21代目の剣聖〜魔法の国生まれの魔力0の少年、国を追われ剣聖になる。〜

ぽいづん

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第7章 ペンタグラム

第116話 エリン

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 向かう場所は唯一つ、俺が10歳まで育ったアルタイル邸。この家は郊外にあるが、大体の位置は分かるつもりだが……そうはいっても10歳の頃の記憶で、はっきりしない部分もある。

 周囲を伺いながら家を出る。特に兵士のような人間はいない。

 この国の中央に位置し、どこの場所からもはっきりと見える建物で大きな塔のような形にも見えるそれが宮殿だ。この国に王はいないし、そこに住まうものもいないのだが昔から宮殿と呼ばれている。

 うちは宮殿の近くにある……しかしその場所は、敵の総本山の近くあるといっていい。何者かが入ってきたということは分かっているはずだし、警備の厳重になっている可能性がある……宮殿に近づくことは難しいかも知れない。

 でも家に行く必要がある。行って父や母と会いそしてスピカと……

 宮殿を目指して動きはじめるが宮殿直通のメインストリートは避け、路地裏を歩く……が見慣れない格好をした人間が歩いているせいか、人の視線を感じる。

 旅行者などいるわけもないからボロの布の外套というだけで目立つ。足早に目的地を目指すしか無い兵士などに連絡をされる前に。

 よし……こっちは誰もないな……そう思って路地に入ろうとした瞬間
「ラグウェル・アルタイル」
「はい?」

 え?……不意に名前を呼ばれ反射的に返事をしてしまったが、この国に俺がいることを知っている人間はいないはずだ……

 不審に思いながら振り返るとそこには、茶色のおかっぱ頭でまるで人形のように整った顔の青い縁取りが目立つ白いローブを来た女性の姿がある。

「ふぇ?どちら様で?」
 女性は表情を変えずに感情の抑揚がない声で話す。

「ここは目立ちます。こちらへ」
 その女性の後をついていく。

 あの顔どこかでみたような……

 そしてとある石造りの建物の中に入っていく。俺もその後をついてその建物の中に入る、普通の建物一つとってしても十王国ではとてもつくることのできないような建物だ。この建物も石を綺麗に正方形に切り抜いてそれを積み上げて作ってある。

 10歳の頃はそんなものなんの関心もなかったが。

 その女性が入っていくと同時に暗い建物の中に灯りがつく。おそらく魔法をつかっているのだろう。

「私はエリン・ハーベル」
「あっ!!エリン!!」

 エリンは表情を変えずに感情の抑揚がない声で一気に話す。
「魔法障壁が破られたときいてあなたがやってきたと思いました。路地裏を探して正解でした。もっともあなたがここの連中に捕まるようなものではないと思ってはいましたが」

 その様子に少し気圧されながらも答える。
「ああ、俺は父と母そしてスピカに会いに来た」

 するとエリンは初めてその表情を一瞬だけ曇らせる。
「そうですか……リゲル様とフェルト様に……そしてスピカ様ですか」
 その様子に一抹の不安を感じる。

「これを着て下さい。その格好では目立ちます」
 エリンはそう言ってエリンが着ているような青い縁取りの入った白い制服を俺に渡す。

「行政執行官の制服です。それを着ていれば目立ちません。それを着てアルタイル邸に向かいましょう。詳細はアルタイル邸で話します」
「分かった」
 俺はその制服に袖を通し、エリンと二人アルタイル邸に向かった。

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