボスでも、これはダンジョンボスだと思うのですよ?」
「このボスを倒したら終わりってことですか?」
「多分そうなのですよー」
「マジか……!」
俺は、松明に照らされた物々しい雰囲気の扉を見上げるのだった。
「なんですかー?」
「俺たちEランクとFランクの冒険者なんだが、こんな順調に来れるもんなのか?」
俺はアビに純粋な疑問を投げかけた。
なぜなら、今この階層は『8』なのだ。6層のボスも難なく倒し、ここまでアビのアドバイスもあってか、苦戦という苦戦をした記憶もなかった。
今の最高到達が10層なので、7層あたりからは他の冒険者にすら出会っていなかった。
「いえ、あなたたち異常なのですよー」
「おい、さらっと毒吐くんじゃない」
「そうですよ、アビ。アルゼ様が強いだけですよ」
「いやお前も大概強すぎだからな、メル」
メルは本気で俺のおかげと思ってるのか、首を傾げて「私なんて大したことないです!」と言うのだった。
「2人ともどんどん強くなってるのですよ? ここから先はアビも進んだことがないので、聞いた情報を頼りに行くしかないですよー。それとも、引き返しますかー?」
正直、ここまででかなり金を稼ぐことはできてるし、スキルや経験値も十分に獲得できている。
いったん地上に戻るというのも間違ってないと思うが、
「いや、もう少し、いけるところまで進んでみよう」
俺は「やっぱり冒険者なんだな」と、苦笑いした。
「どうかしましたか、アルゼ様?」
そんな俺を不思議に思ったメルが、ひょこっと顔を覗いてくる。
「いや、やっぱり俺も冒険者なんだなって思ったのさ。なんだかんだ、まだいけるのならいってみたい気持ちがあるみたいだ。最初は金稼ぎがある程度できればいいと思ってたんだけどな」
「アルゼ様は、いずれ世界一の冒険者になるとメルは信じてます。だから、そう思うのは当然のことです!」
「ははっ、世界一か。そしたらメルは世界二か?」
「はい! メルはアルゼ様のお隣に立つのに相応しくなるために、世界で2番目の冒険者になるのです」
一つも疑うことのない瞳でまっすぐ見てくるメル。彼女がそう言うのなら、本当にそうなれそうな気がしてくる。
「……おーおー、若人は夢が大きくていいですねー。アビには眩しすぎるのですよー」
「お前も若いだろ……アビには夢はないのか?」
「……夢なんて、野良ポーターのアビにあるわけないのですよー」
アビはどこか寂しそうに言った。
「そういえば……どうして野良のままなんだ?」
これまであえて触れてこなかった部分を、いい機会だと思って俺は聞いてみた。
「……ギルド所属のポーターはスキルを開示しなければいけないのですよー。アビのようなスキルを馬鹿正直に申告したら、悪い奴らがアビを捕まえるに決まってるのですよー」
「いや、さすがにそれは極端じゃないか? ギルドだって守って――」
「アビのお兄ちゃんは連れ去られたのですよ?」
「――っ」
俺はアビの言葉に絶句してしまった。メルも驚いて「え――」と言葉を失っている。
「お兄ちゃんもアビほどのスキルではないけど、『特殊スキル』持ちのポーターだったのですよー。でもある時、お兄ちゃんのスキルの話を聞きつけたクソどもに連れ去られてしまって、最後には囮にされて逃げられたのですよ……」
アビの耳はぺたりと垂れ、悲しそうな声で俯いた。
「だから、アビはこのスキルのことをアルゼとメル以外に言ったことがないのですよ? ポーターとはダンジョンに潜るときだけ一緒に行く関係で、それが終わればいつもパーティーからさよならされるのですよー」
「お前……なんでそんな大事なスキルのこと、俺たちに話したんだ? 勘とか金の匂いとか言ってたけど、それだけじゃないんだろ?」
「確かにそれがすべてではないですけど……そうですねー、アビは――」
◆◇◆
「ふぅ……ついにここまで来たな」
俺たちは先ほど9層のボスを倒し、ついに最高到達点の10層に来ていた。
「本当にどんどん強くなってるのですよ? わけがわからない速度なのですよー」
アビからすればその感想を抱くのも当然だ。俺自身スキルも増えてレベルも上がり、次は10層だというのにまだ余裕があるように思える。
「ま、優秀な相棒とポーターのお陰かな?」
「そ、そんな、優秀だなんて……」
「褒めたって肉しかでないのですよー」
2人とも満更でもない様子だ。
「しかし、ここまで来たらこの階層の記録を越えてみたいな。どこら辺まで進んでるんだろう」
「まったく進んでないのですよ? 10階層に到達した後に諦めたそうなので、このまま進めば記録更新ですよー」
「え、そうなのか? 諦めたってことは、この先は結構危険だと判断したのか」
「おそらくそうだと思いますよー」
「そうか……俺たちも無理だと思ったらすぐに引き返そう。ここまで来れただけでも上出来だからな」
「はい、アルゼ様!」
「わかったのですよー」
俺たちはこれまで以上に慎重に進むことにした。
1層を攻略し始めた時の俺たち……というか俺ならば、この10階層の魔物を倒すのはかなり難しかっただったろう。
だけど、今の俺はレベルが26になり、スキルもありえないほどの量を持っている。
――このまま行けば本当に踏破できるんじゃないか?
そんなことすら思えるほど、サクサクとここまで進んできた。
「あれ? またボス部屋か?」
これまでボス部屋は3、6、9と3階層ごとにあった。
10層は次に進むための層だと思っていたが、俺たちの目の前には大きな黒い扉があった。
――今までで1番大きいな。
「いえ、ボスはボスでも、これはダンジョンボスだと思うのですよ?」
「このボスを倒したら終わりってことですか?」
「多分そうなのですよー」
「マジか……!」
俺は、松明に照らされた物々しい雰囲気の扉を見上げるのだった。
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