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学園編
59話
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フェニクスこと朱鸞との契約も完了し、とりあえず一件落着の雰囲気になったが。
扉を壊す勢いで、開けるものがいた。
ドカンという音を響かせながら、椅子にくくりつけられたままの状態で、アルシェイドが入ってくる。
誰もがその姿に疑問をもつが、誰もその疑問を口にすることはできなかった。
後ろについてきている獅子の頭に山羊の胴体、蛇の尾を持つ幻獣キメラの存在が皆の口を閉じさせたのだ。
「えーと、アルシェイド様、その格好にはどういった意図が?」
この場にいる者たちの疑問を代表して問うたのは、グレーティエだ。
アルシェイドは黙ってグレーティエのほうまでやってきた。
椅子にくくりつけられたままの状態でどうやって動いているのかというと、風の魔法を使って身体を浮かせることで移動していた。(相当高度な魔力コントロールが必要になるので、とても難しい)
アルシェイドはグレーティエのそばにより、くくりつけられている椅子を粉々にしてグレーティエに抱きついた。
「無事で良かった」
「アルシェイド様、感動的な再会の邪魔をして申し訳ないのですが、何故来るときに縄から抜けなかったのですか?」
グレーティエは、謝罪しながらも空気の読めない発言をする。
「本当に雰囲気が台無しだな、君は」
呆れながらもアルシェイドは、自分で思っているよりもグレーティエが無事であることで緊張がとけていたようだ。
朗らかな笑顔を覗かせる。
そして、そのほんわか気分を台無しにするものが現れる。
そう、アルシェイドの後ろについてきたキメラが、紫皇とフェニクスこと朱鸞に威嚇をしてきた。
『ぐぅおおぉぉ』
その威嚇は頑丈にできている城を揺るがすほどの大音量だ。
「ライガ、五月蝿い黙れ」
アルシェイドがキメラ、名前はライガというようだ。に短くそう言うとキメラことライガはしゅんと頭を下げ、くおんと甘えた声を出して、ふせをした。
威嚇された二人は特に気にした様子もなく、ライガを無視していた。
そして、グレーティエは。
「アルシェイド様の契約獣はキメラなんですね。とても(気持ちよさそうな毛が)素敵ですね」
目をキラキラさせてそう言った。
今、彼女の頭の中は、キメラの毛がどのくらいもふもふなのかという思いでいっぱいだ。
それを目ざとく感じた紫皇は、嫉妬を隠しもせず、
「おいおい、お前には俺がいるだろ。あんな単細胞なんかにそんな目向けるなよ」
そう言い、彼はもとのグリフォンの姿に戻って、グレーティエをそのふわふわした毛で包みます。
「…」
皆が皆、呆れと驚愕の感情を滲ませて、黙ってしまった。
ただ一人、包み込まれたグレーティエは、紫皇の羽毛の気持ちよさを堪能している。
ある程度堪能したグレーティエは、紫皇に離すように頼む。
「気持ち良かったから、もう離して」
『俺としてはもう少しお前の手を堪能したいが、まあほれよ』
グレーティエの言葉を聞き入れ、紫皇は彼女を包む翼を広げ、人の姿に変わった。
「えーと、あの、その」
皆の表情には呆れよりも驚愕が色濃く出ており、その表情を見たグレーティエは戸惑う。
何気に本来の姿に戻ってしまった紫皇のもふもふを堪能してしまったが、彼女は忘れていた。
紫皇がS級幻獣グリフォンであることに。
この場にいる者の中で、グレーティエがグリフォンと契約しているのを知っているのは、グレーティエの父であるティエールだけだ。
皆が驚くのも無理はない。
しかし、グレーティエと同い年でA級幻獣キメラと契約しているアルシェイドは特に驚いていなかった。
「ティエの契約幻獣はグリフォンだったんだね」
驚くどころか普通に受け入れていた。
「アルシェイド様こそ、キメラと契約していたんですね。とても(その気持ちよさそうな毛が)羨ましいです」
彼女のもふもふ欲?と言うものは健在だった。
グレーティエの意識を自分に向けさせようと頑張った紫皇もなんのそのである。
「ああ、確かに最近は会ってなかったからね。僕も君も学園のこととかで忙しかったからと言うのもあるだろうけど」
グレーティエの反応に半ばいじけてしまった紫皇はぶつぶつ何かを言っていたが、グレーティエはそれを無視、と言うか聞いておらず、アルシェイドと会話をしている。
そこで、我慢の限界が来たのか、親馬鹿になりつつある、いやもう既に親馬鹿と言えるレベルかもしれないグレーティエの父であり、宰相であるティエールは叫びながらグレーティエに突進する勢いで駆けてきた。
「グレーティ!無事でよかった!」
「父さま痛いですよ」
ほんの十数歩の距離を一瞬で移動(おそらく魔法を併用している)し、愛娘を締め付けるかのような力で抱きしめた。
グレーティエは父のその行動に、心配させてしまったな、という思いが先行し文句を言いながらも逃げるような事はせず、父に抱きしめられたままになった。
ティエールはグレーティエのその言葉に、泣き笑いのような声で「すまない」と言いながら腕の力を緩めるが、離そうとはしなかった。
ぼけーとしていた、王は驚きからやっと?開放されたようで、
「いや、いやいや君たち、ちょっと待ってくれ」
いや、その実そんなに開放はされていなかった。
「なんですか?今愛娘との感動の再会中なんですから、話は手短にしてくださいよ」
グレーティエに向けている表情と一変して、いつもの氷の宰相がそこにいた。
一応一国の王に対しての態度として、それはいいのだろうか?という声が、氷の宰相ことティエールの腕の中にいまだいるグレーティエの心の中で問われていた。
しかし、本人である王自身があまり気にしていない、というか気にする余裕がない状態だからか、咎められる雰囲気にはならなかった。
王はまだ混乱気味な顔だが、この場の過半数が驚いている要因に疑問を投げる。
驚いている要因、それはすなわち、この場にいるグリフォンのことである。
「そのグリフォンはどうしてここにいる?」
賢王として名高いジェイラスにしては、なんとも微妙な問いであった。
扉を壊す勢いで、開けるものがいた。
ドカンという音を響かせながら、椅子にくくりつけられたままの状態で、アルシェイドが入ってくる。
誰もがその姿に疑問をもつが、誰もその疑問を口にすることはできなかった。
後ろについてきている獅子の頭に山羊の胴体、蛇の尾を持つ幻獣キメラの存在が皆の口を閉じさせたのだ。
「えーと、アルシェイド様、その格好にはどういった意図が?」
この場にいる者たちの疑問を代表して問うたのは、グレーティエだ。
アルシェイドは黙ってグレーティエのほうまでやってきた。
椅子にくくりつけられたままの状態でどうやって動いているのかというと、風の魔法を使って身体を浮かせることで移動していた。(相当高度な魔力コントロールが必要になるので、とても難しい)
アルシェイドはグレーティエのそばにより、くくりつけられている椅子を粉々にしてグレーティエに抱きついた。
「無事で良かった」
「アルシェイド様、感動的な再会の邪魔をして申し訳ないのですが、何故来るときに縄から抜けなかったのですか?」
グレーティエは、謝罪しながらも空気の読めない発言をする。
「本当に雰囲気が台無しだな、君は」
呆れながらもアルシェイドは、自分で思っているよりもグレーティエが無事であることで緊張がとけていたようだ。
朗らかな笑顔を覗かせる。
そして、そのほんわか気分を台無しにするものが現れる。
そう、アルシェイドの後ろについてきたキメラが、紫皇とフェニクスこと朱鸞に威嚇をしてきた。
『ぐぅおおぉぉ』
その威嚇は頑丈にできている城を揺るがすほどの大音量だ。
「ライガ、五月蝿い黙れ」
アルシェイドがキメラ、名前はライガというようだ。に短くそう言うとキメラことライガはしゅんと頭を下げ、くおんと甘えた声を出して、ふせをした。
威嚇された二人は特に気にした様子もなく、ライガを無視していた。
そして、グレーティエは。
「アルシェイド様の契約獣はキメラなんですね。とても(気持ちよさそうな毛が)素敵ですね」
目をキラキラさせてそう言った。
今、彼女の頭の中は、キメラの毛がどのくらいもふもふなのかという思いでいっぱいだ。
それを目ざとく感じた紫皇は、嫉妬を隠しもせず、
「おいおい、お前には俺がいるだろ。あんな単細胞なんかにそんな目向けるなよ」
そう言い、彼はもとのグリフォンの姿に戻って、グレーティエをそのふわふわした毛で包みます。
「…」
皆が皆、呆れと驚愕の感情を滲ませて、黙ってしまった。
ただ一人、包み込まれたグレーティエは、紫皇の羽毛の気持ちよさを堪能している。
ある程度堪能したグレーティエは、紫皇に離すように頼む。
「気持ち良かったから、もう離して」
『俺としてはもう少しお前の手を堪能したいが、まあほれよ』
グレーティエの言葉を聞き入れ、紫皇は彼女を包む翼を広げ、人の姿に変わった。
「えーと、あの、その」
皆の表情には呆れよりも驚愕が色濃く出ており、その表情を見たグレーティエは戸惑う。
何気に本来の姿に戻ってしまった紫皇のもふもふを堪能してしまったが、彼女は忘れていた。
紫皇がS級幻獣グリフォンであることに。
この場にいる者の中で、グレーティエがグリフォンと契約しているのを知っているのは、グレーティエの父であるティエールだけだ。
皆が驚くのも無理はない。
しかし、グレーティエと同い年でA級幻獣キメラと契約しているアルシェイドは特に驚いていなかった。
「ティエの契約幻獣はグリフォンだったんだね」
驚くどころか普通に受け入れていた。
「アルシェイド様こそ、キメラと契約していたんですね。とても(その気持ちよさそうな毛が)羨ましいです」
彼女のもふもふ欲?と言うものは健在だった。
グレーティエの意識を自分に向けさせようと頑張った紫皇もなんのそのである。
「ああ、確かに最近は会ってなかったからね。僕も君も学園のこととかで忙しかったからと言うのもあるだろうけど」
グレーティエの反応に半ばいじけてしまった紫皇はぶつぶつ何かを言っていたが、グレーティエはそれを無視、と言うか聞いておらず、アルシェイドと会話をしている。
そこで、我慢の限界が来たのか、親馬鹿になりつつある、いやもう既に親馬鹿と言えるレベルかもしれないグレーティエの父であり、宰相であるティエールは叫びながらグレーティエに突進する勢いで駆けてきた。
「グレーティ!無事でよかった!」
「父さま痛いですよ」
ほんの十数歩の距離を一瞬で移動(おそらく魔法を併用している)し、愛娘を締め付けるかのような力で抱きしめた。
グレーティエは父のその行動に、心配させてしまったな、という思いが先行し文句を言いながらも逃げるような事はせず、父に抱きしめられたままになった。
ティエールはグレーティエのその言葉に、泣き笑いのような声で「すまない」と言いながら腕の力を緩めるが、離そうとはしなかった。
ぼけーとしていた、王は驚きからやっと?開放されたようで、
「いや、いやいや君たち、ちょっと待ってくれ」
いや、その実そんなに開放はされていなかった。
「なんですか?今愛娘との感動の再会中なんですから、話は手短にしてくださいよ」
グレーティエに向けている表情と一変して、いつもの氷の宰相がそこにいた。
一応一国の王に対しての態度として、それはいいのだろうか?という声が、氷の宰相ことティエールの腕の中にいまだいるグレーティエの心の中で問われていた。
しかし、本人である王自身があまり気にしていない、というか気にする余裕がない状態だからか、咎められる雰囲気にはならなかった。
王はまだ混乱気味な顔だが、この場の過半数が驚いている要因に疑問を投げる。
驚いている要因、それはすなわち、この場にいるグリフォンのことである。
「そのグリフォンはどうしてここにいる?」
賢王として名高いジェイラスにしては、なんとも微妙な問いであった。
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