良家で才能溢れる新人が加入するので、お前は要らないと追放された後、偶然お金を落とした穴が実はガチャで全財産突っ込んだら最強になりました

ぽいづん

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第1話 穴

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「ウェブ、いい話と悪い話がある。どっちを聞きたい」
 パーティリーダーのガルフが俺にそう尋ねてくる。
「ん?じゃあ、いい方からで」
「今日から新しいメンバーが加わります! 拍手!」
 俺も含めて、パーティ全員で拍手をする。

 俺よりも若い男がガルフに促され俺たちの前に立つ。

「ワット・ファフナーです。よろしくお願いします」
 ワットと名乗った青年は坊ちゃん刈りで育ちの良さそうな青年。

 ガルフが話しを続ける

「ワットは名門ファフナー家の6男で、剣術学校を極めて優秀な成績で卒業した優秀な剣士。彼の従兄弟の叔父さんの親戚が剣聖という立派な家系でもある。正に剣士となる為に生まれて来た男と言っても良い」

「いやいやそんな大したことないですよ。たまたま祖父が大騎士の称号を貰って、長兄と3兄が騎士になってるだけで、親戚がたまたま剣聖なだけです」
 ワットは口ではこう言っているが満更でも無さそう。

「流石名門家の御子息。謙虚で人柄も知れる」
 感心しているという態度を見せるガルフ

 ん?そういや、俺も剣士だが……剣士2人体制でやって行くのか?なんて考えているとガルフが俺の方を見て、声を掛けて来る。

「あーあと悪い方の話だがウェブお前はクビな。剣士は2人もパーティに要らないからな」

「え?……」

 ワットが俺の方を見てニコッと笑い
「お疲れ様です!」
 爽やかにそう言った。

「ちょ、ちょっと待って下さい!!」
「なんだ?」
「なんだじゃないですよ! 俺がなんでクビになるんですか?」
「剣士は2人も要らないって言っただろ? それともなんだ?ワットと入れ替えになるのが納得できないとでも?」

「そりゃそうですよ! 俺だってパーティの為に一生懸命にやってきたんです。それを相談もなしに新しい剣士を入れるからクビとか納得できる訳がない!」

 ガルフはやれやれと言った表情を見せる。
「ワットとお前、パーティにとってどちらが価値があると思う? 剣術学校を優秀な成績で卒業し剣聖の遠縁で名門ファフナー家の6男だぞ? お前はただの平民で剣術も平凡、出自、才能が全く違うんだ。お前をクビにするのは当然の結論だ」

 他のパーティメンバー達も神妙な表情でうんうんと頷いている。

「そ、そんな……」
「先輩、見苦しいですよ?男らしくスパッと諦めましょう」
 そう言ってワットがニヤニヤと笑らう。

「そうだぞ。ウェブ。男ってのは引き際が肝心だ」

 ……もう……何を言ってもダメそうだ……

「……分かったよ……それじゃみんな元気で……」
 怒りと情けなさで震える足をなんとか運び、その場から離れる。

「みっともないですよね。しがみつくのって」
 ワットが楽しそうに話している声が聞こえてきた……


 街の中をフラフラと行く当ても無く歩く……途中、腹が立ち地団駄を踏み、情けなさから涙ぐんだり、感情がコロコロと変わりながら徐々に気持ちが落ちついてくる。

 そうして落ち着いてくると諦めの気持ちが生まれ始める。
 5年間頑張ってきたのにな……こんな最後になるなんてな……自分自身でも壁のようなものは、感じていたし、いい機会だったのかもな……


「ここは……」

 ふと気がつくと、俺は街の外れまで来ていた。

 辺りは日も暮れ始め、西の空を太陽が赤く染めている。
「もうこんな時間か……」
 おもむろにポケットに手を突っ込むと、硬い物が3枚あった。

 銅貨3枚か……麦酒の1杯は飲めるか……

 酒に弱い俺は麦酒の1杯で酔っ払える。

 あんなこともあったし……今日は酔いたい気分なんだ……

 酒場に向かうと歩き出したその時だった、薄暗い中、石か何かに躓きポケットの中の銅貨1枚が飛び出して、転がり始める。

 駆け出して追いかけるが間に合わず、銅貨は小さな穴に落ちていった……

「あはは。俺は何やってもダメなヤツだな……」
 自嘲するかのように呟くと……

 目の前に文字が現れる。
『銅貨3枚でガチャが引けます。現在銅貨1枚投入中』

 目を擦ってみるがその文字は消えない。目を閉じてもその文字は消えない。

 ガチャ?なんだそれは……銅貨1枚投入中ってことは、この穴に銅貨1枚落としたからそれのことか?

 あと2枚入れると何が起きるんだ?

 銅貨2枚じゃ酒も飲めないし、何もできない。どうせ何もできないなら穴に入れてみるか……

 穴に銅貨2枚を入れてみる。すると目の前の文字は消え、穴から丸まった紙が現れる。

 その紙には★★★ 重力制御(微)と書かれていた。
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