マネージャーの苦悩

みのりみの

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PV

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ダイヤモンドのCMに出てる子かわいいね?なんて名前?

時間もかかる事なく「安藤ひろこ」は世間のトレンドに乗った。

お風呂場から泡まみれになって浴槽の中からダイヤモンドを見つけてイタズラにひろこは笑った。
春くんの歌声にのせて。

このダイヤモンドのCMが通常は外国人のモデルしか起用しない事から日本人の女の子が出てるというのがまた注目されていた。

そんな中キルズアウトというビジュアル系バンドからPV出演のオファーがひろこに来た。
立て続けにビジュアル系バンドと絡む。
なぜ?
俺はキルズアウトの事務所に出向きマネージャーと話したところ、なんとボーカルがひろこのCMを見てPVに使いたいと言い出したらしい。

「ボーカル 俊くん、かっこいいですね」

「ありがとうございます」

マネージャーもマネージャーでこのPVには力を入れているのが分かった。

「ただ、安藤は大阪で仕事をしているのですが、撮影は東京ですか?」

「いや、名古屋でPV撮りなんです。大丈夫ですか?」

東京に来るより名古屋のが手っ取り早い。俺はひろこに相談もせずにOKした。


「キルズアウトって京都出身の4人組ロックバンド。インディーズからデビューして3年目くらいかな。今ジワジワきてて、サードシングルのカップリングがバースデーソングでひろこ主演で踊ってほしいって」

「踊り?私踊れないよ?」

「あー大丈夫。ゆるーいかんじの。当日の打ち合わせ程度でできるってよ」

キルズアウトと聞いて頭を傾げていた。多分面識はないようだ。

「でも東京で収録するの?」

「名古屋だって。名古屋にスタジオがあるらしいぞ。」

ひろこは名古屋と聞いて納得したのか翌月すぐに撮影に入った。

スタジオ内ではキルズアウトのバースデーソングが流れていた。
ひろこはバッグダンサー2人の間に入りフワフワとしたドレスでゆるいダンスを踊った。
妙にフワフワと、誰でもできるような簡単な振り付け。

気の抜けたかんじがそれはそれで可愛くて、これは当たりかも。と個人的に思った。
ずっと見ていたら気怠いダンスとバースデーソングで分かった。
誰でも踊れて誕生日に歌えて。
これはロングヒットを記録するかもしれないと読んだ。

「ひろこよかったぞ。」

タバコも吸いに行かずにずっと立ち会っただけあり、俺は笑顔で言った。
後ろからバンドのメンバー達やスタッフ達が拍手で俺達の方に来た。

「ありがとう。すごくかわいかったよ。イメージ通り。」

ボーカルの俊はひろこの手を握りしめた。

「本当に出てくれてありがとう。」

「とんでもないです。こちらこそありがとうございます。」

ひろこが言う前に俺が挨拶した。 

「安藤さんのCM見て絶対この子にお願いしようって思ってたんですよ。」

カップリングに値するこの依頼を受けた曲は彼女の誕生日をお祝いするという曲。
ビジュアル系なのか?と思うほどポップなサウンドだった。
映像上彼等との絡みはなく普段着でメンバーは立ち会っていたのだがこのキルズアウトも蒼々たる面々だ。
イケメン揃いの4人組。
SOULもそうだがこの手のバンドはファンは相当数つくだろう。

SOULのCM曲がオリコンロングヒット1位を走る最中、これで初登場キルズアウトが2位につけたら1位2位とひろこが絡んだ事になる。
俺はそれに並々ならぬ予感を持っていた。絶対ひろこは注目されるハズだ。


「帰るよ」

俺は仕事も残して来たため収録後の打ち上げには入らず名古屋を出る事にした。

「送るね」

ひろこは俺の横に来たので出口まで2人で歩いた。

「今SOULがオリコンロングヒット1位。これで初登場キルズアウトが2位につけたら1位2位に絡んだのは安藤ひろこだと絶対注目されるはず。それに期待してる」

終電の大阪行きの新幹線のチケットをひろこに手渡した。
ひろこはチケットを見つめたまましばらく止まっていた。
ゆっくり顔をあげて俺の目を見た。

「ねぇ、遊井さん。注目されるかな。本当に注目されてあたし東京に戻れるかな。」

不安に襲われていた。唇が震えているようにも見えた。
CMで全国で注目され次はPV。
このPVでさらに注目され人気を獲得しなければ東京での仕事は巡ってこないんじゃないかと思っていたのだろう。
CMという土台ができたから次で上に這い上がらないと後がないと自分なりに焦りがあったハズだ。
でも俺には確信があった。
関西限定のひろこが表紙の雑誌は完売。
写真集は関西での売上で重版がかかった。
あと少し。あと少しだからこの不安は耐えてくれと心で思った。

俺はひろこの肩を叩いて離れて行った。

乗り込んだ名古屋からの東京行きのぞみは夕方なのにそこまで混んではいなかった。

ビールを2本買って手に持ち、車内の喫煙所に入ると喫煙所で見た事ある男がいた。

「あれ?」

それはCS放送プロデューサー小高の右腕白部くんだった。

「白部くんじゃない?」

パーカーにデニム、スニーカー。
放送局さながらのファッションとアイドル顔負けの童顔な彼に俺はすぐ気がついた。

「あ、安藤ひろこちゃんのマネージャー!えっとお名前・・」

よく考えたらウワサは聞いてるけどちゃんと話した事がないのに気がついた。

「遊井です。」
「ああー!」

俺は名刺を出して彼に渡した。

「タバコ、貰ってもいいですか?ちょうどきらしてて」
「おーいいよいいよ」

俺はそこで白部くんとタバコを吸いながら小高の話になった。
なんでも小高にパシられて大阪のローカルアイドルのサイン会に駆り出されたようだ。

「こんな行くつもりなんて全くないんですけど、小高さんが気になるアイドルが大阪にいて、俺の代わりに誕生日プレゼント渡してきてよって」

「なんだそれ?」

「あの人、種をすごい撒くんですよ。それはマメで尊敬するんですけどねー」

そう言いながらも白部くんはかったるそうに愚痴を少し話してくれた。

話を聞いていたらなんだかこっちが辛くなってきて、手に持っていたビールを1本あげて2人で飲んだ。

プロデューサーに振り回されるディレクター。
まだ若い。
どこかの制作会社の人間だろう。白部くんはほとほとに疲れていた。

「安藤ひろこちゃんも小高さんの標的になってましたけど、遊井さんいるから守られましたね。」

「守るよー小高さんは嫌だもん」

そう言うと白部くんは良かったと言った。

「俺、ワンナイの時から安藤ひろこちゃんのファンなんですよ。だから絶対やめてくれって思ってました」

ここにもひろこのファンがいた、と思った。
俺は慌てて持ってた写真集をあげようとしたけど白部くんは既に持っていると言った。
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