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王子、婚約破棄を宣言する
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「穢らわしい魔女め!おまえとの婚姻等私は認めぬぞ!」
良く通る声で宣言したのは、まだ年若い少年だ。緩やかに渦巻く金の髪、つぶらな明るい瞳は翠玉 の、この国を治める王族の末の王子だ。
「おまえのような、薄汚い性根のひねくれた者等、王家の血を与えるに値せぬ!」
「……それでは、婚約は破棄ということでよろしいのでしょうか」
困惑したように呟いたのは彼の正面に立つ少女だ。
飾り気のないシンプルなドレスの上から厚いベールを被っているので容貌は伺えない、ほっそりした体躯と落ち着いた声音で辛うじて若い娘と判別できるくらいだ。
「当たり前だ!婚約破棄だと、そう言っている!」
癇癪を起こさんばかりに声を荒げる王子に、少女は小首を傾げる。
こちらは国境の森を領地に持つ侯爵家の長女だ。だが故あって滅多に社交には出てこない。
「ですが王子、私達の婚約は陛下が父と取り決められたこと。私にはそのお言葉を受け入れる権限がございません」
淡々と応じる様子は、ひどく大人びている。実際の年齢が王子と同じ15には見えない。
「あら、お父様は構わないと仰ってよ」
不意に別の声が割って入った。この娘より遥かに高い良く響く声だ。
「あなたみたいな、得体のしれない女なんて、引き取るのではなかったとずいぶん嘆いてらしてよ。とっとと我が侯爵家から、出ていってちょうだい」
こちらは淡い金の髪を形良く結い、大きな瞳をきらきら輝かせた、なかなか愛らしい少女だった。纏うドレスも華やかで、王子と並んでいると、とても良く似合う。
侯爵家の次女であり、『魔女』と呼ばれた娘の義理の妹に当たる。
「私が殿下と結婚すればいいのよ、あなたは用済み。さあ、出ていって!」
「全くだ、おまえのような下賤の身で王族たる私に嫁ごうとは不届きな!」
揃って声を荒げる辺りも、ある意味似合いの二人ではある。
「……はあ、承りました」
『魔女』は溜め息混じりにあっさりと頷いた。
『魔女』と称された娘はハーリット侯爵家の養女でセイラという。この王国でしばらくぶりに確認された『魔女』だ。
正確には『魔女の森』と呼ばれる深く豊かな森で保護された故に、彼女も『魔女』と呼ばれている。
そのため彼女の身元が明らかでないのは事実だが、王子が罵倒したように下賤の何のと蔑まれる身分とは言い難い。
良く通る声で宣言したのは、まだ年若い少年だ。緩やかに渦巻く金の髪、つぶらな明るい瞳は翠玉 の、この国を治める王族の末の王子だ。
「おまえのような、薄汚い性根のひねくれた者等、王家の血を与えるに値せぬ!」
「……それでは、婚約は破棄ということでよろしいのでしょうか」
困惑したように呟いたのは彼の正面に立つ少女だ。
飾り気のないシンプルなドレスの上から厚いベールを被っているので容貌は伺えない、ほっそりした体躯と落ち着いた声音で辛うじて若い娘と判別できるくらいだ。
「当たり前だ!婚約破棄だと、そう言っている!」
癇癪を起こさんばかりに声を荒げる王子に、少女は小首を傾げる。
こちらは国境の森を領地に持つ侯爵家の長女だ。だが故あって滅多に社交には出てこない。
「ですが王子、私達の婚約は陛下が父と取り決められたこと。私にはそのお言葉を受け入れる権限がございません」
淡々と応じる様子は、ひどく大人びている。実際の年齢が王子と同じ15には見えない。
「あら、お父様は構わないと仰ってよ」
不意に別の声が割って入った。この娘より遥かに高い良く響く声だ。
「あなたみたいな、得体のしれない女なんて、引き取るのではなかったとずいぶん嘆いてらしてよ。とっとと我が侯爵家から、出ていってちょうだい」
こちらは淡い金の髪を形良く結い、大きな瞳をきらきら輝かせた、なかなか愛らしい少女だった。纏うドレスも華やかで、王子と並んでいると、とても良く似合う。
侯爵家の次女であり、『魔女』と呼ばれた娘の義理の妹に当たる。
「私が殿下と結婚すればいいのよ、あなたは用済み。さあ、出ていって!」
「全くだ、おまえのような下賤の身で王族たる私に嫁ごうとは不届きな!」
揃って声を荒げる辺りも、ある意味似合いの二人ではある。
「……はあ、承りました」
『魔女』は溜め息混じりにあっさりと頷いた。
『魔女』と称された娘はハーリット侯爵家の養女でセイラという。この王国でしばらくぶりに確認された『魔女』だ。
正確には『魔女の森』と呼ばれる深く豊かな森で保護された故に、彼女も『魔女』と呼ばれている。
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