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真実 side カシミール
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カシミール=グランティーノがイヴの様子が変わったことに気づいた。
プロポーズという程ではないが、自分の決意を告げた上で、イヴに提案をした。
「イヴ、君の実家の財政状況があまり良くないというのは本当か?」
「っ! そ、それをどこで!」
「……いや、そういう噂があると聞いただけだ。本当のようだな」
顔を真っ青にして、イヴは震えていた。
「……あ……あの!」
「ああ、いや、君がそういう目的で俺と付き合ったとは思っていない。そうじゃなくて、君が良ければ家を出て俺の家に来ないかと思ったんだ」
「……っ、そ、それは……!」
ますます縮こまったイヴの手を繋いだ。
指先まで冷え込んでいた。
「今日明日で決めなくても良い。そういうつもりで、俺はここに君を連れてきたと思って欲しい」
「……ぅ、く……」
イヴはさっきまで静かに泣いていたのに、小さく嗚咽を漏らすように泣き始めてしまった。
急ぎすぎたのかもしれない。
イヴの負担にはなって欲しくなかった。
カシミールはイヴの身体を出来る限り優しく抱き締めた。
すると、イヴは耐えきれなくなったように、子供が泣くような声を出して大粒の涙を流してしまった。
そうして、しばらくしているとそのまま気を失うように眠ってしまった。
馬車に乗せて、イヴの家まで送り届けた。
いつもだったら、手前で別れることになるのだが眠ったイヴをそのままにすることが出来なかった。
このまま自分の家に連れていこうかとも思ったが、それこそイヴの負担になるかもしれないと思い、仕方なくスターム家に送り届けることにしたのだ。
スターム家の門番に、イヴを抱えて名前を告げると目を見開いて驚いていた。
すぐに門が開かれた。中に入って良いと言うことならば、そのまま部屋まで抱えることに決めた。
玄関ホールで、使用人たちがバタバタと動き始めた。
とにかくイヴを寝かせたいと告げると部屋を案内された。
寝室にある寝台に、イヴを起こさないように静かに乗せる。
すると、後ろから声がかけられた。
「カシミール=グランティーノ様とお伺いしました。当家当主がお呼びですのでご同行をお願い致します」
執事のようだった。
もしかしたら、財政困難による金の無心かもしれないと気を張ることに決めた。
イヴの額にキスをしてから、執事の後ろを歩いた。
やがて、応接室に到着すると、既にソファにイヴと同じプラチナブロンドの髪をした恰幅のいい男が座っていた。その男には指輪がじゃらりと嵌めてあり、趣味がいいとは言えなかった。
「カシミール殿、まぁまぁお座り下さい」
あまり同席したくない雰囲気だが、仕方なしに従った。
「…ご用件は」
「カシミール殿がイヴを連れてきたということは、二人の関係はそういうことで間違いないのでしょうか?」
「……本当に、その事が気になりますか」
「えぇ、えぇ。気になりますとも! どうですか?イヴの治癒の力は。イヴは当家でもかなり評判でして!お気に召しましたかな?」
「それで。金を払えと?」
「いやいや!まさか! イヴがやったことです! さすがにカシミール殿にそんなこと言えませんよ!」
当主は大袈裟に身振り手振りをしてみせる。
「ただ、今後もイヴには家にいてもらわないといけなくてですね。リピーターが多いのですよ。 カシミール様も体験なさったのならば分かりますでしょう? イヴの力は本物です!」
「確かに。素晴らしい治癒でした」
「そうでしょう、そうでしょう!ですので、イヴを引き取るというのなら少し話をしなくてはならないと思いまして」
「……どういうことでしょうか」
「簡単な話ですよ。イヴを嫁に行かせる代わりに、私と提携して欲しい事業がございます。それに是非協力していただきたいのです!」
両手を揉んで、ゴマをすりながら当主は話す。
結局のところ、金の無心に違いはないようだった。
「こちらで少し調べさせていただきましたが、スターム家は最近投資を行って大変なことになったとお伺いしてますが?」
「……あ、ああ。まあそうなんですが、今度の事業はまた別の……」
「それで。一体いくらのお金が必要になるのでしょうか」
「い、いえ……提携して欲しいというお話でして」
「提携? こちらが金を払い、そちらの懐は痛まない事業ならば払う金はありませんね」
「な!」
当主は驚いたあと、手を握り震え出した。
こんな簡単な挑発に乗るような奴ならば、話は簡単である。
カシミールは足を組んで当主を見据えた。
「イヴを嫁に、という話ならお引き受けします。それなりに支度金も払いましょう。ですが、事業の話なら別です。グランティーノ家一同、よく分からない事業に頷くことは出来ないので」
「ぐ……いや、それならばイヴは嫁には出せません。 あの子は先程も言った通り、これからも稼ぎ頭なのです。事業が出来ない上、イヴまで嫁に行かれてはたまりません」
「……支度金は、そちらの要望に出来る限り答えましょう」
「いえ、お引取りを。ご実家でよくよく相談してからまたいらしてください」
この狸は必死に考えて断ってきた。
カシミールはそれで引くことはしなかった。
「いえ、考え直す必要も無い。ならばイヴはそのまま連れていきます」
「っな! お、おい! イヴを別の部屋に移動しろ!」
「遅いですよ。既に魔法で連絡しておいた従者が馬車に乗せています」
「これは誘拐だ!!許さん!!」
「構いませんよ。後ほど金の方はお送りします」
「ぐっ……!」
当主はプルプルと震えながら、下唇を噛み、顔を醜悪に歪めていた。
もう怒りを隠すつもりもないようだった。
カシミールはもう用はないとばかりに、その場を立ち去ろうとする。
「っ……おい! お前! イヴがどうしてお前に近づいたのか教えてやろう!」
急に背中から大声で叫び始めた。
カシミールは足を止めた。
「……先程、イヴが勝手にやったと」
「そんな訳がないだろう! 私がイヴに命令したんだ! 『カシミール=グランティーノに近づき、篭絡させ、金の無心をしろ』とな!」
カシミールは当主の方を振り返った。
信じられないことに、嘘をついているようには見えなかった。
ニヤニヤと楽しそうにカシミールを見て嗤っている。
「さぞイヴはお前に尽くしただろう! ははは! 愛なんかじゃない! 命令で仕方なくやっていただけだ!」
はははは、と嗤い声が木霊した部屋から、その後どうやって退室したのかよく覚えていなかった。
プロポーズという程ではないが、自分の決意を告げた上で、イヴに提案をした。
「イヴ、君の実家の財政状況があまり良くないというのは本当か?」
「っ! そ、それをどこで!」
「……いや、そういう噂があると聞いただけだ。本当のようだな」
顔を真っ青にして、イヴは震えていた。
「……あ……あの!」
「ああ、いや、君がそういう目的で俺と付き合ったとは思っていない。そうじゃなくて、君が良ければ家を出て俺の家に来ないかと思ったんだ」
「……っ、そ、それは……!」
ますます縮こまったイヴの手を繋いだ。
指先まで冷え込んでいた。
「今日明日で決めなくても良い。そういうつもりで、俺はここに君を連れてきたと思って欲しい」
「……ぅ、く……」
イヴはさっきまで静かに泣いていたのに、小さく嗚咽を漏らすように泣き始めてしまった。
急ぎすぎたのかもしれない。
イヴの負担にはなって欲しくなかった。
カシミールはイヴの身体を出来る限り優しく抱き締めた。
すると、イヴは耐えきれなくなったように、子供が泣くような声を出して大粒の涙を流してしまった。
そうして、しばらくしているとそのまま気を失うように眠ってしまった。
馬車に乗せて、イヴの家まで送り届けた。
いつもだったら、手前で別れることになるのだが眠ったイヴをそのままにすることが出来なかった。
このまま自分の家に連れていこうかとも思ったが、それこそイヴの負担になるかもしれないと思い、仕方なくスターム家に送り届けることにしたのだ。
スターム家の門番に、イヴを抱えて名前を告げると目を見開いて驚いていた。
すぐに門が開かれた。中に入って良いと言うことならば、そのまま部屋まで抱えることに決めた。
玄関ホールで、使用人たちがバタバタと動き始めた。
とにかくイヴを寝かせたいと告げると部屋を案内された。
寝室にある寝台に、イヴを起こさないように静かに乗せる。
すると、後ろから声がかけられた。
「カシミール=グランティーノ様とお伺いしました。当家当主がお呼びですのでご同行をお願い致します」
執事のようだった。
もしかしたら、財政困難による金の無心かもしれないと気を張ることに決めた。
イヴの額にキスをしてから、執事の後ろを歩いた。
やがて、応接室に到着すると、既にソファにイヴと同じプラチナブロンドの髪をした恰幅のいい男が座っていた。その男には指輪がじゃらりと嵌めてあり、趣味がいいとは言えなかった。
「カシミール殿、まぁまぁお座り下さい」
あまり同席したくない雰囲気だが、仕方なしに従った。
「…ご用件は」
「カシミール殿がイヴを連れてきたということは、二人の関係はそういうことで間違いないのでしょうか?」
「……本当に、その事が気になりますか」
「えぇ、えぇ。気になりますとも! どうですか?イヴの治癒の力は。イヴは当家でもかなり評判でして!お気に召しましたかな?」
「それで。金を払えと?」
「いやいや!まさか! イヴがやったことです! さすがにカシミール殿にそんなこと言えませんよ!」
当主は大袈裟に身振り手振りをしてみせる。
「ただ、今後もイヴには家にいてもらわないといけなくてですね。リピーターが多いのですよ。 カシミール様も体験なさったのならば分かりますでしょう? イヴの力は本物です!」
「確かに。素晴らしい治癒でした」
「そうでしょう、そうでしょう!ですので、イヴを引き取るというのなら少し話をしなくてはならないと思いまして」
「……どういうことでしょうか」
「簡単な話ですよ。イヴを嫁に行かせる代わりに、私と提携して欲しい事業がございます。それに是非協力していただきたいのです!」
両手を揉んで、ゴマをすりながら当主は話す。
結局のところ、金の無心に違いはないようだった。
「こちらで少し調べさせていただきましたが、スターム家は最近投資を行って大変なことになったとお伺いしてますが?」
「……あ、ああ。まあそうなんですが、今度の事業はまた別の……」
「それで。一体いくらのお金が必要になるのでしょうか」
「い、いえ……提携して欲しいというお話でして」
「提携? こちらが金を払い、そちらの懐は痛まない事業ならば払う金はありませんね」
「な!」
当主は驚いたあと、手を握り震え出した。
こんな簡単な挑発に乗るような奴ならば、話は簡単である。
カシミールは足を組んで当主を見据えた。
「イヴを嫁に、という話ならお引き受けします。それなりに支度金も払いましょう。ですが、事業の話なら別です。グランティーノ家一同、よく分からない事業に頷くことは出来ないので」
「ぐ……いや、それならばイヴは嫁には出せません。 あの子は先程も言った通り、これからも稼ぎ頭なのです。事業が出来ない上、イヴまで嫁に行かれてはたまりません」
「……支度金は、そちらの要望に出来る限り答えましょう」
「いえ、お引取りを。ご実家でよくよく相談してからまたいらしてください」
この狸は必死に考えて断ってきた。
カシミールはそれで引くことはしなかった。
「いえ、考え直す必要も無い。ならばイヴはそのまま連れていきます」
「っな! お、おい! イヴを別の部屋に移動しろ!」
「遅いですよ。既に魔法で連絡しておいた従者が馬車に乗せています」
「これは誘拐だ!!許さん!!」
「構いませんよ。後ほど金の方はお送りします」
「ぐっ……!」
当主はプルプルと震えながら、下唇を噛み、顔を醜悪に歪めていた。
もう怒りを隠すつもりもないようだった。
カシミールはもう用はないとばかりに、その場を立ち去ろうとする。
「っ……おい! お前! イヴがどうしてお前に近づいたのか教えてやろう!」
急に背中から大声で叫び始めた。
カシミールは足を止めた。
「……先程、イヴが勝手にやったと」
「そんな訳がないだろう! 私がイヴに命令したんだ! 『カシミール=グランティーノに近づき、篭絡させ、金の無心をしろ』とな!」
カシミールは当主の方を振り返った。
信じられないことに、嘘をついているようには見えなかった。
ニヤニヤと楽しそうにカシミールを見て嗤っている。
「さぞイヴはお前に尽くしただろう! ははは! 愛なんかじゃない! 命令で仕方なくやっていただけだ!」
はははは、と嗤い声が木霊した部屋から、その後どうやって退室したのかよく覚えていなかった。
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