錆びた十字架

アーケロン

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 額から汗が流れ落ちる。歯を食いしばっていても呻き声が漏れてしまう。足が小刻みに痙攣し始めた。もう少し、もう少しで終わりそう。
「ああっ! ああああっ!」
 叫び声をあげた。
 終わった。
 肩で息をする。全身が汗まみれだ。終わった後の爽快感は格別だ。
 ドアをノックする音が部屋に響く。「どうぞ」と声をかけると、ドアが開いて玲奈が顔を覗かせた。
「あまり悩ましい声、出さないでくれる?」
「あら、もしかしてその気になっちゃった?」
 腹筋百回、何とかやり終えた。二日に一度、腹筋を百回こなす。おかげで腰回りの括れを完璧に維持できている。
「もう終わったの? 今日は調子がいいのね」
「いいことがあったから張り切っちゃった」
「いいことって?」
「聞きたい?」
「あとで。もうすぐご飯だからシャワー浴びてきて」
「はあい」
 奈緒美は立ちあがると、その場でTシャツを脱いでトップレスになる。汗がいく筋も小麦色の肌の上を流れ落ちた。
「ほら、腹筋、凄いでしょ」
 アスリートのように割れた腹筋を玲奈に見せつける。
「あなたもしたら? 最近、少しぷにゅぷにゅしているわ。可愛い水着、着れないわよ」
「あんなビキニは着ないから」
 先日一緒にデパートに買い物にいった時に見つけた、ほとんど隠すところのないきわどいビキニのことをいっているのだ。
「プロポーションには自信あるんだけどねえ」
 奈緒美は下着ごとショートパンツを引き下げた。
「また脱ぐ。この露出魔」
 からかうように足を蹴りだすと、つま先に引っかかっていたショーツが、玲奈の脚元に落ちた。
「あのビギニ、気に入っていたんだけど、ここの毛が濃いから着るのは無理ね」
 性毛を撫でながら玲奈をちらっと見た。
「馬鹿なこと言ってると、お酒飲んで眠っている間につるつるにするわよ」
「いいわよ。いっそのこと、ふたりとも小学生みたいにきれいに剃っちゃおうか」
 玲奈の肩に両手を置き、軽くキスする。
「桃香ちゃん、捕まっちゃったね」
 奈緒美が頷いた。桃香は覚醒剤を打って街に出たところを、警邏中の巡査に職務質問された。薬が切れてきたら幻聴と幻覚に襲われる毎日。その苦痛と不快感から逃れるため、すぐに次の薬を打つ。彼女の一回の使用量は、もう一グラムを超えていた。大量の覚せい剤を身体に入れて、正常なはずはない。街に出れば奇異な行動は嫌でも目についてしまう。
「捕まってよかったのよ。このままじゃ、廃人になっちゃうところだったわ」
「どうなっちゃうの?」
「一回捕まってるから、今度は実刑よ。二年くらいかな。それだけ中にいれば、薬は抜けるわ」
「それで、正常になるの?」
「抜けるでしょうけど、出てきたらまた手を出すでしょうね。売人がすぐに近づいてくるから」
「誰がいつ出てきたかなんて、どうやって知るのかしら?」
 情報を流しているのはヤクザだ。ヤクザは直接クスリには手を出さずに、売人からカスリを取る。かつてのお得意様が娑婆に出てきたら、子飼いの売人に情報を流してやる。売人から接触されると、かつてのジャンキーのほとんどが誘惑に抗しきれずに再び薬に手を出してしまうのだ。
「今度詳しく教えてあげるわ」
「じゃあ、早くシャワー、浴びてきて」
 玲奈は床に落ちていたショーツを拾い上げると、「洗濯かごに入れておいて」といって奈緒美の頭に乗せた。
 脱衣室の洗濯かごに汗まみれになったTシャツとショーツを放り込み、バスルームで熱いシャワーを浴びた。
 昨夜、斉藤の死体が見つかった。酒に酔ってバーの入っているテナントの非常階段から落下したとのことだった。
 警察は事故死だと言っているが、永井の言うとおり、もしかしたら殺されたのかもしれない。
 エリカにもう一度会って、「死刑廃止を訴える会」のホームページにあった藤森俊夫の写真を見せた。だいぶ前だからはっきりと覚えていないけど、以前自分に接触してきた男に似ているかも。少し頼りない返事だったが、別人だといわれるよりかはましだ。
 単なる偶然じゃない。藤森俊夫が田島仁志の起こした事件に何らかの形で関わっている可能性がある。田島が無実の罪で処刑された可能性も高い。それを暴き出せば、凄い騒ぎになるかもしれない。奈緒美のジャーナリストとしての評価も上がるだろう。
 さて、藤森をどのように攻めるか。
 身体を洗った後、最近買ったばかりのシャンプーで髪を洗った。シャンプーを洗い流し、バスルームを出る。垂れ落ちる滴で脱衣室の床が濡れる。バスルームを出る前に中で身体をよく拭くようにいつも玲奈に注意されているが、昔からの習慣はなかなか抜けない。バスタオルで身体を拭い、髪の水分を吸い取らせる。ショートヘアーにしているから手入れは楽だ。バスタオルを頭に巻いてリビングに顔を出した。
「髪を洗ったの?」
「汗だくになったから」
「乾かしてきたら?」
「面倒くさいし、お腹空いたし」
 いい匂いが漂っている。テーブルの上には、サーモンのムニエルとパスタのサラダ、それにコーンスープが並んでいる。玲奈は料理が得意だ。本当によくできた女房だと思う。
 テーブルの中央に置いてある鉢に入った、三度豆の胡麻和えが目に入った。
「なぜ、このメニューに胡麻和え?」
「今日、お母さんがここに来たの。あなたが帰ってくる前に」
「あら、そうなの?」
「男の匂いがしないか確認に来たのよ、きっと」
 玲奈の両親が、この中古の3LDKマンションを娘に買い与えた。それまで一緒に住んでいたアパートの隣の部屋の女性宅に男が侵入して騒ぎになったので、不用心だと言って防犯カメラとオートロックと警備員付きのこのマンションを、玲奈の両親はローンではなくキャッシュで買ったのだ。
 ひと部屋を奈緒美が間借りしていることになっているが、家賃を払ったことはない。それどころか、料理も掃除もしたことがない。玲奈は奈緒美の食事を作り、洗濯をし、奈緒美の部屋を片付けて掃除をしてくれている。玲奈の方が奈緒美の下着の置き場所に詳しいくらいだ。
 一度持ちかけた箸をテーブルに置き、両手を合わせた。
「私がこうやって人間らしい生活ができるのも、玲奈様のおかげです。感謝感謝」
 くすりと上品に笑うと、さ、食べましょうと言って、スパークリングウォーターの入ったグラスを奈緒美の前に置いた。
 テレビを見ながら二人で食事をした。玲奈の作る料理はどれも美味しい。それに、奈緒美の好みもよく理解している。本当に隅々までよく気のつく女だと思う。
「内心、がっかりしたでしょうね」
 突然、玲奈が口を開いた。
「なにが?」
「お母さん。居着いているのが男じゃないとわかって」
 玲奈がスパークリングウォーターをグラスに注ぎながらいった。
「どうして? 男の匂いがしなくてホッとしていたんじゃないの、可愛い箱入り娘なんだし」
「それは娘がノーマルだったらの話」
 奈緒美が口に運びかけていた箸を止めた。
「あなたがレズだってばれているの?」
「それはないと思うけど、男に全く興味のない娘のことを気にしているみたい。恋人、作らないのかってしきりに聞かれたわ。まあ、いることはいるんだけど」
 彼女がちらっと奈緒美の方を見る。眼がどこか寂しげだった。
「もしかして、結婚とか、勧められた?」
「そこまでは言われてないわ。まだ二十四だし。でも、時間の問題ね。いろんなところから話が来ているみたいなの、見合いの。でも、男より始末の悪い女が居着いちゃってるから、しばらくは無理って言っておいた」
 玲奈は高校生の時、公園のトイレに男に引きずり込まれて乱暴されかかったことがあった。幸い通行人の騒ぎで事なきを得たが、それ以来男を受け付けなくなってしまっている。
「どうするの?」
「どうするって、今のままよ」
「いつまで?」
 玲奈が顔をあげて奈緒美を見た。彼女の強い視線に、胸がどきっとした。
「私も、あなたに同じことを聞きたいわ」
「ずるいわよ、先に聞いたのは私の方よ」
「ずるいのはあなたよ。結婚の話を出してから、ずっとおかしいもの。結婚の話題を避けてるじゃない」
「そんなことないわよ」
「いいえ、そうよ!」
 玲奈の両目から、大粒の涙が零れた。
「ちょっと!」
 奈緒美はあわてて席を立ち、玲奈に駆け寄った。玲奈は下を向き、肩を震わせて泣き出した。喧嘩をしたとき眼を潤ませることは今までもあったが、気丈な彼女がこんな泣き方をするのは初めてかもしれない。
「大丈夫……」
「大丈夫じゃないわよ」
 玲奈を後ろから抱きしめる。
「あなたのように深く考えたことがないだけなの。今まで一度も。だから戸惑っているだけ。あなたと結婚して子供を持つ生活を、まだ実感できないの。だから、もう少し待って……」
 抱きしめる手に、玲奈が手を置いた。

 重苦しい食事を終えると、玲奈は食器を手早く片づけバスルームに向かった。その間、何を話していいかわからず、奈緒美はずっとテレビの方を向いていた。ただ眺めていただけなので、どんな番組を放送していたのかすら覚えていない。
 入浴後、彼女は自分の部屋に入ったきり出てこなかった。午後十時過ぎになり、焼酎を炭酸で割ってレモンジュースを垂らし、グラス二杯の酎ハイを作った。
 ドアを軽くノックしてドアを開けた。机に座っていた玲奈が振り向いた。
「何していたの?」
「明日の授業の準備よ。でも、ちょうど終わったところ」
「ちょうどよかった」
 部屋の中央にあるテーブルに座り、酎ハイを置いた。
「さっきはごめん」
「謝ることないわ。急に泣き出した私が悪いの」
 机から離れテーブルの前に座ると、グラスを持ち上げて半分ほど一気に飲んだ。アルコールの弱い彼女にしては大胆な飲み方だった。
「喉が渇いていたから」
 奈緒美の視線に気づいた玲奈が、微笑みながらさらにもう一度グラスに口をつけた。
「あなたと結婚しても、いいかもしれない」
 玲奈がちらっと奈緒美を見た。
「だって、玉の輿じゃん」
「父に勘当されるかも」
「でも、孫ができれば考えも変わるわ。血のつながった娘の子供だもん。人工授精でできた子供でも、きっとかわいがるわよ」
 玲奈がため息をついた。
「無理しなくてもいいわよ。別に急かしているわけじゃないの」
「無理なんてしてない」
「あなたの場合は、自分の将来をもっとじっくり考えた方がいいの。私より人生の選択肢が多いんだから。私のこと、変に慰めようとしないで。大丈夫だから」
 これでこの話は終わり。そういってグラスの残りを飲み干すと、奈緒美に空のグラスを差し出し、お代わり作ってきてといった。
 二杯目の酎ハイを飲みながら、玲奈はよくしゃべった。いつもの明るく美しい笑顔で。でも、心の中はきっと湿っている。今彼女がどんな気持ちか、奈緒美だからこそよくわかる。
 アルコールに弱い彼女は、すぐに顔をきれいなピンク色に染まらせた。身体もどこかふらつき気味だった。
「もう寝ようかしら。でも、まだ十一時ね」
「そうよ、まだ十一時よ」
 玲奈の身体を抱き寄せ唇を重ねた。火照った彼女の顔の熱を間近に感じ、胸が高鳴る。
「パジャマに着替えさせてあげる」
 玲奈のトレーナーの裾を掴み、頭から抜いた。彼女はブラをつけていなかった。ピンク色に染まった豊かな乳房に視線を落とす。そっと手を触れると、彼女の口から甘い吐息が漏れた。
 さっきのことを誤魔化そうとしている自分に、微かな罪悪感がよぎった。
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