21代目の剣聖〜魔法の国生まれの魔力0の少年、国を追われ剣聖になる。〜

ぽいづん

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第4章 21代目の剣聖

第88話 最速の突き

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 いつだ? いつ仕掛けてくる? それとも俺から……

 アルファルドの試合開始の合図から十秒程が経っただろうか?

 初めて対峙するレグルス。身長は少しだけ奴のほうが高いのだが、異様に大きく感じる。
 アルファルドと同じだ……昔何度もアルファルドと戦った。それが剣の鍛錬だったから……あの時もアルファルドの体が何倍も大きく感じた事があった。

 その時にアルファルドに聞いてみたことがある。なんで体が大きく感じるのかって
「あー? そりゃ気だよ気。腹の底にぐっと力をいれて気を入れるんだ」

 あの時はその意味がわからなかった。だけど今の俺なら……

 ぐっと腹の底に力を入れる。レグルスの口角がキッと上がる。

 俺の気も負けてない。レグルスと互角だそう思った瞬間。

 目の前に鈍色に尖った剣先が現れる。

 え? 予備動作もなしに? レグルスの一挙手一投足全てを見ていたはず、突きであれば肩や手の動きである程度の予測はできる。それが全く予備動作もなく目の前に剣先だけが現れたのだ。

 頸を左にひねりその突きかわす、剣先が頬をかすめていく、通り過ぎた剣はそのまま俺の頸を捉え振り下ろされる。

 まずい!

 そう思う前に、俺の体は反応をしていた。体が勝手に動いた上半身を反らしていた。剣先が頸筋の数ミリ先を通過した瞬間。両手で持っていた剣の左手を離し、右手一本でレグルスの胴に突きを放っていた。

 レグルスも左手を離し俺の突きをかわそうとする。しかし俺はほんの少し剣先に抵抗を感じた。

 二人とも同じタイミングで跳ぶように後方に下がり間合いを取る。

 俺の頬から生暖かいものが滴るのを感じる。レグルスもまた左の脇腹辺りの服が裂け、そこから出血をしている。

 ファーストコンタクトは互角。

 なんだ……あの突き……

 なんとかかわすことができたが、次はかわすことができるのか?……

 ◇◆◇

「さすがだ……」
 アルファルドが二人のファーストコンタクトみて呟く。

 ムルジムもその呟きを聞いて口を開く。
「ああ。二人完全に仕上がってるな……本当にほぼ互角だ」

 アルファルドは腕を組み渋い表情でムルジムに話しかける。
「小僧にレグルスのあの突き見えてなかった。ここまでの完成度の高い突きは見たことがない……」
「反応が遅れていた、最速の突きか」
「ああ、そうだ最速の突きだ。小僧には予備動作なく突きが来たように見えているはずだ」

 ムルジムは感心したようにアルファルドに話しかける。
「しかし、それを初見でかわすとは……さすがラグウェルといったところだな」

 アルファルドは首を横に振り、あんなものは偶然だとムルジムを諭す。

「自分の弟子に辛辣だな」
 ムルジムにそう言われ、アルファルドは苦笑いをした。

 ◇◆◇

 あの突きの秘密がわからない以上、距離を取って戦うのは危険だ。
 今度はこっちから仕掛ける!

 一息つく間もなく、間合いを一気に詰め、右肩から袈裟斬りするように剣を振り下ろす。


 キーーーンという金属と金属がぶつかり合う音とともに、ぶつかり合った剣と剣から火花が上がる。そのまま俺は剣を引き二撃目の動作に入る。

 胴を狙い水平に薙ぐ、レグルスは手を大きく曲げ胴狙いの二撃目を再び剣で受け止める。

 一瞬の遅れが致命傷になるこの近距離でレグルスと呼吸を止め数十秒打ち合う。

 道場に剣と剣がぶつかり合う金属音が響く。

 レグルスが間合いをとろうと後ろに跳ぶ、俺はそれを逃さず追い詰めようと間合いを詰めようとした瞬間、腹部に衝撃を受け体が後ろに飛んだ。そのまま道場の壁に激突する。

 レグルスはこの瞬間を狙っていたのだ、俺が間合い詰める勢いを利用して腹部に蹴りを放ったのだ。

 やられた……ダメージは……腹部をやられると足が止まる…… 

 足に力を入れダメージを確認する。力の入り方などでダメージは少ないと確認できた。幸い蹴られた瞬間、空中にいたことで蹴りのダメージは吸収できていたようだ致命傷ではない。

 しかしレグルスに一呼吸を入れる間と間合いを与えてしまった。

 レグルスが口を開く。
「あの距離でも勝負になると思ったが、さすがに若さには勝てんか」

 ……試したのか自分が勝負できるかどうか……負ければ死ぬという場面で……この男、底が知れない……

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