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夜の九時を過ぎた。事務所に残っている者はほとんどいない。
保安部より届いた投書の山を見て、大内寛はため息をついた。先週号で国民的アイドルの菊田カスミと某テレビ局ディレクターとの不倫記事を雑誌に掲載して以降、抗議の電話と投書が続いている。これらの投書の中身を確認し、対応策も含め明日の会議で発表しなくてはならない。今夜は徹夜になるだろう。
大内寛は手前にある封筒を手に取り封を切る。中に危険なものが入っていないかどうかは、保安部のエックス線装置により既に確認済みである。
カスミちゃんがかわいそうだとひたすら訴えるもの、暴露した記者を絶対ぶち殺すと脅迫めいたもの、逆に、生ぬるい、もっと突っ込んだ記事を書けというもの、カスミだけが名前と顔が出るのは不公平だ、相手のディレクターの名前と顔も晒せというものもある。
確かにあの記事は、二十歳を迎えたばかりの菊田カスミへの配慮が足りなかったように思う。しかし、今が絶頂期の清純派アイドルと既婚の業界人との不倫は、マスコミ関係者にとっては美味し過ぎるネタだ。このネタでしばらくは週刊誌も売れる。
順番に投書を確認していく。書いてあることは様々だが、自分の感情をそのまま文書にしたものばかりで、内容のあるものは少ない。すべてを確認しなくても、適当に報告しても上にはばれはしないだろうが、大内は手を抜こうとは考えなかった。
「あんまり真面目にやっても、いいように使われるだけで美味しい思いはできないよ」
大内にそうアドバイスする同僚もいる。その通りだとは思うが、彼らのように器用には立ち回れない。真面目にコツコツ目の前の仕事をそつなくこなす。大内にはそんな仕事の進め方が性に合っているし、そんな真面目な性格が上に気に入られているのだと、自分では思っている。
菊田カスミの不倫報道だけではない。投書には雑誌の記事に関する様々な反論やコメントが書かれている。最近はやりのセックス記事については、ライバル社の週刊誌の記事の方が面白かったとか、女性の快感についてあまりにも無知な内容だったとの投書もあった。
これはと思った面白そうな投書は、内容をじっくり読んだ。時折、思いもよらない密告情報に出合えるのも、この投書チェックの楽しいところでもある。
某テレビ局の女子アナが不倫しているという密告めいたものが出てきた。芸能人と交際の噂もある美人女子アナだが、男関係が乱れているとの話を聞いたことがある。彼女を妬む者のやっかみかもしれないが、本当なら凄いニュースになるだろう。大スクープに化ける可能性があるので、明日の会議で報告する必要がある。
読み終わった投書に簡単なコメントを書いた符箋を貼って、テーマごとに分けていく。綺麗な字で書かれた白い封筒を手にとった。今は宛先をパソコンでプリントするのがほとんどだが、直接封筒に手書きとは珍しい。大内は封を開けた。四つ折りにされた便箋が二枚と地図、それにDVDが入っている。
「先日、死刑囚の田島仁志の刑が執行されました。しかし、彼は無実です。そんなことを言うとまた悪戯かと思われるかもしれませんが、事実なのです。なぜなら、真犯人は私なのですから」
ミステリー小説のような書き出しを読んで、大内は舌打ちした。田島仁志が処刑された直後、同じような内容のふざけた投書が多数届いた。田島が処刑されて半月が過ぎたが、それでも時折、真犯人は自分だと訴える投書が来る。
「被害者である二人の女性の身体を抉った凶器は、その地図の丸印を付けた場所に遺棄してあります。詳しい場所は、十月十五日の午前八時きっかりに、以下のアドレスにある掲示板に発表いたします。なお、同様の情報はマスコミ各社に送付しておりますので、各社ご一緒に確認いただき、日本中に報じてもらえると幸いに存じます。また、同封いたしましたDVDには、私が被害者を殺害する映像を保存しております。ここに書かれていることが事実かどうか、どうぞ確認してください」
ケースに入ったDVDを見た。手の込んだ悪戯だ。ネット上で拾った無修正のアダルト動画をDVDに保存して送られてくることはよくある。いや、アダルト動画ならまだいい。先日も同じような投書があった。同封されていたDVDを覗いていると、過激派組織「イスラム国」の処刑のフルコースだった。とんでもない残酷な動画に肝を冷やすことも多いのだ。
しかし、何が保存されているのか、見てみたい気もする。そろそろ投書の確認作業も終わるし、クズ情報ばかり読まされて退屈していたところだ。
目の前のパソコンのマウスを動かし、エクスプローラーからDVDドライブを開けた。封筒に入っていたDVDをセットしてドライブを押し込む。ドライブへのアクセスが始まり、ウイルスチェックを終えると新たなエクスプローラーが立ち上がった。
動画ファイルが二つ、保存されている。一つのファイル名はEMI、もう一つはNAOKOとある。大内はそのうちEMIを選び、クリックした。
動画ソフトが起動し、パソコンの画面に映し出された。可愛い女の子が映っている。まだ幼い。未成年者のように見える。
「どうだった?」
嗄れた男の声が聞こえてきた。ビデオを回している男なのだろう。
「言うとおりにしたよ」
「あいつは中に出したのか?」
女が意味ありげにくすくす笑う。やはりアダルト画像のようだ。
「残りのお金だよ」
男の手が画面の中に伸びてくる。五、六万ほどある。女の子がお金を受け取って背中を向けた。カメラが揺れる。少し高いところで視点が固定された。箪笥のような家具の上にカメラを置いたようだ。ドレッサーの前でこちらに背中を向けている女の子の姿が映っている。
突然、男の背中が画面に入ってきた。痩せた男だった。手にロープのようなものを持っていた。
まさかと思っていると、男が後ろから女の子の首にロープをかけ締め上げた。大内は叫びそうになった。
必死で男の手から逃れようと暴れる女の子。足をばたつかせ、つま先がドレッサーに当たる。並べられていた化粧品がばらばらと床に落ちる。やがて、女の子は動かなくなった。彼女の手から、札が床に落ちた。
男が振り向いた。頬のこけた若い男だった。変装しているようには見えない。
カメラが左右に揺れる。カメラを持って移動しているのか、部屋の中の映像が動く。
やがて床に倒れた女の子の顔を大写しになった。目を見開き、小さな口から長い舌がべろんと飛び出ていた。まさに苦悶の表情だった。
大内は気分が悪くなってきた。悪戯にしては手が込んでいる。
男がカメラをテーブルの上に置いた。カバンを開けて中からナイフのようなものを取り出す場面が映し出されている。刃の背中側が鋸のようになっていて木を切ることができる、刃の長い本格的なサバイバルナイフだった。
男はビデオカメラを手に持った。また女の子の姿が映し出された。突然、服の上から女の子の身体にナイフを突き立てた。大内は思わず声をあげた。左手でカメラを持ったまま、右手でナイフを刺しているのだ。画面がぶれるのもかまわず、男は繰り返し、抉るように女の子の身体にナイフを突き刺し続けた。まさにめった刺しだった。
悪戯にしてはよくできた動画だが、まさか、本当に刺しているのか。
男は女の子の右手を取り、血の付いたナイフの刃に指を押し付けた。女の子の指紋をナイフにつけたのだ。それから男はテーブルの上に手を伸ばし、赤い色のキーホルダーのついた鍵をつまみあげた。
「鍵をかければ、死体はすぐに見つからない。二人目を殺す前に見つかるとまずいから、この部屋に鍵をかけることにする」
解説するような男の声が止み、動画が終わった。
大内はもう一度動画を再生し、初めから見た。女の子がナイフで刺されるところで動画を一時停止した。服がボロボロになるほどめった刺しされていたが、血はシャツにわずかに滲んでいる程度だった。
過去に似たような映像を見たことがあった。死体に刺されるナイフ。しかし、出血はしない。すでに息絶えているからだ。
「もしかしたら、これはとんでもないものかもしれない」
大内はシャツのポケットから携帯電話を取りだした。
保安部より届いた投書の山を見て、大内寛はため息をついた。先週号で国民的アイドルの菊田カスミと某テレビ局ディレクターとの不倫記事を雑誌に掲載して以降、抗議の電話と投書が続いている。これらの投書の中身を確認し、対応策も含め明日の会議で発表しなくてはならない。今夜は徹夜になるだろう。
大内寛は手前にある封筒を手に取り封を切る。中に危険なものが入っていないかどうかは、保安部のエックス線装置により既に確認済みである。
カスミちゃんがかわいそうだとひたすら訴えるもの、暴露した記者を絶対ぶち殺すと脅迫めいたもの、逆に、生ぬるい、もっと突っ込んだ記事を書けというもの、カスミだけが名前と顔が出るのは不公平だ、相手のディレクターの名前と顔も晒せというものもある。
確かにあの記事は、二十歳を迎えたばかりの菊田カスミへの配慮が足りなかったように思う。しかし、今が絶頂期の清純派アイドルと既婚の業界人との不倫は、マスコミ関係者にとっては美味し過ぎるネタだ。このネタでしばらくは週刊誌も売れる。
順番に投書を確認していく。書いてあることは様々だが、自分の感情をそのまま文書にしたものばかりで、内容のあるものは少ない。すべてを確認しなくても、適当に報告しても上にはばれはしないだろうが、大内は手を抜こうとは考えなかった。
「あんまり真面目にやっても、いいように使われるだけで美味しい思いはできないよ」
大内にそうアドバイスする同僚もいる。その通りだとは思うが、彼らのように器用には立ち回れない。真面目にコツコツ目の前の仕事をそつなくこなす。大内にはそんな仕事の進め方が性に合っているし、そんな真面目な性格が上に気に入られているのだと、自分では思っている。
菊田カスミの不倫報道だけではない。投書には雑誌の記事に関する様々な反論やコメントが書かれている。最近はやりのセックス記事については、ライバル社の週刊誌の記事の方が面白かったとか、女性の快感についてあまりにも無知な内容だったとの投書もあった。
これはと思った面白そうな投書は、内容をじっくり読んだ。時折、思いもよらない密告情報に出合えるのも、この投書チェックの楽しいところでもある。
某テレビ局の女子アナが不倫しているという密告めいたものが出てきた。芸能人と交際の噂もある美人女子アナだが、男関係が乱れているとの話を聞いたことがある。彼女を妬む者のやっかみかもしれないが、本当なら凄いニュースになるだろう。大スクープに化ける可能性があるので、明日の会議で報告する必要がある。
読み終わった投書に簡単なコメントを書いた符箋を貼って、テーマごとに分けていく。綺麗な字で書かれた白い封筒を手にとった。今は宛先をパソコンでプリントするのがほとんどだが、直接封筒に手書きとは珍しい。大内は封を開けた。四つ折りにされた便箋が二枚と地図、それにDVDが入っている。
「先日、死刑囚の田島仁志の刑が執行されました。しかし、彼は無実です。そんなことを言うとまた悪戯かと思われるかもしれませんが、事実なのです。なぜなら、真犯人は私なのですから」
ミステリー小説のような書き出しを読んで、大内は舌打ちした。田島仁志が処刑された直後、同じような内容のふざけた投書が多数届いた。田島が処刑されて半月が過ぎたが、それでも時折、真犯人は自分だと訴える投書が来る。
「被害者である二人の女性の身体を抉った凶器は、その地図の丸印を付けた場所に遺棄してあります。詳しい場所は、十月十五日の午前八時きっかりに、以下のアドレスにある掲示板に発表いたします。なお、同様の情報はマスコミ各社に送付しておりますので、各社ご一緒に確認いただき、日本中に報じてもらえると幸いに存じます。また、同封いたしましたDVDには、私が被害者を殺害する映像を保存しております。ここに書かれていることが事実かどうか、どうぞ確認してください」
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突然、男の背中が画面に入ってきた。痩せた男だった。手にロープのようなものを持っていた。
まさかと思っていると、男が後ろから女の子の首にロープをかけ締め上げた。大内は叫びそうになった。
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男が振り向いた。頬のこけた若い男だった。変装しているようには見えない。
カメラが左右に揺れる。カメラを持って移動しているのか、部屋の中の映像が動く。
やがて床に倒れた女の子の顔を大写しになった。目を見開き、小さな口から長い舌がべろんと飛び出ていた。まさに苦悶の表情だった。
大内は気分が悪くなってきた。悪戯にしては手が込んでいる。
男がカメラをテーブルの上に置いた。カバンを開けて中からナイフのようなものを取り出す場面が映し出されている。刃の背中側が鋸のようになっていて木を切ることができる、刃の長い本格的なサバイバルナイフだった。
男はビデオカメラを手に持った。また女の子の姿が映し出された。突然、服の上から女の子の身体にナイフを突き立てた。大内は思わず声をあげた。左手でカメラを持ったまま、右手でナイフを刺しているのだ。画面がぶれるのもかまわず、男は繰り返し、抉るように女の子の身体にナイフを突き刺し続けた。まさにめった刺しだった。
悪戯にしてはよくできた動画だが、まさか、本当に刺しているのか。
男は女の子の右手を取り、血の付いたナイフの刃に指を押し付けた。女の子の指紋をナイフにつけたのだ。それから男はテーブルの上に手を伸ばし、赤い色のキーホルダーのついた鍵をつまみあげた。
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解説するような男の声が止み、動画が終わった。
大内はもう一度動画を再生し、初めから見た。女の子がナイフで刺されるところで動画を一時停止した。服がボロボロになるほどめった刺しされていたが、血はシャツにわずかに滲んでいる程度だった。
過去に似たような映像を見たことがあった。死体に刺されるナイフ。しかし、出血はしない。すでに息絶えているからだ。
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