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廉×碧
可愛い
しおりを挟む「ご馳走様でした」
丁寧に手を合わせて行ってくれた筒香先生は本当に満足した様子でニコニコとしている。
「はーい。あっ、先生。片付けは俺やるから、筒香先生はお風呂入ってて」
「えぇ? でもこれくらい……」
「いーから、疲れてるだろうし!ほら!」
「うーん、分かったよ」
渋々といった様子で風呂場に向かっていき、俺はそれを見てテーブルを片付けて流しに置いた食器を洗っていった。
じーちゃんはついに昨日、鴨志田さんと一緒に暮らし始めた。俺がちゃんと就職するまで…と言っていたので、「鴨志田さんを待たせすぎたら嫌われるよ?」と俺がトドメを指した。ウッと呻いて泣きそうになったのは、鴨志田さんに相当惚れているからだ。
じーちゃんは、ばあちゃんのことも好きだったけど、ばあちゃんは死ぬまで我が強くてじーちゃんは苦労してたとこがある。それとは真逆の鴨志田さんに、じーちゃんはかなり癒されているようだった。
ばあちゃん、今のじーちゃん見たら嫉妬するだろうな。なんて思い浮かべて食器を洗いながらクスクスと笑う。
「何笑ってるの?」
「わあ!ま、また後ろから!びっくりさせないで、よ…っ」
思ったよりも近い距離にドキリとした。
濡れた髪のままタオルを被った筒香先生が流し台の前にいる俺を囲うようにキッチンに手をかけていた。そうなると自然と距離は近い。
びっくりして仰け反ると、筒香先生はさらに近づいてきた。
「な、なな、なに……?」
「思い出し笑い?可愛くてつい」
「か」
可愛い……?
筒香先生には俺が犬か猫に見えているのだろうか。身長は筒香先生よりも低いと言えど、れっきとした成人男性。
高校の時よりは大人になったはず。
筒香先生はフッと微笑むと、俺の顔にいつの間にかついていた泡を指先でとった。
「可愛いよ。食べちゃいたいくらい」
食べる。まさにペロリと食べられてしまいそうな雰囲気に飲まれかけ、ズルリとエプロンが肩から外れた。
言うまでもなく顔は真っ赤だ。何故なら凄く熱い。頭のてっぺんから火が吹きそうなほど。
「…じょ、冗談上手いなー! 筒香先生はそうやって女の人達を落として」
「冗談に聞こえた?」
「…………っ、う……」
さらにピーッと音がなりそうなほど茹で上がる。
筒香先生の指が耳朶を優しく擦り、わざとらしくその反対の耳元に顔を近づけ匂いを堪能するように深く吸い込んだ。
「な、ぁ……あ……ぁぅ……」
「神木くんと居ると毎日殺人的な忙しさなのに凄く癒されるし、こんなに家に帰るのが楽しみなことは初めて」
「ひ……っ」
イイ声で耳元に囁かれ、ぞわりとした感覚が全身を襲う。
「自分が医者で良かったって思ったのも初めてだし。神木くんを重症化させたあの医者は許せないけど、君を見つけたのが自分で良かったとも思った」
「ま、まっ……せ、せんせ……みみ、やだ……っ」
「ねぇ、神木くん」
一区切り。でもその間にも耳を弄るのはやめてくれず、ゾワゾワと全身が落ち着かない。
ピクピクと震えてしまい、「んっ」と我慢する声が漏れてしまう。
先生の顔は耳元にあるせいで見えない。だからどんな表情をしているのか分からないけれど、なんとなく有無を言わさぬ微笑みがそこにある気がした。
そして、たぶんそれは間違いなくて。
「俺は神木くんの、恋人になりたい」
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