2度追放された転生元貴族 〜スキル《大喰らい》で美少女たちと幸せなスローライフを目指します〜

フユリカス

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第4章 『王都と成り上がり』

24.一騎討ち

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 衛兵から「あの太っちょは執念深いから気をつけろよ」とアドバイスをもらい、無事王都に入ることができた。

「ふぅ、結構時間かかったなぁ。メル? もう大丈夫か?」

「はい、アルゼ様!」

 あの後、列で待ってる間に俺とアビでいろいろ話したことによって、大分落ち着きを取り戻していた。
 だけど――、

「無理はするなよ? 何かあったら俺かアビに相談してくれよな」

 若干、自然体ではないように見えた。

「――はい、ありがとうございます!」

「そうなのですよー。アビは口で、アルゼは剣で守ってあげるのですよ?」

 えっへんとするアビに、メルは苦笑いで頭をなでてあげた。

「そうならないのが1番いいんだけどな。さて、冒険者ギルドに行ってから食事にでもするか」

「はい、わかりました」

「はいですよー」

 俺たちは大通りとなる王都ならではの賑わう街並みを見ながら歩いた。
 さすがに人も物も多く、広い道だというのに混雑していた。

「あ! アルゼ様、あそこにありました!」

 メルが指を差しながら教えてくれた。

「おー、ニューリアの冒険者ギルドとは全然大きさが違うのですよー」

 アビの言うように、俺が見てきた冒険者ギルドの2倍はある大きさだった。
 これだけ街の中に人が溢れてるのだから、依頼をこなす冒険者たちも多いのだろう。
 俺たちが中に入ると、

「こりゃすげぇ……」

 中はホールのように広くて天井も高く、隣には酒場ももちろんあり、冒険者が大勢いた。
 普通、昼の時間帯は依頼に出ているのでギルドの中も閑散とすることも多いが、そこはさすが王都というか街の中のように混雑していた。

「迷子にならないようにしっかり付いてきてくれよ」

 俺はそう言って受付カウンターに移動し、

「王都で登録を頼む」

「かしこまりました。Bランクのアルゼ様とメル様ですね。少々お待ちください」

 受付嬢はカードを持って奥へと行った。
 俺たちはダンジョンを踏破したことにより、一気にBランクにまでなっていた。
 本来ならここまで上がることはないようなのだが、これまで1度も踏破されてないダンジョンを踏破したことが評価されたみたいだ。

「ようよう、聞いたか? あのニューリアにある『不死の宵闇』が踏破されたんだってよ」

「あぁ、聞いた聞いた。俺もここに来る前に挑んだことあるけどよ、あれクリアするなんて人間業じゃねぇよ。いったいどんな奴らがクリアしたんだろうな」

「なんでも、冴えない男とその奴隷の女の2人だけらしいぞ? あとはポーターがいるくらいで、ランクも低かったって聞いたぞ」

「はぁ? それじゃあ実質2人でクリアしたってことかよ? そんなのありえるわけないだろ!」

 後ろからそんな会話が聞こえてきた。
 よく耳を傾けてみれば、ダンジョンの話題はいろいろなところで上がっているようだった。

「やはり未踏破のダンジョンを踏破したとなると、王都でもその話題で持ちきりになるみたいですね」

「あぁ、どうやらそうみたいだな。面倒くさいことになりたくないし、2人とも黙っててくれよ?」

「お任せください!」

「アルゼは変わってるのですねー。普通の冒険者なら、力を誇示するために自ら喧伝するのですよ?」

「アビ、それはアルゼ様が一般の冒険者とは違う存在だからなのですよ!」

 なぜかメルがアビに威張るように大きな胸を張った。

「そこでなぜメルが偉そうにしてるのかが、アビには意味不明なのですよー……」

 俺がメルの頭をなでていると、

「お、お待たせしました!」

 なぜか慌てた様子で受付嬢が戻ってきた。

「アルゼ様とメル様は『不死の宵闇』を踏破された方々だったのですね!」

 受付嬢のよく通る声は、このホールのようなギルドの中でも端まで届くほどだったようで、一瞬にして静まり返った。

「はぁ……」

 俺のため息だけがよく聞こえた。

「あ、あれ? また私何かやっちゃいました?」

 受付嬢は周りの様子にオロオロしだすのだった。

「……いや、いい。カードもらえるか?」

「あ、はい。あの、私、新人の『ミゼ』といいます……。たまにこうやって何かやらかして怒られることがあるんです……すみません」

 ミゼは申し訳なさそうに頭を下げた。

「まぁ、気にしないでくれ。君も悪気があったわけじゃないだろうし――」

「おい、お前」

 突然、横から大柄な男が声を掛けてきた。

「……何か用か?」

 内心、ちょっとうんざりした気分になりながら俺は返した。

「『不死の宵闇』を踏破したってのは本当か?」

「ああ、まあそうだな」

 俺がなんとなしに答えると、

「俺が精鋭のパーティーを組んで挑んでもダメだったあのダンジョンに、たった2人で踏破したっていうのか!?」

 男は険しい表情でそう叫んだ。

「そうだな。あと一応言っとくが、戦闘は確かに俺たち2人だけど、このアビがポーターをしてくれたおかげでもあるぞ」

「ポーターなんて関係ねぇ!! そんなことより、その姿ナリで踏破だと……? 納得いかねぇ! この俺と一騎討ちしろ!」

「どうしてそんな話になるんだ。お前と一騎討ちする意味がわからん」

「お前が嘘をついているかもしれないだろうが。本当は別に踏破した奴がいて、そいつを卑怯な手で殺したのかもしれないだろ?」

「アルゼ様はそんなことしません! 取り消してください!」

 メルが男に怒りを露わにした。

「そうなのですよー。それにニューリアでは目撃者がいっぱいいるのですよ? 気になるなら勝手に確かめに行けばいいのですよー」

 アビも珍しく不愉快そうな顔で冷たく言い放った。

「はっ! そんな面倒なことしなくても、一騎討ちで実力を測れば一発なんだよ。おい。逃げるなんてしないよな?」

 男の言葉に周りも「言われてみればそうかもしれないな」と、俺を疑う声が聞こえ始める。
 正直、そんな声を無視してもいいとは思うのだが、これから先ずっと後ろ指を差されるのも嫌だったので、

「はぁ、しかたない。お前こそ後で恨むなよ?」

 俺は一騎討ちを受けることにしたのだった。
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