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4,8歳のエリナリーゼ
シドに魔法を習って2年が経ち、漸く飛翔魔法をマスターすることができた。スムーズに飛ぶのにはコントロールが難しかったのだ。
この2年の間にいろいろな魔法を教えてもらった。
私が今できるのは飛翔魔法の他には無属性魔法、風魔法、水魔法、光魔法だ。
全部初級だけど、これでも頑張ったのだ。
なにしろ無属性魔法はとても幅広いのである。鑑定や気配感知を始め、瞬時に対象を拘束することのできるバインドは、もし今後また誘拐されるようなことがあった場合に使える魔法である。
光魔法も、治癒魔法だけでなく簡単な結界なら張れるようにもなった。
そもそも屋敷から出ることもないので、誘拐もされないとは思うが念の為だ。
ちなみに今この屋敷に張ってある結界は私が張ったものである。悪意のある者は中に入ることすらできない。
結界には様々な条件を付与することもできるので、今後は結界内に入ると体力や魔力が減る条件を付与してみたりするのもいいかもしれない。
そして、今必死に練習しているのは氷魔法だ。暑い夏に冷気をまとって適温を保ちたいのである。
この世界の夏はからっとして爽やかなのだが、暑いことには変わりない。昔から夏は嫌いなのだ。
氷魔法は水魔法の上級にあたる魔法である。上級魔法はコントロールがとても難しく、習得に時間がかかっているが、絶対に習得したい魔法の一つだ。
飛翔魔法を完全にマスターしたその日の授業を終えると、私は飛翔魔法を使い以前連れ去られて監禁された場所へ向かった。
あの時の事を考えると胸が苦しくなるが、私は自らを追い込むようにその場所へ向かった。あの日のことは1日たりとも忘れたことはない。
あの頃草原に出るまでにさえ無限に感じた飛翔時間は、飛翔魔法をマスターした今10分程度で到着することができた。
そこは以前あった建物が壊され、遺跡のようになっていた。
犯人は既に処刑されているが、それでも許すことはできない。それに私は今でも悪夢にうなされることがあるのだ。
その場で暫くぼんやりとしていると、草を掻き分ける音が聞こえてきた。
音のした方へ視線を向けると魔物がこちらをギラギラした目で見据えている。少し小さいが確かに威嚇してきている。
実際に魔物に遭遇するのは初めてなので、緊張感が高まる。
「ウインドカッター!」
魔物に向けて一番自信のある攻撃魔法を放つと、その魔物の首と胴体は一瞬で離れ離れになり地面へと呆気なく落ちた。
あの頃よりは進歩したな、と思っていると他の魔物が一匹、もう一匹と現れた。
立て続けにウインドカッターを放ち、魔物を仕留めていく。倒れた魔物は魔石のみを残し本体は消失していく。
「これが魔石……」
魔石とは魔物が体内で生成するものであり、強ければ強い程大きく、色も輝いているものだ。これは小ぶりなので、そんなに強い魔物ではなかったのだろう。なぜかはわからないが、強い魔物ほど魔石化するのに時間もかかるらしい。
実践で攻撃魔法を使うのは初めてだったが、思ったよりも冷静に対処することができてホッとした。
その時、私は閃いてしまった。
ここで魔法の練習をすれば良いのでは?
魔物もそんなに強くなさそうだし、ようやく教えてもらっている攻撃魔法を実践で使うにはもってこいの場所だ。
もし怪我をしたら治癒魔法の練習もできるし、防御魔法も使える。
唯一不安なのは魔力量だけだが、自分の限界は分かっている。無理をしなければ問題ないだろう。
そう考えた。
そうと決まれば、今日からここで魔法の練習だ!
シドとの授業を終えてから来たので今は10時過ぎ。午後の授業までは2時間くらい練習できる。
慎重に辺りを見回して魔物の気配を探る。なんだか冒険者になったみたいで楽しい。
気配を感じては氷魔法で魔物を倒す、ということをしているとあっという間に日が昇っていることに気が付いた。
持ってきた懐中時計を見ると12時を少し回ったところだ。
そろそろ帰らないと、午後の授業に間に合わない。魔力量もいい感じに減ってきている。
もっといたかったがまた明日来ることにしよう。
飛翔魔法で屋敷に戻るため、王都へ入ろうとすると弾かれてしまった。入ることができないのだ。
「え、なんで?」
来る時は問題なかったのになぜ?
と思った瞬間に思い出した。この王都には結界が張ってあるのだ。理由はもちろん、敵や魔物を侵入させないためだ。
敵意はなくとも飛翔魔法を使っているから入れないのだろう。
仕方なく地面に降り王都へ入る。
しかし、ここで問題発生だ。
「子供が一人でこんなところで何を?」
と門番の騎士に止められてしまったのだ。
そうだった、私はまだ8歳の子供だった。
ちょっとコンビニ行ってくるわ、くらいのノリで来てしまったけど、この場合どうするのが正解かしら?
いっそこの騎士達をスリープで眠らせて強行突破しようかな?と考えるがそれはそれで問題になりそうだから止めておこう。
「…乗っていた馬車が襲われて、逃げてきました。最初に見えたのがここだったので休憩したいと思い来たのです。」
と適当に言うと、その騎士は少し同情したような表情になり徐に水晶のようなものを取り出した。
「そうか、大変だったな。では念の為この水晶に手をかざしてくれ」
えっ、信じたの?自分で言っておきながらこんな怪しい子供を簡単に信じてはダメじゃない。そう思いながら水晶に手をかざすと青色に光り、騎士は満足げに頷いた。
「よし、通っていいぞ。ゆっくり休めよ。」
こんなあっさり……。そしてこの騎士さん、なんと私にお金を渡そうとしてきた。
「大丈夫です。宿を借りるくらいのお金はありますから。」
そう言うと安心したように優しい顔になった。いい人だな、と思い私の胸は温かくなってきた。でも騎士には向いてないんじゃ……?
それにしても入れたことに安堵したが、毎回続くのは面倒だ。
街を出入りする時は身分証明書が必要なのかを聞いて見ると、10歳以上は必要だが私は子供なのでいらないようだ。子供だって悪意を持つ者はいると思うんだけど、王都なのにこんなに簡単な警備で大丈夫なのかな?
「じゃあ例えば私が明日出入りするには身分証明書は必要ない?」
「あぁ、君の顔は覚えたからな。ここで悪さをしなければ問題ないよ。それにそんな心配は不要そうだしな。でもあまり外に出るのは止めておいた方がいいんじゃないかな。」
なるほど、要は出る時もここを通ればいいだけの話だ。
「ありがとう!じゃあまた明日ね。お仕事お疲れ様です!」
とおよそ8歳児とは思えない台詞を満面の笑みで言い、屋敷へと帰る。
といってもまさか正面から堂々と入るわけにはいかない。抜け出してきたわけだし。なんだか悪い事をしているみたいだ。
脇道に入り人目につかない所から飛翔魔法で屋敷へと向かう。屋敷に張ってある結界は、私が張ったものなので何の問題もなく入れる。
そして私は何事もなかったかのように、自分の部屋へと戻ったのである。
部屋へ戻ると授業が始まる10分前だった。
今日は月曜日なのでリシェ語だ。
既に完璧になりつつあるリシェ語で良かった、と思い用意してあったサンドイッチを急いで食べながら着替えをする。
ちなみに午後の授業は、月曜日はリシェ語、火曜日は歴史と地理、水曜日はマナーや教養、木曜日は読み書きや算術、金曜日はダンス、土曜日はピアノといった具合だ。
まぁ読み書きと算術は前世の知識があるから既にできるんだけど、あまりできすぎてしまうのも不自然かと思い、失礼ながら少しわからないフリをしたりしている。それでも優秀と言われていて、そろそろこの授業はなくなる予定だ。
急いで食べ終えると、休憩する間もなく時間ぴったりにアンナが来た。
「お嬢様、時間になりましたので本日の授業を始めさせていただきますね。」
その言葉でリシェ語の授業は始まる。
アンナの授業はテストが中心だ。
何せアンナを専属メイドにして常にリシェ語で会話をしているのだ。だから私が会話で間違えた所を中心にテストを作ってくれる。
そして、それをまた会話に取り入れて確かなものにする。
そんな実践的な授業を2年間続けて、リシェ語はかなり上達したと思う。
アンナに安心感を抱き今日も授業は和やかに終わる。
この2年の間にいろいろな魔法を教えてもらった。
私が今できるのは飛翔魔法の他には無属性魔法、風魔法、水魔法、光魔法だ。
全部初級だけど、これでも頑張ったのだ。
なにしろ無属性魔法はとても幅広いのである。鑑定や気配感知を始め、瞬時に対象を拘束することのできるバインドは、もし今後また誘拐されるようなことがあった場合に使える魔法である。
光魔法も、治癒魔法だけでなく簡単な結界なら張れるようにもなった。
そもそも屋敷から出ることもないので、誘拐もされないとは思うが念の為だ。
ちなみに今この屋敷に張ってある結界は私が張ったものである。悪意のある者は中に入ることすらできない。
結界には様々な条件を付与することもできるので、今後は結界内に入ると体力や魔力が減る条件を付与してみたりするのもいいかもしれない。
そして、今必死に練習しているのは氷魔法だ。暑い夏に冷気をまとって適温を保ちたいのである。
この世界の夏はからっとして爽やかなのだが、暑いことには変わりない。昔から夏は嫌いなのだ。
氷魔法は水魔法の上級にあたる魔法である。上級魔法はコントロールがとても難しく、習得に時間がかかっているが、絶対に習得したい魔法の一つだ。
飛翔魔法を完全にマスターしたその日の授業を終えると、私は飛翔魔法を使い以前連れ去られて監禁された場所へ向かった。
あの時の事を考えると胸が苦しくなるが、私は自らを追い込むようにその場所へ向かった。あの日のことは1日たりとも忘れたことはない。
あの頃草原に出るまでにさえ無限に感じた飛翔時間は、飛翔魔法をマスターした今10分程度で到着することができた。
そこは以前あった建物が壊され、遺跡のようになっていた。
犯人は既に処刑されているが、それでも許すことはできない。それに私は今でも悪夢にうなされることがあるのだ。
その場で暫くぼんやりとしていると、草を掻き分ける音が聞こえてきた。
音のした方へ視線を向けると魔物がこちらをギラギラした目で見据えている。少し小さいが確かに威嚇してきている。
実際に魔物に遭遇するのは初めてなので、緊張感が高まる。
「ウインドカッター!」
魔物に向けて一番自信のある攻撃魔法を放つと、その魔物の首と胴体は一瞬で離れ離れになり地面へと呆気なく落ちた。
あの頃よりは進歩したな、と思っていると他の魔物が一匹、もう一匹と現れた。
立て続けにウインドカッターを放ち、魔物を仕留めていく。倒れた魔物は魔石のみを残し本体は消失していく。
「これが魔石……」
魔石とは魔物が体内で生成するものであり、強ければ強い程大きく、色も輝いているものだ。これは小ぶりなので、そんなに強い魔物ではなかったのだろう。なぜかはわからないが、強い魔物ほど魔石化するのに時間もかかるらしい。
実践で攻撃魔法を使うのは初めてだったが、思ったよりも冷静に対処することができてホッとした。
その時、私は閃いてしまった。
ここで魔法の練習をすれば良いのでは?
魔物もそんなに強くなさそうだし、ようやく教えてもらっている攻撃魔法を実践で使うにはもってこいの場所だ。
もし怪我をしたら治癒魔法の練習もできるし、防御魔法も使える。
唯一不安なのは魔力量だけだが、自分の限界は分かっている。無理をしなければ問題ないだろう。
そう考えた。
そうと決まれば、今日からここで魔法の練習だ!
シドとの授業を終えてから来たので今は10時過ぎ。午後の授業までは2時間くらい練習できる。
慎重に辺りを見回して魔物の気配を探る。なんだか冒険者になったみたいで楽しい。
気配を感じては氷魔法で魔物を倒す、ということをしているとあっという間に日が昇っていることに気が付いた。
持ってきた懐中時計を見ると12時を少し回ったところだ。
そろそろ帰らないと、午後の授業に間に合わない。魔力量もいい感じに減ってきている。
もっといたかったがまた明日来ることにしよう。
飛翔魔法で屋敷に戻るため、王都へ入ろうとすると弾かれてしまった。入ることができないのだ。
「え、なんで?」
来る時は問題なかったのになぜ?
と思った瞬間に思い出した。この王都には結界が張ってあるのだ。理由はもちろん、敵や魔物を侵入させないためだ。
敵意はなくとも飛翔魔法を使っているから入れないのだろう。
仕方なく地面に降り王都へ入る。
しかし、ここで問題発生だ。
「子供が一人でこんなところで何を?」
と門番の騎士に止められてしまったのだ。
そうだった、私はまだ8歳の子供だった。
ちょっとコンビニ行ってくるわ、くらいのノリで来てしまったけど、この場合どうするのが正解かしら?
いっそこの騎士達をスリープで眠らせて強行突破しようかな?と考えるがそれはそれで問題になりそうだから止めておこう。
「…乗っていた馬車が襲われて、逃げてきました。最初に見えたのがここだったので休憩したいと思い来たのです。」
と適当に言うと、その騎士は少し同情したような表情になり徐に水晶のようなものを取り出した。
「そうか、大変だったな。では念の為この水晶に手をかざしてくれ」
えっ、信じたの?自分で言っておきながらこんな怪しい子供を簡単に信じてはダメじゃない。そう思いながら水晶に手をかざすと青色に光り、騎士は満足げに頷いた。
「よし、通っていいぞ。ゆっくり休めよ。」
こんなあっさり……。そしてこの騎士さん、なんと私にお金を渡そうとしてきた。
「大丈夫です。宿を借りるくらいのお金はありますから。」
そう言うと安心したように優しい顔になった。いい人だな、と思い私の胸は温かくなってきた。でも騎士には向いてないんじゃ……?
それにしても入れたことに安堵したが、毎回続くのは面倒だ。
街を出入りする時は身分証明書が必要なのかを聞いて見ると、10歳以上は必要だが私は子供なのでいらないようだ。子供だって悪意を持つ者はいると思うんだけど、王都なのにこんなに簡単な警備で大丈夫なのかな?
「じゃあ例えば私が明日出入りするには身分証明書は必要ない?」
「あぁ、君の顔は覚えたからな。ここで悪さをしなければ問題ないよ。それにそんな心配は不要そうだしな。でもあまり外に出るのは止めておいた方がいいんじゃないかな。」
なるほど、要は出る時もここを通ればいいだけの話だ。
「ありがとう!じゃあまた明日ね。お仕事お疲れ様です!」
とおよそ8歳児とは思えない台詞を満面の笑みで言い、屋敷へと帰る。
といってもまさか正面から堂々と入るわけにはいかない。抜け出してきたわけだし。なんだか悪い事をしているみたいだ。
脇道に入り人目につかない所から飛翔魔法で屋敷へと向かう。屋敷に張ってある結界は、私が張ったものなので何の問題もなく入れる。
そして私は何事もなかったかのように、自分の部屋へと戻ったのである。
部屋へ戻ると授業が始まる10分前だった。
今日は月曜日なのでリシェ語だ。
既に完璧になりつつあるリシェ語で良かった、と思い用意してあったサンドイッチを急いで食べながら着替えをする。
ちなみに午後の授業は、月曜日はリシェ語、火曜日は歴史と地理、水曜日はマナーや教養、木曜日は読み書きや算術、金曜日はダンス、土曜日はピアノといった具合だ。
まぁ読み書きと算術は前世の知識があるから既にできるんだけど、あまりできすぎてしまうのも不自然かと思い、失礼ながら少しわからないフリをしたりしている。それでも優秀と言われていて、そろそろこの授業はなくなる予定だ。
急いで食べ終えると、休憩する間もなく時間ぴったりにアンナが来た。
「お嬢様、時間になりましたので本日の授業を始めさせていただきますね。」
その言葉でリシェ語の授業は始まる。
アンナの授業はテストが中心だ。
何せアンナを専属メイドにして常にリシェ語で会話をしているのだ。だから私が会話で間違えた所を中心にテストを作ってくれる。
そして、それをまた会話に取り入れて確かなものにする。
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