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第4話

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とりあえず、記憶の通りであれば、私に落ち度は無いだろう。
私がこの婚約破棄で得る悪影響はほぼ無い。
記憶の中にいる、王子はアホを絵に書いたような人間のようだ。
まず、我が家は爵位を上げるのがいやで断り続けたが、その家格は侯爵に匹敵すると思われるほどの功績を残し、今も国にとっては無くてはならない存在であると言っても過言ではない。
私の父は、娘である私のことを溺愛している。
貴族の間ではかなり広まっていて、王公貴族ならば誰でも知っているくらいだ。
まあ、かなり度が過ぎているというような話だが。
二人分の記憶を持つという、不思議体験をしたが、頭も落ち着いてきた。
今、私の目の前にはアホ王子、じゃなかった、婚約者がいて、婚約破棄を要求している状態なわけだが、この場面でするのは如何なものか。
ここは王都の一角にある、フェンツ学園、そして今はフェンツ学園の卒業を祝うパーティーの真っ最中だ。
私はまだ卒業ではないが、アホ王子、じゃなかった、アルジェン様が卒業するので婚約者として同席していた。
このパーティーには卒業する子息令嬢の家族だけでなく、様々な国からの使者も参加している。
フェンツ学園は他国でも屈指の学園で、その卒業式には他国からの祝いの使者がたくさんやってくる。
使者の目的はそれだけではなく、フェンツ学園の卒業生は優秀なので(優秀でなくては卒業できない)、平民階級(貴族は国に尽くすものなので無理)のものの引き抜きなどの目的もある。
それで、そんな他国の使者も参加するパーティーで国の醜聞になるようなことを発表すれば、瞬く間に他国にも広がるわけだ。
ここで言う醜聞とは、この国の王族が、国に貢献しまくってる貴族をないがしろにすることだ。
私とアホ王子、じゃなかった、アルジェン様の婚約は当代の王、つまりはアルジェン様の父だ。が我が家と国の結束を強めるためにされた、言わば政略結婚というものだ。
貴族として産まれたからには、政略結婚は当たり前のこと。我が国だけでなく、他国もある程度はそういう考えが根づいている。まあ、この場合の私との婚約にはおそらくもう一つ、理由が隠れていそうだが。(ざっくり言えばアホ王子のお守り役みたいな)
他国からも恐れられている、シルヴェスター子爵家。
当代シルヴェスター子爵の血を受け継いでいる。私からすれば自国に対する忠誠心はあまり無い。シルヴェスターが守るのは大事と決めた友や民であり、グリュンという国ではない。
昔から我が家シルヴェスター子爵家には、国に対する忠誠心というものがあまり無い。
あるのは大事な者たちを守るという思いだけ。
代々の王たちはそのことをとても理解しているようで、歳の近い男女王家と我が家にいるときには必ず、婚姻を申し込み、我が家との繋がりを求め、家族としての立場を獲得している。
大事な家族が王家にいるならば、我が家は絶対に敵対せず、守ることをすると分かっているのだろう。
頭の良い考えだと、感心すらする。
そのような、打算からうまれたのが、私とアホ王子(もうめんどくさくなった)の婚約だ、その婚約を王家側から破棄するとは、頭がおかしいと他国に知らせるようなものだと私は思うのだが、このアホ王子は分かっているのだろうか?
まあ、破棄するということは分かっていないのか、もしくは我が家の力を分からない、侮っているかのどちらかかな?
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