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4巻

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《プロローグ 目覚める者》

 穏やかな時が流れる、広い広い空間。
 見渡す限りにさまざまな樹木や草花が所狭しと生い茂っており、その色とりどりの光景は見た者の目を楽しませ、心を豊かにさせることだろう。
 実りに実った瑞々みずみずしい果物を食したならば、万人が舌鼓したつづみを打ち、歓喜溢れる表情を浮かべるに違いない。
 また、どこからともなく吹く、花の匂いを内包した穏やかな風に、誰しもが自然と笑みを浮かべてしまうはずだ。
 まるで何かの物語に出てくる幻想郷のような、悠久の時の流れを感じさせるそんな空間に、何をするわけでもなく歩き続ける存在がいた。
 ――彼女の名前はローラ。
 エルフ族であるローラは、永い年月をずっと彷徨さまよっていた。ただただ歩くばかりで、彼女自身なぜ歩いているのか理解していない。その証拠に、時折首を傾げることが彼女のくせになっていた。
 明確な目的がないまま、今後もずっと一人、この空間で過ごし続けるかに思われたローラ。
 だが今、彼女は目を見開いて驚愕した。
 この空間において永遠にも感じられる時を過ごしてきた中で、初めて見せた表情だ。
 幻想的な風景もすでに心に響くことはなく、常に無表情で過ごすローラがこのように動揺したのは、一体いつ以来だろうか?

(あれは……)

 驚きに次いでその顔に表れたのは、喜び。ほほを緩ませた彼女は、見つけた存在に向かって一直線に歩き出す。
 ローラが足を止めたとき、その足元には一人のエルフ女性が横たわっていた。
 女性は穏やかな顔で、規則正しい寝息を立てている。風がなびかせた自身のブロンドヘアが柔らかく鼻にかかった。
 ローラは草の上で寝ている女性の横に腰掛け、まるで壊れ物であるかのように慎重に、指で女性の頬に触れる。
 そしてそのまま手を添えてゆっくり頬をでつつ、口を開く。

「初めて人に会ったわ。この子も私と同じで、耳がとがっているのね。ふふ、それにしても声を出すなんていつぶりかしら。ねぇ、あなたはだあれ? どうして私と同じ耳をしているの?」

 寝ている女性からは当然返事はない。それでもローラは、柔らかそうな唇を動かし続ける。

「髪の色は私と違うのね。私はシルバーだけど、あなたはブロンド。それに私の髪よりつやがあって凄く綺麗きれい。顔もとても綺麗でうらやましい。私の顔はわからないけど、きっとあなたのほうが綺麗でしょうね。ふふふ」

 この空間には、ローラの姿を映してくれる湖などはなかった。
 しかし、ここにいる限り、ローラは空腹に悩まされることも、喉の渇きにさいなまれることもない。

「ねぇ、あなたはどこから来て、どうしてここにいるの? 私はわからないの。あなたはわかる? 私は気が付いたらここにいたのよ。何があってここにいるのか、なんのために私はここに存在しているのかもわからないわ……あなたが起きたら、もしかして私に教えてくれるかしら?」

 確実に声は届いていても、未だ目覚めない女性。
 それでも構わずローラは話し続ける――自分以外の存在にずっとえていたかの如く。

「私の名前はローラっていうのよ。あなたの名前は? 幸い時間だけはたっぷりとあるし、あなたが起きるまで私はここにいるわ。無理に起こしたりしないから安心して? こんなことを言っても、あなたには届いていないのでしょうけど。ふふふ」

 ずっと無表情で過ごしてきたのがうそのように、ローラは目元を緩ませる。時折、彼女の口からは無意識に笑い声が漏れていた。
 しかし、やがて明るかったローラの顔が少し暗くなる。

「でも……あなたも私と同じかもしれない。自分の名前以外に記憶がないかもしれないわね……ねぇ、私たちはなぜここにいるの? 私はなぜ自分の名前しかわからないの? ここは一体どこなの? 私の心にぽっかりと開いた穴は何?」

 途中からなげきを込めた声色に変わりながら、ローラはそのまま独白を続けた。

「この喪失感は何? 私は何を失ったの? こうしてあなたを見つけるまでの間、私は永い永い時を一人で過ごしてきたのよ。私にはすることがないし、一箇所に留まるのは落ち着かなくて、でも歩くくらいしかすることがないのよ? 嫌になっちゃうわ」

 ため息をついたローラは、眠る女性の頭を優しく持ち上げて自身の太ももの上に乗せる。
 そして慈愛がこもった視線で女性を見つめた。

「あなたは私の希望になるのかしら? ふふふ、そんなわけないわよね……もしそうならどんなに嬉しいかわからないわ。私はずっとずっと歩き続けることに……この喪失感がなくならないことに……疲れてしまったのよ。これから先、私はどうすればいいのかな? これからもずっと同じことの繰り返し?」

 ローラの目から一滴の涙が流れる。それが彼女の頬を伝い――女性の額に落ちた。
 ――それが呼び水になったのか、女性に変化が現れる。
 今まで規則正しく動いていた胸の動きが、不規則なものへと変化していく。
 そして、寝返りを打つかのようにその身をよじらせた。
 その反応を見たローラは、少しだけ慌てて声を出す。

「あ、あら? もしかして起きるの?」
「ん、ん……」

 ローラの言葉に反応するかのように、女性の口から少し艶っぽい声が漏れ出た。
 さらに、ゆっくりゆっくりとまぶたが開き、光を反射した美しい緑色の瞳が揺れ動く。
 女性は上半身を起こし、首を動かして周囲の観察を始めた。
 それが終わると、今度はローラに向き直り、口を動かす。

「あなたは誰? そして……ここは……一体どこなの?」
「おはよう。私はローラよ。ここがどこなのかは、残念ながら私にもわからないわ。ごめんなさい」

 軽く頭を下げたローラに対し、女性は平坦な声で言葉を続けた。

「そう……あなたにも……ここがどこなのかわからないんだ……」

 女性の反応を見たローラは気落ちしてしまう。しかし、めげることなくまた口を開く。

「あなたも私と同じなのね……ううん、おそらくそうなんじゃないかって思ってたじゃない。大丈夫、うん、大丈夫よ」

 ローラは自身に言い聞かせるかのように呟いた後、女性に問いかける。

「わからないと思うけど、一応聞くわね。あなたはなぜここにいたの?」

 すると、女性は少しだけ考える素振りをしてから、眉をひそめながら答えた。

「わからない……なぜ私はここにいるの? 私が今起きたというのは理解できるけど、寝ていた理由も、意識を失ったのがいつなのかも、思い出せない……」
「そう……ところで、あなたの名前を教えてくれる? 私と同じなら……多分、名前だけならわかるんじゃないかしら?」

 さらに落ち込んでしまったローラだったが、女性を見つめながら再び問いかけた。
 女性は少しの間、自分の記憶を探り、そしてローラに目線を合わせて唇を動かす。

「名前……私は……私の名前は――リサ……そう、私はリサ」

 リサはそう呟き、視線をローラから外して、ぼんやりとした眼で虚空を見つめた。



《1 ステアニア帝国へ》

 ミドガル王国に攻め入ってきたステアニア帝国を蹴散けちらして、戦後処理などのためにミドガル王城へ行っていた俺――ルイは、転移魔法【ワープ】で拠点の宿屋に戻ってきた。
 周りの風景が変わってすぐ、俺は素早く視線を動かして周囲の確認をする。
 それと同時に抱きついてくる恋人たち。
 前後左右、身体の至る所から柔らかい感触が伝わってくる。改めて状況を確認すると、左からエレノア、右からマリア、前からかえで、そして後ろから彩花あやかとアイリがぎゅうぎゅうと押してきていた。

「思ったより遅かったね? 皆、ルイルイが帰ってくるのを今か今かと待ち構えていたんだー」

 ご機嫌なのか少しトーンが高いマリアの声が聞こえたと思ったら、次は彩花の声がする。

るいが帰ってきたとき、誰が最初に抱きつけるか勝負してたんだ。勝者は類と二人っきりで一日デートよ!」
「そうなのです! 負けられない戦いをしてたのです!!」
「勝てませんでした……」

 さらに、気合の入ったエレノアの声がしたかと思えば、意気消沈した物言いのアイリが続く。

「今のは誰の勝ち? 私的にはエレノアとマリアがほぼ同時かなぁ? まぁ、ここは類君に判定してもらおう!」

 楓がそう言うが、最近は忙しくて誰とも二人っきりで出掛けるなんてことはほとんどなかったし、近いうちにそれぞれとデートしなきゃいけないだろう。
 まぁ、それもこれも、ステアニア帝国からリサの母親のレシアさんと妖精族の女王ティターニアを救い、そしてリサを封印した『エルフ王族から堕ちた者』のスキルについて調査してからだな。
 それにしても、皆さっき風呂に入ったばかりだから、とてもいい匂いがする。それに彼女たちの肌はきちんと手入れされているので、きめ細かくつやつやしており、触れると気持ちいい。
 って、今はそんなことを考えている場合じゃない。俺は理性を総動員して、なんとか気持ちを落ち着ける。

「ただいま」

 まずは帰ってきた挨拶をして、皆からも「おかえり」との言葉をかけてもらった後、俺に引っ付いてきていない面子めんつを流し見る。
 召喚獣のフェンリルとファフニールはベッドの上で横になって休み、精霊のシルフィとノームはフェンリルの上に乗って毛に埋もれていた。石動いするぎはソファーに座っていて、リサの父親であるリベロさんはテーブルで紅茶を飲んでいる。
 リベロさんも風呂に入ったみたいで、帝国の奴隷にされていた頃のほこりっぽさがなくなっているな。あー、俺も風呂に入りたかったけど、今は時間がないから洗浄魔法の【クリーン】で我慢するか。

「思ったより奴隷の譲渡なんかに時間がかかった。さて……皆、少し離れてくれるか? リベロさんの前だとさすがに少し恥ずかしいし、なによりこのままだと話しにくい」

 俺が苦笑しながらそう言うと、恋人たちはしぶしぶながら離れてくれた。
 自由になった俺は、リベロさんの正面に座る。
 当然、帝国にはリベロさんも連れていったほうがいいよな。んー、あとは……あのことを伝えておくか。

「マリアとエレノアは、ジョージの屋敷を覚えてるか?」
「覚えているのです!」
「うんー」
「そうか。今回の戦争の褒賞で、あれを取り壊して俺たち用に新しく屋敷を建設してもらえることになった。早めに工事してくれるみたいだし、出来上がったらそこを俺たちの拠点にしよう」

 女性陣はこの話をきゃーきゃー言いながら喜んでくれている。

「さて、皆の用意は終わってそうだし、さっさと帝国に行って目的を果たすとするか。リベロさんも用意はいいか?」
「ああ」

 力強く頷きつつ返事をしたリベロさんは、拳を握りながら椅子から立ち上がった。
 俺は彼に視線を合わせたまま一つ頷く。

「転移するから、全員俺に掴まってくれ。リベロさんも俺の身体のどこかに触れてもらえるかな?」
「わかった」

 リベロさんが俺の背後に回り、背中に手を置いたのを感じた。
 女性陣も俺の腕や肩や背中に接触する。そういえばマリアも【ワープ】が使えるようになってるんだよな。今はいいとして、今度マリアにも使わせるか。

「よし……目的地は、帝国の首都スタラバヤだ。行くぞ! 【ワープ】!」

 そう叫んだ直後、俺たちは帝国にある『木漏れ日の宿』近くの広場に立っていた。
 ここには以前俺、エレノア、マリア、アイリ、そしてリサと泊まったことがある。宿屋を見て一瞬リサのことを思い出すも、俺は首を振ってそれを頭から追い出す。今はやることがある……
 さて――人通りを避けようとこの広場に転移してきたのだが、それでも辺りには何人か住民がいたようで、いきなり現れた俺たちは目立ってしまっていた。
 彼らはこちらを指差しながら騒ぎ始める。

「お、おい! 今あいつらいきなり現れたぞ!?」
「な、なんだ? あ、あれは転移の魔法か?」
「ん? 黒髪の女の子がいるじゃないか。第九騎士団レオニアの人たちか? 少し前にお披露目ひろめをしてたよな」
「確かにそうだな。レオニアの人たち以外に黒髪の人なんて見たことないし……これはどういうことだ? 彼らは今ミドガルに攻め入っているはずじゃ……」
「ミドガル王国への出兵には転移魔法を使ったみたいだし……まさかすでにミドガル王国を滅ぼしてきたのか?」

 何人かは見当違いなことを言っているな。それと、エレノアら人間以外の仲間に侮蔑ぶべつを含んだ視線を向けてきているが、ただの住民であるこいつらに攻撃を加えるわけにもいかない。
 うざったいが我慢だ。これがステアニア帝国のデフォルトだしな。
 がやがやとうるさい奴らの横を通り過ぎながら、俺はステアニア帝城を見やる。
 ここからなら一〇分も歩けば到着できるだろう。
 俺たちの影響もあって喧騒けんそうにまみれた大通りを皆で進んでいく。
 それにしても……やはりスタラバヤは、ミドリアに比べて人が多い。
 その中には人族、獣人族、エルフ族、ドワーフ族、そして以前は見掛けなかった魔族の奴隷たちがいる。まさに、奴隷制度を推進しているこの国らしい。
 もうすぐ城門というところで、前方から黒い服装で黒い頭巾をかぶった者たちがやってきた。
 さっきから俺たちを観察している者の気配を感じていたが……ここで姿を見せたか。
 それを目にした楓が叫ぶ。

「あれはダークラス隊よ! この国で最も恐れられている部隊だわ」

 彩花と楓は、確かこのダークラス隊ってのに助けられたことがあるんだったな。それは同時に、S級冒険者のクロスたちに騙されていたリサとアイリが解放されるきっかけになったという。
 皆を手で制した俺は、ダークラス隊から視線を外さずに口を開く。

「あっちから何かをして来たら返り討ちにするけど、まずは話してみるか」

 視界の隅で皆が頷いて賛成してくれたのを見てから、俺たちはダークラス隊に近付いていく。
 数秒後、相手と俺たちの距離は一〇メートル程まで縮まった。
 相手の人数は二〇人。俺は今示し合わせた通りにまず一言かけて、相手の反応をうかがう。

「俺たちはこの先に用がある。通してくれないか?」

 すると、集団の中から一人が進み出てきた。

「この道は帝城へと続いている。そう簡単に通すわけにはいかない。さて……俺の見間違いじゃなければ、そこにいるのはアヤカ・テンドウ、カエデ・ヤシマ、マナミ・イスルギだな? そいつらと一緒にいるということは、お前が『ルイ』か?」
「ああ、そうだ。俺のことを知っているのか?」
「ふっ、帝国の諜報部隊は有能だからな、当然知っているぞ」
「そのようだな。まぁ、俺のことはいいとして、お前らはダークラス隊なんだろう? ちょうどよかった、お前らに聞きたいことがあるから、大人しく答えてくれるとありがたい」

 こいつらは帝国の暗部だという。ならばレシアさんのことを何か知っている可能性がある。

「俺たちが素直に従うとでも?」

 奴らのうちの一人がそう答えた後、後方から一人の男が出てきた。

「やあやあ! 君がルイだね」

 突然の陽気な声に、俺は眉をひそめる。しかし、その男は構わず言葉を続けた。

「ファーミラン王国の大会では、キースを赤子扱いして君が優勝したんだって? あいつの強さは他国にも鳴り響いていたし、彼をあっさり殺せる者などこっちにはいないから、できれば穏便に話し合いたいものだ。それにしても……仕事だったとはいえ、あのときは君たちを助けてあげたのになぁ。まさかこんな男を連れてくるなんてねぇ。これぞ恩をあだで返すってところかな」

 軽薄な口調のその男は、そう言って彩花と楓を指差す。
 それに対して彩花が口を開いた。

「その声……あなたはロウガね?」
「やあ、アヤカ・テンドウ。以前は俺を『ロウガさん』って呼んでたのに、随分と強気になっちゃって」
「ふん、あのときの私たちは誓約の腕輪をはめられていたじゃないの。確かにあなたには助けられたけど、そのお礼は言ったはずよ」
「そうよ! それにもともと、帝国が私たちを無理やり召喚したんじゃないの! まぁ、私とあやにとってはそれが嬉しいことに繋がったんだけどね」

 楓は後半部分を小声で言った。こっちに来て俺と会えたことを喜んでいるのだろう。
 そして再び彩花がロウガに言う。

「あなたたちが私たちを召喚した結果が、今の状況よ。ミドガル王国へ攻め入った軍がどうなったのか――あなたの立場ならすでに知っているんじゃない?」
「一応聞いてはいるね。そこにいる雌犬めすいぬに、俺たちの隊長が世話になったらしいねぇ」

 ダークラス隊の副隊長だというロウガ。飄々ひょうひょうとした男で、第一印象に悪感情はなかったが……今の言葉は聞き捨てならない。

「雌犬だと……!? それはエレノアのことを言っているのか?」

 隊長というのは、きっとエレノアが戦場で取り逃がした奴のことだ。
 そしてエレノアは、ステアニア帝国で蔑視されている犬の獣人族である。ロウガの言葉がエレノアのことを指しているのは明確だ。
 話し合いをするにも、こちらがペースを掴む必要がある。怒りを少し発散することも兼ねて、俺は一気に魔力を練り上げてこう口にした。

「【グラビティステイフル】」

 ダークラス隊の頭上に黒いモヤが発生して、それがロウガ以外の者たちに一気に襲い掛かる。
 異変に気が付くより前に、ダークラス隊の奴らは意識を刈り取られた。
 今のは魔法レベル9の〈重力魔法〉。その気になれば、ミンチになるレベルの超重力で相手を圧殺できる。

「うわ……エレノアを馬鹿にされただけで、問答無用で制圧するんだ? 類君さすがだね!」

 なぜか楓がキラキラした目で俺を見ている。いや、エレノアのことも当然あるけど、ペースを掴みたかっただけだからな? わざわざ敵前で言うことでもないので口には出さないが。
 さて、ロウガの反応を見てみると――彼は口を大きく開けて放心状態になっていた。
 気絶させた奴らの強さはそこそこだったみたいだし、それが一切反応できずにこうなれば、この態度も頷けるか。

「おい、ロウガ! 今のは相当威力を抑えた魔法だ。それを踏まえてお前に聞きたいことがある。正直に答えてもらおう。もし嘘をついたら……お前がどうなるかはわからないぞ?」

 できれば恫喝どうかつはしたくないが、これもレシアさんのためだ。一番情報を持っていそうな副隊長のロウガをわざわざ残したんだし、大人しく情報を寄越してくれると助かるんだが。
 少し間を置いて放心状態から立ち直ったロウガが、顔面蒼白になりながら口を開く。

「ふぅー。参った参った。キースが赤子扱いと聞いていたからどれほどのものかと思っていたら、こんなにとはね」

 ロウガは両手を大袈裟おおげさに上げて、反抗する意思はないとジェスチャーした。

「さっきは雌犬なんて言ってすまない。まさかあの一言だけでこんなに怒ると思わなかったよ。君と敵対する気なんてなかったのに! 俺は帝国生まれの帝国育ちだから獣人を見下すのはくせになっていて、ついつい口が滑ってしまった。次からは気を付けるとしよう。さて、俺が知ることならなんでも答えようじゃないか。もちろん嘘は言わないぜ。君は絶対に怒らせちゃいけない存在だってことが身に染みてわかったからね」

 なんでも答えてくれるとか、随分と軽い奴だな。まぁいい。とりあえず話を進めよう。

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