21代目の剣聖〜魔法の国生まれの魔力0の少年、国を追われ剣聖になる。〜

ぽいづん

文字の大きさ
118 / 120
第7章 ペンタグラム

第118話 父の思い

しおりを挟む
 初めて入った父の書斎、壁一面に本棚が置かれ、本びっしりと詰まっている。机の上にも本が乱雑に置かれ、その空間だけ時間が止まったように思える。

 今にも父がその椅子に座り、俺に話しかけてくるような感じがする。

 エリンは父の机の上に置かれた一冊の年季が入った革表紙の本を俺に渡す。
「あなたが着たらこれを渡すようにとリゲル様から」

 エリンから渡された本は錠がついており、もちろん鍵が掛かっており開けることができない。
「鍵が……」
「その鍵は存在していません。魔法の力によるものです。ですので私達にも解除することができないんです」

 そうか……魔法の力ということは……この剣を使って開けろということか。
 本を机の上に置き、俺は剣を抜き、表紙に掛けられた鍵のみを斬る、少しの手応えで錠は両断される。そして本がひとりで開く。

 その本の中身に目を落とす……

 ラグウェル、我が息子へとの書き出しから始まった。

 ◆◇◆

 ラグウェルへ、本当にすまなかった、父さんのことを恨んでいるだろう。わけも分からず世界の果てへ飛ばされたのだからな。良く無事で……良く生きていて……

(インクが滲み字が霞んでいる)

 私は罪を2つ犯した。許されないことだ、一つはラグウェル、君を世界の果てへ飛ばしたこと、そしてもう一つはスピカに暗示を掛けたこと。

 私達はどうかしていた、ラグウェルがいなくなったということを幼いスピカに伝えくなかった。スピカがお兄ちゃんと泣くのが耐えれられなかった。ここで一緒になって泣いてあげることが必要だったんだと今になって思う。

 だが私達の取った選択はスピカに暗示を掛けることだった。兄はラグウェルは存在していないと……そしてその暗示を強固にするため、私達はスピカの前でラグウェルの話題をすること避け、部屋を塗りつぶしその存在を無き者にした。

 いや……スピカのせいにしているが、私が君の存在を忘れたかった、いや元からいない者として扱いたかったのかも知れない……

 自分のためにスピカの記憶からもラグウェルという存在をを奪ってしまった……私は父として許されざる人間なのだ。

 ラグウェル、君がこれを読んでいるということは、私はすでにこの世を去っている、母さんも去年死文病で亡くした。私もフェルトと同じ病に罹かり、もってあと数ヶ月だろう。

 私達が亡き今、スピカは恐らく導く者として担がれているとおもう。今、この国を蝕む病、死文病、決して治ることのない不治の病。その病から救い導く者としてスピカが選ばれたというわけだ。

 この死文病の原因は龍脈の乱れによって体内の魔力が暴走し死に至ると言われている。そして今、この龍脈が安定しているのが十王国、王都ゲルニカ。

 ラグウェルは幼い時にここ離れたから知らないだろうが、この国の政治は始祖の5家の合議制を取っていた。それがスピカが導く者になると、スピカの意思のみで国が動く。

 そう十王国に攻め入ってゲルニカを力ずくで奪うことになるだろう……

 私は、この病、死文病は龍脈などが原因ではない、魔力を持つことこそがその原因なのだと考えている。私達は進化した人間などではなく、停滞した人間なのだ。この国の外にいる者達こそ、魔法という庇護をすて進化した人間なのだ。

 ゲルニカにペンタグラムの民を移しても死文病は克服できない可能性が高い。一時的には患者はいなくなるであろうが、根本的な解決にはならない。

 私はなぜ、ラグウェルが魔力を持たずに生まれたのか考えたそれがこの結果だ。魔力を持たずに生まれた者は国に仇をなす。その言い伝えから、そんな子供が生まれると処分をしてきた。

 過去の文献を紐解くと、魔力持たずに生まれたものと魔力を持つものが子を成すと、例外なく魔力がない子が生まれる。魔力とは自然に淘汰される存在なのだ……

 800年前にペンタグラムが世界を侵略しようとした時に、魔力が一時的に無くなる病気が流行ったことある。この病気を使えば、現在魔力を持つ我々は死文病を克服できる可能性があるかもしれない。

 ラグウェル……どうかスピカを止めてほしい。彼女が過ちを犯す前に……もう止められるのは兄である君しかいない。父の最後のお願いだ……君の存在を消しておいて、なおも父親面する調子のいい人間だな私は……

 ◆◇◆

 俺は全てを読み終え、目を閉じる。

 父さん……俺は父さんのことなんてこれっぽっちも恨んでなんかないよ。世界の果てへ行ったおかげでここでは会えない人にいっぱい会えたし、人間として成長することができたんだ。父さんに会わせたかったな。知り合ったみんなと……

 俺は目を開き、そしてエリンに話しかける。
「スピカの元へ妹のところに連れて行ってくれ」
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~

夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。 全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった! ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。 一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。 落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!

《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。 無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。 やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。

無能と追放された俺の【システム解析】スキル、実は神々すら知らない世界のバグを修正できる唯一のチートでした

夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業SEの相馬海斗は、勇者として異世界に召喚された。だが、授かったのは地味な【システム解析】スキル。役立たずと罵られ、無一文でパーティーから追放されてしまう。 死の淵で覚醒したその能力は、世界の法則(システム)の欠陥(バグ)を読み解き、修正(デバッグ)できる唯一無二の神技だった! 呪われたエルフを救い、不遇な獣人剣士の才能を開花させ、心強い仲間と成り上がるカイト。そんな彼の元に、今さら「戻ってこい」と元パーティーが現れるが――。 「もう手遅れだ」 これは、理不尽に追放された男が、神の領域の力で全てを覆す、痛快無双の逆転譚!

「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。

夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。 もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。 純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく! 最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

Sランクパーティを追放されたヒーラーの俺、禁忌スキル【完全蘇生】に覚醒する。俺を捨てたパーティがボスに全滅させられ泣きついてきたが、もう遅い

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティ【熾天の剣】で《ヒール》しか使えないアレンは、「無能」と蔑まれ追放された。絶望の淵で彼が覚醒したのは、死者さえ完全に蘇らせる禁忌のユニークスキル【完全蘇生】だった。 故郷の辺境で、心に傷を負ったエルフの少女や元女騎士といった“真の仲間”と出会ったアレンは、新パーティ【黎明の翼】を結成。回復魔法の常識を覆す戦術で「死なないパーティ」として名を馳せていく。 一方、アレンを失った元パーティは急速に凋落し、高難易度ダンジョンで全滅。泣きながら戻ってきてくれと懇願する彼らに、アレンは冷たく言い放つ。 「もう遅い」と。 これは、無能と蔑まれたヒーラーが最強の英雄となる、痛快な逆転ファンタジー!

処理中です...