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73話 戦いを終えて
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デネブが静かに戦場を去った後、友美たちはエニウス本部の制圧が完了したことを実感した。
「やった、ついに、終わったんだ……」
友美が胸を押さえ、深く息をつく。
明と育美は互いに目を見合わせ、緊張の糸がほぐれるのを感じた。
「とはいえ、まだやることはあるわよ」
志乃が研究棟の端末に向かい、監視データを確認し始めた。
「日下部司令と金城博士、祝賀段蔵の行方がまだわかっていないのよ」
友美たちはモニターを見つめた。戦闘の記録を遡ると、日下部たちは本部が完全に制圧される前に地下研究棟の隣の施設、食料備蓄庫に軟禁されていたことが判明した。
「急ぎましょう!」
友美の声に促され、四人は即座に移動を開始する。
備蓄庫の扉を破壊し、中へ足を踏み入れると、薄暗い空間の奥に日下部司令、金城博士、段蔵の3人が軟禁されていた。
「……やれやれ、ようやく助けが来たか」
日下部司令が苦笑しながら椅子にもたれかかる。
金城博士は端末をいじる手を止め、安堵の表情を見せた。
「お待ちしていましたよ。思いのほか早かったですね」
「無事でよかったわ」
志乃は三人の姿を見て、心から安堵した。
横になっていた段蔵が起き上がり、日下部司令の元へ歩みよってくる。
「敵は? どうなったんだ?」
「ブラダーレリックは撤退しました。もう、エニウス本部に敵はいません」
志乃が答えると、日下部司令は静かに頷いた。
「それは結構。しかし、問題が一つある」
日下部司令が真剣な表情で友美たちを見渡す。
「我々を捕らえた際、敵はナノマシンを使用していた。このままでは戦力の回復もままならん」
「……ナノマシン……」
友美はかすかに眉をひそめた。
「その問題なら、わたしが解決できます」
友美は深く息を吸い、『受胎領域』を発動させた。
ナノマシンの動力源であるシャウラの淫力を友美はすでに解析している。
その干渉を完全に無力化することができる――
金色の光が、日下部司令、金城博士、段蔵を包み込んだ。
次の瞬間、彼らの体から何かが抜けるような感覚が広がり――
「……ふむ、楽になった」
日下部司令は驚きつつも、納得したように首を回した。
「ナノマシンが……消えた……?」
金城博士が自らの身体をまじまじと見つめる。
「成功したみたいですね!」
友美が笑顔を見せると、志乃が肩をすくめた。
「まったく、友美の異能は万能ね」
「私もびっくりしてます……」
友美が頬をかく。
その視線の先で、育美がどこか晴れない顔をしていることに友美は気付いた。
「育美さん? どうかしたの?」
「あ、ううん……なんでもないの。ただ……」
育美は言葉を濁した。
友美は育美にそっと手を触れ、再び『受胎領域』の力を静かに巡らせた。彼女の身体の奥深くに、ミアによって刻まれた微弱な異能の残滓が揺らいでいるのが見えた。
「育美さんの中に残ってた、ミアの『呪言』……これも、受け入れれば……!」
友美が力を込めると、育美を苛んでいた呪いは淡い光となって友美の中へと吸収され、消えていった。
「あっ……」育美が驚きの声を上げた。「なんだか、ずっと心にあったモヤモヤが……消えたみたい……」
その瞳から一筋の涙がこぼれた。長らく彼女を苦しめていた呪縛から、ようやく解放された瞬間だった。
「ところで、司令。ナノマシンの問題は片付きましたが、その……女体化の方はどうするんですか?」
明が問うと、日下部司令は険しい表情になった。
「その問題もあるな……」
「それも……任せてください」
友美が再び『受胎領域』を発動する。
「待て、友美くん」
日下部が力強く友美を制した。
「その必要はない」
「えっ……? でも……」
友美だけでなく、その場にいた全員が驚きの表情を浮かべた。
日下部は自らの女性的な身体をゆっくりと見下ろし、そして確固たる意志を宿した瞳で言った。
「この身体はヴァルキュリヤとの戦いの結果であり、我らが新たな道へ進むための証じゃ。人類の進化とは、旧来の価値観からの脱却でもある。わしは司令として、この変化を受け入れ、未来を見据えるつもりじゃよ」
――彼はこの女体を気に入っていた。そして、それを隠すための大義名分を、彼は見つけたのだ。
「……わかりました。司令がそうおっしゃるなら」
友美は少し戸惑いながらも、彼の決意を尊重し、力を収めた。
「そういえば……」
志乃が思い出したように口を開いた。
「土門はどこにいるの? まともに話ができる自信がないから、彼の事は後回しにしていたのだけれど」
日下部司令の表情がわずかに曇る。
「……土門は、グレートマザー教団への攻撃作戦の後、行方をくらましたのじゃよ」
「えっ……?」
友美は驚いた表情を見せる。
「追跡は?」
「試みたが、痕跡は完全に消えていた。彼の異能はあまりに強力で、その性癖はあまりに歪みきっておる。自らの力に飲み込まれ、暴走したままどこかへ消えたのかもしれん。いずれ、世界の歪みとして我々の前に再び現れるやもしれんが……今はそうでないことを祈るばかりじゃ」
日下部司令の言葉に、場が静まり返った。
「それと、もうひとつ」
日下部司令はゆっくりと話を続けた。
「もう、隠す必要もないと思うでな、ここで話してしまうが、友美くんの可能性については、Dエヴォルブに申し立てるつもりじゃよ」
「Dエヴォルブ?」
友美が首を傾げる。
「Dエヴォルブとは、人類進化を監視・研究する国際機構じゃよ。公には存在を知らせていないが、我々の異能や淫力の覚醒についても調査している組織じゃ。そして国を動かせるほどに巨大な権力をもっておる」
日下部司令が説明すると、友美は静かに息を呑んだ。
「つまり……その組織が、わたしたちの行動を見ているんですね?」
「そういうことじゃ。君の覚醒が、人類の進化の鍵になるかもしれん」
友美は驚きを隠せなかった。
(わたしが……人類の進化の鍵……?)
未来への新たな可能性――友美は世界規模という、壮大な渦の中へ巻き込まれようとしていた。
「やった、ついに、終わったんだ……」
友美が胸を押さえ、深く息をつく。
明と育美は互いに目を見合わせ、緊張の糸がほぐれるのを感じた。
「とはいえ、まだやることはあるわよ」
志乃が研究棟の端末に向かい、監視データを確認し始めた。
「日下部司令と金城博士、祝賀段蔵の行方がまだわかっていないのよ」
友美たちはモニターを見つめた。戦闘の記録を遡ると、日下部たちは本部が完全に制圧される前に地下研究棟の隣の施設、食料備蓄庫に軟禁されていたことが判明した。
「急ぎましょう!」
友美の声に促され、四人は即座に移動を開始する。
備蓄庫の扉を破壊し、中へ足を踏み入れると、薄暗い空間の奥に日下部司令、金城博士、段蔵の3人が軟禁されていた。
「……やれやれ、ようやく助けが来たか」
日下部司令が苦笑しながら椅子にもたれかかる。
金城博士は端末をいじる手を止め、安堵の表情を見せた。
「お待ちしていましたよ。思いのほか早かったですね」
「無事でよかったわ」
志乃は三人の姿を見て、心から安堵した。
横になっていた段蔵が起き上がり、日下部司令の元へ歩みよってくる。
「敵は? どうなったんだ?」
「ブラダーレリックは撤退しました。もう、エニウス本部に敵はいません」
志乃が答えると、日下部司令は静かに頷いた。
「それは結構。しかし、問題が一つある」
日下部司令が真剣な表情で友美たちを見渡す。
「我々を捕らえた際、敵はナノマシンを使用していた。このままでは戦力の回復もままならん」
「……ナノマシン……」
友美はかすかに眉をひそめた。
「その問題なら、わたしが解決できます」
友美は深く息を吸い、『受胎領域』を発動させた。
ナノマシンの動力源であるシャウラの淫力を友美はすでに解析している。
その干渉を完全に無力化することができる――
金色の光が、日下部司令、金城博士、段蔵を包み込んだ。
次の瞬間、彼らの体から何かが抜けるような感覚が広がり――
「……ふむ、楽になった」
日下部司令は驚きつつも、納得したように首を回した。
「ナノマシンが……消えた……?」
金城博士が自らの身体をまじまじと見つめる。
「成功したみたいですね!」
友美が笑顔を見せると、志乃が肩をすくめた。
「まったく、友美の異能は万能ね」
「私もびっくりしてます……」
友美が頬をかく。
その視線の先で、育美がどこか晴れない顔をしていることに友美は気付いた。
「育美さん? どうかしたの?」
「あ、ううん……なんでもないの。ただ……」
育美は言葉を濁した。
友美は育美にそっと手を触れ、再び『受胎領域』の力を静かに巡らせた。彼女の身体の奥深くに、ミアによって刻まれた微弱な異能の残滓が揺らいでいるのが見えた。
「育美さんの中に残ってた、ミアの『呪言』……これも、受け入れれば……!」
友美が力を込めると、育美を苛んでいた呪いは淡い光となって友美の中へと吸収され、消えていった。
「あっ……」育美が驚きの声を上げた。「なんだか、ずっと心にあったモヤモヤが……消えたみたい……」
その瞳から一筋の涙がこぼれた。長らく彼女を苦しめていた呪縛から、ようやく解放された瞬間だった。
「ところで、司令。ナノマシンの問題は片付きましたが、その……女体化の方はどうするんですか?」
明が問うと、日下部司令は険しい表情になった。
「その問題もあるな……」
「それも……任せてください」
友美が再び『受胎領域』を発動する。
「待て、友美くん」
日下部が力強く友美を制した。
「その必要はない」
「えっ……? でも……」
友美だけでなく、その場にいた全員が驚きの表情を浮かべた。
日下部は自らの女性的な身体をゆっくりと見下ろし、そして確固たる意志を宿した瞳で言った。
「この身体はヴァルキュリヤとの戦いの結果であり、我らが新たな道へ進むための証じゃ。人類の進化とは、旧来の価値観からの脱却でもある。わしは司令として、この変化を受け入れ、未来を見据えるつもりじゃよ」
――彼はこの女体を気に入っていた。そして、それを隠すための大義名分を、彼は見つけたのだ。
「……わかりました。司令がそうおっしゃるなら」
友美は少し戸惑いながらも、彼の決意を尊重し、力を収めた。
「そういえば……」
志乃が思い出したように口を開いた。
「土門はどこにいるの? まともに話ができる自信がないから、彼の事は後回しにしていたのだけれど」
日下部司令の表情がわずかに曇る。
「……土門は、グレートマザー教団への攻撃作戦の後、行方をくらましたのじゃよ」
「えっ……?」
友美は驚いた表情を見せる。
「追跡は?」
「試みたが、痕跡は完全に消えていた。彼の異能はあまりに強力で、その性癖はあまりに歪みきっておる。自らの力に飲み込まれ、暴走したままどこかへ消えたのかもしれん。いずれ、世界の歪みとして我々の前に再び現れるやもしれんが……今はそうでないことを祈るばかりじゃ」
日下部司令の言葉に、場が静まり返った。
「それと、もうひとつ」
日下部司令はゆっくりと話を続けた。
「もう、隠す必要もないと思うでな、ここで話してしまうが、友美くんの可能性については、Dエヴォルブに申し立てるつもりじゃよ」
「Dエヴォルブ?」
友美が首を傾げる。
「Dエヴォルブとは、人類進化を監視・研究する国際機構じゃよ。公には存在を知らせていないが、我々の異能や淫力の覚醒についても調査している組織じゃ。そして国を動かせるほどに巨大な権力をもっておる」
日下部司令が説明すると、友美は静かに息を呑んだ。
「つまり……その組織が、わたしたちの行動を見ているんですね?」
「そういうことじゃ。君の覚醒が、人類の進化の鍵になるかもしれん」
友美は驚きを隠せなかった。
(わたしが……人類の進化の鍵……?)
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