8 / 36
CM
しおりを挟む
俺はひろこが大事だけど、同時にSOULの動向も気になり始めた。
ネット上のありとあらゆるSOULの情報は入手するようになった。
アルバムを買い、移動中の車なんかで聞くとそれこそファンになりかかってる自分がいた。
『そちらに所属の安藤ひろこさんなんですけど』
そんな中、代理店から突然依頼があった。
大阪にある平松という宝石会社がひろこをCMに起用したいと言う話だった。
しかも全国区でだ。
「はい喜んで!」
もうそんな具合で俺はすぐ代理店へと向かった。
なんでも平松の社長がひろこの音楽番組を観てひろこのファンだという。
ありがたいリクエストに俺は前のめりで話を聞いた。
「楽曲は決まっててSOULの『マリア』って曲です」
「え?」
「SOULです。知ってます?」
「ええ?」
信じられない事にSOULの曲でのタイアップだった。
俺はその足で大阪へ向かった。
先週ひろこと会ったばかりなのに、会ってひろこにこの吉報を報告したかった。
大阪放送の1階ロビーで不審者の如くウロウロと紙袋を持って待っているとひろこが現れた。
「遊井さーん!」
俺はすぐさまひろこに駆け寄った。
「ひろこ!CM決まったぞ!」
「うっそー!やったー!」
ひろこは手で拍手をして目を輝かせた。
「ひろこ、ひろこ、良かったよー」
「関西限定の?でもCMだもんね。」
「違う!全国区だぞ!」
「!」
俺はひろこと抱き合った。
「何それ何それ!全国区?」
「全国区なんだよ!俺も興奮しちゃってさー平松って会社、知ってるか?そこの宝石のCMなんだけど、平松の社長がひろこをTVで見てて使いたいって」
ひろこは今にも泣きそうな顔をした。泣くと言っても嬉し涙。
こんな最高な知らせはない。
「え、宝石?」
「そうそう。深夜とかスポットでよく流れてるの見るだろ?ファニーダイヤモンドのCMだよ。」
「・・・」
「楽曲はSOULだってよ。運命だな」
「・・・」
ひろこは何も言葉が出なくなった。
目が点になってその場から動けなくなっていたらひろこの電話が鳴った。
「ちょっと、待って」
電話を出ると途端に顔が一気に変わった。
「今、私も聞いてビックリしてたの。そう。遊井さんが来ているの。」
彼と話している。
すぐに分かった。
俺はそんな電話をしているひろこを温かく見守った。
「仕事上のご挨拶って何を着ればいいの?」
「ひろこのイメージを損なわないものがいいよ。ほら、こないだ着てた赤い上下のとか。あれひろこっぽいよな。」
後日、俺達は代理店とSOULのご一行様と大阪の平松本社で挨拶に伺う事になった。
ひろこは収録を中抜けして平松までタクシーで来るという。
俺は平松1階でひろこと待ち合わせをした。
SOULも来てるかな、と思いきや1Fに入ると男達の集団の中にメンバー4人はいた。
スーツを華麗に着こなし、メンバーそれぞれ髪色が派手で、アルバムのジャケットからそのまま出てきちゃったという風貌だった。
俺はもうファンなのか、一瞬心がドキッとした。
「お疲れ様です。はじめまして。スミエンターテイメント遊井と申します。安藤ひろこのマネジメントをしております」
俺がその輪に近づいて挨拶をしたら全員が俺を見た。横から小太りな日焼けした男がすぐさま近寄って来た。
「こちらこそ!ご挨拶遅れ申し訳ない。アートライズの秋元と申します」
業界口調の早口で捲し立て名刺を差し出したので俺も名刺を差し出し交換した。
「はじめまして。ご挨拶遅れました。SOULのHARUです。」
冷たそうなクールな瞳はどこか緊張した顔つきで俺に声をかけてきた。
俺は彼を見てハッとした。
顔がかっこいい。
声がかっこいい。
見た目がかっこいい。
分からない。
とにかく醸し出すものが全部カッコよかった。
自分はゲイでもないけど、こんなかっこいい子とつきあえるなんてひろこやるじゃんと思った。
「リーダーの聖司、ギターのケン、ベースの優希です。よろしくお願いします」
HARUがメンバーを紹介して俺に深々と頭を下げた。
やっぱり俺はファンになったのか?目の前でSOULを見て興奮もあった。
「安藤ひろこのマネージャーです。いやーカッコいいね。ビックリ」
ここはビシッと挨拶したいのに俺はなぜか感想を述べていた。
俺の砕けた反応に一同は笑った。
「えーっと。春くん?って呼んでいいの?」
「はい!是非」
俺はメンバー1人づつにも名刺を配った。携帯の番号付きで。無意識だったが、それほどSOULと密になりたかったのかもしれない。
彼の笑った顔も緊張が解けていた。きっと彼なりに緊張していたんだろう。それが一発目の挨拶の緊張した面持ちで俺は分かった。遊びや中途半端な気持ちじゃない。他大勢いる彼女の1人なんかじゃない。真摯に俺と向き合おうとした。自分の大切な女のマネージャーである俺に対して。
この子はひろこに本気なんだ。
「あ!ひろ!」
赤い服を着てひろこが現れた時、メンバーの1人、ゆうきくんが輪を離れてひろこに抱きついた。続いて春くんが輪をでてひろこに駆け寄った。
メンバーとも交流があるのだろう。打ち解けた中でひろこと春くんが笑い合い2人でこちらを見た時、あぁこの2人はお似合いなんだと思った。
誰がどこから見ても恋人同士。
人前だからか、くっついたりはしないが醸し出すオーラが恋人同士だった。
社長室に通され、それぞれ社長に挨拶するも平松の社長はひろこと写真が撮りたいと言った。
スポンサーの手前こんな容易い御用は受ける以外何もない。
「もちろんです!ひろこ!早く」
俺はすぐさまひろこに言ってスマホでひろこと社長の並んだ写真を数枚撮影した。
「SOULもね、もちろんうちのCMで使いたいって一昨年くらいから思っていて、うん。やっぱりいいよね。今歌える?ダメ?」
社長は次にSOUL側にこんなお願いをしてきた。秋元さんが隣の春くんをこづいた。
「あ、全然いいですよ」
彼はハスキーな声でニコッと笑って立ち上がった。
「じゃあせっかくなのでCM曲マリア、歌います」
ネクタイを少し緩めて小さな深呼吸したあとその場でサビを歌った。
アカペラでサビを歌う。
アカペラは難しい。歌の上手い下手が明確にわかるからだ。
ハスキーな声は歌うと強く発声し繊細なメロディーをひとつづつ拾うように歌う。
丁寧に。
音楽に乗せた時よりもスローでCDとはまた違った雰囲気が出る。
右手でとるリズム。
それがまた軽やかで俺は聞き惚れた。
息をするのも忘れて彼の歌声を聴いていた。
人の心に刺さるような、なんとも言えない歌声とメロディに俺は確かにこのSOULのファンになったと思った。
社長室を出るとその余韻で春くんに声をかけた。
「春くん、歌上手いね。俺感動しちゃったよ」
「遊井さん、ありがとうございます」
春くんは笑って俺に会釈をしたと思ったらひろこの横へ行った。
「ひろこ、その服似合うね」
「ありがとう。」
潤んだ瞳で彼を見つめて笑う。笑った目の形は恋する目の輝きがあった。
口角がきゅっと上に向くのがたまらなくかわいくて俺はひろこを見つめていた。
あの、写真集の時のような恋をしているひろこがそこにいた。
ネット上のありとあらゆるSOULの情報は入手するようになった。
アルバムを買い、移動中の車なんかで聞くとそれこそファンになりかかってる自分がいた。
『そちらに所属の安藤ひろこさんなんですけど』
そんな中、代理店から突然依頼があった。
大阪にある平松という宝石会社がひろこをCMに起用したいと言う話だった。
しかも全国区でだ。
「はい喜んで!」
もうそんな具合で俺はすぐ代理店へと向かった。
なんでも平松の社長がひろこの音楽番組を観てひろこのファンだという。
ありがたいリクエストに俺は前のめりで話を聞いた。
「楽曲は決まっててSOULの『マリア』って曲です」
「え?」
「SOULです。知ってます?」
「ええ?」
信じられない事にSOULの曲でのタイアップだった。
俺はその足で大阪へ向かった。
先週ひろこと会ったばかりなのに、会ってひろこにこの吉報を報告したかった。
大阪放送の1階ロビーで不審者の如くウロウロと紙袋を持って待っているとひろこが現れた。
「遊井さーん!」
俺はすぐさまひろこに駆け寄った。
「ひろこ!CM決まったぞ!」
「うっそー!やったー!」
ひろこは手で拍手をして目を輝かせた。
「ひろこ、ひろこ、良かったよー」
「関西限定の?でもCMだもんね。」
「違う!全国区だぞ!」
「!」
俺はひろこと抱き合った。
「何それ何それ!全国区?」
「全国区なんだよ!俺も興奮しちゃってさー平松って会社、知ってるか?そこの宝石のCMなんだけど、平松の社長がひろこをTVで見てて使いたいって」
ひろこは今にも泣きそうな顔をした。泣くと言っても嬉し涙。
こんな最高な知らせはない。
「え、宝石?」
「そうそう。深夜とかスポットでよく流れてるの見るだろ?ファニーダイヤモンドのCMだよ。」
「・・・」
「楽曲はSOULだってよ。運命だな」
「・・・」
ひろこは何も言葉が出なくなった。
目が点になってその場から動けなくなっていたらひろこの電話が鳴った。
「ちょっと、待って」
電話を出ると途端に顔が一気に変わった。
「今、私も聞いてビックリしてたの。そう。遊井さんが来ているの。」
彼と話している。
すぐに分かった。
俺はそんな電話をしているひろこを温かく見守った。
「仕事上のご挨拶って何を着ればいいの?」
「ひろこのイメージを損なわないものがいいよ。ほら、こないだ着てた赤い上下のとか。あれひろこっぽいよな。」
後日、俺達は代理店とSOULのご一行様と大阪の平松本社で挨拶に伺う事になった。
ひろこは収録を中抜けして平松までタクシーで来るという。
俺は平松1階でひろこと待ち合わせをした。
SOULも来てるかな、と思いきや1Fに入ると男達の集団の中にメンバー4人はいた。
スーツを華麗に着こなし、メンバーそれぞれ髪色が派手で、アルバムのジャケットからそのまま出てきちゃったという風貌だった。
俺はもうファンなのか、一瞬心がドキッとした。
「お疲れ様です。はじめまして。スミエンターテイメント遊井と申します。安藤ひろこのマネジメントをしております」
俺がその輪に近づいて挨拶をしたら全員が俺を見た。横から小太りな日焼けした男がすぐさま近寄って来た。
「こちらこそ!ご挨拶遅れ申し訳ない。アートライズの秋元と申します」
業界口調の早口で捲し立て名刺を差し出したので俺も名刺を差し出し交換した。
「はじめまして。ご挨拶遅れました。SOULのHARUです。」
冷たそうなクールな瞳はどこか緊張した顔つきで俺に声をかけてきた。
俺は彼を見てハッとした。
顔がかっこいい。
声がかっこいい。
見た目がかっこいい。
分からない。
とにかく醸し出すものが全部カッコよかった。
自分はゲイでもないけど、こんなかっこいい子とつきあえるなんてひろこやるじゃんと思った。
「リーダーの聖司、ギターのケン、ベースの優希です。よろしくお願いします」
HARUがメンバーを紹介して俺に深々と頭を下げた。
やっぱり俺はファンになったのか?目の前でSOULを見て興奮もあった。
「安藤ひろこのマネージャーです。いやーカッコいいね。ビックリ」
ここはビシッと挨拶したいのに俺はなぜか感想を述べていた。
俺の砕けた反応に一同は笑った。
「えーっと。春くん?って呼んでいいの?」
「はい!是非」
俺はメンバー1人づつにも名刺を配った。携帯の番号付きで。無意識だったが、それほどSOULと密になりたかったのかもしれない。
彼の笑った顔も緊張が解けていた。きっと彼なりに緊張していたんだろう。それが一発目の挨拶の緊張した面持ちで俺は分かった。遊びや中途半端な気持ちじゃない。他大勢いる彼女の1人なんかじゃない。真摯に俺と向き合おうとした。自分の大切な女のマネージャーである俺に対して。
この子はひろこに本気なんだ。
「あ!ひろ!」
赤い服を着てひろこが現れた時、メンバーの1人、ゆうきくんが輪を離れてひろこに抱きついた。続いて春くんが輪をでてひろこに駆け寄った。
メンバーとも交流があるのだろう。打ち解けた中でひろこと春くんが笑い合い2人でこちらを見た時、あぁこの2人はお似合いなんだと思った。
誰がどこから見ても恋人同士。
人前だからか、くっついたりはしないが醸し出すオーラが恋人同士だった。
社長室に通され、それぞれ社長に挨拶するも平松の社長はひろこと写真が撮りたいと言った。
スポンサーの手前こんな容易い御用は受ける以外何もない。
「もちろんです!ひろこ!早く」
俺はすぐさまひろこに言ってスマホでひろこと社長の並んだ写真を数枚撮影した。
「SOULもね、もちろんうちのCMで使いたいって一昨年くらいから思っていて、うん。やっぱりいいよね。今歌える?ダメ?」
社長は次にSOUL側にこんなお願いをしてきた。秋元さんが隣の春くんをこづいた。
「あ、全然いいですよ」
彼はハスキーな声でニコッと笑って立ち上がった。
「じゃあせっかくなのでCM曲マリア、歌います」
ネクタイを少し緩めて小さな深呼吸したあとその場でサビを歌った。
アカペラでサビを歌う。
アカペラは難しい。歌の上手い下手が明確にわかるからだ。
ハスキーな声は歌うと強く発声し繊細なメロディーをひとつづつ拾うように歌う。
丁寧に。
音楽に乗せた時よりもスローでCDとはまた違った雰囲気が出る。
右手でとるリズム。
それがまた軽やかで俺は聞き惚れた。
息をするのも忘れて彼の歌声を聴いていた。
人の心に刺さるような、なんとも言えない歌声とメロディに俺は確かにこのSOULのファンになったと思った。
社長室を出るとその余韻で春くんに声をかけた。
「春くん、歌上手いね。俺感動しちゃったよ」
「遊井さん、ありがとうございます」
春くんは笑って俺に会釈をしたと思ったらひろこの横へ行った。
「ひろこ、その服似合うね」
「ありがとう。」
潤んだ瞳で彼を見つめて笑う。笑った目の形は恋する目の輝きがあった。
口角がきゅっと上に向くのがたまらなくかわいくて俺はひろこを見つめていた。
あの、写真集の時のような恋をしているひろこがそこにいた。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる