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学園編
65話
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オリエンテーション的な授業が本日最後の授業だったので、帰宅準備を始める。
準備と言っても教材などはないので、筆記具(この世界にペンはなく、インクを使う羽ペン)をしまうだけだが。
この学園は全寮制なので、寮に帰宅する。
学園では身分は振りかざさないのが決まりではあるが、生活区域に関しては明確な差が設けられている。
理由として、貴族と平民は生活の差があり過ぎるというのと、大昔同じ寮で生活していた生徒の間で貴族の鬱憤晴らしのいじめが起こるなどの問題が発生したことが理由といえるだろう。
そんなこんなで、爵位によって住む寮が違う。
私の家は侯爵位なので、王族なども住む太陽寮に住んでいる。
寮分けは、上から私も住んでいる太陽寮、伯爵や子爵、裕福な商人などが住む天空寮、平民などが住む大地寮となっている。
本来であれば、天空寮以上の生徒は使用人を連れていけるようだが、私はまだ専属の使用人がいなかったことや、母の計らいにより身一つで寮に入ることになった。
私としては、堅苦しくなるので使用人がいないのはむしろ嬉しいことなのだが、ここに住むものは使用人の数が所謂メンツ?のようなものを示しているようで、宰相の娘で侯爵位でもある私が使用人を連れていないことで侮る生徒がいるようだ。
寮の部屋につくまでに、何度嘲りの視線を浴びせられたことか。
まあ、いなくてよかったとは思うが、はっきり言ってこの超がつくほど広すぎるこの部屋で私一人というのは、かなり寂しい感覚はある。
初めて寮の部屋に案内されたときの心の第一声が掃除が面倒、となるほどの広さだったのだから。
家具に関しては、父が根回ししたのか実家の私の部屋にあったものがあった。
『せめて家具は使い慣れたものを持っていかせてよー』
涙ながらに訴えている父の姿を思い出した。
母に縋り付いて訴えている父を見たとき、父ってあんなんだっけ?と物凄く疑問に思ったのは記憶に新しい。
あれで氷の宰相と言われているなんて詐欺なんじゃないだろうか。
ああ、これは、父のあれな言動を思い出すなんて、早々にホームシックだろうか。
部屋で夕食の時間までコクラン先生に入学祝いとして貰った精霊魔法学の専門書を読んでいた。
この学園の制度などもわかってきた本日一時限目の授業は私にとっては初めての幻獣学の授業で、場所は魔法結界が施された前世でいうところの体育館のようなところだ(この世界では習練場という)。
幻獣学の先生は私にゲルディ・ルーゼン・ジーストと名乗った。
名前からどうやらこの先生は貴族であるようだが、ファルが入っていないので伯爵以下だろう。
にしても、声が大きく熱血な感じの先生だな。
「さあ!皆の衆!本日は初めて生徒全員の契約獣を紹介してもらう時間だ!」
「「「おー」」」
生徒たちの歓声が響く。
「よーし!それじゃあ、年長順で契約獣を出してもらうから、ハイルからやってみろ!」
幻獣科一年生で一番年長である、ハイルが前に出た。
「はい、おいでクルサ」
ハイルの言葉で彼の周りで風がおこる。
『お呼びかい、ハイル』
『呼んだかハイル』
風の勢いが収まるとハイルの前に、三メートル位の大きさで白銀に輝く双頭の狼が現れた。
二つの頭から同時に声が響く。
「おお!ハイルの契約獣はオルトロスだったか!B級の幻獣とはすごいじゃないか!」
「ハイルかっけー」
ハイルは先生や生徒たちの称賛に遠慮気味に頭を下げた。
「ええー次はシエンだな」
「ちっ、あんなののすぐ後とかついてねーな、来い!セル!」
ハイルの後はグレーティエに突っかかってきたシエンの番だ。
不敵な視線をハイルに向けるシエンの言葉で今度は、炎が彼の周りを包みこみ、炎の中から二メートル弱の火を吹くトカゲが姿を現す。
『なんか用か?シエン』
「ほほう!シエンの契約獣はサラマンダーだな、珍しい契約獣じゃないか!」
「ふふん、俺だってまあまあだろ?」
ハイルはシエンの声が聞こえていないのか、興味がないのか自身が召喚した契約獣の首を撫でていた。
「まあまあ、シエンもすごいことに変わりないのだし気にするな気にするな、んで次はレイフォス嬢だぞ」
先生はシエンを慰めながら、次の生徒を呼ぶ。
レイフォスは緊張した顔で前に出る。
「はい、来て、トウル」
レイフォスの契約獣は幼児と同じくらいの大きさをしたフクロウだった。
『お呼びですか、主よ』
「ほうほう、またまた珍しいな、今度はアウルじゃないか」
次々と生徒たちの契約獣が姿を現す。
魔力を持つ狼、魔狼や、翼を持つ馬、ペガサス、一本の角を持つ馬、ユニコーン、二本の角を持つ猪、グレートボアなど。
ハイルのオルトロスやシエンのサラマンダーほどの幻獣は出なかったが。
「よーし、最後は一番年下のグレーティエ嬢だな」
私の番になるので、前に進み出ようとするが、その前に習練場の扉が勢いよく開く音が響く。
「すみません、遅れてしまいました、ゲルディ先生」
「む?アルシェイド様は今日公務で欠席と聞いてたんですが」
「ああ、それは多分遅れるという連絡をしたつもりなんですが行き違いがあったのかもしれません」
「おお、そうだったか、それはすまなかったな、ではグレーティエ嬢の前にアルシェイド様の契約獣の披露をお願いしますよ」
「ああ、今日は契約獣のお披露目の授業でしたか、わかりましたでは俺の契約獣を呼びましょう」
呆然とする私やほかの生徒たちを置いて、トントン拍子に話が進んでいった。
準備と言っても教材などはないので、筆記具(この世界にペンはなく、インクを使う羽ペン)をしまうだけだが。
この学園は全寮制なので、寮に帰宅する。
学園では身分は振りかざさないのが決まりではあるが、生活区域に関しては明確な差が設けられている。
理由として、貴族と平民は生活の差があり過ぎるというのと、大昔同じ寮で生活していた生徒の間で貴族の鬱憤晴らしのいじめが起こるなどの問題が発生したことが理由といえるだろう。
そんなこんなで、爵位によって住む寮が違う。
私の家は侯爵位なので、王族なども住む太陽寮に住んでいる。
寮分けは、上から私も住んでいる太陽寮、伯爵や子爵、裕福な商人などが住む天空寮、平民などが住む大地寮となっている。
本来であれば、天空寮以上の生徒は使用人を連れていけるようだが、私はまだ専属の使用人がいなかったことや、母の計らいにより身一つで寮に入ることになった。
私としては、堅苦しくなるので使用人がいないのはむしろ嬉しいことなのだが、ここに住むものは使用人の数が所謂メンツ?のようなものを示しているようで、宰相の娘で侯爵位でもある私が使用人を連れていないことで侮る生徒がいるようだ。
寮の部屋につくまでに、何度嘲りの視線を浴びせられたことか。
まあ、いなくてよかったとは思うが、はっきり言ってこの超がつくほど広すぎるこの部屋で私一人というのは、かなり寂しい感覚はある。
初めて寮の部屋に案内されたときの心の第一声が掃除が面倒、となるほどの広さだったのだから。
家具に関しては、父が根回ししたのか実家の私の部屋にあったものがあった。
『せめて家具は使い慣れたものを持っていかせてよー』
涙ながらに訴えている父の姿を思い出した。
母に縋り付いて訴えている父を見たとき、父ってあんなんだっけ?と物凄く疑問に思ったのは記憶に新しい。
あれで氷の宰相と言われているなんて詐欺なんじゃないだろうか。
ああ、これは、父のあれな言動を思い出すなんて、早々にホームシックだろうか。
部屋で夕食の時間までコクラン先生に入学祝いとして貰った精霊魔法学の専門書を読んでいた。
この学園の制度などもわかってきた本日一時限目の授業は私にとっては初めての幻獣学の授業で、場所は魔法結界が施された前世でいうところの体育館のようなところだ(この世界では習練場という)。
幻獣学の先生は私にゲルディ・ルーゼン・ジーストと名乗った。
名前からどうやらこの先生は貴族であるようだが、ファルが入っていないので伯爵以下だろう。
にしても、声が大きく熱血な感じの先生だな。
「さあ!皆の衆!本日は初めて生徒全員の契約獣を紹介してもらう時間だ!」
「「「おー」」」
生徒たちの歓声が響く。
「よーし!それじゃあ、年長順で契約獣を出してもらうから、ハイルからやってみろ!」
幻獣科一年生で一番年長である、ハイルが前に出た。
「はい、おいでクルサ」
ハイルの言葉で彼の周りで風がおこる。
『お呼びかい、ハイル』
『呼んだかハイル』
風の勢いが収まるとハイルの前に、三メートル位の大きさで白銀に輝く双頭の狼が現れた。
二つの頭から同時に声が響く。
「おお!ハイルの契約獣はオルトロスだったか!B級の幻獣とはすごいじゃないか!」
「ハイルかっけー」
ハイルは先生や生徒たちの称賛に遠慮気味に頭を下げた。
「ええー次はシエンだな」
「ちっ、あんなののすぐ後とかついてねーな、来い!セル!」
ハイルの後はグレーティエに突っかかってきたシエンの番だ。
不敵な視線をハイルに向けるシエンの言葉で今度は、炎が彼の周りを包みこみ、炎の中から二メートル弱の火を吹くトカゲが姿を現す。
『なんか用か?シエン』
「ほほう!シエンの契約獣はサラマンダーだな、珍しい契約獣じゃないか!」
「ふふん、俺だってまあまあだろ?」
ハイルはシエンの声が聞こえていないのか、興味がないのか自身が召喚した契約獣の首を撫でていた。
「まあまあ、シエンもすごいことに変わりないのだし気にするな気にするな、んで次はレイフォス嬢だぞ」
先生はシエンを慰めながら、次の生徒を呼ぶ。
レイフォスは緊張した顔で前に出る。
「はい、来て、トウル」
レイフォスの契約獣は幼児と同じくらいの大きさをしたフクロウだった。
『お呼びですか、主よ』
「ほうほう、またまた珍しいな、今度はアウルじゃないか」
次々と生徒たちの契約獣が姿を現す。
魔力を持つ狼、魔狼や、翼を持つ馬、ペガサス、一本の角を持つ馬、ユニコーン、二本の角を持つ猪、グレートボアなど。
ハイルのオルトロスやシエンのサラマンダーほどの幻獣は出なかったが。
「よーし、最後は一番年下のグレーティエ嬢だな」
私の番になるので、前に進み出ようとするが、その前に習練場の扉が勢いよく開く音が響く。
「すみません、遅れてしまいました、ゲルディ先生」
「む?アルシェイド様は今日公務で欠席と聞いてたんですが」
「ああ、それは多分遅れるという連絡をしたつもりなんですが行き違いがあったのかもしれません」
「おお、そうだったか、それはすまなかったな、ではグレーティエ嬢の前にアルシェイド様の契約獣の披露をお願いしますよ」
「ああ、今日は契約獣のお披露目の授業でしたか、わかりましたでは俺の契約獣を呼びましょう」
呆然とする私やほかの生徒たちを置いて、トントン拍子に話が進んでいった。
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