【完結】浮薄な文官は嘘をつく

七咲陸

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捜索 side カシミール

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カシミール=グランティーノがエメに喧嘩のような説教をされてから、3ヶ月は経っていた。
クラークにも「エメが言ったから、言う訳では無いけれど…カシム、君も冷静に考え直した方がいい」そう言われ、エメのことはすまなかったと謝られた。

そこまで言われて、ようやく自分はイヴに対することを振り返った。

エメの通りだった。

付き合ってる時はイヴは本当に嬉しくて楽しいを笑顔で表現してくれた。
赤面する顔も、可愛くて仕方がなかった。

イヴは好きという以上のことは何も言わなかった。
与えるのは得意な割に、与えられるのには慣れてなくて。
どこか一線を置かれていた。

あの最後の花畑の時にカシミールは、イヴの負担にはなりたくないと言っておきながら、そのくせイヴに同じことを思っていると勝手に思い込んでイヴを追い詰めた。
イヴはずっと何か言いたがっていたではないか。

「カシミール様。あの…急に訪問者が来られていまして……」

メイドから先触れもなく訪れた訪問者が来たと言われる。
カシミールは誰とも会う気にはなれなかった。

「帰ってもらってくれ」
「……いえ、それが……イヴ様のお兄様だと、仰っております」
「イヴの?!」

すぐさまメイドに応接室へ通すように促した。
イヴの兄という人物は、四人いたはずで、イヴと連絡を取りあっているのは四男ただ1人。
おそらくその人物だろうと当たりをつければ、応接室に護衛を引き連れて入ってきた。

「……初めまして。いや、久しぶりですね、カシミール様。レイリー=スタームと申します。連絡もなしに無礼で申し訳ありません」
「イヴについてですか」

レイリーはソファに座り、頷いた。

「イヴと連絡が取れなくなりました。いつもはスターム家に連絡をすればすぐに連絡をくれるのに、それすら途絶え、先触れの魔法も返事がありません」

カシミールも、3ヶ月何もしなかった訳ではなかった。使用人に王都中を捜索してもらっていた。もちろん、カシミール自身も捜索していた。

「父には、こちらに誘拐され嫁になったと聞きました。……イヴはどこに」
「……出ていかせました」
「え?! お、追い出したのですか?」
「最後まで、イヴは本当のことを話してくれませんでした。それで、カッとなってしまい……」

レイリーは言葉が出なくなっていたようだった。青い顔でカシミールを見ている。しかし、怒っていたり、恨んでいたりしている様子ではなかった。

「……そうですか。イヴには、家を出なさいと言ってあったのですが……間に合わなかったのですね」
「間に合わないとは?」
「イヴから相談を受けていました。父の言いなりになって貴方に嘘をついていたことを後悔し、けれど本当のことを言って嫌われたくないと。ならばまずは早く家を出るように促しました」
「それは……いつの話ですか」
「ほぼ3ヶ月前……ですね。私がイヴに治療の依頼をした日です」

カシミールはイヴに誘いを断られた日を思い出す。 あの日、クラークとエメと呑むつもりだったが、治療の依頼があると言っていた。

そして、カシミールはその次の日にイヴを追い詰めたのだ。

「なんだか、追い出した側なのに後悔しておられるようですね」
「友人に、責められました。嫁に貰うと言っておいて捨てるなんてお前も嘘をついているのと一緒だと……」
「……そうですか。私は、イヴが悪いと思いますけどね」
「え?」
「最初に貴方を嵌めたのはイヴです。理由はどうあれ、やったことは事実です。どうか、貴方自身を責めすぎないでください」

レイリーの眼は、カシミールを責めていなかった。

「あの子はまだ、自分が子供だと思っているんです。本当はもうなんでも出来る年齢なのに、甘やかしすぎてしまいました。あの子、懐くと可愛いでしょう?」
「……はい」
「ふふ、そうですよね。誰に対しても愛想笑いばかりする癖に、本当に仲良くなると真っ赤になって逃げ出す癖が抜けないんです」

そして、レイリーは突然頭を下げた。カシミールは慌てて頭を上げるように促した。

「カシミール様、本当に申し訳ありませんでした。イヴがしでかしたことは、スターム家の責任です」
「い、いえ! 理由もまともに聞かず追い出したのはこちらです!」
「……では、その罪悪感に免じてどうかお願いがあります」

レイリーは頭を上げ、カシミールを見据える。

「もう一度、イヴにチャンスを下さい。あの子に、やり直すチャンスを」









それでも、なかなかイヴは見つかることがなくて王都からついに捜索範囲を広げた。
ちょうどその頃に、騎士団に来たクラークがこちらに気づいて走ってきた。

「カシム! 多分だけど、イヴの場所が分かったよ!」
「ど、どこに……!」
「アーヴィンは覚えてるかい? 学園で同期だった」
「あ、ああ……アーヴィン?なぜその名が……」

アーヴィン=イブリックは、サシャ=ジルヴァールを騙し、騙され、辺境区域まで追いかけた人物だった。

カシミール自身はそこまで仲良くなかったが、クラークと因縁のある人物だとは知っていた。

「アーヴィンと連絡をとってるディランが、辺境で事務員が増えたと教えてくれたんだ。その事務員の名前までは確認しなかったらしいけど……増員したのは3ヶ月前だ」

クラークはディランにイヴの噂がないか確認してくれていたようだった。

「王都の経理部を経験してるって事務員たちは大喜びしたらしいよ。その上、辺境区域の人たちを特殊な治癒の力を使って癒しているって。……確定だろう?」
「……イヴだ……間違いない!ありがとう!」

カシミールが興奮すると、クラークは穏やかに微笑んだ。

「……エメがカシムに謝りたいって言ってたよ。 でも、イヴと一緒じゃなきゃ会わないって」
「そうか。俺も…エメに感謝したい。必ず、連れて帰る」

ようやっと、カシミールの後ろで追い風が吹いた、そんな気がした。
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