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学園編
48話
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主人公視点に戻ります。
女性教師につれられて入った教室で、挨拶をし、席について担当教師の説明をひととおり聞き終わり、親切な生徒の手をとろうとした時、ぞわりとなにかがこちらにくる気配を感じた。
それは、確実にこちらに害を与えるものだと確信した時、反射的に身体が動いた。
「全員伏せて!」
そう叫んでいた。
だが、全員わけのわからない顔で戸惑うだけで、伏せようとしない。
いやな気配はかなり近くなり、焦った私はやむを得ず、舌打ちし細心の注意をはらいながら、風の魔法で全員を無理やり伏せさせた。
全員を伏せさせたその直後に、窓が割れて外から灼熱の炎が侵入してきた。
火に対してなら、水だ。
水属性の魔力を解放して、炎を呑み込むほどの水流を出現させた。
先ほどと違い、手加減を一切せずに発動した水の魔法は、巨大な灼熱の炎を簡単に消し去った。
灼熱の炎が消えた後、新たに荒れ狂う風が教室内を舞い、割れたガラスの破片が生徒たちを襲おうとしている。
私の魔法では加減ができるかわからない。
だから、紫皇の力で防ぐ。
「紫皇、借りるぞ」
小声でそう言い、紫皇の力で風によって舞い続けるガラスの破片を、砂のように細かく粉々にした。
二つの攻撃を防いだが、まだいやな気配は消えていなかった。
私は警戒しながら、生徒たちが助かったと呟いているのを聞いていた。
彼らはこの、肌を撫でる様ないやな気配を感じていないようだ。
私の感覚は、あまり歓迎できないが的を射たようで、業火を纏う鳥が窓に脚をひっかけてこちらを覗き見ている。
火の鳥ならフェニクスかな?
私はほんの数秒、そんなことを考えた。
フェニクス(仮)はこちらを伺いながら、嘴に炎を溜めている。
ふむ、最初の炎はこいつのだったか。
まあ、それは別に良いとして、問題はこれをどうするかだな。
さっきの攻撃はほぼ無効にできたが、さっきの攻撃が本気か手加減したかは、今目の前にいるフェニクス(仮)の嘴から出ている炎を見れば、大体分かる。
ほぼ同じ熱量なので、本気とまでは言えなくとも、加減はされていないだろう。
私もさっきの水の魔法は、加減はしていないが、魔力をおもいきり込めたわけでもないので、目の前の炎を消し去ることならできる。
だが、フェニクス(仮)をどうするかが問題だ。
襲ってきたのはあっちだが、殺すのは胸が痛むし、あれが仮でなく本物なら、不死の鳥だから殺すのは無理だ。
追い払うか、捕まえる?
いや捕まえるのは却下だな。
なら追い払うに限る。
穏便に済むとは思わないが、一応言葉での説得をしてみるか。
そう思い、割れた窓に近づいて、フェニクス(仮)に 私の姿が見えるようにした。
高位の幻獣なら、会話できるだろう。
「単刀直入に言おう。君は何故ここに来たんだ?何が目的でここを襲う?」
フェニクス(仮)は話かけられたことにとても驚いているようだ。
私の言葉が終わると、嘴にあった炎がおもしろい音をたてて消えていた。
つい私はその変な音に鼻で笑ってしまった。
『目的など無い』
簡潔過ぎる答えが返ってきた。
「目的が無いなら、もといた場所に帰ってもらいたいんだが?」
『ふん、何故我が、人間風情の頼みを聞かなくてはならない?』
「そんなこと言われても、そっちがその気ならこちらとて容赦できないよ。頼むから帰ってくれないか?」
『ふっははは、この我に容赦だと?貴様の様な人間風情が我に容赦などと笑わせるな!』
怒鳴りながら、フェニクス(仮)は炎を嘴から放った。
私は最初よりも魔力を込め水の魔法で放たれた炎を受け止めた。
受け止められた炎は私の放った水をすごい勢いで蒸発させていたが、水がすべて蒸発される前に炎が消えた。
『きっ貴様!』
私はため息をつきながら、怒れるフェニクス(仮)に、自分の風の魔力と紫皇の力をあわせて、すべてを切り裂くかのような風の刃を放った。
どうやらフェニクス(仮)は炎を纏う鳥で、実体はあるようだ。
おかげで物理攻撃が効く。
実体のない炎の塊だと物理が効かないだろうから、実体があってよかった。
血は出ないようだが、かなり消耗したようで、こちらを射殺す勢いで睨んでいる。
私は水で作った檻(見た目は丸い玉)でフェニクス(仮)を閉じ込めた。
『なんだ!これは!』
「暴れられると困るから、そこでおとなしくしててくれ」
『こっの!出せ!』
フェニクス(仮)は水の檻の中で暴れていたが、火と相性の悪い水の檻はびくともしない。
そこで、危険がもう無いと勘違いした者がフェニクス(仮 )の檻に近寄った。
「ふん、いい気味だ。僕を襲うからこうなる」
と、物凄くふんぞり返った、いかにも大切に育てられた金髪碧眼のボンボン坊っちゃんが言った。
檻が頑丈と言えども、炎をすべて防げるわけではない。
フェニクス(仮)はその子供に持てる力すべてを込めた、炎を放った。
私は咄嗟に、そのボンボンの前に出て、漏れ出た炎を水流で受け止めようとした。
だが、渾身の力で放たれたその炎は、急場凌ぎの水流では防ぎきれなかった。
防ぎきれなかった炎が私の両足に絡み付き、焼き付くされる様な熱を両足に感じた。
意識を失う寸前、檻に再度魔力を込め、強度を高め、ボンボンをフェニクス(仮)から遠ざけていた。
「何があった!」
一年生の担当教師は蹴破る勢いでドアを開け、教室に入った。
「先生!編入生の子が大変なんです!」
一番年長の、灰色の髪の少年、ハイルは教師に今起こったことを説明し、編入生をフェニクスから遠ざけていた。
「ハイル、よくやった。編入生は俺が預かる」
教師は泣きそうになっているハイルにそう言い、編入生を抱えあげた。
「まったく、可愛い妹が編入してきたかと思えば、こんな怪我しちゃって」
教師はそう言いながら、愛しそうに編入生の頭を撫でていた。
女性教師につれられて入った教室で、挨拶をし、席について担当教師の説明をひととおり聞き終わり、親切な生徒の手をとろうとした時、ぞわりとなにかがこちらにくる気配を感じた。
それは、確実にこちらに害を与えるものだと確信した時、反射的に身体が動いた。
「全員伏せて!」
そう叫んでいた。
だが、全員わけのわからない顔で戸惑うだけで、伏せようとしない。
いやな気配はかなり近くなり、焦った私はやむを得ず、舌打ちし細心の注意をはらいながら、風の魔法で全員を無理やり伏せさせた。
全員を伏せさせたその直後に、窓が割れて外から灼熱の炎が侵入してきた。
火に対してなら、水だ。
水属性の魔力を解放して、炎を呑み込むほどの水流を出現させた。
先ほどと違い、手加減を一切せずに発動した水の魔法は、巨大な灼熱の炎を簡単に消し去った。
灼熱の炎が消えた後、新たに荒れ狂う風が教室内を舞い、割れたガラスの破片が生徒たちを襲おうとしている。
私の魔法では加減ができるかわからない。
だから、紫皇の力で防ぐ。
「紫皇、借りるぞ」
小声でそう言い、紫皇の力で風によって舞い続けるガラスの破片を、砂のように細かく粉々にした。
二つの攻撃を防いだが、まだいやな気配は消えていなかった。
私は警戒しながら、生徒たちが助かったと呟いているのを聞いていた。
彼らはこの、肌を撫でる様ないやな気配を感じていないようだ。
私の感覚は、あまり歓迎できないが的を射たようで、業火を纏う鳥が窓に脚をひっかけてこちらを覗き見ている。
火の鳥ならフェニクスかな?
私はほんの数秒、そんなことを考えた。
フェニクス(仮)はこちらを伺いながら、嘴に炎を溜めている。
ふむ、最初の炎はこいつのだったか。
まあ、それは別に良いとして、問題はこれをどうするかだな。
さっきの攻撃はほぼ無効にできたが、さっきの攻撃が本気か手加減したかは、今目の前にいるフェニクス(仮)の嘴から出ている炎を見れば、大体分かる。
ほぼ同じ熱量なので、本気とまでは言えなくとも、加減はされていないだろう。
私もさっきの水の魔法は、加減はしていないが、魔力をおもいきり込めたわけでもないので、目の前の炎を消し去ることならできる。
だが、フェニクス(仮)をどうするかが問題だ。
襲ってきたのはあっちだが、殺すのは胸が痛むし、あれが仮でなく本物なら、不死の鳥だから殺すのは無理だ。
追い払うか、捕まえる?
いや捕まえるのは却下だな。
なら追い払うに限る。
穏便に済むとは思わないが、一応言葉での説得をしてみるか。
そう思い、割れた窓に近づいて、フェニクス(仮)に 私の姿が見えるようにした。
高位の幻獣なら、会話できるだろう。
「単刀直入に言おう。君は何故ここに来たんだ?何が目的でここを襲う?」
フェニクス(仮)は話かけられたことにとても驚いているようだ。
私の言葉が終わると、嘴にあった炎がおもしろい音をたてて消えていた。
つい私はその変な音に鼻で笑ってしまった。
『目的など無い』
簡潔過ぎる答えが返ってきた。
「目的が無いなら、もといた場所に帰ってもらいたいんだが?」
『ふん、何故我が、人間風情の頼みを聞かなくてはならない?』
「そんなこと言われても、そっちがその気ならこちらとて容赦できないよ。頼むから帰ってくれないか?」
『ふっははは、この我に容赦だと?貴様の様な人間風情が我に容赦などと笑わせるな!』
怒鳴りながら、フェニクス(仮)は炎を嘴から放った。
私は最初よりも魔力を込め水の魔法で放たれた炎を受け止めた。
受け止められた炎は私の放った水をすごい勢いで蒸発させていたが、水がすべて蒸発される前に炎が消えた。
『きっ貴様!』
私はため息をつきながら、怒れるフェニクス(仮)に、自分の風の魔力と紫皇の力をあわせて、すべてを切り裂くかのような風の刃を放った。
どうやらフェニクス(仮)は炎を纏う鳥で、実体はあるようだ。
おかげで物理攻撃が効く。
実体のない炎の塊だと物理が効かないだろうから、実体があってよかった。
血は出ないようだが、かなり消耗したようで、こちらを射殺す勢いで睨んでいる。
私は水で作った檻(見た目は丸い玉)でフェニクス(仮)を閉じ込めた。
『なんだ!これは!』
「暴れられると困るから、そこでおとなしくしててくれ」
『こっの!出せ!』
フェニクス(仮)は水の檻の中で暴れていたが、火と相性の悪い水の檻はびくともしない。
そこで、危険がもう無いと勘違いした者がフェニクス(仮 )の檻に近寄った。
「ふん、いい気味だ。僕を襲うからこうなる」
と、物凄くふんぞり返った、いかにも大切に育てられた金髪碧眼のボンボン坊っちゃんが言った。
檻が頑丈と言えども、炎をすべて防げるわけではない。
フェニクス(仮)はその子供に持てる力すべてを込めた、炎を放った。
私は咄嗟に、そのボンボンの前に出て、漏れ出た炎を水流で受け止めようとした。
だが、渾身の力で放たれたその炎は、急場凌ぎの水流では防ぎきれなかった。
防ぎきれなかった炎が私の両足に絡み付き、焼き付くされる様な熱を両足に感じた。
意識を失う寸前、檻に再度魔力を込め、強度を高め、ボンボンをフェニクス(仮)から遠ざけていた。
「何があった!」
一年生の担当教師は蹴破る勢いでドアを開け、教室に入った。
「先生!編入生の子が大変なんです!」
一番年長の、灰色の髪の少年、ハイルは教師に今起こったことを説明し、編入生をフェニクスから遠ざけていた。
「ハイル、よくやった。編入生は俺が預かる」
教師は泣きそうになっているハイルにそう言い、編入生を抱えあげた。
「まったく、可愛い妹が編入してきたかと思えば、こんな怪我しちゃって」
教師はそう言いながら、愛しそうに編入生の頭を撫でていた。
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