21代目の剣聖〜魔法の国生まれの魔力0の少年、国を追われ剣聖になる。〜

ぽいづん

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第3章 鴉

第62話 王

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 テントから出て、俺たちが居たテントより大きなテントに移動をする。その中央部には焚き火があり、祖人達は皆、火を囲んでいる。

 その中に一回り体格のいい祖人がいる。その祖人にドルイドが耳打ちをする。
「@aadafeidamdaeu!!」
 耳打ちをされた祖人が何か叫ぶと、その周りに居た祖人たちは立ち上がりどこかに行き始める。

 そしてその祖人は俺たちを値踏みするような目でみながら
「aroruadanouromauiu」
 と言葉を発する。


 あれが祖人の王とされるものか…
 着ているものは他の祖人と同じ様な動物の毛皮できた服を着ており腰には石斧をぶら下げている。ただ体格が他の祖人よりも一回り大きいと言うだけ。一緒にいれば彼が王ということはわからないだろう。

 ドルイドが彼が発した言葉を聞き口を開く。
「彼はこう言ってます」
『私はゴーライ族、族長イゴソ。祖人を統べるものだ』
 それを聞いたリリカは口角を上げ
「私はリリカだ。祖人のくせに王様気取りか…私がお前を殺す」
「訳してもいいので?」
 ドルイドは無表情でリリカに確認をする。
 リリカはコクリと頷き
「一言一句正確訳せ」
 そう言うとまっすぐにイゴソを見つめる。

 イゴソはそれを聞くと顔の筋肉を緩め笑顔になっているが目は笑わず、何やら話しかけてくる
「アハハハ」
 ドルイドが訳さずとも彼が笑っているのはわかる。 
 そして笑った後にイゴソに何やら伝えドルイドの口からイゴソが話した言葉が伝え、イゴソはそれを訳す。
「彼はこう言っています。やれるものならやってみろ。囚われの鴉の女よ。」

 それを聞いたリリカは勢いよく立ち上がり、歯を向いてイゴソに襲いかかろうとする。
 イゴソがそれをかわし、腹を殴りリリカはその場で意識を無くし倒れ込む。
 それをみてドルイドが呟く。
「バカな女よ…」

 イゴソは倒れたリリカを眺め、斧を振り上げている。

 副長!!

 俺は考えるよりも先に行動していた。俺は立ち上がり、瞬間的にイゴソが斧を振り上げているリリカの前に立ち塞がっていた。そしてイゴソを睨みつけ叫ぶ。
「俺がお前を必ず殺す!」

 俺がそういうとドルイドが祖人の言葉に訳す。それを聞いたイゴソは無表情で、手に持った石斧を俺に向かって振り下ろす。

 俺はそれを瞬き一つもせずまっすぐにイゴソを見つめる。
 顔のすぐ上で石斧が止まり、イゴソは再び豪胆に笑い出す。

「瞬き一つもしないとは。気に入ったお前たちはここで殺すつもりだったがチャンスをやろう」
 イゴソが呟いた言葉をドルイドが訳す。
「チャンスだと?」
 イゴソが話した言葉を聞いたドルイドは一瞬躊躇したような表情になったが、恐らくイゴソが訳すようにうながしたのだろう。渋々と話しはじめる。
「ゴーライ族の戦士と戦わせてやる。それに勝てばお前たちは自由だ」
「分かった…約束は守れよ」

 イゴソは訳された俺の言葉聞くと笑いだし
「ゴーライ族の戦士に人間風情が勝てるというのか、片腹痛いわ」
 そういうとテントから立ち去っていった。

「クソっやはり祖人は祖人か…」
 ドルイドはそう呟く。
 そしてリリカはドルイドに担がれ、テントに戻される。

 ドルイドが得意げな表情で俺に話しかけてくる。
「ふん、お前も多少の自信はあるようだが、お前は負けて殺される」
「俺の相手は決まっているのか?」
「ああ、ゴーライ族最強の戦士、生まれたときから無敗の男ジルドだ」

 ドルイドを睨みつけ、噛みしめるように口を開く
「勝負はやってみないとわからない」

「ああ、そうだな楽しみにしてるよ」
 ドルイドはそう言ってテントから離れていった

 数十分が経ちリリカが目を覚まし、俺がすべて説明をする。
「くっ私としたことがこんな新米に助けれられるとはな…」

 リリカは悔しさを滲ませた表情で呟く。
「勝負に勝てば自由にするだと…愚弄しおってからに…」
 それに俺は噛みしめるように口を開く。
「必ず勝ちます」
 リリカは一瞬表情を緩ませ、俺の方を向いて
「ああ、お前に任せる。必ず勝てよ」
「はい!」

 そう返事をするとリリカはいつもの冷静な表情に戻り
「イゴソという男は奸計を弄するタイプではない。勝てば解放するだろう…しかしロレンツォの動きに注意しておけ」
「はい…」
イゴソと謁見から3日が経った頃にドルイドと祖人達がテントにやってきた。

「さあ、お前さん達の処刑の日がやってきた。どうだリリカ俺と手を組むつもりはないか?」
 リリカはドルイドを睨む。
「このクソ野郎がお前が死ね」

 ドルイドは両肩をすぼめ、困った人だと言う表情をし捨て台詞を吐く。
「死ぬまで強がっていてください」
 俺たちはドルイドに促されテントから出るとこの地方にしては珍しく青空が広がっている。
 3日間テントにいたせいか、太陽の光が眩しく感じる。
 そしてテントに囲まれた中央に大きな広場のような場所に連れて行かれる。

 その広場の周囲を沢山の祖人が囲んでいる。
「彼らにとって決闘は、娯楽のようなものです。せいぜい観客をわかせてください」
 ドルイドがそう俺に呟く。

 真ん中にイゴソがおり、取り囲んでいる祖人に大声で話しかけている。その話をきいて観客達のテンションも上がっていく。

 イゴソが観客達のところに行くと、観客の中から一人の筋骨隆々でイゴソと似たような体格の祖人が大きな石斧を携え現れ、観客の歓声が一段と大きくなる。
「彼がジルドです」
ドルイドはそう言うとリリカとバルジを観客が居る方に連れて行く。

俺は後ろ手にされいた縄を解かれ、肩を回したり準備運動を始める。そして一人の祖人がやってきて俺の剣が手渡される。

剣を握るとその重さがひどく懐かしく感じた。

そして銅鑼が青い空の下に鳴り響く。

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