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10、魔界の魔王
「へぇ、それで婚約に至ったのねぇ。あの婚約者探しのパーティーを頑張った甲斐があったじゃない?」
「まぁそうだね。僕は嬉しいことばっかりだよ」
今日は珍しく、セレサがシュリの家に遊びにきてくれた。どうやら事の顛末を知りたかったようだった。
シュリはとりあえず婚約に至った所までは説明した。
それ以上を言うと、リリー子爵令嬢にブスと3回も言ったことを説明する羽目になりそうだったからだ。
また両親に報告されて怒られるのは勘弁願いたい。
あの日、夕食をエルネスト公爵家で食べている時に、メアは本当に公爵閣下と公爵夫人にリリーへの暴言を説明してしまった。
公爵閣下も夫人も笑い飛ばしてくれたのが幸いだった。
シュリは謝り倒したが、二人は「謝らなくていい、むしろその現場に立ち会いたかった」と言ってくれたのはシュリにとって神のお言葉だった。
絶対に二人には見て欲しくない。
「あらぁ?嬉しい話だけ?王城のお話は?」
「んぐっ!」
シュリは飲んでいた紅茶を噴き出すところだったが、すんでの所で飲み込んだ。
「な、なんで…!」
「そりゃすごい騒ぎになっているんだから噂になってるわよぉ?多分そろそろシュリのご両親の耳にも入るんじゃない?リリー子爵令嬢を怒鳴り散らして親指を下に向けたって」
「ああああああ!!!僕今すぐメアに会いたいな!」
「待ちなさいシュリ。聞いたわよ…?」
ゴゴゴという音が聞こえてくるのではないかと思うほど、シュリの母は黒いオーラを纏ってシュリの後ろから肩を叩いてきた。
そしてその肩を離すもんかとばかりにミシミシ音立てるように力が篭り始める。
「あああああ…っ、ち、違うんです母上!これには海よりも高く山よりも深い理由が…!」
「そんなあっさい理由なんか聞きたくありません!何を考えているの!普段から貴族らしく大人しくしなさいとあれだけ口酸っぱく言っているのに!シュリは虫か何かかしら!?虫でもまだ学習能力あるわ!虫以下なのかしら!?」
「ひいいい…!」
セレサは隣でやっぱりコロコロと笑って見ていた。やっぱり友人ではなく敵だったようだ。
□■□
シュリの実家であった話を聞かせていると、メアは大きく口を開けて目に涙を溜めるほど笑っていた。
シュリはあの後すぐに逃げるように公爵家へ向かった。今はメアの私室だ。
「ははは!シュリの家は本当に面白いね!」
「…全然面白くありません。母上が魔界の魔王に見えました」
「シュリは母親似なんだね」
「…この流れでそう言われるのは全く嬉しくありません!」
メアに向かって怒ってみれば、さらに大きく笑うだけだった。
シュリは確かに母親に良く似たと思う。顔も外見も似ているが、何より性格が良く似たのだ。
普段は穏やかだが、怒るときは一息で罵詈雑言を浴びせてくる。
その母親の姿を見て自分でもそっくりだと思っている。
「はー…シュリといると面白くて全然飽きないよ。父上と母上もシュリとの食事はとても楽しかったって言ってたよ」
「…それは嬉しいですけど」
「食事といえばなんだけど、今度私の友人の立食パーティーがあるから行かない?」
「ご友人の方ですか?」
公爵家の子息と友人になれる人物を思い浮かべる。侯爵家とか王族にゆかりがあるなどシュリの想像力の乏しい頭で思い浮かべる。
「そうそう、事業関係の繋がりがある友人なんだけど、その友人がホテルを開業したみたいでそのお祝いのパーティーなんだ」
「へ、へぇ…」
格下の伯爵家のシュリにはとんでもない場違いになのでは、と心中怯える。
そもそもメアとの婚約だって身分違いも甚だしいと思っているシュリにとっては、友人と会うのはとても気まずい。
「シュリのことを紹介したいんだ」
「へ?!そのご友人にですか?!」
「そうだよ、なんかマズいことでもある?」
「い、いやマズいってことはないですよ…」
男同士の婚姻が認められている国といえども、やはり珍しい。
しかもメアは次期公爵閣下だ。ならば絶対にその婚約者であるシュリは、ジロジロと遠慮ない視線に晒されることは間違いない。
その友人にガッカリされた日には、穴掘って埋まって蓋をしたくなるくらい落ち込むくらいには自信がない。
「そんな堅苦しいものじゃないから、心配しないで。シュリの服もこっちで準備するから」
「?僕のですか?でも僕も一応パーティーの服は何着か持ってますし…」
「シュリ?私が準備したいんだ。分かる?」
「ひぇ…」
ご尊顔の圧がシュリの鼻先にかかってくる。メアの神々しい光のオーラを纏う顔を画面いっぱいにすれば、シュリの頬は勝手に熱くなってしまい、なんの抵抗もできない。
その時、ちょうど良くノックの音がしてメアが許可すると使用人が入ってくる。使用人はメアに耳打ちする。
「ちょうど今仕立ての職人が到着したみたいだ。行こうか」
「は…はい…」
顔がイイってずるい。
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