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第4章 『王都と成り上がり』
49.黒いナニカ
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「あ……が、は……ッ! この、俺……が……無能……に……」
レオの身体には、俺が斬りつけた大きな傷から大量の血が流れ出している。
まだ生きているかもしれないが……、
「……《追い剥ぎ》」
『《派生スキル:追い剥ぎ》が発動し、スキル《双剣士》を獲得しました。レベルがアップしました』
レオの持っていた《双剣士》を奪うことができた。
《追い剥ぎ》が発動したということは、どうやらレオは死んだようだ。
まさか元仲間に手を掛けることになるとは思っていなかったが、元はと言えばレオが悪の道に堕ちたばかりにこうなったわけだし、これ以上気に病む必要もないだろう。
「すごい……すごいわ、アルゼっ!」
「うわっ――とと……」
レティアは少し興奮気味に抱きついてきた。
「回復スキルも使えちゃうし、《賢者》の私でも手こずってた相手をこんなに倒しちゃうなんて……やっぱりアルゼは本当に強いのね!」
「レティア……ありがとう。だけど――」
俺はメルのほうを見る。少しずつだが、疲れのせいかメルが後手に回っているようだった。
「このままだとメルが危ない。ここで待っててくれるか?」
「そうね。あの子、すごくいい子ね」
「だろう?」
「うん。だから、しっかり助けてあげてね!」
「ああ、まかせろ」
俺は効果が切れてしまった《駿足》を再度発動し、
「メル、交代だ!」
戦っている2人の間に割り込む。
「アルゼ様!」
「チッ、お前の相手はどうした?」
「レオは……俺が倒した」
「なに!?」
ルイは飛び退って距離を取り、レオのほうを見る。だが、そこにはもう物言わぬ死体があるだけだった。
「くっ……本当に使えない奴らだったな。まったく、結局こうなるのなら初めからこんな奴らに頭を下げて、ムカつく思いなんてする必要なかったぜ」
「……少しの間でも一緒にいた仲間だったんだろ? さっきガストやレイラが死んだと聞かされた時の態度もそうだったけど、お前は自分に対する損得でしか考えられないのか?」
「ふん、それこそが貴族だ。損得勘定を抜きにして人と関わるなんてありえないんだよ」
「かわいそうな人間だよ、お前は」
「お前みたいなクソ無能が偉そうにするなッ!! ちょっと強くなったからって、調子に乗ってんじゃねぇ!!」
俺には、ルイが貴族社会に囚われたかわいそうな人間にしか見えなくなってきた。
きっと、これからもこうして人を自分にとっての価値でしか判断しない人生を送るのだろうか。
ルイはそれでいいのかもしれないが、そこにはたくさんの不幸な人が生まれるはずだ。今の王都のように。
そんなことになるくらいならば――。
「メル、剣を貸してくれ」
「は、はい、でも……アルゼ様、一緒に戦ったほうがいいのでは……」
「すまんな。こいつとの決着は俺1人でつけさせてくれ」
俺はメルから剣を受け取り、両手に剣を持って構えた。
「……なんのつもりだ? あのゴミのマネか?」
ルイはレオのことをゴミ扱いして、冷めた目つきで俺を見た。
「仮にもさっきまで仲間だったやつをゴミ呼ばわりか……俺が兄として、責任をもって終わらせてやる」
「なにが兄としてだ、この無能が。お前を兄と思ったことなんて1度もないんだよ! その鬱陶しい口をとっとと閉じやがれ――ッ!」
ルイは猛烈なスピードで俺に接近し、
「死ねぇ――ッ!!」
「――《見切り》、《剛力》、《頑丈》」
俺は2本の剣をクロスして、真正面からルイの剣を防いだ。
「なんだとッ!?」
「双剣も使って、ここまで強化すればお前の剣を力ずくで防ぐこともできるようだな……!」
これまでは《見切り》を使ってルイの剣撃を躱すしかなかった。だが、《双剣士》で2本の剣を扱えるようになり、スキルで自身を強化すれば、《剣聖》ともまともにやりあえるようになったのだ。
――この成果は大きい……!
「【ウインドアタック】!」
「がっ……!」
さらに俺にはルイと違い、《風魔法》だけだが魔法を使えることができる。
そう考えれば、実質2人分の力を持っているようなものだ。
「《突進》――うおぉッ!」
今度は俺がルイとの距離を詰め、両手に持った剣を一切の手加減なく叩きつけるように振り下ろした。
「ぐぅ……っ」
ルイは1本の剣で辛うじて防いだが、俺はさらに追撃する。
「《威圧》!」
「う……」
「からの……《体当たり》!」
「――あがぁァツ!?!」
怯んだルイの顔面目掛けて《体当たり》をすると、歯が折れる音とゴキンッっと鈍い音がして後ろへ吹っ飛んだ。
「ぐっ、グソがッ――あ?」
ルイは地面を転げるもすぐに起き上がり剣を構えた。が、そこに俺はいない。
「こっちだ」
「あ? ぁ――」
俺は《駿足》でルイの後ろへ回り込み、
「ルイ、さよならだ」
「や、やめ――」
「――《ドラゴンブレス》!!」
大きく開けた俺の口から、まるで本物のドラゴンのような灼熱のブレスが放たれた。
「ぎゃああぁぁぁぁああああ――――ッッ!?!」
ルイは瞬く間に炎に包まれ大きな叫び声を上げたが、それはすぐに聞こえなくなる。
助けを求めるように伸びた手はむなしく空を切り、そのうちにばたりと倒れてしまった。
炎が消え、そこに残ったものは、黒く焦げたにおいのするナニカだった。
「……《追い剥ぎ》」
『《派生スキル:追い剥ぎ》が発動し、《特殊スキル:剣聖》を獲得しました。レベルがアップしました』
俺はその黒くなってしまったナニカを、ただじっと見つめるのだった。
レオの身体には、俺が斬りつけた大きな傷から大量の血が流れ出している。
まだ生きているかもしれないが……、
「……《追い剥ぎ》」
『《派生スキル:追い剥ぎ》が発動し、スキル《双剣士》を獲得しました。レベルがアップしました』
レオの持っていた《双剣士》を奪うことができた。
《追い剥ぎ》が発動したということは、どうやらレオは死んだようだ。
まさか元仲間に手を掛けることになるとは思っていなかったが、元はと言えばレオが悪の道に堕ちたばかりにこうなったわけだし、これ以上気に病む必要もないだろう。
「すごい……すごいわ、アルゼっ!」
「うわっ――とと……」
レティアは少し興奮気味に抱きついてきた。
「回復スキルも使えちゃうし、《賢者》の私でも手こずってた相手をこんなに倒しちゃうなんて……やっぱりアルゼは本当に強いのね!」
「レティア……ありがとう。だけど――」
俺はメルのほうを見る。少しずつだが、疲れのせいかメルが後手に回っているようだった。
「このままだとメルが危ない。ここで待っててくれるか?」
「そうね。あの子、すごくいい子ね」
「だろう?」
「うん。だから、しっかり助けてあげてね!」
「ああ、まかせろ」
俺は効果が切れてしまった《駿足》を再度発動し、
「メル、交代だ!」
戦っている2人の間に割り込む。
「アルゼ様!」
「チッ、お前の相手はどうした?」
「レオは……俺が倒した」
「なに!?」
ルイは飛び退って距離を取り、レオのほうを見る。だが、そこにはもう物言わぬ死体があるだけだった。
「くっ……本当に使えない奴らだったな。まったく、結局こうなるのなら初めからこんな奴らに頭を下げて、ムカつく思いなんてする必要なかったぜ」
「……少しの間でも一緒にいた仲間だったんだろ? さっきガストやレイラが死んだと聞かされた時の態度もそうだったけど、お前は自分に対する損得でしか考えられないのか?」
「ふん、それこそが貴族だ。損得勘定を抜きにして人と関わるなんてありえないんだよ」
「かわいそうな人間だよ、お前は」
「お前みたいなクソ無能が偉そうにするなッ!! ちょっと強くなったからって、調子に乗ってんじゃねぇ!!」
俺には、ルイが貴族社会に囚われたかわいそうな人間にしか見えなくなってきた。
きっと、これからもこうして人を自分にとっての価値でしか判断しない人生を送るのだろうか。
ルイはそれでいいのかもしれないが、そこにはたくさんの不幸な人が生まれるはずだ。今の王都のように。
そんなことになるくらいならば――。
「メル、剣を貸してくれ」
「は、はい、でも……アルゼ様、一緒に戦ったほうがいいのでは……」
「すまんな。こいつとの決着は俺1人でつけさせてくれ」
俺はメルから剣を受け取り、両手に剣を持って構えた。
「……なんのつもりだ? あのゴミのマネか?」
ルイはレオのことをゴミ扱いして、冷めた目つきで俺を見た。
「仮にもさっきまで仲間だったやつをゴミ呼ばわりか……俺が兄として、責任をもって終わらせてやる」
「なにが兄としてだ、この無能が。お前を兄と思ったことなんて1度もないんだよ! その鬱陶しい口をとっとと閉じやがれ――ッ!」
ルイは猛烈なスピードで俺に接近し、
「死ねぇ――ッ!!」
「――《見切り》、《剛力》、《頑丈》」
俺は2本の剣をクロスして、真正面からルイの剣を防いだ。
「なんだとッ!?」
「双剣も使って、ここまで強化すればお前の剣を力ずくで防ぐこともできるようだな……!」
これまでは《見切り》を使ってルイの剣撃を躱すしかなかった。だが、《双剣士》で2本の剣を扱えるようになり、スキルで自身を強化すれば、《剣聖》ともまともにやりあえるようになったのだ。
――この成果は大きい……!
「【ウインドアタック】!」
「がっ……!」
さらに俺にはルイと違い、《風魔法》だけだが魔法を使えることができる。
そう考えれば、実質2人分の力を持っているようなものだ。
「《突進》――うおぉッ!」
今度は俺がルイとの距離を詰め、両手に持った剣を一切の手加減なく叩きつけるように振り下ろした。
「ぐぅ……っ」
ルイは1本の剣で辛うじて防いだが、俺はさらに追撃する。
「《威圧》!」
「う……」
「からの……《体当たり》!」
「――あがぁァツ!?!」
怯んだルイの顔面目掛けて《体当たり》をすると、歯が折れる音とゴキンッっと鈍い音がして後ろへ吹っ飛んだ。
「ぐっ、グソがッ――あ?」
ルイは地面を転げるもすぐに起き上がり剣を構えた。が、そこに俺はいない。
「こっちだ」
「あ? ぁ――」
俺は《駿足》でルイの後ろへ回り込み、
「ルイ、さよならだ」
「や、やめ――」
「――《ドラゴンブレス》!!」
大きく開けた俺の口から、まるで本物のドラゴンのような灼熱のブレスが放たれた。
「ぎゃああぁぁぁぁああああ――――ッッ!?!」
ルイは瞬く間に炎に包まれ大きな叫び声を上げたが、それはすぐに聞こえなくなる。
助けを求めるように伸びた手はむなしく空を切り、そのうちにばたりと倒れてしまった。
炎が消え、そこに残ったものは、黒く焦げたにおいのするナニカだった。
「……《追い剥ぎ》」
『《派生スキル:追い剥ぎ》が発動し、《特殊スキル:剣聖》を獲得しました。レベルがアップしました』
俺はその黒くなってしまったナニカを、ただじっと見つめるのだった。
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