21代目の剣聖〜魔法の国生まれの魔力0の少年、国を追われ剣聖になる。〜

ぽいづん

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第2章 騎士学校

第30話 真実が見えぬ目

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 3人の男達が居たという草むらを調べてみる。特に変わったところはなかったが確かに誰かが草を踏みしめたような跡がある。

 ふと見るととシャウラが何かを拾ったようにみえた。
「なんか落ちてた?」
「いや落ちてるような気がしたけどただのゴミだったわ」
「なーんだ。なんにもねぇなぁ今日はもう終わりにするか」
「そうだねぇ大分陽も落ちてきたし」

 空を見ると西の空は紅く染まり、東の空が徐々に青から黒へと変わりかけている。

 俺達はそのまま帰路についた。

 ――翌日

 学校に行こうとするといつものように寮の前でマーフとシャウラが待っている。
「おまたせー」
 俺が挨拶をするとそれどころではないといった感じでシャウラが切り出した。
「大変な事になったみたい。さっきマーフさんから聞いたんだけど」

 マーフがまたヒソヒソ話をする。
「昨日帰ってレグルスから聞いたんだけど…この間居た髭の騎士長覚えてるわよね」
「ああ、あのやな奴だろ」
「断罪の騎士に襲われて、耳を削ぎ落とされたって」
「耳…」
「気を失っているところを発見されたらしいんだけど、その耳と一緒に『真実を聞かぬ耳なら必要なし』と書かれた手紙があったらしいわ」
「真実を聞かぬ耳か…」
「あと昨日の馬車のおじさん3人見たって言ってたけど、襲ったのは一人よ。スタンツの時も騎士長も黒い全身甲冑の騎士にやられたみたいよ」

 シャウラは腕を組み何かを考えながらポツリと呟く。
「複数でなく一人?騎士長なら剣の腕も相当なはず、それを殺さずに気絶させ耳を削ぐ…断罪の騎士は相当な手練…」

 眉間に皺を寄せて悩んでいるシャウラに話しかける。
「そっかーそんなに強いのか…だったら尚更、俺達が早く騎士団より早く見つけて戦って勝ちたいな」
「…うん…相当強いと思うよ」
 シャウラは何か思いつめているようにも見える。

 マーフも真剣な表情で話を続ける。
「これであの場にいた2人がやられたわ。次があるとしたらもしかしたらあの場に居た人間かも」
「確かに…あの場で真実を言わなかったスタンツ…そしてマーフの訴えをなかったことにした騎士長…全てあの場あった出来事か…」

 シャウラはそれを聞きハッとしたような表情になる。
「僕、その場に居なかったからわかんないけど。誰が居たの?」
 マーフが思い出すように指を折りならそれに答える。
「私でしょ、私の叔父にスタンツにスタンツ親父に…こいつに…校長で騎士長と若い騎士2人そしてレグルスだったっけ?」
 俺に聞いてくる。俺は間違いないと頷きながら答える。
「確かににそのメンバーだった」

 そしてシャウラはポツリと一言呟く。
「断罪の騎士はその会話を知る者…」
「そうか!そのメンバーの中にいる可能性が高いってことか!」
「一人だとするとね…あっもう時間ないよ」
 シャウラは意味深にそう言って俺達は慌てて学校に向かった。

 昼休みになり中庭で放課後の作戦会議を行う。俺はいつものように木陰で寝転ぶ。そして芝生の上に座っているシャウラとマーフ。
 シャウラは真剣な表情で話を切り出した。
「多分だけど次狙われるのはスタンツいやアタリアの悪事を見てみぬふりをしたもの口、耳と来てるから次は目そして…」
 その話を聞き俺は起き上がる。

「最後がベイルか…」
「全て元凶だろだからね。だから最後の仕上げがスタンツの親父さんだと思う」

 確かに…シャウラの言うことはもっともだ…

「なるほどねぇ」
「まああと狙われる可能性が高いから警備も厳重ってのもあると思うけど」
「じゃあ目は…」
「あの現場を見て見ぬフリをした剣聖…」
マーフが驚いたように口を挟む。
「まさかレグルス!?そんなありえないわ。彼に勝てる人間なんて…」
「もし仮に剣聖様が負けるなんてことがあれば…国王様が任命する剣聖が断罪の騎士に負けたら大変なこことになるよ…」
「いや俺も認めたくはないがあの野郎はクソ強い。断罪の騎士がいくら強くてもあれには勝てないと思う」
「うん…でも必ず剣聖様を襲うと思うから様子を伺おう」
確かにシャウラの言うことは筋が通っている…

俺達は剣聖の前に断罪の騎士が現れると確信し剣聖の行動を監視することに決めた。

 放課後になり俺は一旦寮に帰る。鎖帷子を身に纏いその上に制服を着る。そして手にはシリウス鋼の剣を持ち鞘に布を巻きつけ剣を擬装する。

 そしてマーフと落ち合い剣聖の居場所を聞く。騎士団本部にいるとのことで俺一人で騎士団本部の出入り口が見える場所に立つ。マーフは家で用事があると言い。シャウラも別の用事があるとのことで俺と一人で剣聖を見張ることとなり今は何もすることがなく暇な時間を持て余している。

 1時間弱待っっているとレグルスが騎士団本部の大きな出入り口をくぐりでてきた。

 うん、どうやら帰宅するようだ…そのまま一定の距離を保ち後を付ける。

 レグルスは何やら紙をみながら下町の露天が立ち並ぶ人通りの多い路地に入っていく。夕飯時でやたら人が多く俺も人を掻き分け進んで行くのだがレグルスが角を3つばかり曲がったときについぞ見失ってしまった…

 キョロキョロと周囲を伺うが見つけることができない。俺はその場で一番高い建物を見つけ壁をよじ登る。壁を登りきり周辺を見ると路地裏で人ひとりが入ることができるような大きな麻袋を担いだ黒い全身甲冑の騎士の姿が見えた。

 俺はその建物から飛び降りながら鞘に巻きつけた布を取り、ダンっと地面に着地し飛ぶように走り出した。



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