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第七話
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ギルドに所属するハンターはその実力と実績でランク分けされている。
まずは下位であるブロンズハンター。誰もが初めはこのランクに所属し上を目指していく。当然実力は期待できず、先輩ハンターに師事しながら力を磨いている者が大半だ。
次に中位であるシルバーハンター。ある程度の力をつけ個人で討伐依頼を完遂できるようになる頃にはランクアップしているだろうクラスだ。教導官の受験資格が発生するのもシルバーハンターからだが、合格率は非常に低い。
続けて上位であるゴールドハンター。ランクアップには試験があり、教導官の資格よりもさらに狭き門だ。シルバーハンターとは一線を画す実力を持ち一流と呼ばれる彼らは、最強種と名高いドラゴンをも相手にできる程の力を持っている。更にその武力は権力にも似た効果を発し政治に多大な影響を与えている。その反面人数は少なくハンター全体の一割にも満たない。
最後に最上位であるプラチナハンター。世界中に存在するハンターの頂点に立つわずか五人の事を指すランクだ。それぞれが大国の軍事力に匹敵する程の力を有していて、世界のパワーバランスの一端を担っている。
さて、このようにギルドでは四つのランクに分類しハンターの価値を定めているが、そのランクの証明として本人確認として使えるギルドカードが配布されている。
ブロンズハンターなら銅色、シルバーハンターなら銀色と、ランクに応じた着色がされ一目で分かるようになっている。特殊な製法を用いているので偽装は不可能であり、仮に偽装を試みてもそれだけで罪に問われ重い罰を受けることになる。
厳重な取り扱いをしているギルドカードだが一般人向けのカードだけは例外としている。ランクがあるわけもなく、特殊な製法を用いているわけでもないカードは真っ白で換金のみ利用できる。ティナをはじめ力を持たない者は薬草を換金するために所有していることがあるが、薬草だけで大きな利益を得ることはできない。有り体に言ってしまえばこのカードは小遣い稼ぎ用というわけだ。
「換金したいんですけど頼めますか?」
「はへ? あっ、あの。えっと、い……いらっしゃいませ! 換金ですね! で、ではギルドカードのご提示をお願いします」
暗く人気のない自分に来るとは思っていなかった受付嬢、サーシャはアインが目の前に来たことで慌てふためく。髪で隠れている顔の表情は読めないが、声色と少々大袈裟な反応は十分に感情を表現してくれている。
これで大量のオークを見せればどれだけ驚くだろうか。そんな意地の悪い事を考えつつ真っ白なギルドカードを提示する。つまり換金の品は薬草である、そうサーシャが認識したのは仕方なかった。
「に、認証終わりました。では、さ、採集してきた薬草を見、見せていただけますか?」
「薬草? 薬草は一つも持ってませんけど」
「え? でも……か、換金に来たんですよね」
「はい、オークの換金に」
小首を傾げるアインの発言を頭の中で反復するサーシャ。髪の隙間から少しだけ見えた顔は疲れ切った不健康そうなものであった。
「オーク? オークって豚肉よりも味が良くて、でも脂肪分が体に吸収されにくいあの美味しいオークですか?」
「はい、その美味しいオークです」
「シルバーハンターにならないと単独での討伐が推奨されないあの手強いオークですか?」
「はい、その手強いオークです」
「現在編成中の討伐隊の対象であるオークの群れですか?」
「それは初耳ですね。でもやけに多くいたのでそうなのかもしれないです」
先ほどまでのおどおどした態度が嘘のように突然饒舌になるサーシャ。騒がしかったギルド内は静まり返り皆の視線がアインへと注がれていた。
「あの……では、そのオークはどちらに?」
「この中です。確認してください」
「ストレージデバイスですか!? オークが百六体!? おまけに大きさまで分類分けされてる!?」
「広くて汚れても良い場所があればすぐにでも出しますよ」
「は……はい! 今すぐに案内します!!」
アインが取り出したストレージデバイスを確認してサーシャがまた慌て出した。一般人という先入観で見ていたアインがオークを討伐したという証拠を見せられたのだ、頭がついていかず混乱しても仕方ないだろう。
小走りでギルド内を進むサーシャに着いていくアイン。案内されたのはギルド内の訓練所であった。ブロンズハンターなのだろう、剣の持ち方も足運びもまだまだ未熟な者達が訓練をしていた。
「オ、オーク百六体となると解体所がいっぱいになるので、とりあえずここでお願いします」
「わかりました」
訓練所には受付の近くにいた者と隣の受付嬢までも着いてきてしまっていた。なぜこうも注目を集めてしまったのかわからないアインは言われるがままにストレージデバイスから全てのオークを解放する。積み上がるオークの死体の山……山……山。元が巨大なオークだからか訓練場内の一角を占領してしまう程に広がってしまった。
こうなると訓練していた者達も気になって仕方がない。彼らにしてみれば、オークは自分達では倒せない格上の相手だ。それをここまで大量に討伐した人物が気になるのは自然なことであった。
そしてそれは教導官にも同じことが言える。教導官ということはシルバーハンター以上なのは間違いないが、今の気持ちは生徒であるブロンズハンター達と大差のない気持ちであった。
「……す、凄い」
「だな……これだけの数を一人でやったってのかよ」
「おい、報告されてたのって五十ぐらいじゃなかったか?」
「あぁ、討伐隊組んでもこんだけ誤差がありゃ誰か死んでたかもしれねえ」
「こいつでかくねえか?」
「でけえな。普通のやつの二倍はあるだろ」
「お前はこいつに勝てるか?」
「一対一ならなんとかなる。乱戦だと絶対に無理だ」
誰かがアインを賞賛する言葉を呟くと、それを皮切りに思い思いの会話が広がる。中にはオークの群れが完全に殲滅されたかを確認するべきだと、すぐに行動に移す集団もあった。
そんな中、愕然としていたサーシャがようやく我に返りオークの数を数え始めた。その数は百六、ストレージデバイスに載っていた数と完全に一致した。
「あ、あの、これだけ数が多いと査定に時間がかかるので、終わり次第連絡ということでも良いでしょうか?」
「それでお願いします。俺はアクアに泊まってます。不在時は伝言を残しておいていただければ良いですので」
「アクア……?」
「ん? そうですけど、どうかしました?」
「あ、いえ。友達がそこの娘さんなんです。いつも薬草を持ってきてくれてるんですけど昨日は来なかったから心配で……」
「ティナの事ですか? だったら心配しないで大丈夫ですよ。朝から美味しいご飯も作ってくれましたし、元気が有り余ってる感じです」
「よ……よかった」
大粒の涙を流しティナの無事を喜ぶサーシャ。疲れ切った顔はティナの心配をしていたことも原因なのかもしれない。サーシャの横顔を見ながらそう感じたアインであった。
まずは下位であるブロンズハンター。誰もが初めはこのランクに所属し上を目指していく。当然実力は期待できず、先輩ハンターに師事しながら力を磨いている者が大半だ。
次に中位であるシルバーハンター。ある程度の力をつけ個人で討伐依頼を完遂できるようになる頃にはランクアップしているだろうクラスだ。教導官の受験資格が発生するのもシルバーハンターからだが、合格率は非常に低い。
続けて上位であるゴールドハンター。ランクアップには試験があり、教導官の資格よりもさらに狭き門だ。シルバーハンターとは一線を画す実力を持ち一流と呼ばれる彼らは、最強種と名高いドラゴンをも相手にできる程の力を持っている。更にその武力は権力にも似た効果を発し政治に多大な影響を与えている。その反面人数は少なくハンター全体の一割にも満たない。
最後に最上位であるプラチナハンター。世界中に存在するハンターの頂点に立つわずか五人の事を指すランクだ。それぞれが大国の軍事力に匹敵する程の力を有していて、世界のパワーバランスの一端を担っている。
さて、このようにギルドでは四つのランクに分類しハンターの価値を定めているが、そのランクの証明として本人確認として使えるギルドカードが配布されている。
ブロンズハンターなら銅色、シルバーハンターなら銀色と、ランクに応じた着色がされ一目で分かるようになっている。特殊な製法を用いているので偽装は不可能であり、仮に偽装を試みてもそれだけで罪に問われ重い罰を受けることになる。
厳重な取り扱いをしているギルドカードだが一般人向けのカードだけは例外としている。ランクがあるわけもなく、特殊な製法を用いているわけでもないカードは真っ白で換金のみ利用できる。ティナをはじめ力を持たない者は薬草を換金するために所有していることがあるが、薬草だけで大きな利益を得ることはできない。有り体に言ってしまえばこのカードは小遣い稼ぎ用というわけだ。
「換金したいんですけど頼めますか?」
「はへ? あっ、あの。えっと、い……いらっしゃいませ! 換金ですね! で、ではギルドカードのご提示をお願いします」
暗く人気のない自分に来るとは思っていなかった受付嬢、サーシャはアインが目の前に来たことで慌てふためく。髪で隠れている顔の表情は読めないが、声色と少々大袈裟な反応は十分に感情を表現してくれている。
これで大量のオークを見せればどれだけ驚くだろうか。そんな意地の悪い事を考えつつ真っ白なギルドカードを提示する。つまり換金の品は薬草である、そうサーシャが認識したのは仕方なかった。
「に、認証終わりました。では、さ、採集してきた薬草を見、見せていただけますか?」
「薬草? 薬草は一つも持ってませんけど」
「え? でも……か、換金に来たんですよね」
「はい、オークの換金に」
小首を傾げるアインの発言を頭の中で反復するサーシャ。髪の隙間から少しだけ見えた顔は疲れ切った不健康そうなものであった。
「オーク? オークって豚肉よりも味が良くて、でも脂肪分が体に吸収されにくいあの美味しいオークですか?」
「はい、その美味しいオークです」
「シルバーハンターにならないと単独での討伐が推奨されないあの手強いオークですか?」
「はい、その手強いオークです」
「現在編成中の討伐隊の対象であるオークの群れですか?」
「それは初耳ですね。でもやけに多くいたのでそうなのかもしれないです」
先ほどまでのおどおどした態度が嘘のように突然饒舌になるサーシャ。騒がしかったギルド内は静まり返り皆の視線がアインへと注がれていた。
「あの……では、そのオークはどちらに?」
「この中です。確認してください」
「ストレージデバイスですか!? オークが百六体!? おまけに大きさまで分類分けされてる!?」
「広くて汚れても良い場所があればすぐにでも出しますよ」
「は……はい! 今すぐに案内します!!」
アインが取り出したストレージデバイスを確認してサーシャがまた慌て出した。一般人という先入観で見ていたアインがオークを討伐したという証拠を見せられたのだ、頭がついていかず混乱しても仕方ないだろう。
小走りでギルド内を進むサーシャに着いていくアイン。案内されたのはギルド内の訓練所であった。ブロンズハンターなのだろう、剣の持ち方も足運びもまだまだ未熟な者達が訓練をしていた。
「オ、オーク百六体となると解体所がいっぱいになるので、とりあえずここでお願いします」
「わかりました」
訓練所には受付の近くにいた者と隣の受付嬢までも着いてきてしまっていた。なぜこうも注目を集めてしまったのかわからないアインは言われるがままにストレージデバイスから全てのオークを解放する。積み上がるオークの死体の山……山……山。元が巨大なオークだからか訓練場内の一角を占領してしまう程に広がってしまった。
こうなると訓練していた者達も気になって仕方がない。彼らにしてみれば、オークは自分達では倒せない格上の相手だ。それをここまで大量に討伐した人物が気になるのは自然なことであった。
そしてそれは教導官にも同じことが言える。教導官ということはシルバーハンター以上なのは間違いないが、今の気持ちは生徒であるブロンズハンター達と大差のない気持ちであった。
「……す、凄い」
「だな……これだけの数を一人でやったってのかよ」
「おい、報告されてたのって五十ぐらいじゃなかったか?」
「あぁ、討伐隊組んでもこんだけ誤差がありゃ誰か死んでたかもしれねえ」
「こいつでかくねえか?」
「でけえな。普通のやつの二倍はあるだろ」
「お前はこいつに勝てるか?」
「一対一ならなんとかなる。乱戦だと絶対に無理だ」
誰かがアインを賞賛する言葉を呟くと、それを皮切りに思い思いの会話が広がる。中にはオークの群れが完全に殲滅されたかを確認するべきだと、すぐに行動に移す集団もあった。
そんな中、愕然としていたサーシャがようやく我に返りオークの数を数え始めた。その数は百六、ストレージデバイスに載っていた数と完全に一致した。
「あ、あの、これだけ数が多いと査定に時間がかかるので、終わり次第連絡ということでも良いでしょうか?」
「それでお願いします。俺はアクアに泊まってます。不在時は伝言を残しておいていただければ良いですので」
「アクア……?」
「ん? そうですけど、どうかしました?」
「あ、いえ。友達がそこの娘さんなんです。いつも薬草を持ってきてくれてるんですけど昨日は来なかったから心配で……」
「ティナの事ですか? だったら心配しないで大丈夫ですよ。朝から美味しいご飯も作ってくれましたし、元気が有り余ってる感じです」
「よ……よかった」
大粒の涙を流しティナの無事を喜ぶサーシャ。疲れ切った顔はティナの心配をしていたことも原因なのかもしれない。サーシャの横顔を見ながらそう感じたアインであった。
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