21代目の剣聖〜魔法の国生まれの魔力0の少年、国を追われ剣聖になる。〜

ぽいづん

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第2章 騎士学校

第32話 断罪の騎士の正体?

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 ――騎士団本部前

 俺とシャウラは昨日剣聖から言われ通り、学校終わりに騎士団本部へと向かった。
 白い石造りの騎士団本部の前に着くと聞いたことのある声で話しかけられる。
「おっラグウェル君、剣聖様がお待ちだよ」
 牢屋で世話になった茶色の髪を短く切り揃えた、中肉中背の騎士のお兄さんだった。

 シャウラが驚いたように声を上げる。
「アンリさん?」
「えっシャウラこの人知ってんの?」
「うん、うちの近所のお兄さんで僕が騎士学校に入るきっかけを作ってくれた人」
 アンリと呼ばれた男は頭を掻きながら
「きっかけだなんて、俺はシャウラに何もしてないよ」
「アンリさんが頑張っている姿をみて、僕もあんなふうに頑張りたいなって思ったから」
「そうか、そうか。でシャウラ、剣は少しは腕をあげたかい?」

 シャウラはハニカミながら
「そっちの方は全然です」
「まあ人には向き不向きがあるからなぁ。相変わらず本の虫か」
「アンリさんもたまには家に帰らないとお母さんが心配ましたよ」
「ああ、最近ほら色々あるの知ってるだろ?忙しくてね」
「わかりました。今日帰ったら元気にしてましたって言っておきますよ」
「ありがとな。シャウラ、ってこんなとこで油売ってたら剣聖様に怒られちまう。俺が引き止めたのは内緒な」
「わかってますよ」
 シャウラはニッコリと笑って答えた。

 俺達はアンリと別れ剣聖の元に向かう。
「あの人」
「うん、すごくいい人だよ。父親を早くに亡くして母一人子一人で育ったんだけど凄くお母さんのことを大切にしてて」
「そうか、それで頑張って騎士団に入ったんだな」
「うん。僕もその姿をみてアンリさんに憧れて騎士学校に入ったんだ」

 若い騎士に案内され剣聖の待つ部屋に通される。こじんまりとした部屋に机が置かれ書類などが雑多に積まれている。
「よく来てくれた」
 机の向こう側に座る剣聖が立ち上がり俺達に声をかける。
「ああ、体は大丈夫なのか?」
「ありがとう。君に心配される程やわじゃないよ」
「不意打ちとかくらってんじゃねーよ」
「分かってる。さあかけてくれ」

 部屋の真ん中に置かれた背の低いテーブルと椅子があり、そこに俺とシャウラが座る。
 シャウラが部屋をキョロキョロと見回しながら話す。
「剣聖様って忙しいんですね」

 剣聖は机から離れ、俺達の正面に座る。
「私の場合は、色んな仕事を掛け持ちしてるからね、騎士団に所属したままだしね」

 剣聖になると騎士団を抜け剣の道を更に極めようとするものが殆どらしいとシャウラが話していた。確かに以前アルファルドが話していたのも騎士団に所属しているような感じではなかった。

「そういえばなんで騎士団に所属されたままなんですか?」
「…この国を変えたい…ってのは大袈裟だけど、自分が騎士団にいることで何か変わればとおもってね」
 シャウラはうんうんと頷きながら剣聖の話を聞いている。

 剣聖は真剣な表情で俺を見つめ話し出す。
「で、本題なんだが…」

「断罪の騎士か」
「昨日、あの場所を調べたが証拠につながるものはでてこなかった。まともに戦ったことのあるもきみだけだ、何か変わったこととかあれば言って欲しい」

 俺は腕を組み昨日の戦いを思い出す。

 あの場で麻袋を担いだ黒い甲冑姿の騎士を発見した…追いついたら斬りかかってきて…それを受けて……
「うーん特に変わったこところはなかったな…クソ強かったということ以外」
「強かった?どのぐらい?」
「俺の剣戟を片手一本で防いでなおかつ斬りかかってきた」
「うーん。君の強さは私も認めるところだ。その君が強いというのなら相当な手練だな…」

 シャウラがここぞとばかりに口を挟む。
「相当に腕に自信がないと背後からとはいえ剣聖様を襲撃しようなんて思いませんよ」
「ありがとう。私の腕をかってくれているんだね」
 シャウラは礼を言われ照れているような素振りを見せる。

「ところでシャウラ君、君の推理は的確だったが、今の段階で断罪の騎士の次の行動と正体を推測してもらいたいのだが…」
 そう言われシャウラは考え込み、少し沈黙が流れる。

 シャウラはブツブツと独り言のように喋りだす。
「そうですね…犯人は単独犯で…相当に武芸に長けているもの。そして次のターゲットはベイル・アタリア」
「そうか…次の目標は私達と同じ見立てか…」
「では、騎士団も次の目標はベイル・アタリアと?」
「ああ、そうだ。一応私を襲うことも成功はしているしな」
「そうですね…」

 俺はそのやり取りに少しの違和感を覚える…単独犯?確かスタンツの誘拐場所には複数って…
「え?シャウラでも?」
 シャウラは俺の方をちらりと見る。

 その顔は黙っていて欲しいといっているように見えたので俺は敢えて言葉を飲み込んだ。
 剣聖は立ち上がり

「わかった、ありがとう。もう聞きたいたことはないから帰っていいよ」
「はい…お役に立てずすいません」
「いやいや。本来なら自分たちで見つけなかればならないんだからね」

 俺達は立ち上がりそれぞれ挨拶をしその部屋を後にした。
「失礼しました」
「じゃあな」

 騎士団本部を出てシャウラに話しかける。
「なんで複数の人間がいるって言わなかったんだ?」

 シャウラは周囲を伺い路地裏に入り手招きをする。俺はそれに従い路地裏に行く。人通りのない路地裏に入りシャウラもう一度周囲を伺いは真剣な表情で話始めた。
「僕の推理では断罪の騎士は…騎士団内部の複数の人間だと思う」
「まさか…」
「あの話し合いの場に居た人間だと騎士団の人間か、剣聖様しかいないでしょ」
「確かに…」
「剣聖様は昨日襲われたし…スタンツを攫ったときは複数の人がいたみたいだし、複数の人間って騎士団だけでしょ」
「言われてみれば、そうだな…」
「剣聖様には明日にでも騎士団本部以外で会えるようにマーフさんに頼んでみるよ」
「分かった」

茜色に輝く空の下、俺達は帰路へついた。
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