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第2章 騎士学校
第33話 正体
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俺は今、あのクソ野郎ベイル・アタリアの警護ということで、奴が移動している馬車の後を付けている。シャウラが剣聖に騎士団内に断罪の騎士がいるということを報告した結果、剣聖は賭けにでた。
その賭けとはベイル・アタリアを囮に使い断罪の騎士を捕らえるという。
シャウラと剣聖が立てた作戦はこうだ。
ベイルの行動計画の中でわざと隙きを作る。行動計画自体は騎士団内部で筒抜けになっているのでその隙きを突き断罪の騎士がベイルを断罪しに来るはず。俺はそれを阻止する。もしシャウラの言う通り複数の人間だった場合、どうすればいいんだろうな…
俺は命の恩人である断罪の騎士を自らの手で殺すために行動をしていたはずなのに…そう奴が火炙りになるのを回避するために…
そろそろ、その隙きができるポイントだ…
ベイルが馬車が止まる。止まった場所は貧民街の入り口。なぜここで止まったのかというと、ベイルは断罪の騎士が出てくるまではこの近くの教会に来る日課があった。警備ができないということで、騎士団の方から断りを入れていたのだが、アタリア家の領地では宗教活動が盛んでありベイル側から教会への外出を再三要請していた。そして今日その要請が受理されたということだ。自分が囮になっているということも知らずに。
白い壁にステンドグラスの窓。そして屋根には鐘を吊るしている建物の前にベイルと4人の甲冑姿の騎士が立ち、ベイルだけが教会の中に入っていく。
4人の騎士は中には入らずその場で待っている。アタリア家の領民以外は入れないというしきたりがあるということで外で待機となったようである。
俺も離れた場所で眺めていると、ベイルが入って数分で騎士たちが慌てた様子で中に入っていく。
きた!
俺も走りながら剣を鞘から抜き、教会の前に立つ。扉は開いたままになっており、教会の中を覗く。
窓から光は差しているが、薄暗くろうそくが昼間であるがろうそくが灯され、ベイルと思われる人間を担いだ全身甲冑の騎士が4人の騎士に囲まれている。
ブン、ブンと剣を右手で振り回し、騎士を寄せ付けないように牽制している。
断罪の騎士と目があったような気がした。兜を被っているいるので視線はわからないはずであるのだが…
バリーン!!
奴は奥側の窓にあるステンドグラスを破り逃げた。
4人の騎士たちも慌てて追う。
俺も追わなければ!
走り出そうとすると背後に気配を感じ振り返る。すると目の前にシャウラが立っていた。
「おい!断罪の騎士が現れたぞ。早く追わないと!」
「待って!追わなくていい!!」
「え?」
シャウラはそう言って教会の中に入っていき周囲をキョロキョロと見回し何かを探している。
「なんで追わなくていいんだよ」
「だってここにベイル公がいるから」
シャウラが戸棚を開けると気を失ったベイルが戸棚の中に収まっていた。
「じゃあ僕らも隠れて待とう」
俺の頭は?がいっぱい飛んでいるがシャウラに言われた通りに物陰に隠れる。
――数分後
教会の前に荷馬車が止まり、大きな麻袋を持った人間が入ってくる。そして戸棚を開けベイルを麻袋に入れ立ち去ろうとしている。
「そこまでだ!断罪の騎士」
俺はそう言って剣を抜き、甲冑を着ていない麻袋を持った断罪の騎士の前に立つ。
その顔は…
シャウラが狼狽したような声を出す。
「え?そんな、まさか、嘘でしょ?嘘だよね…アンリさん…」
「な、なんでお前らここに…追ったはずだろ…」
「アンリさん…」
アンリさんは麻袋をそっと地面におろし、腰に下げている剣を抜く。
「ラグウェル、シャウラ…お前たちを切りたくはない…が真実を知ってしまったのなら生かしてはおけない!」
アンリさんは剣を振りかぶり真っ直ぐに俺にドタバタと走ってくる。アンリさんが剣を振り下ろした瞬間、俺はその剣を弾きあげ、剣はアンリさんの手から離れ宙を舞った。
宙を舞う剣を見て何かを悟ったように呟く。
「俺の負けか…」
「違う。あんたはあの時戦った断罪の騎士じゃねぇ」
「いや今日は調子が悪いんだ…弱くてすまないな」
シャウラはつかつかとアンリの前に歩いていき、胸を掴み涙を流しながら静かに声を出す。
「なんで、アンリさんが…こんなことをしなきゃならないんだ…死罪だよ…火炙りだよ…」
アンリはシャウラの思いに静かに口にを開く。
「すまないな。シャウラ…誰かが立ち上がらないと…この国は変わらない…いや変えられない…法が及ばない貴族…騎士団すら捕まえることもできず、王すら裁くことができない。こんなことが許されていいのか?」
「でも…でも…」
「シャウラ…君は賢い子だ。分かってくれるよな」
…シャウラは黙っている…その場に沈黙が流れる。
俺がその沈黙を破るように口を開く。
「なんで、ここでベイルを殺さなかった?」
アンリは俺の方を見て口を開く。
「こいつは、言わば腐敗の象徴…公衆の面前で断罪の騎士が断罪をすることに意味がある…」
「人前で殺すつもりだったのか…」
「そうすることで民衆の心に刻まれるだろ?」
「そんなことをしたら、捕まって火炙りに…」
「火炙りにはならないよ…その場で斬られるから」
「なんだと…」
シャウラが泣きながらアンリに叫ぶように話しかける。
「そんなことをしたらアンリさんのお母さんはどうなるの!」
アンリは俯きポツリと答える。
「母さんには悪いことしたなぁ…」
「お母さん言ってたよ…騎士団入った自慢の息子だって…それなのに…」
ベイルが突然立ち上がって叫び出す。
「聞いたぞ!お前が断罪の騎士だな!!王に報告してお前を火炙りしてやる」
どうやらベイルの意識は既に戻っていたようで、意識がないふりをしていたらしい。
会話を聞かれた…まずいことになった…
アンリはシャウラを引き剥がそうとする。
「どけ!!シャウラ!今ここでベイルを殺さないと!!!」
シャウラも負けじとアンリの体を抑えようとする。
「ダメだよ。アンリさんこれ以上罪を重ねないで!」
「なんだ、どうした?」
出入り口の方から声がした。礼拝にきた他の人間達がおり、中の様子を恐る恐る伺っているように見える。
それを見たベイルは叫ぶ。
「この男だ!この男が断罪の騎士だ!」
出入り口に集まっている連中がガヤガヤとし始めどこかに走っていく人の姿も見える。
もう後戻りはできない…どうする。どうすれば…
その時、出入り口の方から物凄い速さで駆け寄ってくる人影が見えた。
その賭けとはベイル・アタリアを囮に使い断罪の騎士を捕らえるという。
シャウラと剣聖が立てた作戦はこうだ。
ベイルの行動計画の中でわざと隙きを作る。行動計画自体は騎士団内部で筒抜けになっているのでその隙きを突き断罪の騎士がベイルを断罪しに来るはず。俺はそれを阻止する。もしシャウラの言う通り複数の人間だった場合、どうすればいいんだろうな…
俺は命の恩人である断罪の騎士を自らの手で殺すために行動をしていたはずなのに…そう奴が火炙りになるのを回避するために…
そろそろ、その隙きができるポイントだ…
ベイルが馬車が止まる。止まった場所は貧民街の入り口。なぜここで止まったのかというと、ベイルは断罪の騎士が出てくるまではこの近くの教会に来る日課があった。警備ができないということで、騎士団の方から断りを入れていたのだが、アタリア家の領地では宗教活動が盛んでありベイル側から教会への外出を再三要請していた。そして今日その要請が受理されたということだ。自分が囮になっているということも知らずに。
白い壁にステンドグラスの窓。そして屋根には鐘を吊るしている建物の前にベイルと4人の甲冑姿の騎士が立ち、ベイルだけが教会の中に入っていく。
4人の騎士は中には入らずその場で待っている。アタリア家の領民以外は入れないというしきたりがあるということで外で待機となったようである。
俺も離れた場所で眺めていると、ベイルが入って数分で騎士たちが慌てた様子で中に入っていく。
きた!
俺も走りながら剣を鞘から抜き、教会の前に立つ。扉は開いたままになっており、教会の中を覗く。
窓から光は差しているが、薄暗くろうそくが昼間であるがろうそくが灯され、ベイルと思われる人間を担いだ全身甲冑の騎士が4人の騎士に囲まれている。
ブン、ブンと剣を右手で振り回し、騎士を寄せ付けないように牽制している。
断罪の騎士と目があったような気がした。兜を被っているいるので視線はわからないはずであるのだが…
バリーン!!
奴は奥側の窓にあるステンドグラスを破り逃げた。
4人の騎士たちも慌てて追う。
俺も追わなければ!
走り出そうとすると背後に気配を感じ振り返る。すると目の前にシャウラが立っていた。
「おい!断罪の騎士が現れたぞ。早く追わないと!」
「待って!追わなくていい!!」
「え?」
シャウラはそう言って教会の中に入っていき周囲をキョロキョロと見回し何かを探している。
「なんで追わなくていいんだよ」
「だってここにベイル公がいるから」
シャウラが戸棚を開けると気を失ったベイルが戸棚の中に収まっていた。
「じゃあ僕らも隠れて待とう」
俺の頭は?がいっぱい飛んでいるがシャウラに言われた通りに物陰に隠れる。
――数分後
教会の前に荷馬車が止まり、大きな麻袋を持った人間が入ってくる。そして戸棚を開けベイルを麻袋に入れ立ち去ろうとしている。
「そこまでだ!断罪の騎士」
俺はそう言って剣を抜き、甲冑を着ていない麻袋を持った断罪の騎士の前に立つ。
その顔は…
シャウラが狼狽したような声を出す。
「え?そんな、まさか、嘘でしょ?嘘だよね…アンリさん…」
「な、なんでお前らここに…追ったはずだろ…」
「アンリさん…」
アンリさんは麻袋をそっと地面におろし、腰に下げている剣を抜く。
「ラグウェル、シャウラ…お前たちを切りたくはない…が真実を知ってしまったのなら生かしてはおけない!」
アンリさんは剣を振りかぶり真っ直ぐに俺にドタバタと走ってくる。アンリさんが剣を振り下ろした瞬間、俺はその剣を弾きあげ、剣はアンリさんの手から離れ宙を舞った。
宙を舞う剣を見て何かを悟ったように呟く。
「俺の負けか…」
「違う。あんたはあの時戦った断罪の騎士じゃねぇ」
「いや今日は調子が悪いんだ…弱くてすまないな」
シャウラはつかつかとアンリの前に歩いていき、胸を掴み涙を流しながら静かに声を出す。
「なんで、アンリさんが…こんなことをしなきゃならないんだ…死罪だよ…火炙りだよ…」
アンリはシャウラの思いに静かに口にを開く。
「すまないな。シャウラ…誰かが立ち上がらないと…この国は変わらない…いや変えられない…法が及ばない貴族…騎士団すら捕まえることもできず、王すら裁くことができない。こんなことが許されていいのか?」
「でも…でも…」
「シャウラ…君は賢い子だ。分かってくれるよな」
…シャウラは黙っている…その場に沈黙が流れる。
俺がその沈黙を破るように口を開く。
「なんで、ここでベイルを殺さなかった?」
アンリは俺の方を見て口を開く。
「こいつは、言わば腐敗の象徴…公衆の面前で断罪の騎士が断罪をすることに意味がある…」
「人前で殺すつもりだったのか…」
「そうすることで民衆の心に刻まれるだろ?」
「そんなことをしたら、捕まって火炙りに…」
「火炙りにはならないよ…その場で斬られるから」
「なんだと…」
シャウラが泣きながらアンリに叫ぶように話しかける。
「そんなことをしたらアンリさんのお母さんはどうなるの!」
アンリは俯きポツリと答える。
「母さんには悪いことしたなぁ…」
「お母さん言ってたよ…騎士団入った自慢の息子だって…それなのに…」
ベイルが突然立ち上がって叫び出す。
「聞いたぞ!お前が断罪の騎士だな!!王に報告してお前を火炙りしてやる」
どうやらベイルの意識は既に戻っていたようで、意識がないふりをしていたらしい。
会話を聞かれた…まずいことになった…
アンリはシャウラを引き剥がそうとする。
「どけ!!シャウラ!今ここでベイルを殺さないと!!!」
シャウラも負けじとアンリの体を抑えようとする。
「ダメだよ。アンリさんこれ以上罪を重ねないで!」
「なんだ、どうした?」
出入り口の方から声がした。礼拝にきた他の人間達がおり、中の様子を恐る恐る伺っているように見える。
それを見たベイルは叫ぶ。
「この男だ!この男が断罪の騎士だ!」
出入り口に集まっている連中がガヤガヤとし始めどこかに走っていく人の姿も見える。
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