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第6章 剣聖剥奪
第110話 カイト・ベルディンという男
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「何で俺の名前を?」
まあ……俺も剣聖だし多少なりに名前が知られてても仕方ないか……
「なんでって服に名前書いてるし……」
「……あれ?」
恥ずかしさのあまり顔に血が集まってくるのを感じる。
「冗談だよ。冗談。この国でシリウス鋼の剣なんて持ってる奴なんて俺は二人しかしらない。それだけだよ元剣聖」
男はそう言って剣を俺に渡す。
「おまえさんが行きたいという気持ちは分かる。道半ばで倒れ犬死するのもいいだろう。お前の自己満足で死ぬんだからな。ただお前は成すべきことがあるんだろう? そのためには今は休む必要があるってだけだ。まあよく考えろ。行くぞマリー」
男は俺にそういうとマリーを抱き上げ踵を返し部屋を後にする。
男が部屋をでると俺はふらつく体を奮い立たせ一歩ずつ進む。……行かなきゃ行かなきゃ……扉の取っ手に手を掛けたときにあの男の言葉が蘇る。
お前には成すべきことがあるんだろう……。
そうだ俺にはなすべきことがある。だから進まなければ……
体がふらつき倒れそうになる。
道半ばで倒れ犬死する……俺の自己満足……
自分の身体のことは自分が一番分かる。傷口が化膿し体が熱を持ちとても歩いて行ける状態ではない……俺が又倒れたら……俺は死ぬこと自体は怖い訳はではない。俺が成すべきことを成せずに道半ばでたおれることが一番……
倒れるなら目的を果たしてから……
俺はベッドに戻り倒れ込むように眠りつく。
暫くしてコンコンと部屋をノックする音がする。執事のような格好をした初老の男がいい匂いのする食事を台車に乗せてやってくる。
「カイト様が目覚めたとおっしゃっていたので、食事と薬をお持ちしました」
「カイト様?」
執事が様付けで呼ぶような人物に心当たりがない……ん?一人いるがあれは農夫だろ?
俺が首を傾げていると
「先程いらっしゃってたでしょ?マリー様とご一緒に」
「え? あの人農夫じゃないの?」
執事は笑いながら答える。
「ええ、その御方が我らが主、カイト・ベルディン卿です。普段は領民達と一緒に農作業をしたり漁にでられたりされているので……あなたが倒れているのをみつけたのも農作業に出られていたカイト様ですよ」
え?……俺が知ってる貴族と全然違うんだけど……
「カイト様は一緒に農作業や漁をされ、どういった作物が取れているのか、どういった魚が獲れているのかを自ら体感され、来年作るものを決められたり、漁獲量を決めたりされているのです」
「なるほど……だから作物などが良くとれると……」
「ええ。カイト様は領民と一緒に農作業をし土の様子を見たり、漁にでて魚の様子をみることを大切になされているのです。実際カイト様の言うとおりにすれば豊作、豊漁なので領民達もみな慕っております」
「それは凄い……俺が見てきた貴族達と全然違いますね」
俺がそういうと執事は苦笑いをして
「領主としての威厳がないのも考えものですがね」
と言って台車に乗せられた食事が盛り付けられた皿と小瓶を床頭台に置く。
「これが薬です。傷口に塗って下さい」
「ありがとうございます」
執事は一礼をすると部屋を後にする。
繋がった。マリーが俺の剣を見たと時にお父さんのと一緒といった意味。確かベルディン家の家宝がシリウス鋼の剣だった。800年前から伝わっていると……だから俺の名前も知っていて当然だ。なんで農夫がシリウス鋼の剣なんて知っているんだとは思ったが、深くは考えなかった。
パンを牛乳でふやかしたパン粥と薬草を煮込んだスープを食べる。スープは多少なり苦味があるが、まずくはない。衰弱した体に消化の良い優しい食事が体にしみる。
食事をたいらげ、包帯を外し薬を塗る。ひんやりとした薬を熱を持った傷口に塗ると少ししみるが気持ちがいい。
包帯を巻き直しベッドに横になり、天井を眺める。
あの男がカイト・ベルディンか……確かに強権で周囲を恐怖で縛り付ける今の国王とは真逆のタイプ。折り合わないのも無理はなさそう。というか……あの男いままで俺があったどの貴族にも属さない。貴族が領民達と一緒に農作業などありえない。
国王と折り合わないことは折込ずみだ。だから俺がサウストンを選んだのだ。
――3日後
俺はベッドから立ち上がる。熱は下がり体のふらつきはない。剣を抜き振ってみる。いつもの調子……には及ばないがそれなりに調子が戻ってきているのは分かる。
コンコンと扉をノックする音がする。
執事の男が扉を開ける。そして
「カイト様がお呼びです」
俺は服に着替え執事の後を一緒にカイトの元へ向かった。
まあ……俺も剣聖だし多少なりに名前が知られてても仕方ないか……
「なんでって服に名前書いてるし……」
「……あれ?」
恥ずかしさのあまり顔に血が集まってくるのを感じる。
「冗談だよ。冗談。この国でシリウス鋼の剣なんて持ってる奴なんて俺は二人しかしらない。それだけだよ元剣聖」
男はそう言って剣を俺に渡す。
「おまえさんが行きたいという気持ちは分かる。道半ばで倒れ犬死するのもいいだろう。お前の自己満足で死ぬんだからな。ただお前は成すべきことがあるんだろう? そのためには今は休む必要があるってだけだ。まあよく考えろ。行くぞマリー」
男は俺にそういうとマリーを抱き上げ踵を返し部屋を後にする。
男が部屋をでると俺はふらつく体を奮い立たせ一歩ずつ進む。……行かなきゃ行かなきゃ……扉の取っ手に手を掛けたときにあの男の言葉が蘇る。
お前には成すべきことがあるんだろう……。
そうだ俺にはなすべきことがある。だから進まなければ……
体がふらつき倒れそうになる。
道半ばで倒れ犬死する……俺の自己満足……
自分の身体のことは自分が一番分かる。傷口が化膿し体が熱を持ちとても歩いて行ける状態ではない……俺が又倒れたら……俺は死ぬこと自体は怖い訳はではない。俺が成すべきことを成せずに道半ばでたおれることが一番……
倒れるなら目的を果たしてから……
俺はベッドに戻り倒れ込むように眠りつく。
暫くしてコンコンと部屋をノックする音がする。執事のような格好をした初老の男がいい匂いのする食事を台車に乗せてやってくる。
「カイト様が目覚めたとおっしゃっていたので、食事と薬をお持ちしました」
「カイト様?」
執事が様付けで呼ぶような人物に心当たりがない……ん?一人いるがあれは農夫だろ?
俺が首を傾げていると
「先程いらっしゃってたでしょ?マリー様とご一緒に」
「え? あの人農夫じゃないの?」
執事は笑いながら答える。
「ええ、その御方が我らが主、カイト・ベルディン卿です。普段は領民達と一緒に農作業をしたり漁にでられたりされているので……あなたが倒れているのをみつけたのも農作業に出られていたカイト様ですよ」
え?……俺が知ってる貴族と全然違うんだけど……
「カイト様は一緒に農作業や漁をされ、どういった作物が取れているのか、どういった魚が獲れているのかを自ら体感され、来年作るものを決められたり、漁獲量を決めたりされているのです」
「なるほど……だから作物などが良くとれると……」
「ええ。カイト様は領民と一緒に農作業をし土の様子を見たり、漁にでて魚の様子をみることを大切になされているのです。実際カイト様の言うとおりにすれば豊作、豊漁なので領民達もみな慕っております」
「それは凄い……俺が見てきた貴族達と全然違いますね」
俺がそういうと執事は苦笑いをして
「領主としての威厳がないのも考えものですがね」
と言って台車に乗せられた食事が盛り付けられた皿と小瓶を床頭台に置く。
「これが薬です。傷口に塗って下さい」
「ありがとうございます」
執事は一礼をすると部屋を後にする。
繋がった。マリーが俺の剣を見たと時にお父さんのと一緒といった意味。確かベルディン家の家宝がシリウス鋼の剣だった。800年前から伝わっていると……だから俺の名前も知っていて当然だ。なんで農夫がシリウス鋼の剣なんて知っているんだとは思ったが、深くは考えなかった。
パンを牛乳でふやかしたパン粥と薬草を煮込んだスープを食べる。スープは多少なり苦味があるが、まずくはない。衰弱した体に消化の良い優しい食事が体にしみる。
食事をたいらげ、包帯を外し薬を塗る。ひんやりとした薬を熱を持った傷口に塗ると少ししみるが気持ちがいい。
包帯を巻き直しベッドに横になり、天井を眺める。
あの男がカイト・ベルディンか……確かに強権で周囲を恐怖で縛り付ける今の国王とは真逆のタイプ。折り合わないのも無理はなさそう。というか……あの男いままで俺があったどの貴族にも属さない。貴族が領民達と一緒に農作業などありえない。
国王と折り合わないことは折込ずみだ。だから俺がサウストンを選んだのだ。
――3日後
俺はベッドから立ち上がる。熱は下がり体のふらつきはない。剣を抜き振ってみる。いつもの調子……には及ばないがそれなりに調子が戻ってきているのは分かる。
コンコンと扉をノックする音がする。
執事の男が扉を開ける。そして
「カイト様がお呼びです」
俺は服に着替え執事の後を一緒にカイトの元へ向かった。
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