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学園編

ヒロインと親睦を深めたいけど何やら雲行きが怪しい

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初日のオリエンテーションで少しはみんな仲良くなったようで、私も目的のためにもヒロインと仲良くなろうとしていた。
そう、していた、んだけど。
「ねえ、君ってヒオウギの学習院にいたよね?僕、友人が学習院の職員で遊びに行ったとき君のこと見たことあるんだ」
「あ、俺も見たことある、確か学習院の進級試験を通常3年で受けるのに全学年オール満点クリアして色々すっ飛ばして12年の課程を9年で卒業したあの人でしょ?」
茶髪茶色の瞳の双子がなぜか私のことを知っていて絡んでくる、という現状に見舞われていた。
「ひ、人違いじゃないかなー?」
何とか誤魔化したいけど、なんか何言っても信じなそうな雰囲気がある。
人がいないところを選んでくれたおかげで、他の人に聞かれてはいないけど、どうしたもんか。
もう誤魔化しは通じないなら別に言いふらさないなら言ってもいいんだけど、うーん、どうしよ。
本当のことを言うか言わないか迷っていると、双子のほうからアクションがあった。
「別に僕ら君がヒオウギの学習院にいたって知りたいだけだから、言いふらしたりとかしないよ?」
「そーそー、俺らはただ引っかかってたから聞いただけだし」
あっちが言わないって言うのであれば、別に言ってもいいか。
「そ、そうですか。えっと、じゃあ、本当のことを言うと、貴方達の言う通り、私、ヒオウギ国に留学してて、とある理由でこの学園に行きたかったから、ちょっと急いで卒業したんだ。でも、それはあまり目立ちたくないから内緒にしてほしいの」
「やっぱり。気になってたことだったから、教えてくれてありがとう。お礼ってほどのものでもないけど、バレないように僕達も協力できることがあれば言って?僕らも目立つのは好きじゃないから、リアさんの言ってることわかるし」
「そーだな、教えてくれた礼ってことで協力は惜しまないぜ」
「あ、えとありがとう。もしものときはお願いするかも。その時はよろしくです」
「うんうん、こちらこそなんでも言ってね」
「そーそ、俺ら、隠すのは結構得意なんだぜ、まかせろよ」
ひょんなことから、双子のロイとルイは私の秘密がバレないように協力してくれることになった。

双子と話した後、私はヒロインに話しかけようと、ヒロインの席に足を向けたんだけど、あっちのほうも私が教室に帰ってきたのを見て、寄ってきた。
「あのねあのね、モルトさんオリエンテーションの時、チェス教えてくれたでしょ?あたしその時、チェスにはまっちゃったの。だから、モルトさんチェス盤持ってない?」
うん?言ってる意味がよくわかんないんだけど。
えーと、オリエンテーションの時、確かに私はヒロインにチェスを教えたけど、それで嵌るのは別にいいんだけど、なんでここで私にチェス盤持ってないって聞くのかな?
「うーんと、ヒルトンさん、チェス好きになったんだ。それはよかったんだけど、なんで私にチェス盤持ってないか聞くのかな?オリエンテーションの時に学園の備品でチェス盤はあるってわかってるんだから、多分先生に言えば貸してはくれると思うんだけど?」
「え!?モルトさんは私にチェス盤くれないの?」
「え?」
「だってあの時教えてくれたじゃない、だから私、モルトさんは優しいからくれるって思ったのに」
「んん??」
意味がわからない、私は今、夢でも見てるのかな?
「えーと、と、とりあえずヒルトンさん、私はチェス盤、持ってはいるけど、自分用の一つしか持ってないから、できればヒルトンさんには学園から貸してもらったほうがいいと思うんだけど」
「え?一つ持ってるならそれを私にくれればいいんじゃないの?」
「はい?あの、人の話聞いてくれてないよね。私は一つしか持ってないからあげられないって言ってるんだけど」
「なんで!?なんでくれないの!?モルトさんは優しいって思ってたのに!!」
よくわからないことを言って、ヒロインは泣きながら教室から出て行ってしまった。
・・・・・いや、ほんとなんで?

あの後、ヒロインはリシュアンと一緒に教室に戻ってきたけれど、私のことを一切見ずに席につき、横から聞こえてくる会話では、どうやらリシュアンがチェス盤をプレゼントすることになったようで、そこでなぜか私はクラスのみんなから、ヒロインにチェス盤をあげないヒドイ人というレッテルが貼られてしまった。

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