俺のカノジョに手をだすな!

みのりみの

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ミリオン

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『winter sky』を発売したら初のミリオンを達成した。
年末近く、本格的に寒くなった頃だった。

「やったよー!ついに!」
聖司は満面の笑みだった。アッキーは男くさく泣いていたのを知っている。


『おめでとー!すごい!!』

電話でひろこも喜んでくれた。
毎日決まって12時。
さすがに12時ぴったりには電話ができない時もあるけど、ひろこは必ず電話に出てくれた。

「今日、優しい男は現れた?」
『現れてないよ!』

これが通例の挨拶に変わった。

年始の必ず行けてた新潟も行けなくなった。予想以上に年明けのツアーの準備に手こずっていたからだ。
初めての事で俺たちも何が何だかわからないまま日々慌しく過ごしているようなものだった。

「年明け、ひろこはいつ休み?」
『えっとね。去年とほぼ同じ。元旦から7日までだよ。8日から仕事だから。』

俺たちは1月から全国ツアーがスタートする。
6日から沖縄入りだった。今度はここで無理矢理ひろこと会うしか方法はなかった。

「沖縄、1泊だけど来ない?」

『ツアーだよね?』

「そうだよ。いい加減、顔見たいよ」


俺はまた6日から1泊でホテルを取り、沖縄行きの航空券をひろこに送った。
ホテルは自分達が泊まるホテルからほど近くにあるヴィラにした。
短い時間でも、2人だけでいたかった。

しかし問題は立ちはだかるのも恒例でこの俺の計画も危うくなった。

「6日なんて到着したらすぐ挨拶周りに番組のロケだよ。」

「ロケ?なんだよそれ。俺たちアーティストだよ。タレントじゃないじゃん。」

聞けば以前ひろこと知り合えたきっかけとなった大阪放送と同じように、沖縄のローカル放送局での番組ロケに参加するスケジュールだと言う。
時間も何時に終わるか分からないというスケジュール調整が日頃のアッキーの疲れなのかグダグダだった。

「占い師?なんかこえーな。」

隣にいたケンとアッキーからロケの資料をもらうと有名な占い師の元へ行き、メンバー1人1人占ってもらうらしい。

「あ、この人知ってる。超有名だよ。前にまだ若い女優の死を予言して本当に死んだり、未解決犯を予言して当てた事もあるんだよ。」
ケンは真剣な顔でみんなに言った。

「え?じゃあ俺占ってもらいたい。」

聖司は意欲的だった。

「聖司、こうゆうの好きだったっけ?」

「面白いじゃん。SOULの今後を占ってもらうよ。」

仕事とはいえ、怪しい占い師に人生占ってもらうなら、ひろこと一緒にいて一瞬でも俺の人生を潤してもらった方が得策だ。

「アッキー、悪いけどこの占い師、翌日の夜に変更できない?俺だけ翌日収録。ダメ?」

仕事仕事で俺も限界だった。

合宿みたいな音楽漬けのレコーディングに新曲のプロモーションであっちこっち飛び回り、取材は取材で毎回同じ事をどこも聞いてくる。
ひろこに会いたくて頭がいよいよおかしくなりそうだった。


「アッキー、渋谷10分くらいつきあってよ。」

「今度はクリスマスプレゼントか?」

平日午前中の渋谷西武へ俺はまたひろこにプレゼントを買いに行った。
クリスマスだからアクセサリーにしようと思ってカルティエに入った。

「春、指輪か?」

また甲斐甲斐しく買い物について来てくれるアッキーだけど、これは当たり前の事になった。

外出時は今までキャップが必需品だったけど伊達メガネも加わる事になった。それにマスクを加えても分かる人はSOULのHARUだと分かる。チラチラ見てたり後をつけて来たり。声をかけて来た時は丁寧に対応するけど、もう自分のマンションの部屋番号まで知られている。マンションならセキュリティは固くて安全だけど熱狂的なファンでお金持ってる子なんかは俺と同じマンションに部屋を借りたなんて話をスタッフから聞いた。もう1人でいる事に身の危険があるかもしれないのだ。
ファンは大事だけど、ファンだって色々な人がいる。ストーカー被害だって珍しい話ではない。事務所はメンバーの安全確保には重々目を光らせていた。アッキーもアッキーなりに目を光らせていた。ファンに遭遇したりするとアッキーがいつも間に入ってくれていわばボディーガードに徹してくれていた。

SOULのHARUが渋谷のカルティエで指輪買ってたなんてアッキーからしても他の人には見られたくないもんだからピリピリするんだろうなと思いながら顔を見るとアッキーはそこまでピリついた顔をしていなかったから俺は少し笑顔になった。

「指輪はまだ。」

本当はあげたい。
でも自分の中で指輪をあげるのは結婚する時って決めていた。

色々見てダイヤの入ったネックレスに決めて包んでもらった。

「ひろこちゃん、来年はこっち戻るかもな。」

アッキーの言葉に俺は振り返った。

「え?本当?いつ頃?」

ひろこが東京に戻ってくるなんて今の俺の中では特大重大ニュースだ。俺はアッキーに食いついた。

「遊井さん、ずいぶん動いてるみたいだよ。けっこう東京の仕事依頼も入ってきてるらしいんだけど、かなり遊井さんも厳選してるね。こないだ出版社のやつと飲んだんだけど、気になる女の子を読者アンケートとったらひろこちゃんダントツ1位だったらしいぞ。まぁCMもPVもあれだけ評判良かったしな。業界内でもひろこちゃんファンの制作陣って多いんだよ。獲得に乗り出すんじゃないか?」

待ちに待った東京進出。
今の俺にとってこれ以上の幸せはない。
俺は東京に戻ったあかつきにはひろこをうちのマンションに誘ってそのまま無理矢理一緒に住もうと考えていた。

もう、離れている事がつらかった。

「ひろこ、戻ってきたら一緒に暮らしていいよね?」

「は?もう同棲?!」

アッキーは開いた口が塞がらないって顔をしていた。

「ひろこにはまだ言ってないけど、そうするつもりだよ。」

「何言ってんだ。まだハードルはあるだろ。ひろこちゃんとこの社長をクリアしなきゃ。しかも事務所も事務所で戻ってくるなら相当立派なマンション用意するだろうよ。」

「・・そうだ。」

まだラスボスがいる。


紙袋とチョコレートを受け取って俺は渋谷の寒空を見た。
早く東京に戻ってきてほしい。
そしたら毎日会えるんだ。


クリスマスも正月も今年は仕事。この数年は毎年の事だけど、5ヶ月もひろこに会えてない。
さすがに申し訳なくなっていた。


「それでは歌って頂きましょう。SOULのみなさんで、winter sky です。」

クリスマスの恒例音楽生番組。
冬の時期にあやかりスマッシュヒットとなったこの曲は長いこと1位に君臨した。


『winter skyって新潟の時の私達の歌?』

ひろこに電話で聞かれた。

「そうだよ。」

あの頃はまだ、どうしていいか分からなかった。
毎日毎日付き合ってるのが夢のようで、夢なら覚めないでくれと思った。
恋人同士のはずなのに、恋人同士でいたくてしょうがなかった。


『あの時、リフトでキスして春は怖くなかったの?』

「怖くなかったよ。怖かった?」

『ドキドキしたよ。』

怖くてドキドキ、じゃないのが分かった。

早くひろこに会いたい。




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