6 / 26
待つ side シルヴァ
しおりを挟む
シルヴァ=コールフィールドは苛々とする気持ちを抑えられるわけがなかった。
ついに、恋人が逃げ出した。
シルヴァはこれでも抑えているつもりだった。
自宅に拉致紛いなことはするが、監禁もしないし、物理的に縛りもしない。これだけでもシルヴァの中では大変な譲歩だった。
シルヴァは恋人の全てを管理しないと気が済まない。
悪い癖だとは分かっている。だからなるべく抑えていた。
なのにだ。
「クックック…苛々しているな、シルヴァ」
「誰のせいだと思ってるんですか、エドガー」
エドガーは悪びれもせず、魔法師団長の執務室にやってきて笑っていた。この友人兼同僚は本当にタチが悪い。
シルヴァが一番嫌がることだと分かっていて、コリンを他所へ放り出したのだ。
「仕方ないだろう。コリン自身が手を挙げたのだから」
「そう仕向けたでしょう。わざとらしく募集をかけて、普段なら事務員なんか連れてかないじゃないですか」
「そろそろ刺激が欲しい頃だと思ってな」
サシャは騙されている。エドガーを父親のように慕っているが、この男の本性は人を揶揄うことに生きがいを感じている最低な野郎なのだ。
普段は情に厚い所もある良い男なのだが、エドガーの悪い癖みたいなものだ。
「はぁ…最初からやり直しですよ。分かってますか?エドガー」
「『作り変えている最中』だったんだろう?残念だったな。後はどこだったんだ?」
本当にタチが悪い。全て分かっていてシルヴァに嫌がらせをしている。
「骨までだと二年半くらいで人は作り変えられると言いますが、髪の毛はそうもいきませんからね」
「更に先の話だな。それと後は、心か?」
「ええ、そうですね。まだ僕から逃げられると思ってるのですから、可愛いものですね」
本当はコリンがだいぶ前から自由になりたがっていることには気付いていた。気付いていて無視をし続けた。
そうしなければ『作り変える』のは、一からやり直しになる。
それにそもそも、コリンはまだ分かっていない事がある。
「甲斐甲斐しく世話をしてくるシルヴァが居なくても大丈夫だと思ってるのがコリンらしい」
「心は離れられたと思っても、身体はもうとっくに覚えているでしょうからね」
シルヴァは全身を自分で塗り替えたい。それどころか作り変えたい。
「可哀想にな」
「ええ、可哀想にしたいんですよ」
シルヴァは微笑んでいるが目は笑っていない。そんなシルヴァを見てエドガーは口端を上げる。
「サシャも怒っていただろう?」
「僕にもエドガーにもコリンにも怒っていましたよ」
シルヴァがコリンを構いすぎたこと。エドガーが出張を許可したこと。そもそも忙しいのが分かっていてなんの調整もせず勝手に王都へいったコリンに対し、サシャは月の精のような顔を歪ませてキレた。
「三人とも自由すぎる!信じられない!許さない!」と、コリンを自由にしてあげて欲しいという言葉は一体なんだったのか。
「『帰ってきたら私がアーヴィンと旅行に行ってやる!』と意気込んでました。サシャに休暇を与えてあげてはどうですか?」
「アーヴィンが居ないのは痛いが、まぁ仕方ないな。アーヴィンに調整しとくよう伝えとこう」
エドガーは肩を竦めて笑う。
「コリンが帰ってくるのが楽しみだ」
「全く、最初からやり直す身にもなって欲しいです」
シルヴァは追いかけたりしない。
もちろん魔法師団長という立場があるからなのもある。
しかし追いかける必要など全くない。
もうコリンは、シルヴァから離れられる訳がないのだから。
ついに、恋人が逃げ出した。
シルヴァはこれでも抑えているつもりだった。
自宅に拉致紛いなことはするが、監禁もしないし、物理的に縛りもしない。これだけでもシルヴァの中では大変な譲歩だった。
シルヴァは恋人の全てを管理しないと気が済まない。
悪い癖だとは分かっている。だからなるべく抑えていた。
なのにだ。
「クックック…苛々しているな、シルヴァ」
「誰のせいだと思ってるんですか、エドガー」
エドガーは悪びれもせず、魔法師団長の執務室にやってきて笑っていた。この友人兼同僚は本当にタチが悪い。
シルヴァが一番嫌がることだと分かっていて、コリンを他所へ放り出したのだ。
「仕方ないだろう。コリン自身が手を挙げたのだから」
「そう仕向けたでしょう。わざとらしく募集をかけて、普段なら事務員なんか連れてかないじゃないですか」
「そろそろ刺激が欲しい頃だと思ってな」
サシャは騙されている。エドガーを父親のように慕っているが、この男の本性は人を揶揄うことに生きがいを感じている最低な野郎なのだ。
普段は情に厚い所もある良い男なのだが、エドガーの悪い癖みたいなものだ。
「はぁ…最初からやり直しですよ。分かってますか?エドガー」
「『作り変えている最中』だったんだろう?残念だったな。後はどこだったんだ?」
本当にタチが悪い。全て分かっていてシルヴァに嫌がらせをしている。
「骨までだと二年半くらいで人は作り変えられると言いますが、髪の毛はそうもいきませんからね」
「更に先の話だな。それと後は、心か?」
「ええ、そうですね。まだ僕から逃げられると思ってるのですから、可愛いものですね」
本当はコリンがだいぶ前から自由になりたがっていることには気付いていた。気付いていて無視をし続けた。
そうしなければ『作り変える』のは、一からやり直しになる。
それにそもそも、コリンはまだ分かっていない事がある。
「甲斐甲斐しく世話をしてくるシルヴァが居なくても大丈夫だと思ってるのがコリンらしい」
「心は離れられたと思っても、身体はもうとっくに覚えているでしょうからね」
シルヴァは全身を自分で塗り替えたい。それどころか作り変えたい。
「可哀想にな」
「ええ、可哀想にしたいんですよ」
シルヴァは微笑んでいるが目は笑っていない。そんなシルヴァを見てエドガーは口端を上げる。
「サシャも怒っていただろう?」
「僕にもエドガーにもコリンにも怒っていましたよ」
シルヴァがコリンを構いすぎたこと。エドガーが出張を許可したこと。そもそも忙しいのが分かっていてなんの調整もせず勝手に王都へいったコリンに対し、サシャは月の精のような顔を歪ませてキレた。
「三人とも自由すぎる!信じられない!許さない!」と、コリンを自由にしてあげて欲しいという言葉は一体なんだったのか。
「『帰ってきたら私がアーヴィンと旅行に行ってやる!』と意気込んでました。サシャに休暇を与えてあげてはどうですか?」
「アーヴィンが居ないのは痛いが、まぁ仕方ないな。アーヴィンに調整しとくよう伝えとこう」
エドガーは肩を竦めて笑う。
「コリンが帰ってくるのが楽しみだ」
「全く、最初からやり直す身にもなって欲しいです」
シルヴァは追いかけたりしない。
もちろん魔法師団長という立場があるからなのもある。
しかし追いかける必要など全くない。
もうコリンは、シルヴァから離れられる訳がないのだから。
応援ありがとうございます!
10
お気に入りに追加
182
1 / 3
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる