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39.殺されても仕方のない奴はいる
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ファストフード店で捜査会議中に、突然、奈緒のスマートフォンが鳴った。かけてきたのは、椿野菜々美のようだ。
和哉と沙耶は席に並んで座ったまま、正面で喋る奈緒の言葉を黙って訊いていた。どうやら関本朱里が突然いなくなり、椿野菜々美が必死になって探しているらしい。
電話を終えた奈緒がこちらを向いた。
「朱里と急に連絡がつかなくなったって、椿野さんが泣いているの。英理子ちゃんを問い詰めにいったらしいんだけど、それからすぐに電話がつながらなくなったんだって。朱里は英理子ちゃんがスカルの仲間だと疑ってるみたいなのよ」
どうしたらいいかと、奈緒の目が問いかけてきている。やばい匂いがしてきた。
「とりあえず、施設に行ってみるしかないわね」
沙耶が腕を組んで二人を見ている。
「施設にはいない」
和哉の言葉に、二人が意外そうな顔をした。
「どこかに監禁されてるとしたら、あの施設の可能性が一番高いと思うけど」沙耶の言葉に、奈緒が目を見開いた。
「たしかに、電話に出られないってことは、もう捕まってしまっているのかもしれない。しかし、あの施設じゃない。あの場所を訪ねることは、誰かに言っているはずだと、攫うほうも考える。特に悪どい連中は頭が回る」
「でも、他に探す場所はないわ」
「鶴見にあるピースドリームクラブ」
「何よ、それ」奈緒が泣きそうな顔になっている。
「石田組のフロント企業の福利厚生施設だよ。そこで奴らは女の子に男の相手をさせているんだ」
「どうしてそんなことを、あなたが知っているの?」沙耶が横から睨んでくる。
「スカルのメンバーから聞いた。ダイナマイトにいた、レミっていう、あの金髪女だよ」
「私に黙って、勝手に動いてたのね」
「悪かったよ」
「じゃあ、すぐに鶴見に行かなきゃ。朱里、きっとひどい目にあわされてるよ」奈緒が今にも泣きだしそうな声で言った。
「もう殺されてるかも」と沙耶。奈緒の目から涙がこぼれた。
「やめろ、馬鹿」
馬鹿と言われて、沙耶が和哉を睨んだが、何も言わない。奈緒を泣かせてしまったことに少しは罪悪を感じているのか。
「外に出てタクシーを捕まえよう。鶴見までなら二十分もかからない」
三人は急いで店を出て、通りでタクシーを捕まえた。
後部座席に三人詰めて座った。左のドア側に座った和哉の足が、沙耶の足に密着している。直に彼女の体温が伝わってくる。嫌味の一つでもいうかと思ったが、沙耶は正面を黙って見ているだけだった。意外と、関本朱里のことを心配しているのかもしれない。
沙耶の横で、奈緒がスマートフォンを必死で操作している。タクシーの運転手がピースドリームクラブを知らなかったので、検索しているのだ。ようやく目的の場所を突き止めて運転手に告げたときには、すでに鶴見駅の近くまで来ていた。
タクシーは駅の裏側に回り、大きな公園の傍で停まった。タクシーを降り、スマートフォンのナビ機能でピースドリームクラブに向かった。
そこは、レンガ塀に囲まれた、できたばかりの新しい建物だった。二階建ての瀟洒な建物の奥に広い庭園があるようで、建物の向こうにも敷地が広がっている。
「広いな」
何かの催しが行われているのか、建物の中は明るく賑やかだった。
「ずいぶん人の出入りの多いところね。少女売春をこれほど派手にやるなんて、ふてぶてしすぎるわ」
沙耶がレンガの壁を見上げながら吐き捨てるように言った。
「ただの会社の催し事だろ。暴力団のフロント企業といっても、奥底で暴力団とつながっているというだけで、表から見える部分は普通の会社と変わらないんだ」
普通のサラリーマンやOL風の女が、目の前の建物に出入りしている。
「本当にこの中にいるのかしら」
「間違いない。この場所はこれまで誰にも見つかったことがない秘密の場所なんだ。関本を攫った奴はここに彼女を連れ込んでいるはずだよ」
「敷地の奥に監禁されてるんじゃない? 広そうだし、何かありそうよ」
奈緒が、今にも中に飛び込もうとしている。しかし、部外者が目の前の建物に入って家捜しするのは目立ちすぎて無理だ。
「私が聞いてくる」沙耶が足を踏み出した。
「聞いてくるって、まさか、女子高生をどこに監禁してるかって聞く気か? それとも、少女売春に参加するにはどこに行けばいいかって聞くのか?」
「そうね、そっちのほうがいいわね」
「はあ?」
沙耶が門をくぐって中に入った。
「どこに行くんだ?」和也が慌てて後を追った。
「中で聞いてくるわ。どこで少女売春をやっているか」
「もっと真面目にやれ」
「大真面目よ。それに、ついてこないで。あなたが来たら邪魔になるだけ」
和哉が呼び止める声を無視して、沙耶は建物の玄関に入っていった。
「蛇尾さん、何をする気なのかしら?」
「俺に聞くなよ」
彼女が戻ってくるまで待つしかない。しかし、何か考えがあってのことだろう。朱里が消えてどれくらい時間がたったのかわからないが、急がなくてはいけない。
だが、気を揉む間もなく、沙耶が戻ってきた。
「裏に回れって。赤い鉄門があるから、中に入って古い建物の地下に降りるようにって」
「どうやって聞き出したの?」
奈緒の声が裏返っている。
「まさか、本当に売春しに来たって言ったのか?」和哉も、ぜひとも聞きたかった。
「最初は受付の女性に、呼ばれてきたんだけどどこに行ったらいいのかって聞いたの。何のことかわからないって言われたから、近くにいた目つきの悪そうなお兄さんに同じように聞いたら、私の全身を舐めるように見て、ニヤッと笑って教えてくれたの。裏にある使われていない旧館だっていわれた」
なるほど。こんな場所に制服姿の女子高生が来たら、少女売春に関わっている者ならぴんとくる。
「よくやった!」
和哉が駆け出すと、二人はついてきた。レンガ塀沿いに走って裏に回った。沙耶の言った通り、赤の鉄扉が目に入った。その向こうに、明りの消えた洋館がある。鉄扉を押して中に入り、館の玄関のドアを開けた。
玄関の奥に、地下に降りる階段があった。
「忘れちまった」
「忘れたって?」
「武器だよ」
「これ、使えるんじゃない?」
沙耶が、床に落ちていた棒切れを拾い上げて、和哉に差し出した。いつも使っている木刀は樫でできているので持つとずっしり重いが、沙耶から受け取った木材は軽い。
少し頼りないが、何もないよりましだろう。
「よし、いこう」
足を踏み出した時、階段の下から女の悲鳴が聞こえてきた。
「下だ!」
飛ぶように階段を降り、正面のドアを開けた。
男が二人、飛び跳ねるように振り向いた。手に銀色の棒を持った男の目の前に、裸の女が台の上で足を上にあげて横たわっていた。
「榛原さんかい?」
年配の男が眼を見開いて奈緒を見た。この男は奈緒を知っているのか。
「誰だ?」
「児童養護施設の理事長……」
「何だ、てめえら!」
男が手に持った銀の棒を放り投げて詰め寄ってきた。怒りを剥き出しにした目は、筋ものそのものだ。
男の顔に見覚えがあった。USBの動画に映っていた男だ。こいつが石田組の幹部か。和哉は棒切れを持った右手を体の後ろに隠した。
男が飛びかかってきた。腰を落とす。踏み出してきた男の脛に、棒きれを思い切り叩きつけた。男が悲鳴を上げた床に倒れた。立ち上がろうとする男の頭に、棒きれを思い切り振り落とした。
奈緒が悲鳴を上げた。
棒きれが折れた。男が立ち上がり組み付いてきた。襟首をつかまれたと思ったら間髪いれず頭突きを鼻柱に食らった。目の前が暗くなって、膝が折れた。腹に蹴りを食らう。蹲ったところを、上から何度も蹴られた。
奈緒の悲鳴が立て続けに聞こえてくる。
手に握っている折れた棒が目に入って、すっと冷静になった。腹に棒を抱える。
「立たんかい、こらぁ!」
男が和哉の髪を掴んで顔を引き上げた。股間ががら空きだ。折れて短くなった棒で、男の股間を思い切り突きあげた。
男が声を上げ、ひざを折って蹲った。棒を振り上げ、何度も男の頭を殴りつけた。五年前、桃香を狙っていた男の顔が頭に浮かんだ。
血まみれになった男が、動かなくなった。汗が流れるように顎から滴り落ちる。和哉の荒い呼吸が、部屋の中に響いていた。
女を見た。裸にされ、台に縛り付けられていた。足を何かに固定されているようだ。広げられた太腿の間が、露わになっている。
女の足の間から、長い髪が台の上で広がっているのが見えた。顔を上げた女と目が合った。
「こっちを見るな、馬鹿!」
「うわ、ごめん!」
慌てて背中を向けて台から離れた。
「朱里?」
入れ替わるように、奈緒が女のそばに近寄った。
「朱里!」
奈緒が朱里の拘束を外していく。自由になった朱里が、奈緒に抱きついて大声をあげて泣き始めた。
「殺したのかい?」
北山が傍に寄ってきて、倒れて動かなくなった男を見下ろしていた。
「こんな奴、別に殺してもいいじゃないか」
「悪人の命だからって、軽いものじゃないんだよ。私はこれでも医者だからね」
なかなか面白いジョークを聞けた。
「日本には溢れちまうくらい屑野郎がいるんだ。殺されても仕方のない奴もいるさ」
ドアの外で、沙耶がこちらを見ていた。和哉と目があった彼女が、手に持ったスマートフォンを差し出した。
「警察、呼んだわ。もうすぐ来るんじゃないかしら」
和哉は、着ていた制服のジャケットを脱いで沙耶に渡した。
「関本に着せてやってくれ」
ジャンパーを受け取った沙耶が、部屋の中に入っていった。
和哉と沙耶は席に並んで座ったまま、正面で喋る奈緒の言葉を黙って訊いていた。どうやら関本朱里が突然いなくなり、椿野菜々美が必死になって探しているらしい。
電話を終えた奈緒がこちらを向いた。
「朱里と急に連絡がつかなくなったって、椿野さんが泣いているの。英理子ちゃんを問い詰めにいったらしいんだけど、それからすぐに電話がつながらなくなったんだって。朱里は英理子ちゃんがスカルの仲間だと疑ってるみたいなのよ」
どうしたらいいかと、奈緒の目が問いかけてきている。やばい匂いがしてきた。
「とりあえず、施設に行ってみるしかないわね」
沙耶が腕を組んで二人を見ている。
「施設にはいない」
和哉の言葉に、二人が意外そうな顔をした。
「どこかに監禁されてるとしたら、あの施設の可能性が一番高いと思うけど」沙耶の言葉に、奈緒が目を見開いた。
「たしかに、電話に出られないってことは、もう捕まってしまっているのかもしれない。しかし、あの施設じゃない。あの場所を訪ねることは、誰かに言っているはずだと、攫うほうも考える。特に悪どい連中は頭が回る」
「でも、他に探す場所はないわ」
「鶴見にあるピースドリームクラブ」
「何よ、それ」奈緒が泣きそうな顔になっている。
「石田組のフロント企業の福利厚生施設だよ。そこで奴らは女の子に男の相手をさせているんだ」
「どうしてそんなことを、あなたが知っているの?」沙耶が横から睨んでくる。
「スカルのメンバーから聞いた。ダイナマイトにいた、レミっていう、あの金髪女だよ」
「私に黙って、勝手に動いてたのね」
「悪かったよ」
「じゃあ、すぐに鶴見に行かなきゃ。朱里、きっとひどい目にあわされてるよ」奈緒が今にも泣きだしそうな声で言った。
「もう殺されてるかも」と沙耶。奈緒の目から涙がこぼれた。
「やめろ、馬鹿」
馬鹿と言われて、沙耶が和哉を睨んだが、何も言わない。奈緒を泣かせてしまったことに少しは罪悪を感じているのか。
「外に出てタクシーを捕まえよう。鶴見までなら二十分もかからない」
三人は急いで店を出て、通りでタクシーを捕まえた。
後部座席に三人詰めて座った。左のドア側に座った和哉の足が、沙耶の足に密着している。直に彼女の体温が伝わってくる。嫌味の一つでもいうかと思ったが、沙耶は正面を黙って見ているだけだった。意外と、関本朱里のことを心配しているのかもしれない。
沙耶の横で、奈緒がスマートフォンを必死で操作している。タクシーの運転手がピースドリームクラブを知らなかったので、検索しているのだ。ようやく目的の場所を突き止めて運転手に告げたときには、すでに鶴見駅の近くまで来ていた。
タクシーは駅の裏側に回り、大きな公園の傍で停まった。タクシーを降り、スマートフォンのナビ機能でピースドリームクラブに向かった。
そこは、レンガ塀に囲まれた、できたばかりの新しい建物だった。二階建ての瀟洒な建物の奥に広い庭園があるようで、建物の向こうにも敷地が広がっている。
「広いな」
何かの催しが行われているのか、建物の中は明るく賑やかだった。
「ずいぶん人の出入りの多いところね。少女売春をこれほど派手にやるなんて、ふてぶてしすぎるわ」
沙耶がレンガの壁を見上げながら吐き捨てるように言った。
「ただの会社の催し事だろ。暴力団のフロント企業といっても、奥底で暴力団とつながっているというだけで、表から見える部分は普通の会社と変わらないんだ」
普通のサラリーマンやOL風の女が、目の前の建物に出入りしている。
「本当にこの中にいるのかしら」
「間違いない。この場所はこれまで誰にも見つかったことがない秘密の場所なんだ。関本を攫った奴はここに彼女を連れ込んでいるはずだよ」
「敷地の奥に監禁されてるんじゃない? 広そうだし、何かありそうよ」
奈緒が、今にも中に飛び込もうとしている。しかし、部外者が目の前の建物に入って家捜しするのは目立ちすぎて無理だ。
「私が聞いてくる」沙耶が足を踏み出した。
「聞いてくるって、まさか、女子高生をどこに監禁してるかって聞く気か? それとも、少女売春に参加するにはどこに行けばいいかって聞くのか?」
「そうね、そっちのほうがいいわね」
「はあ?」
沙耶が門をくぐって中に入った。
「どこに行くんだ?」和也が慌てて後を追った。
「中で聞いてくるわ。どこで少女売春をやっているか」
「もっと真面目にやれ」
「大真面目よ。それに、ついてこないで。あなたが来たら邪魔になるだけ」
和哉が呼び止める声を無視して、沙耶は建物の玄関に入っていった。
「蛇尾さん、何をする気なのかしら?」
「俺に聞くなよ」
彼女が戻ってくるまで待つしかない。しかし、何か考えがあってのことだろう。朱里が消えてどれくらい時間がたったのかわからないが、急がなくてはいけない。
だが、気を揉む間もなく、沙耶が戻ってきた。
「裏に回れって。赤い鉄門があるから、中に入って古い建物の地下に降りるようにって」
「どうやって聞き出したの?」
奈緒の声が裏返っている。
「まさか、本当に売春しに来たって言ったのか?」和哉も、ぜひとも聞きたかった。
「最初は受付の女性に、呼ばれてきたんだけどどこに行ったらいいのかって聞いたの。何のことかわからないって言われたから、近くにいた目つきの悪そうなお兄さんに同じように聞いたら、私の全身を舐めるように見て、ニヤッと笑って教えてくれたの。裏にある使われていない旧館だっていわれた」
なるほど。こんな場所に制服姿の女子高生が来たら、少女売春に関わっている者ならぴんとくる。
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和哉が駆け出すと、二人はついてきた。レンガ塀沿いに走って裏に回った。沙耶の言った通り、赤の鉄扉が目に入った。その向こうに、明りの消えた洋館がある。鉄扉を押して中に入り、館の玄関のドアを開けた。
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少し頼りないが、何もないよりましだろう。
「よし、いこう」
足を踏み出した時、階段の下から女の悲鳴が聞こえてきた。
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奈緒が悲鳴を上げた。
棒きれが折れた。男が立ち上がり組み付いてきた。襟首をつかまれたと思ったら間髪いれず頭突きを鼻柱に食らった。目の前が暗くなって、膝が折れた。腹に蹴りを食らう。蹲ったところを、上から何度も蹴られた。
奈緒の悲鳴が立て続けに聞こえてくる。
手に握っている折れた棒が目に入って、すっと冷静になった。腹に棒を抱える。
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男が声を上げ、ひざを折って蹲った。棒を振り上げ、何度も男の頭を殴りつけた。五年前、桃香を狙っていた男の顔が頭に浮かんだ。
血まみれになった男が、動かなくなった。汗が流れるように顎から滴り落ちる。和哉の荒い呼吸が、部屋の中に響いていた。
女を見た。裸にされ、台に縛り付けられていた。足を何かに固定されているようだ。広げられた太腿の間が、露わになっている。
女の足の間から、長い髪が台の上で広がっているのが見えた。顔を上げた女と目が合った。
「こっちを見るな、馬鹿!」
「うわ、ごめん!」
慌てて背中を向けて台から離れた。
「朱里?」
入れ替わるように、奈緒が女のそばに近寄った。
「朱里!」
奈緒が朱里の拘束を外していく。自由になった朱里が、奈緒に抱きついて大声をあげて泣き始めた。
「殺したのかい?」
北山が傍に寄ってきて、倒れて動かなくなった男を見下ろしていた。
「こんな奴、別に殺してもいいじゃないか」
「悪人の命だからって、軽いものじゃないんだよ。私はこれでも医者だからね」
なかなか面白いジョークを聞けた。
「日本には溢れちまうくらい屑野郎がいるんだ。殺されても仕方のない奴もいるさ」
ドアの外で、沙耶がこちらを見ていた。和哉と目があった彼女が、手に持ったスマートフォンを差し出した。
「警察、呼んだわ。もうすぐ来るんじゃないかしら」
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