21代目の剣聖〜魔法の国生まれの魔力0の少年、国を追われ剣聖になる。〜

ぽいづん

文字の大きさ
95 / 120
第5章 魔法の国のスピカ

第95話 死文病

しおりを挟む
 私は16になった。今日の授業は教室での歴史の授業。階段のように椅子が配置された教室の片隅に腰を下ろす。
 窓から入ってくる春の優しい風が心地よい。
 ガラガラっと引き戸を開け痩せた男の教師が入ってくる。
「今日はペンタグラム建国の歴史だったかな」
 教師はそういうと教壇に分厚い本を置く。

「ペンタグラム建国において一番最初に語らなければならないのは始祖の五家と言われるが、そこの君、答えられるかね?」

 当てられた生徒はあたふたし周囲をキョロキョロと見ながら答えに戸惑う。
「えーっと……」

 教師は頭を抱え
「最近の若者は始祖の五家も知らんのか」
 と言いうと黒板に文字が浮かび上がる。

『始祖の五家、アルタイル家、ノーマン家、ベルマルク家、カービン家、マルフォイ家』

「これが始祖の五家だ。ペンタグラムに生まれて始祖の五家を知らない人間は恥だからな。なスピカ・アルタイル」

 急に私に振られ慌てて顔を伏せる。
「スピカは始祖の五家の一つアルタイル家の人間だ。私達とは住むところが違う選ばれた人間だ」

 私は周囲の注目を浴びながらただ小声でこう言うしか無かった。
「……そんなことないです……」

 今まで伏せて隠してた訳ではないが、改めてこう言われると……ちょっと嫌な気持ちがした。

「まあいい、授業を進めよう」
 教師は黙々と授業を進める。

 私達ペンタグラム人は1000年前にこの地にペンタグラムを建国した。1000年前私達のご先祖様は、悪魔の使い、魔女などと言われ迫害されていた。当時は今よりもずっと魔力が低く、ごく簡単な魔法しか使えることができなかったせいだと言われている。

 そんな中、魔力の高かった一人の人間、ジークスと呼ばれている人間が私達をペンタグラムに導いたとされ、ジークスは導く者と言われるようになった。そしてそのジークスの血を引く五家が始祖の五家と言われるようになる。

「これは今まで伝わってきた伝承だ。最近の歴史研究によるとジークなる人物はなく、魔力の強かった始祖の五家がペンタグラムを建国したとされている」
 教師が注釈を入れる。

 私の父も教師と同じことを言っているのを耳にした。

「しかしこの伝承は根強く、我が国の元首が始祖の五家の合議制で決まる宰相なのは、導く者がこの世に降臨された時に宰相が補助をするためと言われている。まあ今の世で導く者など言われても信じる者などいないだろうがな」

 導く者……幼い頃、父から聞いた昔話、ペンタグラムが危機に陥った時に正しく導くとされる存在。私がその話を聞いた時は怖くて震えた。もしそんなことになったらどうしようと。その時父は私に笑いかけ「そんなことにはならないよ」
 と優しく言ってくれた。


 秋、母が死んだ。原因は夏頃から突如ペンタグラムで流行り出した死文病と呼ばれる流行病。

 身体のどこかに文字の様な痣が現れ、死に至る病。

 父はありとあらゆる方法を用いて母を治そうとしていた。魔法に呪術に錬金術。
 しかしそれらは全く効果なく、母は見るからに痩せ衰え亡くなった。

「フェルトすまなかった。すまなかった」
 そう言って父は悔い、ふさぎ込むようになった。

 父が鬱ぎ込み、私も学校に行く気もせず、大きな家で母の作ったお手伝い人形に世話をされながら暮らしていたある日。

 家の前に一人の痩せて神経質そうな男が現れ、父に会いたいといった。

 アビゲイル・ノーマン。この国の宰相。

しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~

夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。 全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった! ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。 一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。 落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!

「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。

夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。 もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。 純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく! 最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

無能と追放された俺の【システム解析】スキル、実は神々すら知らない世界のバグを修正できる唯一のチートでした

夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業SEの相馬海斗は、勇者として異世界に召喚された。だが、授かったのは地味な【システム解析】スキル。役立たずと罵られ、無一文でパーティーから追放されてしまう。 死の淵で覚醒したその能力は、世界の法則(システム)の欠陥(バグ)を読み解き、修正(デバッグ)できる唯一無二の神技だった! 呪われたエルフを救い、不遇な獣人剣士の才能を開花させ、心強い仲間と成り上がるカイト。そんな彼の元に、今さら「戻ってこい」と元パーティーが現れるが――。 「もう手遅れだ」 これは、理不尽に追放された男が、神の領域の力で全てを覆す、痛快無双の逆転譚!

Sランクパーティを追放されたヒーラーの俺、禁忌スキル【完全蘇生】に覚醒する。俺を捨てたパーティがボスに全滅させられ泣きついてきたが、もう遅い

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティ【熾天の剣】で《ヒール》しか使えないアレンは、「無能」と蔑まれ追放された。絶望の淵で彼が覚醒したのは、死者さえ完全に蘇らせる禁忌のユニークスキル【完全蘇生】だった。 故郷の辺境で、心に傷を負ったエルフの少女や元女騎士といった“真の仲間”と出会ったアレンは、新パーティ【黎明の翼】を結成。回復魔法の常識を覆す戦術で「死なないパーティ」として名を馳せていく。 一方、アレンを失った元パーティは急速に凋落し、高難易度ダンジョンで全滅。泣きながら戻ってきてくれと懇願する彼らに、アレンは冷たく言い放つ。 「もう遅い」と。 これは、無能と蔑まれたヒーラーが最強の英雄となる、痛快な逆転ファンタジー!

「お前は無能だ」と追放した勇者パーティ、俺が抜けた3秒後に全滅したらしい

夏見ナイ
ファンタジー
【荷物持ち】のアッシュは、勇者パーティで「無能」と罵られ、ダンジョン攻略の直前に追放されてしまう。だが彼がいなくなった3秒後、勇者パーティは罠と奇襲で一瞬にして全滅した。 彼らは知らなかったのだ。アッシュのスキル【運命肩代わり】が、パーティに降りかかる全ての不運や即死攻撃を、彼の些細なドジに変換して無効化していたことを。 そんなこととは露知らず、念願の自由を手にしたアッシュは辺境の村で穏やかなスローライフを開始。心優しいエルフやドワーフの仲間にも恵まれ、幸せな日々を送る。 しかし、勇者を失った王国に魔族と内通する宰相の陰謀が迫る。大切な居場所を守るため、無能と蔑まれた男は、その規格外の“幸運”で理不尽な運命に立ち向かう!

《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。 無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。 やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。

処理中です...