21代目の剣聖〜魔法の国生まれの魔力0の少年、国を追われ剣聖になる。〜

ぽいづん

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第2章 騎士学校

第25話 誘拐

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 俺とシャウラがいつものように下校していると、黒塗りの馬車が横滑りしながら俺たちの前に止まる。

 バーンという音とともに馬車の扉が開く。中からマーフのメイド、アリシアが青ざめた表情で慌てた様子で話しかけてくる。
「マーフ様が!」
 アリシアさんは慌てており、混乱しているように見える。シャウラがゆっくりとした口調で話しかける。
「アリシアさん落ち着いて、ゆっくり話をしてください」
 その言葉でハッと我に返り、息を呑んで少し落ち着いた様子で話を始める。

「さっき馬車が無法者達に囲まれて…マーフ様を出せとそれで私たちを守るため御独りで…」
 俺とシャウラは顔を見合わせる。シャウラと俺は驚きを隠せない。

 マーフだったら大丈夫だとは思うが…さすが多人数に囲まれるとまずいか…早く見つけないと俺ははやる気持ちを抑えてアリシアさんに話しかける。
「分かったその場所を教えてくれ」

 アリシアさんから連れて行かれた場所を教わり、シャウラと2人で走って向かう。

 連れ去られた現場に着く、そこは貧民街の入り口で道路には夕方から酔っぱらった男どもが座り込んだりしており一目見て治安の悪さが分かる。
「僕の方が土地勘がある。2人で一緒に探したほうが早い」

 シャウラととも貧民街に入っていき、俺は目に着いた道路に横になっている酔っぱらいに話しかける。
「短髪の赤髪の女の人みなかった?」
「しらねぇぇぇよーーーそんなことより俺に酒をおごってくれよーーー」
 酒くせぇぇぇこんな奴にきいても無駄か…

 するとシャウラが近くに店を構えているおばちゃんと話をしに行き帰ってきた。
「あっちへ10人ぐらいの男の人と一緒にいったって」
 貧民街の奥を指さす。木造の長屋が密集して建てられており慣れた人間では無ければ入ることを拒むように感じさせる。

 シャウラは特に臆することもなく奥へ進んでいく。

 俺が堂々としているシャウラをみていると
「不思議かい?」
「普通の人間は貧民街には近づかないんだろ?」
「僕の故郷みたいなところだから」
 真っすぐに貧民街の奥に向かって歩きながら話す。

「シャウラは貧民街出身なのか…」
「うん…7歳までここで暮らしていた」
 幼い子供たちが貧民街を走り回っているのを遠目で見ている。
 シャウラはハッとし
「今はそんなことどうでもいいよ!早く探さないと!」
 俺はコクリと頷く。

 シャウラは道行く人にマーフの行方を尋ね、迷いなく奥へ進んで行く。奥に行くにつれ道は迷路のように細く入り組んでおり、その雰囲気はあの同じ風景が続き入った者の方向感覚を奪う生者の森にも似た雰囲気を感じる。

 シャウラはその後も貧民街の住民に話を聞きながら、どんどんと貧民街の中心部に近づいていく。中心部に近づくとおおよその当たりをつけたのか人に聞くことを止め早足で歩きだす。
「分かったのか?」
「うん、大人数が入れる場所は限られてるからね」

 夕暮れの赤い空の下、シャウラが指さした場所は木造の古く大きな建物で貧民街では一番大きな建物だった。
「貧民街の住民は元をたどればとある貴族だったんだ、この貧民街もその大昔は貴族街といわれていたらしいよ」
「へぇぇ」
「政治闘争に負けて、貴族追われ一族の資産は全て没収され貧民になった」
「貴族も安泰じゃないんだな」
「あの建物は大昔のその貴族の本家が住んでいたとされる大屋敷の一部で倉庫だったんだ。今は貧民街の象徴のようになっているけどね」

 俺とシャウラが建物の前に立つ。耳を澄ますと中からガヤガヤと大勢の人間たちがいるような音が聞こえてくる。
「ここにいるな」
 俺がそう言うとシャウラは黙って頷く。
「いいかシャウラお前はここにいろ」
「え?僕も行くよ」
「だめだ。中は100人はいそうだ。お前がいると足手まといになるんだ分かってくれ」
 俺は真剣な表情でシャウラを見る。
「…うん…分かったよ。でも無茶はしないでね」

 そして俺は手近にある木の棒を手にし扉を開ける。

 ◇◆◇

「はぁはぁはぁ」

 薄暗い広い建物の中で女性の息を切らした声が響いている。

 マーフは100人は優に超える男たちに囲まれ一人ずつ襲い掛かってくる男と戦っている。そして数人の男は床で倒れ気絶している、マーフの消耗激しいようでその小さな肩で息をしている。

 マーフの脳裏にもう限界という言葉が浮かぶ。
 私は一体何人の男と戦ったんだろう…
 馬車を十数人の男たちに取り囲まれ、こうするしかなかった…もし私がこうしなければアリシアや馬車の運転手さんに危害が及ぶことになりかねない…

 マーフは足でリズムを取りながら襲い掛かってくる男をさらりとかわし、木剣で急所を一突きする。そしてもんどりうって倒れる男。
 これを何回か繰り返していくうちに体からは汗が吹き出し息は切れる。

 それものそのはずマーフは木剣、相手は真剣や刃のついた斧や槍を使い襲い掛かってくるのだ木剣と戦うような緊張感ではない…

 なぜか男たちは一斉に襲い掛かってくることはせずに、1人ずつ襲い掛かってくる。
 最初の5人ほどは余裕があった。徐々に剣を持つ握力も少なくなっていくことが自分で分かる。

 そして間髪入れずに新しい男が襲ってくる。
 それをなんとかかわし、攻撃をしようとする。しかしもうマーフの体力は限界だった…

 剣で急所突くと同時に剣を落としてしまう。急所を突かれたはずの男はほとんどダメージが無い様子で、マーフの顔に平手打ちをし取り囲んでいる男の足元にマーフの体は吹っ飛ばされる。

 取り囲んでいる男たちが左右に分かれ
「私に楯突いたらこうなる」
 奥から聞いたことのある声が聞こえてくる。その声は主は私の大嫌いなやつの声…
「スタンツ・アタリア!!」
「いったろ剣聖など何の役にも立たんと、数こそ力だそして数を操るのは金だ!」
 そういってスタンツはマーフを倒した男に袋を渡している。

 マーフはスタンツを睨み口を開く。
「こんなことをしてアリステル家を敵に回すことになりますよ」
「貴様の叔父は私達には逆らえんよ、さてこれからお前の処遇だが…ここでこの男たちの慰みものになるか。騎士学校を今すぐやめ私の婚約者になるどちらがいい?」
「あなたの婚約者になるぐらいなら今ここで死を選びます!!」
 マーフがそう叫んだ瞬間。ガーンという音ともに倉庫の扉が開き、夕焼けで赤く染まる空と影になった一人の人間が剣のようなものを手にし立っているのが見えた。





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