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第6章 剣聖剥奪
第107話 抜け道
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「ハァ、ハァ」
一歩、歩くたびに体に痛みが走り、苦痛に顔が歪む。痛みのあまり腹を触ると拷問の傷跡から血が滲んできている。
急がなければ……ペンタグラムに行かなければ……その思いだけで俺は歩み続ける。
王都は騒然としており、いつもなら市が開かれている街の広場も閑散としており、家から荷物を運び出し大八車に載せているものや、大きな荷物を担いでいるもの様々な者がいるが皆一様に不安げな表情をしている。
国王が王都を放棄した。これは事実上の敗北宣言に近い。セネバ王子の話では王都に最低限の兵を残し籠城し時間を稼ぐ。国王や重臣たちはウィンタールまで一旦引き、諸侯に残る兵を集結させ一気に王都を攻めるというものだ。
どう転んでも王都が2度も戦場なる。ここの人たちの暮らしが壊れる。
この場所からみえる王都の外壁の上では兵士たちが忙しく動き回り、壁の上に投石機や油の入った樽などを置いている。
兵士の数は最低限。つまり準備をするだけ手一杯になっている風に見える。
痛みを堪えゆっくりと歩き、王都と外を隔てる門の近く辿り着くと、荷物を抱えた市民達で溢れ返っている。遠くに見える門は固く閉ざされおり、あの門が閉ざされた所を見るのは初めてだ。
門の前にも荷物を抱えた民が殺到し、開けろ!早くしろ!と怒声を上げている。門を守る兵士はわずか2名。その2名が群がる民に声を張り上げており、罵詈雑言の中その声がかすかに聞こえてくる。
「駄目だ! 駄目!何人たりともここ通すわけにはいかない!」
敵軍の到達に備え門を閉じたというところだろう。しかしこれでは王都の民の逃げ場がなくなる。
「ラグウェル! お前ラグウェルだろ?」
不意に背後から懐かしい声が聞こえる。
振り返るとそこにはあの……空気の読めない先輩の姿がある。
「まさか……先輩生きて……」
先輩は鎧を纏って騎士の格好をしており、人々の注目を浴びる。
「っちここじゃあれだな……こっちへ」
先輩は路地裏へ行く。俺もその後をついていく。
「この辺でいっか」
周囲を伺って一般市民がいないことを確認し話し始める。
「お前……しかしひどい顔だな……最初見た時お前って分からなかったわ」
「はい……色々ありまして……」
「っていうか剣聖のお前のほうが偉いんだからなんで俺に敬語よ?」
「……それもまあ色々ありまして……」
「まあ、そうだよな剣聖のお前が最前線に立ってない時点でおかしいもんなぁ」
先輩はあの出来事を知らないんだ……まあ無理もない知ってるのは一部の人間だけだろうし……俺が返答に困りもぞもぞしていると
パンっと俺の背中を叩き
「まっ!お前にも色々あるもんな!」
俺はその背中を叩かれた痛みが走る。
「いてて……」
「あっすまない。お前ひどい怪我してたな」
そういって頭を掻く。
「……先輩はカルテー平原戦には参加しなかったんですね」
それを聞くと先輩はうつむいて元気がなくなる。一瞬不味いことを聞いちゃったなと思ったが顔を上げ自分から話し出す。
「幸か不幸か。あの時、俺は別命で王都に居なかったんだそれで参加できなかった」
「そうだったんですか……でもなんで王都に残ってるんですか? 国王と帯同もできたでしょ先輩だったら……」
「いや……俺は自分でここに残ることを志願した。みんなが暮らすこの街を守りたくてな」
そう言ってはにかんで笑う。
「先輩……」
「そんなことを話すためにお前に声をかけたんじゃなかった。セネバ王子からお前が来たら門を通せといわれてたんだ。ほら門にはみんな殺到してるから」
「なるほど……」
「お前も知ってるだろあの抜け道」
「あっ!忘れてた」
王都から抜けるために騎士や兵士達がだけが通ることのできる道がある。先輩はそこを通って俺を王都から脱出させてくれるということだ。
「まあ、お前のその格好じゃ通してもらえないから、俺が一緒に行ってやるよ」
「ありがとうございます」
そして先輩と一緒に抜け道の入口に立つ。みんな手一杯なのか護衛の兵士は誰も居ない。
「ここにさける人数はいなかったか。それじゃここでお別れだ」
「はい……先輩も生きて会いましょう」
「ああ。生きて会おう」
先輩と分かれ俺はその人、一人が通ることができる抜け道のトンネルの中に入った。
一歩、歩くたびに体に痛みが走り、苦痛に顔が歪む。痛みのあまり腹を触ると拷問の傷跡から血が滲んできている。
急がなければ……ペンタグラムに行かなければ……その思いだけで俺は歩み続ける。
王都は騒然としており、いつもなら市が開かれている街の広場も閑散としており、家から荷物を運び出し大八車に載せているものや、大きな荷物を担いでいるもの様々な者がいるが皆一様に不安げな表情をしている。
国王が王都を放棄した。これは事実上の敗北宣言に近い。セネバ王子の話では王都に最低限の兵を残し籠城し時間を稼ぐ。国王や重臣たちはウィンタールまで一旦引き、諸侯に残る兵を集結させ一気に王都を攻めるというものだ。
どう転んでも王都が2度も戦場なる。ここの人たちの暮らしが壊れる。
この場所からみえる王都の外壁の上では兵士たちが忙しく動き回り、壁の上に投石機や油の入った樽などを置いている。
兵士の数は最低限。つまり準備をするだけ手一杯になっている風に見える。
痛みを堪えゆっくりと歩き、王都と外を隔てる門の近く辿り着くと、荷物を抱えた市民達で溢れ返っている。遠くに見える門は固く閉ざされおり、あの門が閉ざされた所を見るのは初めてだ。
門の前にも荷物を抱えた民が殺到し、開けろ!早くしろ!と怒声を上げている。門を守る兵士はわずか2名。その2名が群がる民に声を張り上げており、罵詈雑言の中その声がかすかに聞こえてくる。
「駄目だ! 駄目!何人たりともここ通すわけにはいかない!」
敵軍の到達に備え門を閉じたというところだろう。しかしこれでは王都の民の逃げ場がなくなる。
「ラグウェル! お前ラグウェルだろ?」
不意に背後から懐かしい声が聞こえる。
振り返るとそこにはあの……空気の読めない先輩の姿がある。
「まさか……先輩生きて……」
先輩は鎧を纏って騎士の格好をしており、人々の注目を浴びる。
「っちここじゃあれだな……こっちへ」
先輩は路地裏へ行く。俺もその後をついていく。
「この辺でいっか」
周囲を伺って一般市民がいないことを確認し話し始める。
「お前……しかしひどい顔だな……最初見た時お前って分からなかったわ」
「はい……色々ありまして……」
「っていうか剣聖のお前のほうが偉いんだからなんで俺に敬語よ?」
「……それもまあ色々ありまして……」
「まあ、そうだよな剣聖のお前が最前線に立ってない時点でおかしいもんなぁ」
先輩はあの出来事を知らないんだ……まあ無理もない知ってるのは一部の人間だけだろうし……俺が返答に困りもぞもぞしていると
パンっと俺の背中を叩き
「まっ!お前にも色々あるもんな!」
俺はその背中を叩かれた痛みが走る。
「いてて……」
「あっすまない。お前ひどい怪我してたな」
そういって頭を掻く。
「……先輩はカルテー平原戦には参加しなかったんですね」
それを聞くと先輩はうつむいて元気がなくなる。一瞬不味いことを聞いちゃったなと思ったが顔を上げ自分から話し出す。
「幸か不幸か。あの時、俺は別命で王都に居なかったんだそれで参加できなかった」
「そうだったんですか……でもなんで王都に残ってるんですか? 国王と帯同もできたでしょ先輩だったら……」
「いや……俺は自分でここに残ることを志願した。みんなが暮らすこの街を守りたくてな」
そう言ってはにかんで笑う。
「先輩……」
「そんなことを話すためにお前に声をかけたんじゃなかった。セネバ王子からお前が来たら門を通せといわれてたんだ。ほら門にはみんな殺到してるから」
「なるほど……」
「お前も知ってるだろあの抜け道」
「あっ!忘れてた」
王都から抜けるために騎士や兵士達がだけが通ることのできる道がある。先輩はそこを通って俺を王都から脱出させてくれるということだ。
「まあ、お前のその格好じゃ通してもらえないから、俺が一緒に行ってやるよ」
「ありがとうございます」
そして先輩と一緒に抜け道の入口に立つ。みんな手一杯なのか護衛の兵士は誰も居ない。
「ここにさける人数はいなかったか。それじゃここでお別れだ」
「はい……先輩も生きて会いましょう」
「ああ。生きて会おう」
先輩と分かれ俺はその人、一人が通ることができる抜け道のトンネルの中に入った。
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