マネージャーの苦悩

みのりみの

文字の大きさ
2 / 36

デビュー

しおりを挟む
毎日発信されるオーディション情報の中から応募するのを厳選した結果、生放送深夜情報番組のひな壇にアイドルが20人必要らしく俺の目は止まった。深夜でもいかがわしい番組でもない。ひな壇でもレポーターとしての出演もある。しかも平日帯放送。
これは顔が知れるチャンスだ。

20人なら半分以上は大手事務所のコネや局側の大人の事情で決まる。数少なそうな残りの席を俺は狙った。

うちの事務所は一応業界では安定した大手芸能事務所の若手女性アイドル部門、いわゆる子会社的な立ち位置で弱小ではない。オーディションでのコネなしフリーは推定3席のために300人以上のアイドルの卵から売り出し中のタレントが来た。

深夜放送となると18歳以下はNGのため、必然的にひろこは最年少応募となる。

とにかく笑顔で、元気よく、生意気な口だけはするな、いくら下っ端のスタッフでも愛想をよくしろ!とひろこに釘を刺した。

「・・ニコニコ、愛想振りまいてればいいの?」
「そう。」

ダルそうにしながらも知り合いのスタイリストが用意した赤いワンピースを着てオーディション会場へ連れて行った。

裾がフワリとしてるがウエストの細さがくっきり分かる。それがなんとも極上なかわいさと生意気さを合わせ持った雰囲気を醸し出した。

「このワンピースほしいんだけど。」
「それはスタイリストに聞かないと分かんないけど、欲しいなら買取かもな」
「買取?くれないの?」 

まだまだ世間知らずの高校卒業控えた18歳。
春からは一気に働いてもらうつもりだ。

「オーディションで受かったら社長が絶対買ってくれるよ」

「じゃあがんばる!大学受からなかったから卒業式に進路言えなくて恥ずかしくてさ。あたしだけだよ。うちの学校で進路が就職になるの」

「あと、この番組決まったら帰宅が遅くなるし目黒にある会社借上の物件、1部屋用意するって。社長が。」

「え?いいの?タダ?」

「そうだよ。会社の借上だから。」

「このオーディション受かったら一人暮らし?やったー!」


ひろこは杉並の自宅に両親と住んでいたけど、どうやら一人暮らしという事に憧れはあったらしい。これには喜んでいた。

オーディションが終わった夜、番組プロデューサーから連絡があった。

「遊井くんとこの新人。いいね」

なんとも面白いテレビマンな柳 秀光さんという番組プロデューサーは言った。 

「安藤はどおでしたか?」

「受けた子の中で最年少なんだね。あれはいいぞ。話してもおもしろかった。俺の義理の弟が代理店なんだけど弟も素材がいいって今書類見て言ってる」 

やっぱり。

さっそく敏腕プロデューサーのお目にかかるとはやっぱり俺の目は確かだったんだと思った。

「実はね、今回20名募集だけど20人全員がこちらの都合でもう決まってんの。でもどうしてもこの子は僕が使いたくて。1人落とすかプラス1でできるかちょっと調整するからね。」

結果はなんとあっさり合格。
大人の事情が勝るこの業界で無理矢理出演にこじつけた秀光さんの力に感謝と同時に秀光さんに気に入られたひろこに俺は拍手だった。

これがタレントあんどうひろこの誕生だった。


「名前、平仮名嫌なんだけど。」

なんとなく平仮名のがいいかなとそのままオーディションの書類も出していたのだが彼女から指摘があった。

「そお?平仮名のがよくない?」
「馬鹿っぽくみえるから苗字だけでも漢字にしてよ。」

馬鹿っぽい。

彼女は馬鹿は嫌なんだとその時分かった。

『MN遊井』

MNとはマネージャーの略語。
ホワイトボードのMN遊井のマグネットの隣には担当するタレントのマグネットと並ぶ。安藤ひろこと名の入ったマグネットと横並びになった。
俺たちの二人三脚が始まった。


深夜00:30からスタートの情報番組「いつかあなたとone night」通称ワンナイ。
平日帯放送。
月曜から金曜まで彼女は生出演。高校を卒業して4/1からのスタート。なんともタイミングの良いスタートを切れた。

番組の20人の女性タレントの中にはコネも絡むのでさすがにオーディションをたった1人勝ち抜いたひろこは最年少な上に注目され前列に座らされた。並んだ子達の中でも一目瞭然の可愛らしさだった。顔は満点。バッチリ見える脚はマネキンような形の良さで両隣に座る子達との差の違いは歴然。TV映りは最高だった。

初回放送時にたまたま髪をお団子ヘアにして出演した。
他のタレントがほぼ全員髪を結いておらず、被るのも嫌だなと思ったヘアメイクさんの意図かは分からないが、はじめて見たお団子頭もやっぱり似合っていた。
無造作に結いたお団子ヘアに顔のパーツが一段と際立っていた。

「ひろぽん、毎回お団子頭で出演したら?いつか徹子さんの後釜になれるかもよ」

秀光さんが俺とひろこに言った。
いつもお団子頭の大御所、徹子さんにあやかってレギュラーでも頂けるのならそりゃ毎回お団子頭でいい。

しかし第一回目の放送に出演した後、お団子頭の子がかわいいとの視聴者センターからご意見があった。
お団子頭でイメージしてくれるなら、と毎回お団子頭で出演する事になった。

共演タレントとケンカしないかと不安はあったが最年少なだけにお姉さんタレントからは可愛がられ、番組は楽しく無欠席で進んでいた。

最年少ひろこの18歳から上は31歳。全員グラビアもやってるわけであり一度ヤンマガのグラビアをひろこは飾ったがあまり楽しそうではなかった。

水着姿が嫌なのか。

「水着になるの嫌なの?」
「馬鹿っぽくない?」

撮影の最中にひろこが不機嫌そうに言った。

「仕事だからやるけど、ここで写真撮られてるならTV局での仕事がしたい。」

「TVが好きなのか?」

「面白いじゃん。TVはみんなでつくってるかんじがして。タレントじゃなかったらADになりたいくらいだよ」

ただTVにでたいだけ、ではないようだ。

しかしそんな強力なワンナイでの出演も2クールで幕を閉じる事になってしまった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

処理中です...