21代目の剣聖〜魔法の国生まれの魔力0の少年、国を追われ剣聖になる。〜

ぽいづん

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第4章 21代目の剣聖

第79話 20代剣聖 中編

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 父は酔っ払っ挙げ句近所のゴロツキと喧嘩をし刺されたらしい。
 父の腕であれば、ゴロツキなど圧倒できるはずだ、それなのに父は胸にナイフを刺され殺された。

 これが夢に破れ、己の誇りすら無残に砕けた男の末路。

 俺は一人になった。剣術大会で優勝したので、騎士学校に入学はできる。家にも居る気になれなかったので誰も居ない家を出て、騎士学校の寮に入った。

 周囲の人間は俺の剣の腕に期待をしたが、俺はそれに反目するようになり。怠惰に過ごすようになった。

「ムルジム、期待の剣士がいると聞いたが」
「ああ、アルファルドか。もしかしたらヘテロ並に強さになるかもしれんな」
 騎士学校の主任教師だったムルジムが19代剣聖として名を馳せていたアルファルドと道場に話しながら現れる。

「彼がレグルスだ」
 ムルジムの声が聞こえ、木剣の素振りをしていた俺は2人に会釈をする。同級生の連中は剣聖が現れたのをみて興奮気味に話をしている。

 剣聖が俺のことをみて話しかけてくる。
「ほぉ、君がレグルス・フェルトか噂は聞いているよ。天才だとね」
「はあ……」
「私と一つ手合わせを願いたいのだがどうかね?」
「はい……」

 俺は木剣を持ち、剣聖アルファルドの前に立つ。

 流石、剣聖と言われる人だ。隙きがない、自分が打ち込んだ瞬間にやられるというイメージしかない。
 俺は木剣を地面に置き。
「僕の負けです。勝てるイメージが沸かない」
 同級生達はええーー!っと言ったが剣聖はそれ以上は何も言わず
「そうか……分かった」

 そういうとムルジムと道場を後にした。

「ムルジム……ありゃダメだわ」
 2人になったアルファルドはムルジムにあっけらかんと話す。
「そうか……私の目も節穴じゃない。お前と合ってなにか変わればと思ったのだがな」
「あの覇気のなさはなんだ? 目に力もない。鍛えるだけ無駄だな」
「まあ、まだ若いんだからそう言ってやるな」

 剣聖になった後にムルジム校長に聞いた話だった。俺は19代剣聖から見放された男だった。
 そしてそのまま騎士団に入団。

 騎士団ででも怠惰な生活は変わらず、俺はどこかで父のようにはなりたくない。一生懸命に努力しても報われない。努力したところで父のように野垂れ死んでは意味がない。ならば怠惰に生きた方がマシとすら思っていた。ただなぜか困ってる人は助けたい。力になりたいという意志だけは残されていた。

 しかし剣の腕は目立ってしまう。騎士団の期待の新人として扱われるようになった。そしてリリカと出会う。
 彼女は真っ直ぐで努力家で、俺とは正反対の人物だった。向こうは俺のことを嫌悪していた。最初の事件窃盗団の事件の後、彼女は俺のことを見直したと言っていた。


 アルファルドが国を去り、剣聖の座は空席となって5年が経ち、俺が騎士団に入って3年ほどが経ったある日、俺に面会者があった。

 その面会者は初老の男性だが肌の色は焼けて茶色になっており、すごく親しげに話しかけてきた。
「レグルス!ひさぶりだな!」
「は、はあ……どちらさまで?」
「俺だよ俺、お前のおじさんだよ」
「おじさん?」
「お前の父さんの弟さ」
「あーー!」
「まあわからなくても無理はないか、お前がまだ赤子の頃にあったきりだからな」
「それでおじさん何の用なんです? 金ならないですよ」
「お前に金をせびるほど落ちぶれちゃいねーよ。兄さんが死んだって風のうわさで聞いたもんでな墓参りにと思ってな」
「それなら案内しますよ」

 父の墓に案内する道すがらおじさんの話を聞いた。

 おじさんは父の父つまり俺の祖父と折り合いが悪かった。昔から剣の腕がたった父を贔屓しおじさんは嫌な思いをずっとしてきた。

 祖父の口癖も我が家から剣聖を出しフェルト家の再興をというもので、おじさんはそれに嫌気がさして家を飛び出したらしい。しかし父とおじの仲は良く、おじが家を出てもやり取りがあった。

「やっぱりあの19代剣聖とは雲泥の差だったよ」
 おじさんは家を出たが、父からその剣聖を決める戦いに招かれその試合を生で見たと話した。

「お前も生まれてて、心技体とも充実していた、それなのに足元にも及ばなかったよ」
「そうですか」
「ああ、でも夢はお前に託す! 20代剣聖を目指すと胸を張っていたよ」
「……」
 そんな父を殺したのは自分だ。俺が父より強くなってしまったから……

「お前さん子供のときに勝ったんだろ? 父さんに」
「なんでそれを知ってるんです?」
「ほれ」
 そう言って古びた紙を俺に渡す。

 それは父からおじに宛てられた手紙だった。

 私は凄い才能を見つけた。この子は天才だ。10歳でこの私に剣で勝ったのだ、正直負けた時はショックだったよ。でもこの子ならこの子ならば……剣聖になれるか……俺は一体この子に何をしてあげてたんだろうな。この子に負けた時に気がついたよ。私は父と同じことをこの子に課していたのだと。

 おじさんが口を開く。
「お前の父さんも爺さんのことを憎んでいたんだよ、俺と同じくね」
「憎んでいた? 父の口癖は祖父と同じだった」
「夢に破れた男が子供に自分の夢を重ねる、よくあることさ。お前の父さんも剣一筋で育てられ厳しく爺さんに鍛えられたんだ。それは見るにもおぞましいものだったよ」
「……」

 俺は手紙の続きを読みすすめる。

 私はこの子にひどいことをしてしまった。取り返しのつかないことだ……私は私が嫌いだ、嫌悪していた父と同じ道を私自身が歩んでいたということに気がついてしまった。どうすればいい?どうすればこの子の人生を取り戻すことができるのだろうか……

 まさか……父さんは夢やぶれて俺に誇りを打ち砕かれて絶望したと思っていた……

「お前の父さんは決して強い人間じゃなかった、現実逃避し酒に溺れてたことも知ってる」
「父さん……」
「ただお前さんに負けて自暴自棄になったんじゃない。自分が嫌悪していたそのものになったことに後悔をし、自暴自棄になりそしてお前と向き合うことをやめて逃げたんだ」
「おじさん……俺は……父さんは夢に破れて子供の俺にも負けてただ、ただ酒に逃げていたと思っていた」
「ああ、そう思われても仕方ないな」
「俺は……努力しても報われなかった父のようにはなりたくないと、あの日父が死んだ日から真面目に生きるのをやめたんだ」
おじは頷く。

俺は目から涙が勝手に流れていた、父が死んだ日ですら流したことのなかった涙が自然に目から溢れていた。 

「お前さんはどうするんだ? 剣の腕は立つんだろ? あの兄さんに10歳で勝つんだからな」
「……」
そうして墓につき、墓に眠る父にこういった

「父さん、俺は剣聖になる20代剣聖を目指すよ」
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