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裏話 その4
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「という訳ですの。お姉様、何かご存知ないかしら?」
魔法使いの業務中は一つにくくっているだけの髪を結い、派手ではないが凝った細工の装身具をつけ、繊細なレースが美しいドレスを纏っていると彼女は明らかに貴族令嬢に見える。侯爵家の次女であるリリアンヌは、この国の社交界でも著名な存在だ。
「……そうねえ」
卓を挟んで向かいに座る女性も、リリアンヌに似ているが少し歳上だ。少しばかりおっとりした雰囲気の、彼女の姉である。
「お姉様なら、国内外に伝手も多くお持ちですし、もちろん知識も豊富。……何かしら、ご教授いただけることでもあれば、お教えいただけませんでしょうか」
「私の知ること等、たかが知れていましてよ。……でも、そうね……リリがその方から聞いた話は、我が家にとってもなかなか大きい利益になりました。代償、と言っては聞こえが悪いかもしれませんが、少しばかり雑談いたしましょう」
穏やかに微笑んでラーラリアンヌは妹に目を合わせる。微笑み交わす姉妹は、しかし目が笑っておらず妙な迫力がある。
「と、仰いますと?」
「そうね、隣国の一部は普通の麦が育たないことは知っていて?」
「はい、伺ったことはありますわ。確か沼地が多く畑に出来る土地が少ないとか……もしかして?」
「ええ。麦畑に出来ない湿地でも育つ穀物があるそうです。ただし挽いても臭みがあり食用には好まれないようで、家畜の飼料に使われているそうです」
「まあ。……私、他の魔法使いの皆とそれを研究してみたいわ。取り寄せられないか相談してみますわね」
「そうね、やってご覧なさい」
鷹揚に頷いてラーラリアンヌはお茶で唇を湿した。ここからが本題である。少なくとも彼女にとっては。
「リリ。魔法使いの皆様方は如何?研究は進んでらして?」
「お陰様で。……先日のミソで味付けした料理等、お姉様にも気に入っていただけました?葉物野菜や実をショウユのソースでいただくのもなかなか美味しいでしょう」
「そうね、さっぱりしてよろしいわ」
「……ああして生の野菜をいただくのは、お肌やお腹の調子を整えるのにも有効ですの。薬師の皆様とも色々調べております」
魔法使いの多くは、貴族階級の出身だ。貴族の方が魔力が多いことに由来する。
そのため今回のゴタゴタは貴族社会でも密かに注目を集めており、魔法使い達にその家族達から探りが入ることは想定済みだ。責任者のマリウスは、流していい情報と情報を渡す相手をかなりきっちり仕分けて彼等に指示している。
その辺り、なかなか老獪な策略家だが、敵対しない限りは信頼出来る。そしてマリウスは、リリアンヌの実家とは出来れば敵対したくないという。それはリリアンヌ自身も同意だったので、彼女が家族に渡す情報はかなり多く設定されている。
「ねえお姉様。……あの、『聖女』様とやらは、何か役に立つことが出来まして?」
ついでに軽く煽ることも。
魔法使いの業務中は一つにくくっているだけの髪を結い、派手ではないが凝った細工の装身具をつけ、繊細なレースが美しいドレスを纏っていると彼女は明らかに貴族令嬢に見える。侯爵家の次女であるリリアンヌは、この国の社交界でも著名な存在だ。
「……そうねえ」
卓を挟んで向かいに座る女性も、リリアンヌに似ているが少し歳上だ。少しばかりおっとりした雰囲気の、彼女の姉である。
「お姉様なら、国内外に伝手も多くお持ちですし、もちろん知識も豊富。……何かしら、ご教授いただけることでもあれば、お教えいただけませんでしょうか」
「私の知ること等、たかが知れていましてよ。……でも、そうね……リリがその方から聞いた話は、我が家にとってもなかなか大きい利益になりました。代償、と言っては聞こえが悪いかもしれませんが、少しばかり雑談いたしましょう」
穏やかに微笑んでラーラリアンヌは妹に目を合わせる。微笑み交わす姉妹は、しかし目が笑っておらず妙な迫力がある。
「と、仰いますと?」
「そうね、隣国の一部は普通の麦が育たないことは知っていて?」
「はい、伺ったことはありますわ。確か沼地が多く畑に出来る土地が少ないとか……もしかして?」
「ええ。麦畑に出来ない湿地でも育つ穀物があるそうです。ただし挽いても臭みがあり食用には好まれないようで、家畜の飼料に使われているそうです」
「まあ。……私、他の魔法使いの皆とそれを研究してみたいわ。取り寄せられないか相談してみますわね」
「そうね、やってご覧なさい」
鷹揚に頷いてラーラリアンヌはお茶で唇を湿した。ここからが本題である。少なくとも彼女にとっては。
「リリ。魔法使いの皆様方は如何?研究は進んでらして?」
「お陰様で。……先日のミソで味付けした料理等、お姉様にも気に入っていただけました?葉物野菜や実をショウユのソースでいただくのもなかなか美味しいでしょう」
「そうね、さっぱりしてよろしいわ」
「……ああして生の野菜をいただくのは、お肌やお腹の調子を整えるのにも有効ですの。薬師の皆様とも色々調べております」
魔法使いの多くは、貴族階級の出身だ。貴族の方が魔力が多いことに由来する。
そのため今回のゴタゴタは貴族社会でも密かに注目を集めており、魔法使い達にその家族達から探りが入ることは想定済みだ。責任者のマリウスは、流していい情報と情報を渡す相手をかなりきっちり仕分けて彼等に指示している。
その辺り、なかなか老獪な策略家だが、敵対しない限りは信頼出来る。そしてマリウスは、リリアンヌの実家とは出来れば敵対したくないという。それはリリアンヌ自身も同意だったので、彼女が家族に渡す情報はかなり多く設定されている。
「ねえお姉様。……あの、『聖女』様とやらは、何か役に立つことが出来まして?」
ついでに軽く煽ることも。
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