婚約破棄された魔女令嬢

あきづきみなと

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王子、王太后に叱責される

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「何と愚かなことをしでかしてくれたのだ」
呻くが如く声をあげたのはこの国の王太后。王子の祖母であり、現在王族の中では最年長者、言わば王家のご意見番だ。
「おばあ様のお言葉とも思われません。あのような穢らわしい魔女を私の妻とする等、あまりにも非常識です!」
両親に溺愛されている末っ子の孫息子の言葉に王太后は深々と溜め息を吐き、彼に従っていた侍従達に目を向ける。同じ年頃の彼等は慎ましやかに目を伏せるだけだが、年長の……それこそ国王夫妻と同世代の侍従頭は真っ青になっていた。
「……オドネル、フィリシウスにこのような讒言を吹き込んだ者に心当りはあるかえ?」
「いえ……ですが、フィリシウス殿下にはこれ等が常に着いておりました。事情は幾らか確認しております」
青ざめながら応じる侍従頭に王太后が応えるより早く、王子の両親がやってきた。国王はやはり青ざめて表情を強張らせ、王妃も血の気の失せた悲痛な表情だ。
「母上……」
「お義母様……」
この二人の様子を見れば、末っ子のしでかした真似に強い衝撃ショックを受けたことは明白だった。しかもまだそれ以上の情報を掴んだ様子もない。
「二人ともお掛け。この子の行いについては、オドネルが何やら心当りがあるようだよ」
「心当り、という程ではございません。ですが……エドモンド」
「は」
呼ばれて顔を上げたのは、フィリシウスの侍従の中では年長の少年だった。王子程華やかではないものの理知的な容姿にすらりと長身で見映えが良い。
「あの方……ハーリット侯爵家のセイラ様を、見下して語ったのはどなたか、陛下や王太后様、王妃殿下にご説明しなさい」
「は、はい」
緊張の面持ちで頷いたエドモンド少年は一瞬ちらりとフィリシウスを見たが、慌てたようにオドネルに向き直った。
「見下した、というか……その、お耳汚しで申し訳ございませんが、セイラ嬢を『下賤な魔女』と言われたのはハーリット侯爵ご自身です。それに、妹のノリエッタ嬢も」
「……なんと」
呻くように応じたのは国王その人であった。
「侯爵が、何故そのようなことを……」
愕然とする父王の様子を見てもフィリシウス王子は事態が飲み込めていないらしい。形良い眉をひそめ、不審げに両親と祖母を見つめている。
「父上、ハーリット侯爵は良い人物です。仕事の出来る上に見識も広い」
「……見識の広い人物は魔女を蔑んだりせん」
訳がわからないなりに説明しようとした末息子の言葉を国王はばっさり切り捨てる。
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