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二人だけの世界
しおりを挟む最後に残る懸念はただ一つ。後継者問題だ。
「まだそんなこと気にしてたのか」
はぁ、と大きくため息をつくのは他でもない兄、レーヴェだ。昨日も結局休憩中だと言うのに事に及んでしまい、フレイとセスは大いに困ったそうだ。
申し訳ないのでまだ倦怠感の残る身体を叱咤してベッドから起き上がった。とはいえ、どこかに行ける体力は無いので兄の執務室で紅茶を飲みながら本を読むことくらいしか出来なかった。
そんな中、兄に思い切って尋ねた。
流石の僕でも、兄が僕に対して弟以上の感情を持ってくれていることはこれ以上ないほど伝わった。だからこそ、きちんと尋ねる必要があった。
「カッツェには私の想いがちゃんと伝わらなかったかな?」
「い、いえ!充分伝わってます……!」
兄の瞳にハイライトが失われかけたのでまた抱き潰されると思って慌ててすぐに返事をした。
しかしこれだけはやはり確認しなくてはならない。
「っ、わ、分かっておりますけど!やはりレゲンデーア領の今後を考えますと、跡継ぎは必要だと思うのです……!」
「私がなんの準備もしてないと思った? ちゃんと後継者なら準備してるよ」
「え……?」
「カッツェが私を受け入れたら言おうと思っていたんだ。こうなるなら先にいえば良かったな」
爪が甘かった、ともう一度大きくため息をつかれ、申し訳なくなってくる。
兄が言うには、両親は亡くなったとはいえ親戚付き合いが無くなった訳では無い。父方の兄弟に子供が出来て、その男の子が聡明なようなので既に跡継ぎとして打診している所だそうだ。
「その子もやる気だし、養育期間が終わり次第こちらで後継者指導が始まる」
「……お兄様は、いつから、その、僕のことを」
「その話は引かれる自信があるからしない方がいい」
その打診はいつからのものだったのか。兄は口を閉ざして答えてはくれなかった。少しの間執務室に無言が流れるが、僕は諦めて手元の本に目を落とした。セティが淹れてくれた紅茶はまだまだ練習が足りないが、それでも頑張って淹れた様子が伺える美味しい紅茶だ。一口味わってページを捲る。
この世界がカッツェにとって、誰がなんと言おうとも幸せであった。実の兄にこんな気持ちを持つなんて有り得ないと言われても、これがカッツェの幸せであり、愛であった。
好きな気持ちに蓋をしたつもりで過ごして居たけれど、兄には全てお見通しだった訳だ。やはり兄には隠し事は何も出来ないな、と悔しい気持ちもなくただ納得した。
ペラリと捲る音に、兄が書類を書く紙にペンが滑る音が混ざる。暫くと心地よいハーモニーに耳を傾けていると、自然と瞼がおりていき、兄の呟きは僕の耳に届くことは無かった。
「…カッツェが産まれた瞬間から、愛していたなんて言ったら……気持ち悪いと思われるだろうな」
気がついたらベッドの上に移動していた僕は、隣で一緒に寝ていた兄、レーヴェを見てまた幸せな気持ちで眠りについた。
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カッツェ=レゲンデーア
20歳、芙蓉の精霊と呼ばれていたのは両親に連れられた社交界や学生時代のことである。卒業後は図書館の司書を行い、遊び歩くこともなかったので職場の人間以外は見かけることはほとんど無くなり、レゲンデーアの秘華と呼ばれていたりするのを本人とセティ以外知らない。
兄を好きになったタイミングは覚えてないが、確信したのは精通した時。(兄の夢を見て夢精した)
レーヴェ=レゲンデーア
27歳、美男子であるがどの人間に対しても冷たいためレゲンデーアの凍華と呼ばれている。
カッツェを好きになったのは産まれて来て目が合った瞬間だった。そして結婚出来ないことを知って一時期絶望するが、悩んでいた頃に両親が立て続けに不慮の事故死と病死となり、後継者問題を親戚に押し付けることに決めた。決めたあとは全部振り切った行動をするようになる。カッツェのために邸宅の改装、領主の手伝いをさせたり、図書館を作って司書をさせたりと領から離れられなくしていた。
次回からはセティとフレイの話になります
もう少しお付き合い下さい
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