21 / 62
第3章 『ダンジョンとポーター』
19.新しい仲間
しおりを挟む
俺の前にメル、そして後ろにはアビという並びでレイスを見る。
「アルゼ様」
「ああ、頼んだ」
メルの呼びかけに応じると、
「――《一鬼当千》!」
スキルを解き放ったメルの周囲にブワッと衝撃が走る。まだレイスは反応していない。
メルは「いきます」と小さく宣言し、
「フッ――!」
地面が抉れるほどの強さで蹴り出したメルは、一瞬でレイスとの距離を詰める。
「オオォォォォオオオ――」
レイスもメルを認識し、攻撃対象としてロックオンした。
だがそれ以上に早いメルは、
「ハァッ!」
レイスを斬りつけるも、一瞬だけその斬撃で身体が切れたように見えたが、すぐに元の形に戻っていた。やはり、アビの言う通り物理は無効のようだ。
「【エアカッター】!」
俺はメルがレイスから離れたのを見て、すぐさま《風魔法》の【エアカッター】を放った。
「これもダメ……か」
結果は【エアカッター】も斬撃と同じだった。
物理もダメ、魔法もダメ……俺は先ほどメルとアビに言った『試したいこと』をやるため、
「メル! 少し時間を稼いでくれ!」
確実に当てるため、メルにレイスの敵対心を稼いでもらう。
「はい! わかりました!」
メルは時折レイスに近付いて剣を振るうが、基本は《一鬼当千》で身体能力を上げたまま逃げてレイスを引き付けた。
俺はその様子を見ながら、少しずつレイスに近付く。
この《特殊スキル:聖なる癒し》を確実に当てるために。
「よし……」
あまり近付き過ぎても、こっちにヘイトが向いてしまうので、外すことはないと思う距離で立ち止まる。
俺はアビから『レイスには聖属性しか効かない』と聞いたときに、真っ先に浮かんだのが《聖なる癒し》だ。
本来は回復するスキルなのだが、これならもしやレイスにダメージを与えられるのではないかと。
――ま、もしダメだったら……その時はその時だな。
そうなったら、いよいよ覚悟を決めなければならない。
だからそうならないためにも、俺は天にも祈る気持ちで、
「――《聖なる癒し》!!」
《特殊スキル:聖なる癒し》をレイスに向けて放った。
レイスは、白く強く光り輝き――、
「オオォォォオォオォォォォォ……」
シュウウゥゥッという音とともに消えた。
「よっし!!」
「一撃だなんてすごすぎです! アルゼ様!!」
メルの黄色い歓声が聞こえる。
「メルこそ危ない役目を押し付けて悪かったな。助かったよ。メルの陽動がなかったら失敗してたかもしれないからな」
俺はメルに近づき、優しく頭を撫でた。
「えへへ」
目を細めて喜ぶメルを見ながら「あれ? 大人しいな」と思いながら後ろを振り返ると、
「意味がわからないのですよ……??」
混乱した表情のアビが、ただ1人この状況を理解出来ずに立ち尽くしていた。
◆◇◆
「つまり、アルゼは《特殊スキル:大喰らい》というスキルが原因で2度追放されて、ホーリーベアから《聖なる癒し》を奪って、奴隷商で購入したメルの身体の回復と解呪を行った……ということです?」
「ま、そういうことだな」
俺はアビにこれまでのことを一から説明した。
今後、彼女とともにするのなら、しっかり知っていてもらったほうがいろいろ都合がいいからだ。
「なんでそんな『さも当然』みたいな顔してるかわからないのですよ……」
「いや、そう言われてもな……俺も最初は驚きの連続だったけど悪いことじゃないし、今ではもう喜んで受け入れたよ」
「しかも《追い剥ぎ》というスキルも、聞く限りじゃとんでもないスキルなのですよー。あ、もしかして、アルゼがダンジョンで倒した魔物に触れてたのもそのせいなのです?」
「ご明察。今まで黙っててすまなかったな」
「いえ、それは別にいいのですよー。むしろそれが普通だと思うのですよ? アビは気にしてないのですよー」
「そう言ってもらって助かる」
アビ自身、人になかなか言うことのできないスキルを持っていたのもあって、俺がすぐには打ち明けられなかったことも理解してくれた。
「アビ」
「はいですよー」
「俺たちの仲間になってくれるか?」
俺はアビを正式に仲間に誘った。
「……アビは戦うことはできないのですよ?」
「ああ、知ってる」
「アビは……」
「大丈夫ですよ、アビ」
不安の言葉を紡ぐアビに、メルが優しく語り掛ける。
「アルゼ様はとてもお優しい方です。アビのことをしっかり考えてくれてますよ? だから安心してください。一緒に行きましょう!」
「――っ、わかったのですよ。アビも……2人と一緒に行きたいのですよ!」
「歓迎するよ、アビ。これからもよろしくな!」
「改めてよろしくお願いしますね、アビ」
「よろしくですよー!」
俺たちの言葉に、アビは弾けたような笑顔をした。
「さて、それじゃあ……」
俺はレイスがいた場所よりも奥を見やる。
そこにはダンジョンボスを攻略した――、
「宝箱なのですよー!」
アビは一目散に宝箱へと向かうのだった。
「アルゼ様」
「ああ、頼んだ」
メルの呼びかけに応じると、
「――《一鬼当千》!」
スキルを解き放ったメルの周囲にブワッと衝撃が走る。まだレイスは反応していない。
メルは「いきます」と小さく宣言し、
「フッ――!」
地面が抉れるほどの強さで蹴り出したメルは、一瞬でレイスとの距離を詰める。
「オオォォォォオオオ――」
レイスもメルを認識し、攻撃対象としてロックオンした。
だがそれ以上に早いメルは、
「ハァッ!」
レイスを斬りつけるも、一瞬だけその斬撃で身体が切れたように見えたが、すぐに元の形に戻っていた。やはり、アビの言う通り物理は無効のようだ。
「【エアカッター】!」
俺はメルがレイスから離れたのを見て、すぐさま《風魔法》の【エアカッター】を放った。
「これもダメ……か」
結果は【エアカッター】も斬撃と同じだった。
物理もダメ、魔法もダメ……俺は先ほどメルとアビに言った『試したいこと』をやるため、
「メル! 少し時間を稼いでくれ!」
確実に当てるため、メルにレイスの敵対心を稼いでもらう。
「はい! わかりました!」
メルは時折レイスに近付いて剣を振るうが、基本は《一鬼当千》で身体能力を上げたまま逃げてレイスを引き付けた。
俺はその様子を見ながら、少しずつレイスに近付く。
この《特殊スキル:聖なる癒し》を確実に当てるために。
「よし……」
あまり近付き過ぎても、こっちにヘイトが向いてしまうので、外すことはないと思う距離で立ち止まる。
俺はアビから『レイスには聖属性しか効かない』と聞いたときに、真っ先に浮かんだのが《聖なる癒し》だ。
本来は回復するスキルなのだが、これならもしやレイスにダメージを与えられるのではないかと。
――ま、もしダメだったら……その時はその時だな。
そうなったら、いよいよ覚悟を決めなければならない。
だからそうならないためにも、俺は天にも祈る気持ちで、
「――《聖なる癒し》!!」
《特殊スキル:聖なる癒し》をレイスに向けて放った。
レイスは、白く強く光り輝き――、
「オオォォォオォオォォォォォ……」
シュウウゥゥッという音とともに消えた。
「よっし!!」
「一撃だなんてすごすぎです! アルゼ様!!」
メルの黄色い歓声が聞こえる。
「メルこそ危ない役目を押し付けて悪かったな。助かったよ。メルの陽動がなかったら失敗してたかもしれないからな」
俺はメルに近づき、優しく頭を撫でた。
「えへへ」
目を細めて喜ぶメルを見ながら「あれ? 大人しいな」と思いながら後ろを振り返ると、
「意味がわからないのですよ……??」
混乱した表情のアビが、ただ1人この状況を理解出来ずに立ち尽くしていた。
◆◇◆
「つまり、アルゼは《特殊スキル:大喰らい》というスキルが原因で2度追放されて、ホーリーベアから《聖なる癒し》を奪って、奴隷商で購入したメルの身体の回復と解呪を行った……ということです?」
「ま、そういうことだな」
俺はアビにこれまでのことを一から説明した。
今後、彼女とともにするのなら、しっかり知っていてもらったほうがいろいろ都合がいいからだ。
「なんでそんな『さも当然』みたいな顔してるかわからないのですよ……」
「いや、そう言われてもな……俺も最初は驚きの連続だったけど悪いことじゃないし、今ではもう喜んで受け入れたよ」
「しかも《追い剥ぎ》というスキルも、聞く限りじゃとんでもないスキルなのですよー。あ、もしかして、アルゼがダンジョンで倒した魔物に触れてたのもそのせいなのです?」
「ご明察。今まで黙っててすまなかったな」
「いえ、それは別にいいのですよー。むしろそれが普通だと思うのですよ? アビは気にしてないのですよー」
「そう言ってもらって助かる」
アビ自身、人になかなか言うことのできないスキルを持っていたのもあって、俺がすぐには打ち明けられなかったことも理解してくれた。
「アビ」
「はいですよー」
「俺たちの仲間になってくれるか?」
俺はアビを正式に仲間に誘った。
「……アビは戦うことはできないのですよ?」
「ああ、知ってる」
「アビは……」
「大丈夫ですよ、アビ」
不安の言葉を紡ぐアビに、メルが優しく語り掛ける。
「アルゼ様はとてもお優しい方です。アビのことをしっかり考えてくれてますよ? だから安心してください。一緒に行きましょう!」
「――っ、わかったのですよ。アビも……2人と一緒に行きたいのですよ!」
「歓迎するよ、アビ。これからもよろしくな!」
「改めてよろしくお願いしますね、アビ」
「よろしくですよー!」
俺たちの言葉に、アビは弾けたような笑顔をした。
「さて、それじゃあ……」
俺はレイスがいた場所よりも奥を見やる。
そこにはダンジョンボスを攻略した――、
「宝箱なのですよー!」
アビは一目散に宝箱へと向かうのだった。
1
あなたにおすすめの小説
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
追放された回復術師は、なんでも『回復』できて万能でした
新緑あらた
ファンタジー
死闘の末、強敵の討伐クエストを達成した回復術師ヨシュアを待っていたのは、称賛の言葉ではなく、解雇通告だった。
「ヨシュア……てめえはクビだ」
ポーションを湯水のように使える最高位冒険者になった彼らは、今まで散々ポーションの代用品としてヨシュアを利用してきたのに、回復術師は不要だと考えて切り捨てることにしたのだ。
「ポーションの下位互換」とまで罵られて気落ちしていたヨシュアだったが、ブラックな労働をしいるあのパーティーから解放されて喜んでいる自分に気づく。
危機から救った辺境の地方領主の娘との出会いをきっかけに、彼の世界はどんどん広がっていく……。
一方、Sランク冒険者パーティーはクエストの未達成でどんどんランクを落としていく。
彼らは知らなかったのだ、ヨシュアが彼らの傷だけでなく、状態異常や武器の破損など、なんでも『回復』していたことを……。
クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした
コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。
クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。
召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。
理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。
ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。
これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~
空月そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」
「何てことなの……」
「全く期待はずれだ」
私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。
このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。
そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。
だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。
そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。
そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど?
私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。
私は最高の仲間と最強を目指すから。
スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる