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カミングアウト する?しない?
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雷打くんは下宿代として家事を担当している。そろそろ仕事の時間だと言う雷打くんに利章もついていって、小夏と私でツリーハウスに登った。
窓の真正面の壁に寄りかかって並んで座る。窓の外は日が傾き始めて冷たそうな風の音。まだ中は日差しの温もりが残ってる。
「薮さんにも里比斗さんにも言われたよ。私たちはお互いを大好きなことが分かりやす過ぎるって」
小夏は驚くほどすぐに言いたいことを理解した。
「カミングアウトするかってこと?
普段離れて生活してるから会えるとつい暴走しちゃうんだよね。
女子のスキンシップ多めなのって男子よりは目立たないけど、私たちの行動もカミングアウトの範囲も決めないとってこか」
小夏は窓の外を見ているような角度で考えに集中して、それが言葉に出る。
「うちのお父さんとお母さんは知ってるかもしれないし、言っても大丈夫。
薮さんたちに気付かれたなら外ではもう少し気を付けて、スキンシップもナシにしよっか」
小夏は性別問わず付き合うのは私が初めてっぽいんだけど、なんか妙に慣れてるんだよね。
そんな私の視線を読み取って小夏が教えてくれたのは、かなり予想外のことだった。
「私腐女子だから、それ関係のことは詳しいよ。愛理に会うと舞い上がってまあいいやって外でもイチャついちゃうけど、頭では分かってる」
「ふじょし?」
って腐女子?
「うん。お父さんが私の部屋を見せちゃダメって言うのはそういう本が置いてあるから。
私も引かれちゃうかなって思ってそうしてたけど、これから外でイチャつけないなら変に隠して不安になるより言っとくね。
外で男の子を見てる時はときめいてるんじゃなくて腐った妄想してるだけだし、きわどい本を読むと楽しいけど愛理と手を繋ぐ方がずっとときめく」
言いながら貝殻繋ぎをしてきて、指先を開いたりきゅってしたり親指で私の手の甲を撫でたりしてる。
言葉も仕草も嬉しくて照れくさくて、ほんわかするような舞い上がるような不思議な気持ち。
私も大好きって言いたいのに。
「プニプニしてて気持ち良いでしょ」
なんで私ってこうなんだろう。
小夏が私とつないだままの手を大きく上下に一回振った。
「もう!そういう意味じゃないの!分かってるくせに!」
手をほどかれてしまって今からでもちゃんと言おうって思ったら、ケーキを食べた時のように膝立ちの小夏に抱きしめられて胸に耳が付けられる。
「長女のガマン癖? それとも利章くんは運動できるし花織ちゃんは細いし、なんて気にしてる?『かわいい』も『好き』も信じられない?
私が愛理にときめいてるのは信じて。私には大好きも欲しいも言っていいんだよ」
小夏を抱きしめ返して少し顔を上げて肩に顎を乗せる。
「小夏が大好き。独り占めしたい」
「うん、私も」
少し感覚を味わってからゆっくり離れる。
「でもずっと一緒にいたいなら、それじゃダメなんだよね。だから外では手はつながない」
「うん。でも不安にならなくていいんだよね?」
「うん」
薮さんの家に戻って、帰りたがらない利章を車に乗せて帰る。小夏を家まで送るつもりでいたら断られた。
「この時間の国道めっちゃ混むもん。おやすみの電話が長い方が嬉しいから電車で帰って色々済ませとく。愛理も家の手伝いとかあるでしょ?」
「そうだね。じゃあ、夜に」
ツリーハウスを降りてから今まで小夏に触っていないのに、帰り際に薮さんとも従弟さんとも結構話したのに、今までよりも安心っていうかゆったりした気持ちでいることができて、夜に電話した小夏の声もいつもより温かく聞こえた。
窓の真正面の壁に寄りかかって並んで座る。窓の外は日が傾き始めて冷たそうな風の音。まだ中は日差しの温もりが残ってる。
「薮さんにも里比斗さんにも言われたよ。私たちはお互いを大好きなことが分かりやす過ぎるって」
小夏は驚くほどすぐに言いたいことを理解した。
「カミングアウトするかってこと?
普段離れて生活してるから会えるとつい暴走しちゃうんだよね。
女子のスキンシップ多めなのって男子よりは目立たないけど、私たちの行動もカミングアウトの範囲も決めないとってこか」
小夏は窓の外を見ているような角度で考えに集中して、それが言葉に出る。
「うちのお父さんとお母さんは知ってるかもしれないし、言っても大丈夫。
薮さんたちに気付かれたなら外ではもう少し気を付けて、スキンシップもナシにしよっか」
小夏は性別問わず付き合うのは私が初めてっぽいんだけど、なんか妙に慣れてるんだよね。
そんな私の視線を読み取って小夏が教えてくれたのは、かなり予想外のことだった。
「私腐女子だから、それ関係のことは詳しいよ。愛理に会うと舞い上がってまあいいやって外でもイチャついちゃうけど、頭では分かってる」
「ふじょし?」
って腐女子?
「うん。お父さんが私の部屋を見せちゃダメって言うのはそういう本が置いてあるから。
私も引かれちゃうかなって思ってそうしてたけど、これから外でイチャつけないなら変に隠して不安になるより言っとくね。
外で男の子を見てる時はときめいてるんじゃなくて腐った妄想してるだけだし、きわどい本を読むと楽しいけど愛理と手を繋ぐ方がずっとときめく」
言いながら貝殻繋ぎをしてきて、指先を開いたりきゅってしたり親指で私の手の甲を撫でたりしてる。
言葉も仕草も嬉しくて照れくさくて、ほんわかするような舞い上がるような不思議な気持ち。
私も大好きって言いたいのに。
「プニプニしてて気持ち良いでしょ」
なんで私ってこうなんだろう。
小夏が私とつないだままの手を大きく上下に一回振った。
「もう!そういう意味じゃないの!分かってるくせに!」
手をほどかれてしまって今からでもちゃんと言おうって思ったら、ケーキを食べた時のように膝立ちの小夏に抱きしめられて胸に耳が付けられる。
「長女のガマン癖? それとも利章くんは運動できるし花織ちゃんは細いし、なんて気にしてる?『かわいい』も『好き』も信じられない?
私が愛理にときめいてるのは信じて。私には大好きも欲しいも言っていいんだよ」
小夏を抱きしめ返して少し顔を上げて肩に顎を乗せる。
「小夏が大好き。独り占めしたい」
「うん、私も」
少し感覚を味わってからゆっくり離れる。
「でもずっと一緒にいたいなら、それじゃダメなんだよね。だから外では手はつながない」
「うん。でも不安にならなくていいんだよね?」
「うん」
薮さんの家に戻って、帰りたがらない利章を車に乗せて帰る。小夏を家まで送るつもりでいたら断られた。
「この時間の国道めっちゃ混むもん。おやすみの電話が長い方が嬉しいから電車で帰って色々済ませとく。愛理も家の手伝いとかあるでしょ?」
「そうだね。じゃあ、夜に」
ツリーハウスを降りてから今まで小夏に触っていないのに、帰り際に薮さんとも従弟さんとも結構話したのに、今までよりも安心っていうかゆったりした気持ちでいることができて、夜に電話した小夏の声もいつもより温かく聞こえた。
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