【完結】秘める華が暴かれる時

七咲陸

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友人セティについて

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  セティは長らく片思いをしていた。

  フレイと半分血の繋がった兄弟でありながら、男同士であり、セティは踊り子の母から産まれた事を気に病んでいた。

  フレイに相応しくない。だから別に思いを告げるつもりは無い。

  しかし、セティの素直で表情豊かなあの性格だ。誰だって好意があると気づいてしまう。フレイもすぐに気づいたらしい。可愛く思っていたセティに好意を寄せられ嬉しく思い、すぐさま答えようとした。だがセティは逃げた。

『フレイ兄様が……ぼくを好きだって言うんだ。どうしよう。どうしようカッツェ…ぼくじゃ、ぼくじゃだめなのに……っ』

  そう痛々しく泣くセティを見て、胸が張り裂けそうなほど苦しくなった。

  フレイはイェステ子爵夫人の言う通り将来有望な男だ。騎士団に入団した後はすぐに頭角を現し、騎士団長候補とも言われていたがレーヴェと出会い、レーヴェに剣を捧げた。イェステ子爵家もレゲンデーア侯爵家ならばと護衛になることを認め、今に至る。

  そんなフレイにはどんな縁談が舞い込んできてもなんらおかしくない。将来何不自由なく家族を養えるであろう男が、まさか自分を好きになるなど、セティは小指の先程も考えてなかった。

『ぼくなんか…ぼくなんかが好きになっちゃいけなかったのに。フレイ兄様はぼくを哀れに思って好きだと言っているんだ。どうすればいい?どうすれば……カッツェ、ぼく、もうイェステ子爵邸に居られない…』

  そうしてセティは我がレゲンデーア家にやってくることになる。

  初めはセティの友人である僕、カッツェに逢いに来ているだけだとフレイは思っていた。しかしあまりの頻度にセティは僕のことを好きなんじゃないかと思うようになったらしい。

  フレイは沸々と怒りに似た嫉妬を湧き上がらせていった。

『セティ。お前は、俺とカッツェ様のどっちを好きなんだ。あれほど俺のことが好きだとうるさいくらい目で訴えかけてきたお前が…そんなにすぐ心変わりをしたのか』

  普段から無表情の男が暗く重い空気を纏ってセティに詰め寄る。セティは怖くなって益々逃げたくなったようだった。

  好きな人に冷たい目と声で言われ、カッツェにまた泣きつくが、さすがにもうこれ以上匿っていては兄に迷惑がかかるのでセティにちゃんと話し合うように伝えた。

『セティ。ちゃんとフレイと向き合いましょう。きっと大丈夫。大丈夫ですよ』

『フレイ兄様を困らせたくない…やだ、やだぁ……』

『困らせると言うならもうとっくに困ってるでしょう?セティが逃げ続けたらもっとフレイは困りますよ』

  だから頑張りましょう。そう諭した。

  カッツェの後押しを受け、ようやく二人は話し合うことが出来た。長い長い話し合いの末、セティとフレイは恋人同士となったのだった。

『フレイ兄様が…ぼくのことを、あ、、あ、愛してるんだって…言ってくれたの』

『そうですか、おめでとうセティ』

  幸せそうに、恥ずかしそうに微笑む可愛らしい友人を心から祝福をした。

  レーヴェとカッツェでは後継者問題という巨大な壁が立ちはだかり、到底叶わない恋をセティとフレイに似せてしまっていたせいもあり、本当に嬉しかった。

これが、つい1ヶ月ほど前の出来事であった。




「セティ!」

  バタン、と常にない大きな音を立てて大きな玄関扉を開けたのはフレイだった。
  カッツェは音に気づき、セスと共に玄関に向かった。

「フレイ、おかえりなさい」

「! た、ただいま戻りました。騒がしくして申し訳ありません…!」

「構いませんよ。さ、セティの部屋に案内します」

「そ、そんな恐れ多い! 誰かに場所を聞いて」

  フレイはかなり慌てて戻ってきたようだ。いつもの無表情はどこへやら、ワタワタと落ち着きがない。クスクスと笑って落ち着くように促しながらクルリと背を向けて歩き始めた。

  フレイは渋々カッツェの後を着いてくることに決めたようだ。

「……カッツェ様、連絡を頂き大変感謝申し上げます」

「こちらの不手際です。感謝されるようなことでは無いです。むしろセティに申し訳なく」

「元はと言えば私の母のせいなのです。謝るべきはこちらです」

  これ以上言い合ってもお互い譲らない事は何となく分かった。カッツェは話を逸らすことにした。

「メイドがすぐに到着して良かったです。セティにはブランチを取った後また休んでもらっています」

「メイドが死にそうに顔を真っ青にして来たから驚きました。そのメイドの表情のおかげでレーヴェ様もただ事ではないと思ったようでした。レーヴェ様には部下を三人配置しましたので安心してください」

  フレイが護衛の中でトップなのだ。兄は治水工事の件で他領とピリピリしている状況なのでフレイが抜けるのは痛い。
  それでも兄はフレイにセティの元へ行くことを許してくださった。後でカッツェからも謝らなくてはならないと思った。

「コチラです。頼みましたよ、フレイ」

「はい。感謝致します、カッツェ様」

  一礼をし、フレイは客室の扉をノックする。コンコン、と音を響かせ、部屋の扉を開けて中に入っていった。

  フレイが急いていたせいで閉めなかった扉の隙間から驚いているセティを抱きしめているのが見えて、ゆっくりと音を立てずに扉を閉めた。


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