【完結】婚約破棄された公爵閣下を幸せにします

七咲陸

文字の大きさ
21 / 43

21、シュリ=エルネストの欠点


  あれから三年の月日が流れた。


「シュリ、行こうか」


  そう言って神々しいまでに光のオーラを纏い微笑むのはシュリの夫、メア=エルネスト公爵当主であった。

  メアは家督を継ぎ、公爵当主となった今も変わらずしがない伯爵家三男だったシュリを愛していた。


「はい、メア」


  そしてそんなシュリも、夫メアに極上の微笑みを見せながら腕を組んで王城のパーティーに入城していくのだ。


「それにしても……フリーダ=ケッセルシュラガー侯爵令嬢はクリステン第二皇子殿下をよく許しましたね」


  今日のパーティーは、クリステン殿下とフリーダの婚約パーティーであった。

  クリステン殿下と言えば、最初リリー子爵令嬢に惑わされ、夫メアを婚約破棄させた過去を持つ。

  更にクリステン殿下は何を血迷ったか、婚約中であったフリーダを捨て、リリーと婚約を結んだのだった。

  しかしリリーはメアのことを諦めてはいなかった。

  だが、クリステン殿下やメアへの度重なる暴言により、クリステン殿下は目が覚めたようでリリーとの婚約を破棄した。

  その後、クリステン殿下はフリーダへもう一度誠心誠意謝罪と愛の言葉を繰り返し囁き、三年かけて口説き落としたのだ。


「フリーダ侯爵令嬢の懐が深いのか、クリステン殿下の執念が実を結んだのか。どちらだろうね」

「……なんだかどっちもな気がします。それにこのパーティーによく僕達を招待してくれましたね」

「リリーと結婚しなくて済んだシュリへのお礼と、リリーと婚約破棄させてしまった私への謝罪も兼ねているんだろう。これを機にエルネスト家との仲の修復を見せつけたいのもあるだろうな」


  シュリはお礼を言われるようなことをしたのかは甚だ謎だった。

  シュリにとってあれは、夫と結ばれるきっかけでもありつつも黒歴史の面も持ち合わせており表裏一体だ。


  シュリにはただ一つ、欠点がある。


「……僕、今日のパーティーは気をつけますから」

「気にしなくていいんだよ?久しぶりにカッコ良いシュリが見たいんだけどなぁ」

「あれをカッコ良いというのはメアだけですからね!」

「さ、ほら会場に着いたから一緒に入ろう」


  ニッコリと後光差し込む光を感じながらシュリはなんだか納得しきれないまま会場入りをした。

  公爵当主、夫人ともなれば色々な人から声をかけられる。シュリはこの三年でようやくそれに慣れ始めた。
  最初のうちは高位貴族に声をかけられることに慣れず、失敗を繰り返していたか、なんとかそつなくこなせるようになってきた。

  それも、メアが色々とフォローしてくれているからなのだけども。


「ふぅ…」

「シュリ、疲れた? 少し休もうか」


  メアは心配そうに眉を下げながらシュリの顔を覗き込む。
  神と等しいレベルの端正な顔立ちで見つめられ、シュリの顔は自然と熱くなるのを感じる。


「メア……」


  三年経ってもシュリは夫の顔を見飽きることは無かった。
  むしろもっと好きになっていて困っていた。

  何とかたじろぎながらシュリは返事をした。


「い、いえ、大丈夫で」


「どうしてこんなパーティーを開いているんですか!?!?」


  耳元でキーンと高い声が会場に響き渡った。


  シュリの隣にいるのは、言わずもがな、リリー子爵令嬢に間違いはなかった。


「第二皇子は私のことをお好きだったではありませんか!私と婚約して結婚しようって言ってくれたではありませんか!」


  リリーは劈くような声で叫び続ける。


「どうしてよりによって元の婚約者と結婚されるのですか?! 私のことをまだ愛してらっしゃるはずなのに!!」


  メアとシュリは呆然と隣にいるリリーを見ていた。


「……メア、ちょっとリリーさん……太りました?」

「私も驚いた。顔のパーツはリリー子爵令嬢だが……全体的に丸くなってしまったな……」


  あんなに可憐だったリリー子爵令嬢は、昔の面影をパーツに残し、体型だけは見る影も無くなっていた。


「リリー。そなたはメア公爵が好きだったと言ったでは無いか。この私と婚約するつもりがなかったと」


  キーキー叫ぶリリーに応えたのは、当事者であるクリステン殿下であった。


「そんなの! クリステン殿下に嫉妬して欲しかったからです! どうしてみんな分かって下さらないの?!」

「リリー、もう君とは終わったんだ。招待もしていない。私はフリーダただ一人を愛すると誓ったんだ」


  クリステン殿下は公の場で恥ずかしがる様子もなく真剣にフリーダへの愛を伝えた。
  隣にいるフリーダ侯爵令嬢はとても嬉しそうにクリステン殿下を見つめていた。


「う、嘘よ、うそ……そんなはず……」


  リリーがフラ……と体勢を崩すと、隣にいたシュリはついに目が合ってしまった。

  あ、と思った時にはもう遅かった。

  シュリの手首はリリーによって捕縛され、太ったからなのか前よりパワーアップした強い力で引き寄せられた。


「あ、あんたのせいで……!あんたのせいで全部めちゃくちゃよ! 」

「い、痛いです。離してください……!」

「リリー子爵令嬢!私の妻の手を離せ!」


  シュリの手首に圧がかけられていく。痛みに顔を歪ませれば、メアの珍しく怒りに満ちた声が聞こえてきた。


「こんなはずなかった!メア様と私は幸せに暮らすはずだったのよ?! なのにあんたがしゃしゃり出てきたせいで!」

「いや僕のせいじゃ……いたたた!」


  反抗したせいか、手首に更なる力が籠る。
  ミシ……ッと骨の軋む音がシュリの手首から聞こえてくる。

  シュリはリリーの話の通じなさに、徐々にイライラしてくるのをシュリは感じていく。


「男のくせにメア様と結婚なんかしやがって!許せない! 今すぐ離婚しなさいよ!」


  そして、シュリの悪癖が顔を出す。



「うるせえ雌豚」



  ピタ、と前よりも太ったリリーは止まった。

  そもそも会場の誰もがシン、と静まり返っていたのでシュリの声は小さくても低く暗くともよくよく響いた。



「毎度毎度懲りずに養豚場からわざわざお出ましとは、ずいぶんこの雌豚は暇なんだな」



  隣でリリーの手を引き剥がそうとするメアは、嬉しそうにニンマリと微笑んでいる。



「誰がキーキーうるせえ豚と結婚するかよ! 殿下もメアもお前のモノじゃねえ!自分から切り離しといて愛してくれ!?離婚しろ?!どんだけ傲慢なんだこの雌豚が!」



  シュリは会場中に響き渡らせて叫ぶ。



「メアを幸せにするのはこのシュリ=エルネストなんだよ!!黙って引っ込んでろ雌豚!!!」



    そうして、ビッと勢いよく立てた中指にリリーやメアだけでなく会場の誰もが釘付けになったのだ。




  後に、逆上の公爵夫人というあだ名が流れることは、また別の話。














-------------

ここまで読んでくださってありがとうございました。

また次のお話でお会いできますように。

七咲陸
感想 33

あなたにおすすめの小説

5回も婚約破棄されたんで、もう関わりたくありません

くるむ
BL
進化により男も子を産め、同性婚が当たり前となった世界で、 ノエル・モンゴメリー侯爵令息はルーク・クラーク公爵令息と婚約するが、本命の伯爵令嬢を諦められないからと破棄をされてしまう。その後辛い日々を送り若くして死んでしまうが、なぜかいつも婚約破棄をされる朝に巻き戻ってしまう。しかも5回も。 だが6回目に巻き戻った時、婚約破棄当時ではなく、ルークと婚約する前まで巻き戻っていた。 今度こそ、自分が不幸になる切っ掛けとなるルークに近づかないようにと決意するノエルだが……。

義理の家族に虐げられている伯爵令息ですが、気にしてないので平気です。王子にも興味はありません。

竜鳴躍
BL
性格の悪い傲慢な王太子のどこが素敵なのか分かりません。王妃なんて一番めんどくさいポジションだと思います。僕は一応伯爵令息ですが、子どもの頃に両親が亡くなって叔父家族が伯爵家を相続したので、居候のようなものです。 あれこれめんどくさいです。 学校も身づくろいも適当でいいんです。僕は、僕の才能を使いたい人のために使います。 冴えない取り柄もないと思っていた主人公が、実は…。 主人公は虐げる人の知らないところで輝いています。 全てを知って後悔するのは…。 ☆2022年6月29日 BL 1位ありがとうございます!一瞬でも嬉しいです! ☆2,022年7月7日 実は子どもが主人公の話を始めてます。 囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/237646317

【完結】転生した悪役令息は、お望み通り近付きません

カシナシ
BL
「お前など、愛す価値もない」 ディディア・ファントム侯爵令息が階段から落ちる時見たのは、婚約者が従兄弟を抱きしめている姿。 (これって、ディディアーーBLゲームの悪役令息じゃないか!) 妹の笑顔を見るためにやりこんでいたBLゲーム。引くほどレベルを上げた主人公のスキルが、なぜかディディアに転生してそのまま引き継いでいる。 スキルなしとして家族に『失敗作』と蔑まれていたのは、そのスキルのレベルが高すぎたかららしい。 スキルと自分を取り戻したディディアは、婚約者を追いかけまわすのを辞め、自立に向けて淡々と準備をする。 もちろん元婚約者と従兄弟には近付かないので、絡んでこないでいただけます? 十万文字程度。 3/7 完結しました! ※主人公:マイペース美人受け ※女性向けHOTランキング1位、ありがとうございました。完結までの12日間に渡り、ほとんど2〜5位と食い込めた作品となりました!あああありがとうございます……!。゚(゚´Д`゚)゚。 たくさんの閲覧、イイね、エール、感想は、作者の血肉になります……!(o´ω`o)ありがとうございます!(●′ω`人′ω`●)

婚約破棄されたから能力隠すのやめまーすw

ミクリ21
BL
婚約破棄されたエドワードは、実は秘密をもっていた。それを知らない転生ヒロインは見事に王太子をゲットした。しかし、のちにこれが王太子とヒロインのざまぁに繋がる。 軽く説明 ★シンシア…乙女ゲームに転生したヒロイン。自分が主人公だと思っている。 ★エドワード…転生者だけど乙女ゲームの世界だとは知らない。本当の主人公です。

婚約破棄させた愛し合う2人にザマァされた俺。とその後

結人
BL
王太子妃になるために頑張ってた公爵家の三男アランが愛する2人の愛でザマァされ…溺愛される話。 ※男しかいない世界で男同士でも結婚できます。子供はなんかしたら作ることができます。きっと…。 全5話完結。予約更新します。

[離婚宣告]平凡オメガは結婚式当日にアルファから離婚されたのに反撃できません

月歌(ツキウタ)
BL
結婚式の当日に平凡オメガはアルファから離婚を切り出された。お色直しの衣装係がアルファの運命の番だったから、離婚してくれって酷くない? ☆表紙絵 AIピカソとAIイラストメーカーで作成しました。

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。 完結しました!ありがとうございました。

婚約破棄された悪役令息は隣国の王子に持ち帰りされる

kouta
BL
婚約破棄された直後に前世の記憶を思い出したノア。 かつて遊んだことがある乙女ゲームの世界に転生したと察した彼は「あ、そういえば俺この後逆上して主人公に斬りかかった挙句にボコされて処刑されるんだったわ」と自分の運命を思い出す。 そしてメンタルがアラフォーとなった彼には最早婚約者は顔が良いだけの二股クズにしか見えず、あっさりと婚約破棄を快諾する。 「まぁ言うてこの年で婚約破棄されたとなると独身確定か……いっそのこと出家して、転生者らしくギルドなんか登録しちゃって俺TUEEE!でもやってみっか!」とポジティブに自分の身の振り方を考えていたノアだったが、それまでまるで接点のなかったキラキライケメンがグイグイ攻めてきて……「あれ? もしかして俺口説かれてます?」 おまけに婚約破棄したはずの二股男もなんかやたらと絡んでくるんですが……俺の冒険者ライフはいつ始まるんですか??(※始まりません)