2度追放された転生元貴族 〜スキル《大喰らい》で美少女たちと幸せなスローライフを目指します〜

フユリカス

文字の大きさ
59 / 62
第4章 『王都と成り上がり』

56.功績

しおりを挟む
「グルオオオオオォォォォォン――ッ!?!」

 逆鱗を突き刺すと、エンシェントドラゴンはこれまでとは違った反応を示した。
 目は明らかに混乱したようにおかしくなっており、狂ったように身体を動かし始め、叫び声を荒げた。

「アルゼ! さすがだ、よくやった!!」

「エクエスさん、ここも危険です! もう少し離れましょう!」

 転げ回り飛び跳ねるように苦しむエンシェントドラゴンに、俺たちは距離を取ってその様子を眺めた。
 兵士たちが壺を壊したせいか、ただ単に逆鱗を突かれたことで苦しんでるせいかわからないが、ドラゴンの目は先ほどまでの洗脳されたような目ではなかった。

「グオオオオォォォオオオ――――ッ!!!」

 そうしてる内に、エンシェントドラゴンはひと際大きな叫び声にも似た雄叫びを上げ、飛び立った。

「おぉ……エンシェントドラゴンが離れていく……」

「これは……終わったんですかね……?」

 大きな翼をはためかせ、エンシェントドラゴンは逃げるようにテオス山の方へ向かって飛んでいった。

「お、終わった……終わったんだ……!」

「おおぉぉ……やっと、俺は家に帰れるんだ!」

 遠巻きに見ていた兵士たちは、悲鳴にも似た歓声を上げた。

「アルゼ様!」

「アルゼ!」

「メル! レティア!」

 それぞれ壺を破壊しに行っていた2人が戻ってきた。

「――うぉ!?」

 メルとレティアの2人はほぼ同時に飛びつき、俺は倒れそうになりながらもなんとか2人を抱きとめた。

「アルゼ様、ご無事でしたか!? メルは心配で心配で……っ」

「そうよ! もうっ、心配したじゃないの!」

「2人とも……」

 メルは心配そうな顔をしており、レティアもまた怒ったような顔をしていたが、2人とも少し目を潤ませていた。
 きっと、本当に俺のことを心配していてくれたんだろう……。

「お、やっぱり無事だったのですよー。アビの言う通りだったのですよ? えっへん!」

「アルゼ様……たしかにアビさんの言った通り、見事にエンシェントドラゴンを撃退してしまいましたね。さすがアルゼ様です」

「アビとシンシアも無事でよかったよ。壺は壊せたのか?」

「冒険者と衛兵に協力してもらっていっぱい壊してもらったですよー。テオス山にも仕掛けられてたのですよ?」

「貴族街にもたくさんありましたが、おそらくすべて壊せたと思います」

「ご苦労さま。大変だったろう」

 彼女たちはあの後、王都とテオス山の中を危険な状況の中走り回って役目を果たしてくれた。
 街中にいたのはエンシェントドラゴンだけでなく、小さな魔獣からレッサードラゴンまでいただろうが、これでなんとか解決に向かうことができるだろう。

「私からも礼を言わせていただこう。王国騎士団団長として、国のために尽力してくれたことに感謝する。君たちのお陰でこの国は守られ、多くの民も救われたのだ」

 エクエスさん、そして彼の配下の兵士が揃って感謝を表した。

「あら? エクエス騎士団長ですか?」

 俺にずっとくっついていたレティアは、離れないままエクエスさんを見て、今頃になってようやく気づいたようだった。

「おや、リリー公爵家のレティア嬢ではありませんか。なぜあなたがここに? 公爵も大層心配しているのでは……」

「話せば長くなるんですけど……早い話、彼――アルゼのお手伝いをしていたんです。私は婚約者ですから」

「なんと! 君はレティア嬢の婚約者だったのか。まぁ、君であったら公爵も大変喜ばしいことだろうな。なんなら私の娘も将来……」

「ちょっとちょっと、何を余計な話をしようとしやがってるのですかー? これ以上、アルゼにを近づけないでほしいのですよー」

 エクエスさんの話に、アビは即座に割って入ってきた。

「いや、うちの娘は決して変な子なんかではなくてな……親の私が言うのもなんなんだが、活発で明るく器量もいい子なんだ。まだ成人していないが」

「いやいや、そんな簡単に娘さんの将来を決めちゃいけませんよ。それに自分は元々貴族だったのですが、家を追われた身ですし……」

「ハッハッ、そんなもの関係ないさ。それが証拠に、公爵家も婚約者として認めてるのだろう? それに、君は恐らく王国を救った英雄として爵位を与えられるのではないかな」

「え、爵位ですか?」

 まさかそんな話になるとは思わなくて、俺は驚いた。

「アルゼの功績を考えれば、そんなの当然じゃないの? これだけのことをしたんですもの。むしろ爵位程度じゃ足りないんじゃないかしら?」

「そうですね。おとぎ話でしたら、王女様と結婚もできるかもしれません」

 レティアの意見に同調するシンシア。
 俺としてはそんなことを求めていたわけではないが、言われてみればおとぎ話はそんな話が多い。

「そ、そんなのダメに決まってるでしょ!」

「ア、アルゼ様……これ以上、その、人が増えるのは……」

「2人とも落ち着け。シンシアが言ってるのはおとぎ話のことで、ただの冗談だよ」

 俺は、おとぎ話を真に受けるメルとレティアを宥めるようにするが、

「果たして本当にそうでしょうか……」

 シンシアはポツリと不安になるようなことを呟くのだった。
しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

追放された回復術師は、なんでも『回復』できて万能でした

新緑あらた
ファンタジー
死闘の末、強敵の討伐クエストを達成した回復術師ヨシュアを待っていたのは、称賛の言葉ではなく、解雇通告だった。 「ヨシュア……てめえはクビだ」 ポーションを湯水のように使える最高位冒険者になった彼らは、今まで散々ポーションの代用品としてヨシュアを利用してきたのに、回復術師は不要だと考えて切り捨てることにしたのだ。 「ポーションの下位互換」とまで罵られて気落ちしていたヨシュアだったが、ブラックな労働をしいるあのパーティーから解放されて喜んでいる自分に気づく。 危機から救った辺境の地方領主の娘との出会いをきっかけに、彼の世界はどんどん広がっていく……。 一方、Sランク冒険者パーティーはクエストの未達成でどんどんランクを落としていく。 彼らは知らなかったのだ、ヨシュアが彼らの傷だけでなく、状態異常や武器の破損など、なんでも『回復』していたことを……。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

空月そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

処理中です...