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第1話 城壁の聖女
東の空が白み始め、神殿のステンドグラスが静かな光を帯びる頃、クレリアはいつも一人、祭壇の前で膝まずいていた。
ひんやりとした石の床の感触が薄いプリースト服を通して肌に伝わる。
それが彼女の心を戦場の喧騒から聖なる静寂へと引き戻してくれるのだ。
「――全能なる女神様。どうか今日も、あの壁が破られることなきよう。我らが愛する街に、そして戦う仲間たちに、あなたのご加護をお与えください」
凛とした声が、がらんとした神殿に響く。
銀色の長い髪が祈りに合わせてさらりと揺れた。
朝の光が差し込む中、女神像に見守られながら祈りを捧げる彼女の横顔は真剣そのもので、神聖な雰囲気が漂っていた。
彼女の名はクレリア。この街を守る防衛部隊に所属する唯一のプリースト。
その役割は傷ついた兵士を癒すだけではない。
女神と結んだ特別な契約スキル『聖域の盾(アイギス)』によって、仲間を敵の凶刃から守ること。
その責任感の強さと献身的な姿勢から、兵士たちは彼女を「城壁の聖女」と呼び、深く信頼していた。
祈りを終えたクレリアは神殿を後にして前線へと向かう。
城壁近くの兵舎では、すでに多くの兵士たちが武具を身につけ、出撃の準備を進めていた。
「クレリア様、おはようございます」
「おはよう、ダリウス。昨夜の傷はもういいの?」
「はっ!おかげさまで、この通りピンピンしております!」
歴戦の古兵であるダリウスが屈強な腕を叩いてみせる。
その隣では、まだあどけなさの残る若い兵士が緊張で顔をこわばらせていた。
クレリアはそっと彼のそばに寄り、その手に優しく触れる。
「大丈夫。女神様は、あなたの勇気を見ていらっしゃいます」
彼女の優しい微笑みと言葉に若い兵士は顔を赤らめ、ベテラン兵士たちは頼もしそうにうなずいた。
彼女の祝福は部隊の精神的支柱だった。
彼女がいるからこそ、兵士たちは絶望的な戦況の中でも心を折らずに戦い続けられるのだ。
やがて、見張りの兵が叫ぶ。
「敵影確認! ――魔物の軍勢、接近中!」
地平線の向こうが黒い点で埋め尽くされていく。
空気が震え、戦いの始まりを告げる角笛が物悲しくも力強く鳴り響いた。
クレリアは城壁の上へと駆け上がり、風に純白のプリースト服をなびかせながら、迫りくる絶望の群れを真っ直ぐに見据えた。
その銀髪を揺らす後ろ姿には微塵の恐れも感じられない。
彼女は仲間たちに向き直ると、その瞳に強い意志と覚悟を宿して微笑んだ。
「――さあ、始めましょう。女神様のご加護がありますように」
聖女の戦いが、今、幕を開ける。
ひんやりとした石の床の感触が薄いプリースト服を通して肌に伝わる。
それが彼女の心を戦場の喧騒から聖なる静寂へと引き戻してくれるのだ。
「――全能なる女神様。どうか今日も、あの壁が破られることなきよう。我らが愛する街に、そして戦う仲間たちに、あなたのご加護をお与えください」
凛とした声が、がらんとした神殿に響く。
銀色の長い髪が祈りに合わせてさらりと揺れた。
朝の光が差し込む中、女神像に見守られながら祈りを捧げる彼女の横顔は真剣そのもので、神聖な雰囲気が漂っていた。
彼女の名はクレリア。この街を守る防衛部隊に所属する唯一のプリースト。
その役割は傷ついた兵士を癒すだけではない。
女神と結んだ特別な契約スキル『聖域の盾(アイギス)』によって、仲間を敵の凶刃から守ること。
その責任感の強さと献身的な姿勢から、兵士たちは彼女を「城壁の聖女」と呼び、深く信頼していた。
祈りを終えたクレリアは神殿を後にして前線へと向かう。
城壁近くの兵舎では、すでに多くの兵士たちが武具を身につけ、出撃の準備を進めていた。
「クレリア様、おはようございます」
「おはよう、ダリウス。昨夜の傷はもういいの?」
「はっ!おかげさまで、この通りピンピンしております!」
歴戦の古兵であるダリウスが屈強な腕を叩いてみせる。
その隣では、まだあどけなさの残る若い兵士が緊張で顔をこわばらせていた。
クレリアはそっと彼のそばに寄り、その手に優しく触れる。
「大丈夫。女神様は、あなたの勇気を見ていらっしゃいます」
彼女の優しい微笑みと言葉に若い兵士は顔を赤らめ、ベテラン兵士たちは頼もしそうにうなずいた。
彼女の祝福は部隊の精神的支柱だった。
彼女がいるからこそ、兵士たちは絶望的な戦況の中でも心を折らずに戦い続けられるのだ。
やがて、見張りの兵が叫ぶ。
「敵影確認! ――魔物の軍勢、接近中!」
地平線の向こうが黒い点で埋め尽くされていく。
空気が震え、戦いの始まりを告げる角笛が物悲しくも力強く鳴り響いた。
クレリアは城壁の上へと駆け上がり、風に純白のプリースト服をなびかせながら、迫りくる絶望の群れを真っ直ぐに見据えた。
その銀髪を揺らす後ろ姿には微塵の恐れも感じられない。
彼女は仲間たちに向き直ると、その瞳に強い意志と覚悟を宿して微笑んだ。
「――さあ、始めましょう。女神様のご加護がありますように」
聖女の戦いが、今、幕を開ける。
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