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約束
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「遊井さんさえ時間あれば、夕方だし、少し飲みませんか?」
聖司くんが帰りがけに俺に声を掛けた。これはもう行かない意味は全くない。むしろどうしても行きたくて会場だけ聞いて後で向かうとこっそり言った。
「ねぇ、遊井さんなんでもうみんなと打ち解けてるの?私がいない間に何か話してたの?」
タクシーの中でひろこは俺にブツブツと言って来た。
「挨拶しただけだよ。」
「本当に?」
「本当。」
ひろこが中抜けのためタクシーで大阪放送まで見送り、そこから指定された場所まで向かった。
泊まっているホテルというのがひろこの住むマンション目の前の国道を挟んだ真向かいでビックリはしたが俺は地下にある部屋に向かった。
「おつかれさまです」
用意されたのは居酒屋ではなくソファーとテーブルのあるパーティルームだった。
なぜかスタッフではなくケンくんが瓶ビールを片手に持ち運んで来てどんどん栓を抜いていた。
「とりあえず会えてよかった!遊井さんにカンパーイ」
聖司くんの声で俺はメンバーとそのマネージャー達と一気に宴モードに入った。
SOULにはマネージャーが5人いた。
チーフマネージャーは秋元さん。HARUを担当している。マネージャー5人の中での部長的立ち位置でメンバー全員を見るが基本はHARUの担当。
SEIJIは澤本さんと沢村さん。この2人は秋元さんのAD的な立位置でもあった。2人まとめて呼ぶときはさわさわと言うらしい。
KENのマネージャーは山崎さん。山崎さんはなんとひろこのワンナイ時代からのファンだと言う。見た目オタクっぽいが実は元ギタリストらしい。
YUKIは五十嵐さんという優希と趣味の合いそうなメンバーと同じ歳くらいの男。
SOULは酒好きなのか、呑んだら一気に仲良くなった。
とにかく4人ともよく呑む。
1杯どころか次々と酒を頼み夕方17時なのに宴会と化してしまった。
「あの女、ひどいよなーとかどうせ悪口言ってたんでしょ?ってひろこに言われそうだな」
俺のことばにみんなあっはっはと声をあげて笑い合う。
「あの女、どこがいいの?って遊井さんに言われた?とか絶対聞いてきますよね」
春くんとでさらにひろこをネタに盛り上がる。
こればかりは彼女のマネージャーとその彼氏のネタである。
俺と春くんはひろこの事で大いに盛り上がった。
またひろこの話をする春くんも嬉しそうに。
「俺、遊井さんと呑めてうれしいです。ずっとひろこから話聞いてたんで。うらやましいですよ。ずっとひろこと一緒にいれて」
春くんの言葉に本当にひろこが好きなんだと思った。
「俺も仕事だから。うちの商品売り込むようだけど、春くん、安藤ひろこはいい女でしょ?」
「いい女です。」
春くんはまっすぐ俺の目を見て言った。
その顔はいい顔をしていた。
俺はひろことはスカウトだった話をした。みんな初耳なのか真剣に聞いてくれた。そしてひろこの方向性も模索しているという事。
その時、グラビアの話が出た。
ひろこをグラビアに出しまくれば売れるのはみんな分かってる。でもなんで大阪なの?と当然疑問がちらつく。
「遊井さん、お願いです。ひろこが嫌がるならグラビアやらせないでください」
春くんがグラスを持つ手を止めて言った。
「ひろこが嫌がってやるくらいなら、そこまでやらなきゃひろこが売れないなら俺がひろこを引き取ります。」
場は一瞬しんとした。
「春、、春くん引取るって?」
秋元さんは目をパチパチさせながらびっくりした様子で春くんを覗きこんだ。
「俺が東京に連れ戻して引退させて一緒に暮らして結婚する。ひろこが結婚躊躇したらそりゃ話は別だけど俺が面倒みます」
全員ことばを失った。
俺はタバコの灰をポタンと落とした。
「ひろこ、自分の魅力に気づいてないんです。絶対絶対、ひろこは売れるのにずっと大阪の枠から出れずにもがいてる。グラビアやって全国区で売れなきゃ、それしか東京に戻る道がないなら俺はやらなくてもいいって思ってます」
「違うだろ。春はひろこちゃんの水着姿を全国に見せたくないだけだろ?」
今度はひろこのファンの山崎さんがつっかかってきた。
「それも、あるけど・・」
春くんは照れ隠しにちょっと笑い、その場の全員があぁやっぱりと笑い出した。
「とにかく、やりたくない水着の仕事には手を出さずに全国区で売れて東京に戻って来てほしい。それだけです。」
春くんがひろこの良さを心底分かってくれて、なおかつ好きでいてくれる。
自分を褒められているようで幸せな気持ちになった。
「春くんの気持ちうれしいね。ひろこの事好きになってくれてありがとう。だけどまだひろこを春くんに渡すわけにはいかないんだ。自分でもひろこの魅力はこれから発揮してもらわないとと思ってる。東京にひろこを戻さないとね」
「遊井さん、お願いします」
俺は春くんと約束した。
CMが世に出ると、SOULの楽曲がオリコン初登場1位になった。
発売日に渋谷はジャックされ街中にはSOULの曲が響き、通り沿いのフラッグ、ビルの上の看板は全てSOULのシングルジャケットの明るい紺色に染まる派手さだった。
「今回はCMの手前PRに相当金かけてますから」
秋元さんも事務所もこの曲ではじめから1位を取りに行くつもりだった。
聖司くんが帰りがけに俺に声を掛けた。これはもう行かない意味は全くない。むしろどうしても行きたくて会場だけ聞いて後で向かうとこっそり言った。
「ねぇ、遊井さんなんでもうみんなと打ち解けてるの?私がいない間に何か話してたの?」
タクシーの中でひろこは俺にブツブツと言って来た。
「挨拶しただけだよ。」
「本当に?」
「本当。」
ひろこが中抜けのためタクシーで大阪放送まで見送り、そこから指定された場所まで向かった。
泊まっているホテルというのがひろこの住むマンション目の前の国道を挟んだ真向かいでビックリはしたが俺は地下にある部屋に向かった。
「おつかれさまです」
用意されたのは居酒屋ではなくソファーとテーブルのあるパーティルームだった。
なぜかスタッフではなくケンくんが瓶ビールを片手に持ち運んで来てどんどん栓を抜いていた。
「とりあえず会えてよかった!遊井さんにカンパーイ」
聖司くんの声で俺はメンバーとそのマネージャー達と一気に宴モードに入った。
SOULにはマネージャーが5人いた。
チーフマネージャーは秋元さん。HARUを担当している。マネージャー5人の中での部長的立ち位置でメンバー全員を見るが基本はHARUの担当。
SEIJIは澤本さんと沢村さん。この2人は秋元さんのAD的な立位置でもあった。2人まとめて呼ぶときはさわさわと言うらしい。
KENのマネージャーは山崎さん。山崎さんはなんとひろこのワンナイ時代からのファンだと言う。見た目オタクっぽいが実は元ギタリストらしい。
YUKIは五十嵐さんという優希と趣味の合いそうなメンバーと同じ歳くらいの男。
SOULは酒好きなのか、呑んだら一気に仲良くなった。
とにかく4人ともよく呑む。
1杯どころか次々と酒を頼み夕方17時なのに宴会と化してしまった。
「あの女、ひどいよなーとかどうせ悪口言ってたんでしょ?ってひろこに言われそうだな」
俺のことばにみんなあっはっはと声をあげて笑い合う。
「あの女、どこがいいの?って遊井さんに言われた?とか絶対聞いてきますよね」
春くんとでさらにひろこをネタに盛り上がる。
こればかりは彼女のマネージャーとその彼氏のネタである。
俺と春くんはひろこの事で大いに盛り上がった。
またひろこの話をする春くんも嬉しそうに。
「俺、遊井さんと呑めてうれしいです。ずっとひろこから話聞いてたんで。うらやましいですよ。ずっとひろこと一緒にいれて」
春くんの言葉に本当にひろこが好きなんだと思った。
「俺も仕事だから。うちの商品売り込むようだけど、春くん、安藤ひろこはいい女でしょ?」
「いい女です。」
春くんはまっすぐ俺の目を見て言った。
その顔はいい顔をしていた。
俺はひろことはスカウトだった話をした。みんな初耳なのか真剣に聞いてくれた。そしてひろこの方向性も模索しているという事。
その時、グラビアの話が出た。
ひろこをグラビアに出しまくれば売れるのはみんな分かってる。でもなんで大阪なの?と当然疑問がちらつく。
「遊井さん、お願いです。ひろこが嫌がるならグラビアやらせないでください」
春くんがグラスを持つ手を止めて言った。
「ひろこが嫌がってやるくらいなら、そこまでやらなきゃひろこが売れないなら俺がひろこを引き取ります。」
場は一瞬しんとした。
「春、、春くん引取るって?」
秋元さんは目をパチパチさせながらびっくりした様子で春くんを覗きこんだ。
「俺が東京に連れ戻して引退させて一緒に暮らして結婚する。ひろこが結婚躊躇したらそりゃ話は別だけど俺が面倒みます」
全員ことばを失った。
俺はタバコの灰をポタンと落とした。
「ひろこ、自分の魅力に気づいてないんです。絶対絶対、ひろこは売れるのにずっと大阪の枠から出れずにもがいてる。グラビアやって全国区で売れなきゃ、それしか東京に戻る道がないなら俺はやらなくてもいいって思ってます」
「違うだろ。春はひろこちゃんの水着姿を全国に見せたくないだけだろ?」
今度はひろこのファンの山崎さんがつっかかってきた。
「それも、あるけど・・」
春くんは照れ隠しにちょっと笑い、その場の全員があぁやっぱりと笑い出した。
「とにかく、やりたくない水着の仕事には手を出さずに全国区で売れて東京に戻って来てほしい。それだけです。」
春くんがひろこの良さを心底分かってくれて、なおかつ好きでいてくれる。
自分を褒められているようで幸せな気持ちになった。
「春くんの気持ちうれしいね。ひろこの事好きになってくれてありがとう。だけどまだひろこを春くんに渡すわけにはいかないんだ。自分でもひろこの魅力はこれから発揮してもらわないとと思ってる。東京にひろこを戻さないとね」
「遊井さん、お願いします」
俺は春くんと約束した。
CMが世に出ると、SOULの楽曲がオリコン初登場1位になった。
発売日に渋谷はジャックされ街中にはSOULの曲が響き、通り沿いのフラッグ、ビルの上の看板は全てSOULのシングルジャケットの明るい紺色に染まる派手さだった。
「今回はCMの手前PRに相当金かけてますから」
秋元さんも事務所もこの曲ではじめから1位を取りに行くつもりだった。
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