恥ずかしすぎて異能に目覚める? 人類存亡をめぐる おもらしの連鎖

たちばなさとし

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74話 動き出す世界

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 エニウス本部奪還から数日が経過した。
 本部の修復作業が進められる中、友美たちはようやく落ち着いた時間を持つことができた。

 日下部司令、金城博士、祝賀段蔵を救出したことで、エニウスの指揮系統も完全に復旧。
 友美の『受胎領域トータルレセプション』によって、ナノマシンの影響は無効化され、ヴァルキュリヤの異能で女体化されていた者たちも元の姿に戻っていた。

 しかし——
 それでも全てが解決したわけではなかった。

「友美くん、少し話がある」
 エニウス本部の司令室。
 日下部司令が腕を組み、友美に向かって静かに告げた。

「はい、司令……」
 友美は緊張した面持ちで椅子に座る。
 彼女の隣には志乃が立ち、後ろでは明と育美が見守っていた。

「まずは、エニウス本部奪還の功績を称えよう。君がいなければ、この戦いは敗北に終わっていたはずじゃ」

 日下部司令の言葉に、友美はかすかに微笑んだ。
 しかし、その表情にはどこか不安の影が残っている。

「司令……この後、エニウスはどうなるんですか?」

「そうじゃな……早くも、Dエヴォルブからの通達が来ている」

「Dエヴォルブ……!」

 志乃が険しい表情を浮かべる。
 日下部司令は静かに頷いた。

「Dエヴォルブは、友美くん、君を『真の覚醒者』と認定するため、接触したいと考えている」

「接触……?」
 友美が息をのむ。

「接触……というのは、どういう事なんでしょう?」

「詳しい事は、わしにもわからん。じゃが、Dエヴォルブは人類の進化を監視・研究している機関だ。君の覚醒は、彼らにとっても特別な意味を持つ。ゆえに、彼らは君の存在を正式に認め、その上で今後の指針を決めたいと考えているようじゃ」

「そんな……」
 友美は戸惑った表情を浮かべた。
 戦いに勝って、エニウスでの平穏が戻ると思ったのに、今度は別の存在から注目されることになるなんて。

「……でも、断るわけにはいかないんですよね」

「そういうことじゃ」
 日下部司令は深く頷くと、手元の端末を操作し、Dエヴォルブからの通達をスクリーンに映し出した。

「これは、Dエヴォルブが君に向けて送った正式な召喚状だ」

 スクリーンに表示されたのは、黒地に金の紋章が刻まれた厳格な文面。
 そこには——

『水野友美殿、貴殿を覚醒者と認める。Dエヴォルブは貴殿に対し、正式な会談を求める』

 ——そう記されていた。

「……どうしても、行かなきゃダメ、なんですよね」
 友美はスクリーンを見つめながら、深く息をついた。

「君の意思を尊重するが……ここで断るのは、現実的ではない。Dエヴォルブは世界の秩序を決める機関でもある。もし彼らが君の存在を危険視すれば、次は君自身が標的にされることもありうる」

「……!」
 その言葉に、友美の背筋が凍る。

「友美、あなたに選択肢はほとんどないわ。でも、大丈夫。私たちがついてる」
 志乃が友美の肩にそっと手を置き、優しく微笑んだ。
 その言葉に、友美は安心を覚える。

「わかりました……わたし、行ってみます」
 友美は決意のこもった声で答えた。

 一方、ブラダーレリックのベースキャンプでは、巨大な会議室の中、デネブが静かに膝をついていた。

「戻ったか、デネブ」

 銀髪の紳士——ジェネラル・カノープスが玉座に腰掛け、デネブを見下ろしていた。

「……申し訳ありません」
 デネブは物憂げな表情で報告を続けた。

「エニウス本部の奪還を許しました」

「それでいい」

 ジェネラル・カノープスは静かに微笑んだ。

「むしろ、これは予想以上に好ましい結果だ」

「……」

 デネブが沈黙していると、ジェネラル・カノープスはゆっくりと口を開いた。

「結論から言おう、水野友美は『真の覚醒者メシア』として歩み出した。 しかし、彼女はまだ完全な存在ではない。その役割を果たすには、さらなる試練が必要だ」

 ジェネラル・カノープスは手を掲げ、巨大なスクリーンにDエヴォルブの召喚状を映し出した。

「Dエヴォルブが彼女に接触したな」

「はい」
 デネブは頷いた。

「ならば……我々の目的は果たされた」
 ジェネラル・カノープスは満足げに微笑む。

「我々が目指していたのは、『真の覚醒者メシア』を発見し、この世界の未来へと導くこと。 アカシックレコードに記されている『人類進化』の成就だ。 不本意ながら彼女は我が組織の一員ではなかった。だが、これで人類は救われる。Dエヴォルブが、彼女を新たな時代の象徴として担ぎ上げるだろう」

 デネブはその言葉に静かに頷いた。

「では、ブラダーレリックの行動は——」

「しばらくは凍結する」
 ジェネラル・カノープスは悠然と宣言する。

「いずれ彼女が我々と向き合う日が訪れる。その時が来るまで、静かに待つとしよう」

 デネブは深く頭を下げた。

「……了解しました」

 エニウス本部、夜。
 友美はひとり、外の風に当たりながら空を見上げていた。

「Dエヴォルブ……わたしは一体、どうなるんだろう」
 友美の心には、不安と期待が入り混じっていた。

 その時——
 背後から静かに近づいてくる気配。

「志乃さん?」

 振り返ると、志乃が微笑んで立っていた。

「友美。これから色々と大変だけど、あなたなら大丈夫よ」

「志乃さん……」

「どこへ行っても、最後は私のもとに帰ってくるのよ、いいわね?」
 志乃はからかうように囁く。
 友美は少し赤くなりながら、それでも真剣な目で頷いた。

「はい。わたしの一番はずっと志乃さんです」

 その言葉に、志乃の表情が柔らかくなる。

 新たな運命の幕が開く。
 友美は、新たな世界へと歩み出す覚悟を決めた——。
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