21代目の剣聖〜魔法の国生まれの魔力0の少年、国を追われ剣聖になる。〜

ぽいづん

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第2章 騎士学校

第31話 狙われた剣聖

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 俺は走る!人の間と乾いた土色の壁の間を縫うように一直線に走り、角を曲がる。そしてもう一度角を曲がり路地裏に入る。すると黒い甲胄の騎士が麻袋を肩に背負い、まるで俺が来ることがわかっていたようにこちらを振り向く。

「見つけた!その肩に背負っているものは置いていってもらうぜ」
 俺は剣を鞘から抜く。虹色に輝く剣身が目に飛び込んでくる。


 その瞬間、肩に人一人を入れているであろう麻袋を背負ったまま、重い甲胄を身に付けているとはとても思えない身のこなしで、右手一本のみで、一直線に竹を割るように斬りかかってくる。

 ガキーン!

 剣と剣がぶつかり合い火花を散らす。

 剣から伝わってくる衝撃と振動。
 久しぶりの真剣同士の感触に少しだけ気分が高揚する。

 この感触…懐かしい…ここに来てそれ程の時間は経って無い筈なのに。

 一旦鍔迫り合いのような形になり、断罪の騎士が後ろに跳ね間合いをとる。

 うん。あいつ強い…下手したら俺と同じか少し上かも…
 
ジリ、ジリとお互いが一定の距離を保ち間合いを図る。

トンッ

断罪の騎士の背中が壁に触れた。
その瞬間、俺の方から地を這うように飛び掛かり、剣を横に撫で斬りする。

 再び火花が飛び散る。

 断罪の騎士はその一撃を右手一本で受け止め、斬りかかってくる。今度は俺の方が後ろに飛び跳ねその攻撃をかわし間合いを取る。

「やるなぁ…あの一撃を右手一本かよ」

 断罪の騎士は壁を背に無言で俺を見つめている。
「あんた、つええわ。でもその甲冑と袋担いだままで俺に勝てると思う?」

 俺がそのセリフを言った瞬間。

「いたぞ!!!」
 どこかで聞き覚えのある大声が響く。騎士団の騎士達がこの数人が路地裏になだれ込んでくる。

「あ!」
 俺が一瞬だけ目を逸した。その瞬間に断罪の騎士は麻袋を騎士たちに投げつけ、一瞬の隙きを突き大人の身長は優に超える壁を飛び上がる。

 俺も走り壁を飛び上がり壁の上に立つ俺の視線の先には黒い甲冑が見える。壁から飛び降り、黒い甲冑の姿追う。

 真っ直ぐに走り、角を曲がり再び真っ直ぐに走る。また角を曲がると人にぶつかる。
「くそっ!」
 いつの間にか大通りに出てしまったようで完全に断罪の騎士の姿を見失ってしまった…
 剣を鞘に戻しトボトボと来た道を戻る。やっとのおもいで断罪の騎士と一戦を交えた路地裏に戻る。すると騎士たちに助けだされた剣聖の姿が見える。どうやら頭を打たれたようで後頭部を抑えている。

 剣聖の正面に立ちドンと剣聖の胸を叩く。
「ったく情けねぇなそれでも剣聖かよ」
 嫌味を吐くと剣聖は苦い顔をし。
「油断していた…人混みの中、まさか背後からやられるとは…」
「慢心してんじゃねーよ。剣聖なら背後からでも気がつくだろうが!」
「本当にすまない。しかしなんでこんなところにいたんだ?」
「あーそれね。俺達はお前が襲われると思ったから後を付けていた」

 剣聖はその表情一瞬曇らせ
「なぜ、私が襲われると?」
「スタンツは口、騎士長は耳。次はあの事件を見てみぬふりをしたあんた」

 剣聖は腕を組み難しい顔をする。
「そういうことか」
「そう断罪の騎士はあの事件に関係したものを狙ってる」
「君がそれを発見したのか?」
「俺じゃないシャウラだよ」

 麻袋を調べていた騎士が声かける。
「剣聖様これを御覧ください」
 騎士の一人が剣聖に何かの紙を見せている。
「これは…」
 どうやら麻袋の中に紙が入れられていたらしい。
「どうやら君たちの推理が正しかったらしい」
 その紙には『真実が見れる目なら必要なし』と書かれている。

「あのまま連れ去られていたらお前の目は無くなっていたかもな」
「ああ…そうだな…礼を言うよ」
「俺に礼ならいらねーよ。シャウラにいいな」
「助けてもらったのに心苦しんだが…明日騎士団本部に来てくれないか?そのシャウラ君も一緒に」
「なんで?」
「断罪の騎士と戦ったのは君だけだし、鋭い推理力を発揮したシャウラ君にも協力を仰ぎたいと思ってね」
「どうせ断れないんでしょ?」
 剣聖は苦笑いをしながら答える。
「ああ」
「分かったよ。明日学校帰りによるわ」
「ありがとうくるのを待ってる」
 そういうと剣聖はその場を離れ騎士たちに指示を出している。

 俺はその場から離れ帰ろうとすると騎士の一人が話しかけてくる。
「ありがとう。ラグウェル君。剣聖様を助けてくれて」
「まあべつに助けるつもりはなかったけどね」

 その騎士は牢屋に打ち込まれたときに俺の世話をよくしてくれた人だった。
「またまたー君は強くて優しい。僕はそれを知っているよ」
「そんなこといってくれるのお兄さんぐらいですよ」
「騎士団も君みたいな子ばっかりだといいんだけどね」
 その人はポツリとそう呟くと剣聖の元に行き指示を受けどこかに走っていった。

 手に少しだけ残る断罪の騎士の剣を受けた感触を思い出すように右手を眺める。

 あいつ…断罪の騎士…確かに強かった。邪魔が入らなければ俺が勝っていた…しかし袋と甲冑がなかればほぼ互角か…俺と同じレベルの人間が剣聖以外にいるとはな…次戦うときがあれば逃さない。そして俺がこの手で断罪の騎士を殺す!

 そうして帰路に着く頃には太陽が沈み夜の帳が降りようとしていた。


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